113 / 114
番外編 ~せっかくのクリスマスなので楽しい話を編~
義兄弟はクリスマスの話をする
しおりを挟む
クリスマス。恋人と甘い夜を過ごす者もいれば、友人同士で騒ぐ者もいれば、家族団欒で過ごす者もいる。
今年の俺の選択肢は当然として家族団欒となるのだが、今年は初めてカオルと過ごすクリスマスだ。
しかし、そんな俺は1つの問題を抱えていた。
「あのケーキ美味しそう……」
「あれにするか?」
「んー……でも、他のも美味しそうだし……」
クリスマス目前の視聴者に向けて特集されたクリスマスケーキ紹介番組。カオルは俺に寄り掛かりながらテレビ画面に食い入って、当日のケーキを絶賛物色中だ。
「チョコ……でも、単純な甘さだったら……あ、ブッシュドノエルも……アイスケーキもあるんだ……」
「1つだけだからな」
「……おねだりしたら?」
きゅるっとした瞳を向けながらカオルが俺の顔を見上げてくる。
「増えないぞ」
「え~~っ!」
「ケーキは普通1つだろ」
「ね~、ケンく~ん……おねがい」
カオルが猫撫で声で擦り寄りながら甘えてきた。
ここでケーキの追加を許せばカオルは喜ぶのだろう。無邪気にありがとうと言ってくるのだろう。カオルの笑顔を見たい気持ちはあるが、俺は保護者だ。世の親御さんたちと同じように、ここは負けてはならない。
「ダメったらダメだ。あんまり文句言うとケーキ買ってやらないからな」
「ちぇーっ」
悪態をつきつつもカオルは嬉しそうだ。わがままを咎められることもカオルは楽しいのだろう。ダメで元々のおねだりということだ。
そして万が一にも要望が通ればケーキが増えて万々歳。なんとも身勝手だが、子供らしくて愛らしくもある。
「あー、でも楽しみだなークリスマス。ケーキもあるし、その後には……♪」
そう、クリスマスと言えばケーキだけではない。その後、つまりプレゼントだ。俺が抱えている問題とは、カオルへのクリスマスプレゼントなのだ。
子供にとってのクリスマスとは、誕生日と並び一年で最も重要なイベントだろう。なんといっても欲しい物が手に入るのだ。正直、ごちそうやケーキなど子供にとっては二の次だろう。俺がそうだった。
ここでの問題とはカオルに何をプレゼントするかではない。それはカオルに直接訊けばいい。
問題は、カオルに何が欲しいかを訊いてもよいのかどうか。つまり、カオルがサンタさんを信じているのかどうかだ。
「ねー、ケンくーん♪」
「んっ、な、なんだ?」
「クリスマス楽しみだなーって♪」
「あっ、ああ、そうだな……俺も楽しみだ」
「ねー……♪」
カオルくらいの年であれば、十中八九サンタを信じていないだろう。その正体が親であることは知っているはずだ。しかし万が一ということもある。俺はカオルを幼少期から知っているわけではない。カオルが去年までのクリスマスをどう過ごしていたのかは知らない。
カオルの母親、コウさんはカオルとどのようなクリスマスを過ごしていたのだろうか。コウさんとカオルのクリスマスを再現するのは難しいけれど、それでもその思いを尊重したいという気持ちはある。
もしも、コウさんがずっとサンタを演じ続けてきたのなら俺も――
「そういえば、ケン君ってクリスマスプレゼントは何くれるの?」
「……」
「……えっ、もしかしてくれないの?」
「いや、そんなことはない。もちろんプレゼントはある。ただ……」
「ただ?」
「カオルはサンタさんを信じてなかったんだな……」
「は? ……ケン君、オレのことなんだと思ってるの?」
確かに、俺はカオルに対して過保護なきらいがある。それは認めて、重く受け止めなければならないだろう。
今年の俺の選択肢は当然として家族団欒となるのだが、今年は初めてカオルと過ごすクリスマスだ。
しかし、そんな俺は1つの問題を抱えていた。
「あのケーキ美味しそう……」
「あれにするか?」
「んー……でも、他のも美味しそうだし……」
クリスマス目前の視聴者に向けて特集されたクリスマスケーキ紹介番組。カオルは俺に寄り掛かりながらテレビ画面に食い入って、当日のケーキを絶賛物色中だ。
「チョコ……でも、単純な甘さだったら……あ、ブッシュドノエルも……アイスケーキもあるんだ……」
「1つだけだからな」
「……おねだりしたら?」
きゅるっとした瞳を向けながらカオルが俺の顔を見上げてくる。
「増えないぞ」
「え~~っ!」
「ケーキは普通1つだろ」
「ね~、ケンく~ん……おねがい」
カオルが猫撫で声で擦り寄りながら甘えてきた。
ここでケーキの追加を許せばカオルは喜ぶのだろう。無邪気にありがとうと言ってくるのだろう。カオルの笑顔を見たい気持ちはあるが、俺は保護者だ。世の親御さんたちと同じように、ここは負けてはならない。
「ダメったらダメだ。あんまり文句言うとケーキ買ってやらないからな」
「ちぇーっ」
悪態をつきつつもカオルは嬉しそうだ。わがままを咎められることもカオルは楽しいのだろう。ダメで元々のおねだりということだ。
そして万が一にも要望が通ればケーキが増えて万々歳。なんとも身勝手だが、子供らしくて愛らしくもある。
「あー、でも楽しみだなークリスマス。ケーキもあるし、その後には……♪」
そう、クリスマスと言えばケーキだけではない。その後、つまりプレゼントだ。俺が抱えている問題とは、カオルへのクリスマスプレゼントなのだ。
子供にとってのクリスマスとは、誕生日と並び一年で最も重要なイベントだろう。なんといっても欲しい物が手に入るのだ。正直、ごちそうやケーキなど子供にとっては二の次だろう。俺がそうだった。
ここでの問題とはカオルに何をプレゼントするかではない。それはカオルに直接訊けばいい。
問題は、カオルに何が欲しいかを訊いてもよいのかどうか。つまり、カオルがサンタさんを信じているのかどうかだ。
「ねー、ケンくーん♪」
「んっ、な、なんだ?」
「クリスマス楽しみだなーって♪」
「あっ、ああ、そうだな……俺も楽しみだ」
「ねー……♪」
カオルくらいの年であれば、十中八九サンタを信じていないだろう。その正体が親であることは知っているはずだ。しかし万が一ということもある。俺はカオルを幼少期から知っているわけではない。カオルが去年までのクリスマスをどう過ごしていたのかは知らない。
カオルの母親、コウさんはカオルとどのようなクリスマスを過ごしていたのだろうか。コウさんとカオルのクリスマスを再現するのは難しいけれど、それでもその思いを尊重したいという気持ちはある。
もしも、コウさんがずっとサンタを演じ続けてきたのなら俺も――
「そういえば、ケン君ってクリスマスプレゼントは何くれるの?」
「……」
「……えっ、もしかしてくれないの?」
「いや、そんなことはない。もちろんプレゼントはある。ただ……」
「ただ?」
「カオルはサンタさんを信じてなかったんだな……」
「は? ……ケン君、オレのことなんだと思ってるの?」
確かに、俺はカオルに対して過保護なきらいがある。それは認めて、重く受け止めなければならないだろう。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
【短編集】こども病院の日常
moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。
18歳以下の子供が通う病院、
診療科はたくさんあります。
内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc…
ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。
恋愛要素などは一切ありません。
密着病院24時!的な感じです。
人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。
※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。
歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる