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第六夜
妹は声を聴く
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今までよりもずっと近い距離。どんなに視線を逸らしても、視界にカオル君が映ってしまう距離。
カオル君は下から、私は上から。互いの瞳を見つめている。
ぶつかってごめんなさい。
倒れた時に頭を床にぶつけなかった?
すぐに退くね。
頭の中に浮かぶ言葉はどれも漂うばかりで音にならない。聴こえるのは吐息と、互いの失った声だけ。
カオル君は何も言わない。ただ黙って、私に押し倒されている。
私は何も言えない。ただ黙って、カオル君を押し倒している。
フィクションではありふれた状況の中に、私とカオル君は存在している。
(ど、どうしよう……!)
どうすればいいのかがわからない。
どうするべきなのかは明白だ。
どうしたいのかも明確だ。
でも、カオル君がどう思っているのかがわからない。
どうして何も言わないの?
この状況をどう思っているの?
早く離れて欲しいと思っているの?
それとも……。
感情が全面に出ていた先ほどとは打って変わって、カオル君は今は無表情だ。驚きで思考が停止してしまっているようにも見える。
「……」
カオル君の視線が余りにも真っ直ぐなものだから、私は少し視線を逸らしてしまって、そしてまた目に入ったのは床に転がるティッシュの塊だった。
カオル君の性の象徴。カオル君にも性欲があることの何よりの証拠。
それは誰だってする行為だから、それをしているからってカオル君に対する印象は変わらない。カオル君は紳士的で、可愛らしい男の子だ。
そんな綺麗事では、感情も思考も制御なんてできやしない。
「……っ」
ちらりと視界にカオル君の下腹部が映った。カオル君にもそれは付いている。当たり前にそれは男性として機能している。
それは考えてはいけないことだ。カオル君に対して失礼だ。
わかっているのに思考はどんどんと汚染されていって、視界はずっとカオル君の下腹部を映していた。
(カオル君もオナニーするんだ……。どんなことを考えてしてるんだろう……。昨日したのかな……。足でしてるのかな……。やり辛くないのかな……。ちゃんと気持ちよくなれてるのかな……。もしも、満足できてないなら……)
満足できていないなら、手伝ってあげたい。
その気持ちに下心が無いと言えば嘘になるけれど。
カオル君に尽くしたいと思う気持ちが本物だって自信はある。
「カオル君……」
名前を呼ぶとカオル君の目がゆっくりと動いて、私の唇に視線が刺さった。
そして私の視線も吸い寄せられるようにカオル君の唇に。
それだけで、気持ちが通じ合えたような気がした。
「……い、いいんだよね? ……するね?」
経験なんてない。知識なんて碌にない。それでも私からしなきゃと思った。
年上だからじゃなくて、腕があるからでもなくて。私がカオル君を満足させてあげたいから。
体を支えて震える自らの四肢に力を込めて、少しずつ体を下げていく。視界一杯にカオル君を映しながら、顔を近づけていく。
「……っ」
目を瞑る。理由なんて知らない。ただ、私の記憶と知識の中ではみんなそうしているし、恥ずかしくてカオル君を直視できなかったから。
真っ暗な視界の中で敏感になっていく五感。
カオル君の息遣いを聴いて。カオル君の匂いを感じて。唇に当たるカオル君の吐息を頼りにソコを目指して。
最初は唇を触れ合わせるだけでいいんだよね。
いきなり舌なんて普通はしないよね。
ああ、でもこの後結局するんだったら最初からしておいた方がいいのかも。
まだかな、今どれくらい近付いたんだろう。
このままだと先に胸が密着しちゃうかも……でも、その方がいいのかな。
お姉ちゃんと違って小さいし、触れるのは恥ずかしいけど、でも……。
カオル君が喜んでくれるのなら。
「っ……け、て」
鼓動に合わせて加速する思考が渦を巻いていく中で、カオル君の声が聞こえた。
絞り出すような悲痛な声が。
「……え?」
「たっ……助けて……!」
興奮が冷めて、思考が冷静になっていって、視界に映し出されるのは誤魔化しようのない現実。
私の視界にはカオル君がいた。
涙を浮かべて。
青ざめた顔色で。
震える唇で。
私以外の誰かに向けて、助けを求めていた。
カオル君は下から、私は上から。互いの瞳を見つめている。
ぶつかってごめんなさい。
倒れた時に頭を床にぶつけなかった?
すぐに退くね。
頭の中に浮かぶ言葉はどれも漂うばかりで音にならない。聴こえるのは吐息と、互いの失った声だけ。
カオル君は何も言わない。ただ黙って、私に押し倒されている。
私は何も言えない。ただ黙って、カオル君を押し倒している。
フィクションではありふれた状況の中に、私とカオル君は存在している。
(ど、どうしよう……!)
どうすればいいのかがわからない。
どうするべきなのかは明白だ。
どうしたいのかも明確だ。
でも、カオル君がどう思っているのかがわからない。
どうして何も言わないの?
この状況をどう思っているの?
早く離れて欲しいと思っているの?
それとも……。
感情が全面に出ていた先ほどとは打って変わって、カオル君は今は無表情だ。驚きで思考が停止してしまっているようにも見える。
「……」
カオル君の視線が余りにも真っ直ぐなものだから、私は少し視線を逸らしてしまって、そしてまた目に入ったのは床に転がるティッシュの塊だった。
カオル君の性の象徴。カオル君にも性欲があることの何よりの証拠。
それは誰だってする行為だから、それをしているからってカオル君に対する印象は変わらない。カオル君は紳士的で、可愛らしい男の子だ。
そんな綺麗事では、感情も思考も制御なんてできやしない。
「……っ」
ちらりと視界にカオル君の下腹部が映った。カオル君にもそれは付いている。当たり前にそれは男性として機能している。
それは考えてはいけないことだ。カオル君に対して失礼だ。
わかっているのに思考はどんどんと汚染されていって、視界はずっとカオル君の下腹部を映していた。
(カオル君もオナニーするんだ……。どんなことを考えてしてるんだろう……。昨日したのかな……。足でしてるのかな……。やり辛くないのかな……。ちゃんと気持ちよくなれてるのかな……。もしも、満足できてないなら……)
満足できていないなら、手伝ってあげたい。
その気持ちに下心が無いと言えば嘘になるけれど。
カオル君に尽くしたいと思う気持ちが本物だって自信はある。
「カオル君……」
名前を呼ぶとカオル君の目がゆっくりと動いて、私の唇に視線が刺さった。
そして私の視線も吸い寄せられるようにカオル君の唇に。
それだけで、気持ちが通じ合えたような気がした。
「……い、いいんだよね? ……するね?」
経験なんてない。知識なんて碌にない。それでも私からしなきゃと思った。
年上だからじゃなくて、腕があるからでもなくて。私がカオル君を満足させてあげたいから。
体を支えて震える自らの四肢に力を込めて、少しずつ体を下げていく。視界一杯にカオル君を映しながら、顔を近づけていく。
「……っ」
目を瞑る。理由なんて知らない。ただ、私の記憶と知識の中ではみんなそうしているし、恥ずかしくてカオル君を直視できなかったから。
真っ暗な視界の中で敏感になっていく五感。
カオル君の息遣いを聴いて。カオル君の匂いを感じて。唇に当たるカオル君の吐息を頼りにソコを目指して。
最初は唇を触れ合わせるだけでいいんだよね。
いきなり舌なんて普通はしないよね。
ああ、でもこの後結局するんだったら最初からしておいた方がいいのかも。
まだかな、今どれくらい近付いたんだろう。
このままだと先に胸が密着しちゃうかも……でも、その方がいいのかな。
お姉ちゃんと違って小さいし、触れるのは恥ずかしいけど、でも……。
カオル君が喜んでくれるのなら。
「っ……け、て」
鼓動に合わせて加速する思考が渦を巻いていく中で、カオル君の声が聞こえた。
絞り出すような悲痛な声が。
「……え?」
「たっ……助けて……!」
興奮が冷めて、思考が冷静になっていって、視界に映し出されるのは誤魔化しようのない現実。
私の視界にはカオル君がいた。
涙を浮かべて。
青ざめた顔色で。
震える唇で。
私以外の誰かに向けて、助けを求めていた。
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