両腕のない義弟との性事情

papporopueeee

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第六夜

妹はお願いする

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『……』

 沈黙。それはさっきまでは何としても避けたかった状態。でも、今はあんまりそうは思わない。

 言葉を交わさなくても、交わせなくても。私がカオルくんの足を拭いて、お世話をしていることは変えようのない現実だから。

 姉が強引に私とカオル君をふたりきりにさせようとした時は正直恨めしかった。ようやく四人での会話に慣れてきたところだったのに、いきなりカオル君とふたりきりなんて無理だと思っていたから。

 でも、今は姉には感謝の念しかない。少し勇気を出す必要はあったけど、こんな幸福な時間が過ごせているから。
 もうずっとこうしていたい。言葉なんてなくても、ただずっとカオル君の足を拭いていたい。

「あ、あの、もう右足は十分なような……」
「えっ、あ、えっと……そ、そうだね!」

 この時間を永遠に楽しみたいだなんて思っているのは私だけだったようだ。少し悲しいが、カオル君からすればそれは当然だろう。

 右足から手を離すと、スっと呆気なく離れていってしまう。少し寂しい。
 でもすぐさま左足が近づいてきてくれて、こんなことで一喜一憂してしまう私は本当に単純だと思う。

「じゃあ、左足も……するね?」

 右足の時と同じように、タオルでその柔らかな皮膚を擦っていく。タオル越しに骨を感じながら、その溝に丁寧にタオルを這わせる。

 終わりを意識してしまうと、途端に時の流れを早く感じてしまう。もうすぐ終わってしまうと焦るほどに、鼓動と思考が加速していって、余計に終わりを近く感じてしまって。
 どうかその唇が開きませんようにと、もう少しだけ私の手を止めさせないでと祈ってしまう。

「あ、あの、そろそろ――」
「け、敬語っ……じゃなくても、いいよ?」
「えっ?」

 どうにか時間を引き延ばしたくて、私は無理やりに言葉を紡いでいた。

「ひ、1つしか違わないし、私早生まれだから。だから、その……敬語じゃなくていいよ?」
「で、でも、年上なのは変わらないし……」
「カオル君が嫌だったらいいんだけど、その、できたらそうしてほしいってだけだから……。そうしてもらえたら私は嬉しいなって……」

 咄嗟に口にしたことではあったが、改めて意識するとそれはとても魅力的に思えた。
 敬語だとどうしても距離を感じてしまう。それが嫌なわけではない。紳士的なカオル君はとても好印象だ。けれど、カオル君にはむしろ私が敬語で接したい。そんな感情を抱いているのも事実だ。

「……それじゃあ、これからは敬語は控えるね。もしかしたら咄嗟に出ちゃうかもしれないけど」
「う、うん……! ありがとうカオル君……。あ、そ、そうだ……で、できたら、名前も……」

 もしもカオル君と名前で呼び合えたなら。その声で私の名前を呼んでくれたなら。

 カオル君の優しさに甘える自分を抑えられなくなってきていることを自覚しつつも、それでもやっぱり止められなかった。

「……あ、あさひ……さん?」
「……呼び捨てでもいいよ?」
「そ、それはさすがに……」
「あっ、じゃ、じゃあ……ちゃん! ちゃん付けがいいな……!」
「……っ……あさひちゃん……?」

 カオル君が頬を赤く染めながら、様子を窺うように私の表情を覗き見た。その仕草は私の視線を惹き付けて、心をきゅうっと締め付けて。

「ご、ごめんね……もう一回いい?」
「……あさひちゃん」

 恥ずかしがるカオル君を見ていて、そうさせている張本人の私まで恥ずかしくなってしまって。
 カオル君の一挙一動を隅々まで見逃したくないのに、顔を上げることができなくなってしまった。
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