両腕のない義弟との性事情

papporopueeee

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第六夜

姉妹はリビングにて

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「紅茶飲む?」
「いいの? 勝手に」
「いいのいいの。元々この紅茶は私からのお土産だし、お湯を沸かすだけだから」

 そう言うと姉はキッチンを我が物顔で使用してお湯を沸かし始めた。まだ飲むとも答えていないのに。自分が飲みたいだけなのかもしれない。

「……お姉ちゃん、鹿島さんのこと好きだったんだね」

 リビングのテーブル。四人でプリンを食べた時と同じ席に座りながら、私は気になっていたことを口にした。

「うん。元彼なの、あの人」
「えっ、そうなの⁉︎」
「今年のまだ暑くなる前ぐらいにフラれたんだけどね。それからずっと引きずってたの。あっ、ずっと引きずってたことはあのふたりには内緒ね? バレちゃってるかもしれないけど、なるべく余計な気は使わせたくないから」
「うん……。でも、ちょっと意外。お姉ちゃんでもフラれることあるんだね」

 姉は妹の私から見ても器量が良くて、性格も明るい、人を惹きつける女性だ。それでも別れ話をされるなんて、恋愛はなんて難しいのだろう。

「カオルくんが介護が必要になって、それに集中したいからって……。最初は私に頼ってくれるのかなって思ったのに、まさか別れ話されるなんて思わなかったよ!」
「ショックだった?」
「そりゃもう! ……でも、そこで食い下がれなかったのはダメだったかな。鹿島くんの顔がとっても真剣で、私にはこんな目をしてくれたことあったかなって……なんか……私は義弟くんに負けたんだなって思っちゃって……」

 あははっ、と姉の少し乾いた笑いが部屋の中に響いた。
 姉としては笑い話のつもりなのか、それとも笑い話にしてしまいたいのか。妹としては少し触れづらくて、私は話題を変えることにした。

「……そういえば、私お姉ちゃんのこと庇ったんだけど。怒ってるカオル君に向かって、お姉ちゃんは悪くないって、私のためにしてくれただけなんだって」
「うん、あさひは優しいなーって後ろで感激してた」
「でも、実際はお姉ちゃんは鹿島さんに迫ってたんだよね?」
「……ごめんね?」

 姉がテヘッと舌を出して自身の頭を小突いた。

「もうー! あの時私がどんな気持ちだったかわかる⁉︎」
「うん……正直なこと言うと、あさひが庇ってくれた瞬間に、ヤバって思ってた」
「お姉ちゃんのこと信じてたのに! 子供を追いやって無理やりキスするとかビッチじゃん!」
「ちっ、違うんだよ? ふたりっきりにしたのは本当にあさひのためで、鹿島くんに迫っちゃったのは、つい感情を抑えきれなくなっちゃっただけで……ほ、ほら、そもそもあさひ達が同じ家にいるのにセックスなんてできないでしょ? それなのにキスしちゃうってことは突発的な事故って証明だよ!」
「セ、セックスなんてはっきり言わないでよ!」
「あさひがビッチなんて言うからだよ⁉︎」

 ぜーはー、と互いの息切れの声に混じって、お湯の沸いた音が鳴り響いた。
 続いてトポトポとお湯の注がれる音が鳴って、爽やかな茶葉の香りが舞い上がった。

「……まあ、このお茶で仲直りってことでどう?」
「……そもそも怒ってないもん」
「そう? でも……ごめんね」
「いいよ。許したげる」

 なんだか少し照れ臭くて、差し出されたばかりの紅茶に口をつけた。まだ熱くて味も薄い紅茶は口に含むと勝手に眉間にシワが寄ってしまって、姉も同じような表情をしていた。

 姉も私の視線に気づいて、お互いの顔を見合って、小さな笑い声が漏れた。
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