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第六夜
強く握りしめる
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「鹿島くんを脅して、逃げ道を奪って。そうやって無理やりにキスさせても、カオルくんが傷つくだけだよ。絶対に後で後悔する。カオルくんもそれはわかってるよね?」
「っ……別に、そんなこと……」
カオルは反論の口火を切ったものの、その先が続かなかった。今のカオルが冷静ではないことなんて、自身でも分かり切っているのだろう。
「それに一度それをしてしまったら、一度でも一方的な関係を築いちゃったら、もう頼らずにはいられなくなるから。好きな人が何でも言うことを聞いてくれるなんて夢みたいな状況、自力じゃ抗えない。外から言われたって簡単には抜け出せない。怖くて、不安で……もう泥沼で、二度と対等な関係には戻れない」
まるで自身が体験してきたかのような語り。夕美にもそのような経験があるのか、それとも感受性が高いのだろうか。見聞きしてきた体験が、夕美の中では実体験に近い形で蓄積されているのかもしれない。
そう思えるほどに夕美の語りには感情が溢れていた。
「……鹿島くんは、きっとカオルくんとの隷属関係も受け入れちゃう。ブラコンだし、キスの先までしちゃってるんでしょ……? 鹿島くんは私の知る限りは常識人だから……カオルくんみたいな子とそういう関係になるってことは、よっぽどってことなんだと思う」
同性、年齢、義兄弟という関係。他者から指摘されると改めてこの異常性を認識させられて、同時にカオルへの思いの大きさが浮き彫りになる。
カオルに求められたからというだけでは、受け入れた理由としてはあまりに足りなすぎる。
「……昨日も言った通りだよ、カオルくん。鹿島くんはカオルくんのことが一番大切なの。そして、その信頼を鈍らせてしまったのが私だから……だから、私はカオルくんを止めないといけないの。カオルくんが鹿島くんを脅迫するなんてことを見過ごすわけにはいかないの」
「……っ、だ、だったら……どうしろって言うの……?」
夕美からカオルに送られた言葉。それは確かにカオルの心に深く刺さって、だからこそカオルは問いを口にした。
弱った心を隠さずに、不安をいっぱいに曝け出して。敵対していた相手に弱々しい言葉を投げかけた。
「この不安はどうすればいいの? もっ、もうっ……無理だよ、今更ケン君を無条件で信じろなんて……そんなの……もうっ……!」
俺からカオルへの愛情がどれだけ大きいのかは夕美が語った通りだ。傍から見ても、それは一目瞭然だろう。
でも、当人のカオルがそれを簡単に信じられないのも当然だ。一度崩された信頼はそう簡単には修復されない。
「……もうっ……もういいよ。二度とケン君に近寄らないで。メールも、通話も、会話も……ずっとふたりきりにしてよ……」
「カオルくん……」
「強制しなければ、それで満足なんでしょ? そうしたら、もうほっといてくれるんだよね……?」
カオルは自棄になっている。心が楽になりたがっているのが見ているだけでわかる。
疲れただろう。ただでさえ人見知りなカオルが、一条姉妹と会話をして、襲われて、俺に裏切られ。もう休みたくて仕方がないのだろう。
でも、ここで終わらせてはいけない気がする。これから先カオルと心中するのなら、カオルとずっとふたりきりで過ごすなら休ませてやるのがいいだろう。
でも、今ようやく希望が見えたんだ。カオルがこの家に縛られない、俺に依存しない未来が見えた気がするんだ。
なんて声をかければいい。わからない。ここでカオルに声をかけなければならないのはわかるが、なんて言えばいいのかがわからない。
俺に疑念を抱いているカオルに、俺はなんて声をかければいい?
「カオル君……」
俺でも夕美でもない。震えた呼びかけ。
夕美が何とか繋ぎ止めた切れかけの縁。それをあさひがしっかりと握っていた。
「っ……別に、そんなこと……」
カオルは反論の口火を切ったものの、その先が続かなかった。今のカオルが冷静ではないことなんて、自身でも分かり切っているのだろう。
「それに一度それをしてしまったら、一度でも一方的な関係を築いちゃったら、もう頼らずにはいられなくなるから。好きな人が何でも言うことを聞いてくれるなんて夢みたいな状況、自力じゃ抗えない。外から言われたって簡単には抜け出せない。怖くて、不安で……もう泥沼で、二度と対等な関係には戻れない」
まるで自身が体験してきたかのような語り。夕美にもそのような経験があるのか、それとも感受性が高いのだろうか。見聞きしてきた体験が、夕美の中では実体験に近い形で蓄積されているのかもしれない。
そう思えるほどに夕美の語りには感情が溢れていた。
「……鹿島くんは、きっとカオルくんとの隷属関係も受け入れちゃう。ブラコンだし、キスの先までしちゃってるんでしょ……? 鹿島くんは私の知る限りは常識人だから……カオルくんみたいな子とそういう関係になるってことは、よっぽどってことなんだと思う」
同性、年齢、義兄弟という関係。他者から指摘されると改めてこの異常性を認識させられて、同時にカオルへの思いの大きさが浮き彫りになる。
カオルに求められたからというだけでは、受け入れた理由としてはあまりに足りなすぎる。
「……昨日も言った通りだよ、カオルくん。鹿島くんはカオルくんのことが一番大切なの。そして、その信頼を鈍らせてしまったのが私だから……だから、私はカオルくんを止めないといけないの。カオルくんが鹿島くんを脅迫するなんてことを見過ごすわけにはいかないの」
「……っ、だ、だったら……どうしろって言うの……?」
夕美からカオルに送られた言葉。それは確かにカオルの心に深く刺さって、だからこそカオルは問いを口にした。
弱った心を隠さずに、不安をいっぱいに曝け出して。敵対していた相手に弱々しい言葉を投げかけた。
「この不安はどうすればいいの? もっ、もうっ……無理だよ、今更ケン君を無条件で信じろなんて……そんなの……もうっ……!」
俺からカオルへの愛情がどれだけ大きいのかは夕美が語った通りだ。傍から見ても、それは一目瞭然だろう。
でも、当人のカオルがそれを簡単に信じられないのも当然だ。一度崩された信頼はそう簡単には修復されない。
「……もうっ……もういいよ。二度とケン君に近寄らないで。メールも、通話も、会話も……ずっとふたりきりにしてよ……」
「カオルくん……」
「強制しなければ、それで満足なんでしょ? そうしたら、もうほっといてくれるんだよね……?」
カオルは自棄になっている。心が楽になりたがっているのが見ているだけでわかる。
疲れただろう。ただでさえ人見知りなカオルが、一条姉妹と会話をして、襲われて、俺に裏切られ。もう休みたくて仕方がないのだろう。
でも、ここで終わらせてはいけない気がする。これから先カオルと心中するのなら、カオルとずっとふたりきりで過ごすなら休ませてやるのがいいだろう。
でも、今ようやく希望が見えたんだ。カオルがこの家に縛られない、俺に依存しない未来が見えた気がするんだ。
なんて声をかければいい。わからない。ここでカオルに声をかけなければならないのはわかるが、なんて言えばいいのかがわからない。
俺に疑念を抱いているカオルに、俺はなんて声をかければいい?
「カオル君……」
俺でも夕美でもない。震えた呼びかけ。
夕美が何とか繋ぎ止めた切れかけの縁。それをあさひがしっかりと握っていた。
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