両腕のない義弟との性事情

papporopueeee

文字の大きさ
100 / 114
第六夜

妹は告げる

しおりを挟む
「カオル君……」

 細く弱い呼びかけ。それでも小さな口から紡がれた音は鮮明に、真っ直ぐに、こちらへと飛んできた。

「……」

 カオルは何も応えない。正面から相対することもせずに、ちらりと視線をあさひに向けて流した。
 言葉にはしていなくとも、はっきりとあさひに向けて拒絶の意思が感じられる。

「そうだよね、そうなるよね……。でも、それでもいいから。だから、私の言葉を聞いてくれますか?」
「……」

 カオルはまた何も言わない。
 カオルが夕美に対して言葉を重ねたのは、義兄との縁を持っているからなのだろう。義兄に近づくな、こちらに干渉するなと釘を刺したかったのだ。
 対して、あさひが見ているのはカオルだけだ。義兄に対しては何の影響力も持っていない。

 あさひに対しては言葉を発する必要がない。カオルが拒絶すればあさひとの縁は勝手に切れる。夕美さえ排除できれば、あさひはカオルにとって恐怖の対象ではあっても脅威とはなり得ない。

 だからこそ、俺はあさひに言葉をかけようと思った。

「……聞くよ、俺がちゃんと聞いてる」
「ケン君……?」

 今ここで俺が夕美と話すことはカオルにとって好ましくないだろう。例えどんな言葉であろうとも。
 カオルが望んでいるのは、夕美からの縁切り宣言だけだ。

 だから俺はあさひに賭けることにした。
 何より、このままあさひに何もしゃべらせずにさよならなんてさせたくもなかった。

「あさひちゃんの言葉は俺が間違いなく聞き遂げる。カオルも、態度はこんなだけど聞いてないなんてことはない。ちゃんと全部聞くから、話してもらえると助かる」
「っ……ありがとう、ございます……っ」

 嗚咽を漏らしかけながらも、あさひは深々と頭を下げた。

「……」

 カオルは何も言わなかった。先ほどまでは頑なにあさひと敵対していたが、感情と不安を一度吐き出したことによって少しは冷静になったのかもしれない。

 あさひがゆっくりと足を動かす。一歩、また一歩と歩みを進めて、やがてカオルの正面に立った。

「……っ」

 無意識なのかもしれないが、カオルがあさひから遠ざかるように体を押し付けてきた。やはりまだ怖いのだろう。
 
 その様子を見て、あさひが少し顔を強張らせた。

「っ、すー……はー……」

 あさひは目を瞑って、小さな肩を上下させながら深呼吸を始めた。
 一回、二回、三回。計四回の呼吸をして、その瞼が開く。

「……私は、カオル君のことが好きです」

 あさひからの告白。
 それを受けたカオルが一瞬だけ、ほんの少しだけ、ピクリと体を反応させた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

【短編集】こども病院の日常

moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。 18歳以下の子供が通う病院、 診療科はたくさんあります。 内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc… ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。 恋愛要素などは一切ありません。 密着病院24時!的な感じです。 人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。 ※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。 歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

処理中です...