112 / 114
後日夜
義弟
しおりを挟む
「一条さんとチューしてない?」
「うおっ! なんだ、起きてたのか……びっくりした」
一条との酒盛りを終えて寝室に戻ると、突然カオルに声をかけられた。酩酊気味の状態での不意打ちは体に悪すぎる。
「その驚き具合……怪しい」
「してないしてない。一条がすると思うか?」
「うん」
即答だ。カオルとは仲良くなったらしいが、まだまだ信用は勝ち取れていないようだ。もしくは、これくらいの冗談を言える位には気を許してるのだろうか。
「ま、あいつは前科持ちだからな。仕方ないか」
「……確かめるから、こっち来て」
「確かめるって、どうやってだよ」
「いいから!」
「やれやれ」
促されるままにカオルのベッドに入り込む。すでにカオルの体温で温まった布団は何とも心地が良い。
「……お酒臭い」
「あー、結構飲んだからな。出て行くか?」
「いい。それより、もっと近づいて」
「こうか?」
「もっと! ぎゅーって抱きしめて」
カオルが言うままにその小さな体を抱え込む。
柔らかい布団と柔らかいカオル。暖かい掛け布団と暖かいカオル。酔った頭と抱き心地の良いカオル。
急激に眠くなってきた。
「うん、それじゃあケン君」
「……」
「ケン君?」
「……」
「……あぐっ!」
「っ!? イッテェ!」
落ちかけた意識が鋭い痛みによって急激に覚醒する。どうやらカオルが肩に噛みついたようだ。
「次勝手に寝たら……そうだなー、見えるところにキスマーク作っちゃお♪」
「あっ、ああ、悪かった。もう寝ないから……で、何だって?」
「じゃあ、オレが質問するから、全部に肯定で返してね」
どうやら、よくある嘘発見器の真似事がしたいようだ。くっついたのは心音を聴くためなのだろう。
「おう、わかった」
「それじゃあ……あなたはこのロッジの中で一条さんとキスをしましたか?」
「……」
今、俺の心音はカオルに聴かれている。同時に、カオルの心音が俺の体内へと流れ込んできている。
口ぶりでは冗談めかしていたものの、ほんとは不安だったようだ。カオルの鼓動がそれを教えてくれた。
「してないよ。一条とキスしてない。だから安心しろ」
「っ、ちょっと、肯定してって言ったでしょ!」
「ん……そうだったか?」
「もう~、これだから酔っ払いは!」
楽しげな口調と、安らかな心音。ルールは間違えてしまったようだが、結果的にはよかったみたいだ。
「じゃあ次の質問ね」
「まだするのか?」
「ケン君はあさひちゃんとふたりきりの時はなにを話していましたか?」
「……それ、肯定するだけじゃ答えられなくないか?」
「いいから、教えて!」
一条にも同じことを訊かれたが、なぜこんなにもあさひとの会話を知りたがるのだろうか。何を話していたのか想像できないからだろうか。
「えーっと……カオルの話をしてたな」
「オレの?」
「あさひちゃん、カオルと友達になれてよかったって言ってたぞ」
「……ふーん」
カオルの反応は満更でもなさそうだ。カオルもあさひのことを少なからず大事に感じているのだろう。
「確か、カオルは特別な友達だって言ってたかな……。カオルもそう思うか?」
「まあ、そうだね……。あんなに素を見せちゃった相手だから、気楽に付き合えるのは嬉しいかな」
「そうか……。良かったな」
「なんで撫でるの?」
撫でようと思って撫でたわけでは無かった。ただ、気づいたらカオルを抱え込んでその頭をわしゃわしゃと撫でつけていたのだ。
「嬉しいからだよ。カオルに仲のいい友達ができるのが嬉しいんだ、俺は」
「……やっぱり酔っ払ってるね、ケン君」
「まあな。久しぶりに結構飲んだからな」
「それじゃあ、そのお酒を飲んでる時にはどんな話をしてたの?」
「なんだ、全部知りたがるじゃないか」
「うん、ケン君のことには何だって興味があるよ」
「そうだなー。色々話したけど、カオルの話をしてたなー」
「また!? どれだけオレの話してるの!?」
自分でも思ったが、そうなってしまうのも仕方ないだろう。3人の全員がカオルに特別な感情を抱いているのだ。むしろ話題がカオルに寄るのが自然というものだ。
「一条は、カオルに幸せになってほしいってさ」
「それは、いっつも言われるから知ってるけど……」
「じゃあもっと優しくしてやれよ」
「だってあの人、わがまま言う方が嬉しそうにするんだもん」
それは、わがままがカオルからの親愛の証だからなのだろう。一条もそれはわかっていたらしい。
「そうか。じゃあ仕方ないな」
「でも、明日の朝にお礼は言っておくよ」
「うん、それがいいな……。なあ、カオル」
「なに?」
「幸せか?」
「……どうしたの? 急に?」
「あさひちゃんは、カオルと一緒にいられて幸せだって言ってた。一条も、俺たちと一緒にいられて幸せだって言ってた」
「……」
この四人は、全員が告白してるか、もしくはされている。そんな一見危うげな関係の中でも、一条姉妹は幸せだと語ってくれていた。
「たまに思うんだ。カオルは本当にこれでいいのかって……。俺はやっぱり何か間違えたんじゃないかって。もしかしたら、カオルはまた何かを我慢してるんじゃ――」
「幸せだよ」
それは俺の心臓に直接語りかけるような声だった。
アルコールで高鳴っている心臓が、カオルの声で震えたような感覚があった。
「元々、オレが好きになったのは義兄として接してくれるケン君だったから。何にもできなくなっちゃったオレに、家族として優しくしてくれるケン君を、オレは好きになったんだ。だから、恋人にはしてもらえなかったけど、こうやって同じように接してくれるなら……幸せに決まってるじゃん」
「……何にもできなくなんかないだろ」
「それは言葉のあやだから。本気で気に病んでるわけじゃないから安心して」
「ん、そうか……」
「それに、ケン君にはこういうことしてあげられるし?」
「うっ」
カオルの足がすりすりと股間に忍び寄ってくる。
「さっきからずっと大きくしててさ。もしかして誘ってるのかなって思ってたんだけど?」
「いや、アルコールが入ってるからどうにも血の巡りが良くてな。別にそういう気分なわけじゃないんだ」
「ふーん? でも、大きくなっちゃってるのは変わらないよね。こんなちょっと触ってるだけでビクビクしちゃうくらいに敏感な状態で♡」
酔っ払った体はカオルの言う通りに快感に対して敏感で、加えて頭まで理性のタガが外れかけてきていた。
「オレのもしてくれるなら、ケン君にもしてあげよっかなー?」
「……うっ……くっ……」
「冗談だよ。ふたりがいるロッジで無理やりさせたりなんてしないから……あ、でももし本当に辛かったら手伝うのは全然嫌じゃ――」
「カオル」
「え? んぅっ!?」
これは、もしかしたら未成年飲酒に当たるのだろうか。飲酒者の呼気に含まれるアルコールが、未成年にどれほどの影響があるのかなんて知らないが。
そんなことを心配しなくとも、未成年に手を出している時点で問題か。
「え? ……え?」
カオルは狼狽えていた。こんなこと、初めてだろう。これから先も、多分ないだろう。
「俺、酔っ払ってるからさ……。声だけは、抑えてくれよな?」
「えっ? ほ、ほんとに……? け、ケン君、ほんとにするの……っ!?」
抵抗を見せていたカオルが、段々とその力を抜いていく。されるがままに、行為を受け入れて艶やかな声を漏らし始める。
全部酒のせいだ、なんて言葉はカオルに対して失礼だろうか。
それでも、酒のせいにしてしまいたい気分なのだ。
カオルは義弟だ。そう宣言したのは俺だし、カオルもそれを受け入れて呑み込んでくれた。今もその思いは変わっていない。
だけど、今だけは。この夜だけは。
どうか目を瞑ってはもらえないだろうか。
「うおっ! なんだ、起きてたのか……びっくりした」
一条との酒盛りを終えて寝室に戻ると、突然カオルに声をかけられた。酩酊気味の状態での不意打ちは体に悪すぎる。
「その驚き具合……怪しい」
「してないしてない。一条がすると思うか?」
「うん」
即答だ。カオルとは仲良くなったらしいが、まだまだ信用は勝ち取れていないようだ。もしくは、これくらいの冗談を言える位には気を許してるのだろうか。
「ま、あいつは前科持ちだからな。仕方ないか」
「……確かめるから、こっち来て」
「確かめるって、どうやってだよ」
「いいから!」
「やれやれ」
促されるままにカオルのベッドに入り込む。すでにカオルの体温で温まった布団は何とも心地が良い。
「……お酒臭い」
「あー、結構飲んだからな。出て行くか?」
「いい。それより、もっと近づいて」
「こうか?」
「もっと! ぎゅーって抱きしめて」
カオルが言うままにその小さな体を抱え込む。
柔らかい布団と柔らかいカオル。暖かい掛け布団と暖かいカオル。酔った頭と抱き心地の良いカオル。
急激に眠くなってきた。
「うん、それじゃあケン君」
「……」
「ケン君?」
「……」
「……あぐっ!」
「っ!? イッテェ!」
落ちかけた意識が鋭い痛みによって急激に覚醒する。どうやらカオルが肩に噛みついたようだ。
「次勝手に寝たら……そうだなー、見えるところにキスマーク作っちゃお♪」
「あっ、ああ、悪かった。もう寝ないから……で、何だって?」
「じゃあ、オレが質問するから、全部に肯定で返してね」
どうやら、よくある嘘発見器の真似事がしたいようだ。くっついたのは心音を聴くためなのだろう。
「おう、わかった」
「それじゃあ……あなたはこのロッジの中で一条さんとキスをしましたか?」
「……」
今、俺の心音はカオルに聴かれている。同時に、カオルの心音が俺の体内へと流れ込んできている。
口ぶりでは冗談めかしていたものの、ほんとは不安だったようだ。カオルの鼓動がそれを教えてくれた。
「してないよ。一条とキスしてない。だから安心しろ」
「っ、ちょっと、肯定してって言ったでしょ!」
「ん……そうだったか?」
「もう~、これだから酔っ払いは!」
楽しげな口調と、安らかな心音。ルールは間違えてしまったようだが、結果的にはよかったみたいだ。
「じゃあ次の質問ね」
「まだするのか?」
「ケン君はあさひちゃんとふたりきりの時はなにを話していましたか?」
「……それ、肯定するだけじゃ答えられなくないか?」
「いいから、教えて!」
一条にも同じことを訊かれたが、なぜこんなにもあさひとの会話を知りたがるのだろうか。何を話していたのか想像できないからだろうか。
「えーっと……カオルの話をしてたな」
「オレの?」
「あさひちゃん、カオルと友達になれてよかったって言ってたぞ」
「……ふーん」
カオルの反応は満更でもなさそうだ。カオルもあさひのことを少なからず大事に感じているのだろう。
「確か、カオルは特別な友達だって言ってたかな……。カオルもそう思うか?」
「まあ、そうだね……。あんなに素を見せちゃった相手だから、気楽に付き合えるのは嬉しいかな」
「そうか……。良かったな」
「なんで撫でるの?」
撫でようと思って撫でたわけでは無かった。ただ、気づいたらカオルを抱え込んでその頭をわしゃわしゃと撫でつけていたのだ。
「嬉しいからだよ。カオルに仲のいい友達ができるのが嬉しいんだ、俺は」
「……やっぱり酔っ払ってるね、ケン君」
「まあな。久しぶりに結構飲んだからな」
「それじゃあ、そのお酒を飲んでる時にはどんな話をしてたの?」
「なんだ、全部知りたがるじゃないか」
「うん、ケン君のことには何だって興味があるよ」
「そうだなー。色々話したけど、カオルの話をしてたなー」
「また!? どれだけオレの話してるの!?」
自分でも思ったが、そうなってしまうのも仕方ないだろう。3人の全員がカオルに特別な感情を抱いているのだ。むしろ話題がカオルに寄るのが自然というものだ。
「一条は、カオルに幸せになってほしいってさ」
「それは、いっつも言われるから知ってるけど……」
「じゃあもっと優しくしてやれよ」
「だってあの人、わがまま言う方が嬉しそうにするんだもん」
それは、わがままがカオルからの親愛の証だからなのだろう。一条もそれはわかっていたらしい。
「そうか。じゃあ仕方ないな」
「でも、明日の朝にお礼は言っておくよ」
「うん、それがいいな……。なあ、カオル」
「なに?」
「幸せか?」
「……どうしたの? 急に?」
「あさひちゃんは、カオルと一緒にいられて幸せだって言ってた。一条も、俺たちと一緒にいられて幸せだって言ってた」
「……」
この四人は、全員が告白してるか、もしくはされている。そんな一見危うげな関係の中でも、一条姉妹は幸せだと語ってくれていた。
「たまに思うんだ。カオルは本当にこれでいいのかって……。俺はやっぱり何か間違えたんじゃないかって。もしかしたら、カオルはまた何かを我慢してるんじゃ――」
「幸せだよ」
それは俺の心臓に直接語りかけるような声だった。
アルコールで高鳴っている心臓が、カオルの声で震えたような感覚があった。
「元々、オレが好きになったのは義兄として接してくれるケン君だったから。何にもできなくなっちゃったオレに、家族として優しくしてくれるケン君を、オレは好きになったんだ。だから、恋人にはしてもらえなかったけど、こうやって同じように接してくれるなら……幸せに決まってるじゃん」
「……何にもできなくなんかないだろ」
「それは言葉のあやだから。本気で気に病んでるわけじゃないから安心して」
「ん、そうか……」
「それに、ケン君にはこういうことしてあげられるし?」
「うっ」
カオルの足がすりすりと股間に忍び寄ってくる。
「さっきからずっと大きくしててさ。もしかして誘ってるのかなって思ってたんだけど?」
「いや、アルコールが入ってるからどうにも血の巡りが良くてな。別にそういう気分なわけじゃないんだ」
「ふーん? でも、大きくなっちゃってるのは変わらないよね。こんなちょっと触ってるだけでビクビクしちゃうくらいに敏感な状態で♡」
酔っ払った体はカオルの言う通りに快感に対して敏感で、加えて頭まで理性のタガが外れかけてきていた。
「オレのもしてくれるなら、ケン君にもしてあげよっかなー?」
「……うっ……くっ……」
「冗談だよ。ふたりがいるロッジで無理やりさせたりなんてしないから……あ、でももし本当に辛かったら手伝うのは全然嫌じゃ――」
「カオル」
「え? んぅっ!?」
これは、もしかしたら未成年飲酒に当たるのだろうか。飲酒者の呼気に含まれるアルコールが、未成年にどれほどの影響があるのかなんて知らないが。
そんなことを心配しなくとも、未成年に手を出している時点で問題か。
「え? ……え?」
カオルは狼狽えていた。こんなこと、初めてだろう。これから先も、多分ないだろう。
「俺、酔っ払ってるからさ……。声だけは、抑えてくれよな?」
「えっ? ほ、ほんとに……? け、ケン君、ほんとにするの……っ!?」
抵抗を見せていたカオルが、段々とその力を抜いていく。されるがままに、行為を受け入れて艶やかな声を漏らし始める。
全部酒のせいだ、なんて言葉はカオルに対して失礼だろうか。
それでも、酒のせいにしてしまいたい気分なのだ。
カオルは義弟だ。そう宣言したのは俺だし、カオルもそれを受け入れて呑み込んでくれた。今もその思いは変わっていない。
だけど、今だけは。この夜だけは。
どうか目を瞑ってはもらえないだろうか。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
【短編集】こども病院の日常
moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。
18歳以下の子供が通う病院、
診療科はたくさんあります。
内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc…
ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。
恋愛要素などは一切ありません。
密着病院24時!的な感じです。
人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。
※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。
歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる