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対価ですか…?

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あれから何週間か経ち、ついに舞踏会当日が来た


紫のパステルカラーをした、オフショル型のふんわりドレスに、後ろの腰部分には大きなリボン
胸元部分には軽くキラキラしたものが散りばめられている

肩出しと胸空きの凄い露出だ…
前世じゃドレスなんて着た事ないけど、自分の体型に合わせて作られてるから凄く着心地よくて動きやすい
今ならダンスも踊れそうな気がする!

でも、次にヘアメイクに入った時はかなりドンフリーさんと揉めた

絶対嫌だって言ったんだけど、私の腕を信じなさいとか言われて、眼鏡も取られ、綺麗な髪飾りで編み込みハーフアップに、前髪も両サイドで緩く巻かれてしまった

メイクも前世では前髪で隠れてたから、リップぐらいしかぬった事なかったけど…
途中チラッと鏡に映った自分を見て、いつもより見れるというか、数段マシになっている気がした

流石オーナーのドンフリーさん、魔法の手みたい


「私の最高傑作よ…」


仕上がると、ドンフリーさんと見に来たパパ達も私の隣で、綺麗だ、こんなに成長して…
なんて言って涙を拭っている

ただの身内贔屓なのは分かってるけど、なんだか照れくさい

パパ達は仕事があるので、見るとすぐに行ってしまった

しばらくしてサミュエルさんが馬車で迎えに来たようで、ドンフリーさんと一緒にお店から出て行くと…


「マナさ……」


どうしたんだろ…?
私を見るなり、サミュエルさんがずっと口に手を当てたまま固まっている

しばらくしてやっと動き始めたと思ったら…


「今日の舞踏会に行くのはやめて、このまま私の屋敷に行きましょう」

「へ…?」

「サミュエルちゃんったら何血迷ったこと言ってんのよ!
せっかく私がここまで仕上げたのに、行かないなんて許さないわよ!」


そりゃそうだ
ここまでしてもらったのに、行かないなんてあんまりな話だ


「わ、私は今何を…」


そのままよろけてしまい、馬車に頭をぶつけるサミュエルさん
よっぽど恥ずかしかったのか、顔を隠しながらさっさと馬車の中に入ってしまった

せっかく今日はタキシードを着ていていつも以上にかっこいいのに、なんだか変なサミュエルさん


「ちょっと、あんたにこれあげとくわ」


いきなりドンフリーさんに渡されたのは小さい小瓶だ
中には何かがくるまっている様な、白い包み紙が10個ぐらい入っていた


「な、なんですか…これ?」

「避妊薬よ」

「なっ…!?」


ななななんで避妊薬!?


「舞踏会は色んな人が集まるけど、圧倒的に女性の比率が少ないから男だらけだし、貴族の中でもただヤりたいだけの目的で来るクソ野郎もいるの
お酒やら舞踏会の雰囲気に酔っちゃって、やらかしちゃいましたなんて事もあるわ!
今日のあんたは間違いなく主役級の可愛いさを兼ね備えてるし、いつ何処で襲われてもおかしくないからあげとくわよ」

「いやいや、私が襲われるなんてありえませんって!?」

「ここまで鈍いともはやおバカちゃんね…
さっきのサミュエルちゃんの反応見て分からないの!?
いいから万が一の場合に持ってなさい!」  


簡単な薬の説明だけされて強引に持たされ、その後すぐに馬車に押し込まれた



「あ、あの…
サミュエルさん、近くないですか…?」


馬車が出発してから、向かい側に座っていたサミュエルさんが何故か私の隣に移動してきた

それにこっちを見ながらどんどん寄ってくるから、めちゃくちゃ角に追いやられてるんですが!?


「マナさん、こっち向いて下さい」


振り向くと、サミュエルさんがいきなり覆い被さってきた


「さ、サミュエルさん!?」


私が1人であわあわしていると…


「私が女性に宝飾品を贈るのは初めてです」

「へ…?」


離れたサミュエルさんの視線の先を見ると、いつの間にか私の首元に、綺麗な紫水晶アメシストが嵌め込まれたシンプルなネックレスがつけられていた


「こ、これ…」

「私の瞳や髪と似た色です
マナさんの今日のドレスにも合うと思ったので選びました」

「ドレス一式も用意してもらったのに、流石にこんなアクセサリーまでもらえません!?」


私がネックレスを外そうとすると…


「それならこれで帳消しにしますよ」

「んぅっ!?」


突然サミュエルさんの方に顔を向かされ、唇を奪われた

軽いキスですぐに離してくれたけど、びっくりしすぎて口をパクパクせる事しかできない


「な…なにして…」

「マナさんが外そうとするから、外さなくて良いように対価をもらっただけです」


た、対価って…キスが!?
サミュエルさんの言ってる事が全然理解できない


「あ…紅が…」


どうやらさっきのキスで、ピンクの紅がサミュエルさんにもついてしまっていた
  
私の指摘で気づいたのか、舌でペロッと舐めあげるサミュエルさん

な、なんか無駄に大人の色気がある気が…

サミュエルさんから目が離せなくて、じーっと見ていると


「マナさん、これでも私も相当抑えているんですよ?
あまり可愛い顔して見つめないで下さい」

「なっ!?」


か、可愛いって…
言われなれてない言葉にボンッと顔が赤くなる



馬車の中は熱が籠ったまま、お城まで走って行った























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