VR MMO中毒者兼不登校だった僕が『クラス転移』に巻き込まれたが異世界で知識無双する

瀬雨

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クラス転移

クラス転移~ホームルーム~

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山間部独特の臭いが鼻に直接入ってくる。
換気のために開けていた窓から聞いたことのない鳥のさえずりや獣の鳴き声がかすかだが耳に伝わってくる。
数秒前まで授業をしていた教室の僕の机は相変わらずでこぼこしていて手触りは良いとは言えない。
五感からから伝わってくる情報すべてがこの異常さを伝えてくれる。
ただ、周りの声はぼんやりと響くばかりで耳に通ってすらいない。
「夢に向かって一歩踏み出そう!」
そんな生き生きとした内容と文字で大きな模造紙に書かれたクラス目標が嫌に視界に入ってきた。
僕は立ち上がった。

「一歩踏み出せ....」

その言葉を自ら言い聞かせるように唱えた。
思えばこの瞬間から僕の人生に変化が訪れたのかもしれない。



【二時間前】

朝起きて、カーテン開けて、日の光を浴びて、朝食を食べて、学校に行く。
そんな生活習慣は望んじゃいない、というかできない。

まず最初からできていない、朝起きてない、というか寝てない。
『不登校に夢を見るな。』

そんなことを父親に言われたときにはまぁ、それは落ち込んだものだが。
「不登校でも夢は見れますヨッ。」

自分の視界に映し出されたモンスターを倒していく。
そんな世界が夢じゃないなんて言ったら笑われてしまう。
某テーマパークも金で夢を買える、それと同じ。

近年、急速にVR技術が進歩しあらゆる場所や用途で使われることが多くなった。当然、その波はゲーム界にも押し寄せ、急速にゲーム文化が次の段階へと移行していった。
手持ちのゲーム機や、PCゲームとは次元が違うプレイ体験。
さすがにまだ、ゲーム内の五感を忠実に再現することはできないが自分の体のようにキャラクターを操作することができる。

当然ハマる。
これのせいでゲーム依存者が増え、不登校児が増えた。
これがすべての原因とは言わないがまぁ…あとは想像にお任せするとしよう。

「眠れねぇ(幸せ(笑))...」

この幸福な体験をまだ経ていない父親や、多数の現実論者の方々がいるのである。
「実に悲しいことだね。」(※個人の意見です。幸せは人それぞれ(※個人の...))

まぁ、そんなことはいいとして。
存分にゲームを楽しもうじゃないか。

『ブンっ』

聞き慣れないシステム音が唐突に鳴り響く。

『本日PM9時(US サーバー時間)まで緊急メンテナンスを行います。』

画面に突如現れた全プレイヤー同時告知用のシステムメール。

「母さん、僕学校行くわ、」

不登校の息子が朝に降りてきて何を言い出すかと思えば、と言ったところだろう。
母さんはほっとしたように口元を緩ませて「分かったわ。」と言って朝食を作ってくれた。父さんは牛乳くれた。
「父さんの飲みかけじゃん。」
「やってない身体測定までに身長伸ばしとけよ、」と笑いながら何処かうれしそうに言い放って玄関を出て会社に向かった。
飲みかけの牛乳は嬉しくないけど。

つくづく思う、俺に足りないのは少しの勇気ときっかけだということ。
それだけで変われるということ。
そして、そんなものが満ちているのなら今頃苦労していないということも。


クラスメイトは意外とやんわり受け入れてくれた。
担任には母から連絡が来ていたらしい。
「よく、来てくれた!」と強すぎる力で背中をたたかれた。悪くない、悪くない。
そう思えた。

心の水面で。


2時限目終了のチャイムが鳴り響く。
授業が終わった瞬間に教室の空気が軽くなっていく感覚は昔から好きだ。

解放された気分になれる。
そして、授業の雰囲気という見えない手錠と首元の鎖が外された生徒たちは明るい表情でそれぞれ動き出す。
こういうときに「あぁ、群れの中にいるんだ。」とか思ってスカしてる自分に恥ずかしくなってみたり。
歯車の一部になれている自覚の表れでもあるのだろうけど。
親しい友人はいないが。

『キイィィィィィィンンン!!!!』

何の前触れもなく耳に突然襲いかかったその高音は本当に一瞬のことであった。

『どぉぉぉぉぉンンン!!!!!!』

学校全体が揺れる、と言うより落ちるといった方が正しい表現になるだろう。
生徒の悲鳴が学校の至る所で響き渡る。

衝撃で体が一瞬浮き上がり、ものすごい勢いで地面にたたきつけられる。
強い襲撃で意識がもうろうとした。
追い打ちをかけるように体の上に誰かの学生鞄がのしかかってきた。
「ぐっ、...!!」

叩き落とされるような衝撃による痛みに耐えながら、周囲を確認する。
机といすが散乱しており、後ろの棚が見るも無惨な状態になっていた。
幸い耐震工事や固定器具をつけているので大きなものが落ちていたり、学校が崩れていたりしていることは今のところ無い。

唯一といえる大きな外的変化に気づいたのは窓際にいた生徒たちだ。
普段、窓から見えている住宅街は痕跡すらなく、一面森林に埋め尽くされている。
戸惑いではなくまず率直な疑問。

何処なのか。
外では聞いたことのない生き物の鳴き声が響き渡っていた。


【現在】
騒動から少し時間がたち、先生たちが状況確認をしていた。
一階がつぶれていた。人が死んだ。特に職員室にいた教員や保険医の先生は生存の確率が低いそうだ。
その事実が平和ぼけした人間の脳には負荷がかかりすぎたみたいだ。みんな呆然としている。教師ですらも。
人は死ぬ、そう。そうだ。
でも、、、、

みんな泣いていた。
この状況に恐怖し、人が死んだという事実を受け止めきれず、これからの不安という感情にそそのかされた絶望は隠しきれないほど学校全体に表面化していた。
ただ、やっぱり人は強い。
すぐにがれきから遺体を運び出し、供養した。
男性教員が森林を散策したが特に危ない動物は見当たらないそうだ。
僕はと言うと猛烈に違和感を感じていた。

初めて来たような感覚では無かった。

いや、むしろここが居心地の良い場所として体が認識していた。
動物の鳴き声も聞いたことが無い。
なんてことは無い。
確かに地球では聞いたことが無い。地球では、

その違和感と憶測が当たることを僕は恐れた。




【クラス転移より少し前】
大森林付近を調査中の騎士団の報告書。

[報告書]ウウス王国王都民衛部隊開拓・派遣班第一・第二分隊(以後、派遣部隊)は現地の住民からの情報から目的地および危険地帯とみられるエリアの原因となる次波の揺れを感知。大量のエネルギー成分によって構成された小さなワームホールの短時間の出現を確認。これを最重要解決案件として政府に要請。
また北部の上空にある次波にも同じ揺れが発生していることが現地の観測部隊によって報告されている。この案件とのつながりを調査すると同時に現在の時点では北部のゲートは制御が安定して行われていることを再度確認された。
なお、以前から危険視されていた西側の............


やっと今期のデスクワークが一段落ついたと思ったらこれだ。
次から次へと問題が追いかけてくる。
まるで学生に戻ったような気分だ。

「失礼します。」

執務室のドアが開いて使用人が来客者に席を勧めている。
「久しぶりだね、ディリー。」
嘘、偽りの無い、これ以上に無いような笑顔で駆け寄ってくる。
正直暑苦しい。
「す、座ってくれないか?」
昨日の夕飯でも思い出したかのような表情をしたかと思えば手に持っていた紙袋から何か取り出す。
「これ、旅行のおみやげ、兄ちゃんから。」
丁寧に包装されたラッピングは高級感がある。
「お兄さんの?新婚?」
「そう、そう。」
そう言いながら彼は出された菓子折を食い尽くすのに必死だ。
他人に身内の新婚旅行のお土産を渡すな。という言葉を飲み込まずに出すと彼は「なんだそんなことか。」と言わんばかりの顔で笑いかけてきた。
「で?さすがに僕とお茶するために呼んだわけじゃ無いでしょ。それでもいいけど。」
「まぁ、そうだ。これなんだが。」
彼に自分が呼んでいた報告書を渡す。
陽気な表情に合わせるように踊っていた彼の目の奥につめたい水が流れる。

「この北部の次波数値と、新しく生まれた森の次波が連動しているみたい、数値だけ見れば。」
「それが問題だ。」
「分かってるよ」とあたかもすべて理解できていることを万遍なくアピールするために目を見開いてこっちを見てきた。
「同じなのが問題だねこの場合。完全一致なんて存在しない。いや、
おなじスーパーで買ったリンゴとぶどうが全く一緒の色で味で形で構成になって別のものとして区別されている。
それぐらい気持ちの悪い感覚になる現象だ。
ワームホールは通常、対になって存在する。
だが今回の場合だと、事実上同じワームホールなのに対にはなっていない。
実際、片方で小さな石を投げてみてももう片方から出てくることは無かった。逆もまた然り。

「で、うちのギルドに頼みたいわけだ、あっち側を。」
「話が早くて助かる。だが。」

「『帰ってこれなくなる』「な」「だろ?」」

「このワームホールの相方はつまり別の世界って訳だ。」
「もし行けたとしてそこでワームホールが消えたらおしまいだ。」
「そう。その通り。」
それでもいけるかとは聞かない。
彼のプライドもそうだが、普通は頼めない。

「いいよ、任せなよ。貸し1ね。」
「いや、報酬出すから貸しもなにも無いけど。」
笑いながら「薄情だなぁ~、」とつぶやいて俺の方を叩いた。

「じゃあ、また。」

『フッ』という音を立てて一瞬にして消えた。
机の上にはまだミルクティーが残っている。

「かっこつけてやんの。」

彼は話題の少数先鋭ギルドの団長、俺は国家直属の軍部の司令準補佐。
昔進路を打ち明けたときは「頭がかてぇ...(笑)」と笑われてちょっといらっとしたが。
あのときから肩書きと立場以外2人とも何も変わらない。

「選ぶべきは、友。だよな。」

いつの間にか湯気が出ていた紅茶が冷めていた。


【報告】
最重要国家指定案件の調査においてワームホールへの進入に失敗。
協力要請を受けたルーシフ民衛ギルド、国家軍部調査班の隊員合わせて6名が負傷。内1名が意識不明。
同刻、西側の小規模ワームホールが肥大化し巨大建造物が出現。この建造物内に人間がいるとの報告がされている。
政府はディリー準補佐率いる特別派遣部隊を出現した建造物への調査に向かわせると発表。
作戦開始時刻は明日未明
なお、やむを得ない状況、または政府から追加で指令があった場合に限り殺傷の可能性も視野に入れた武力行使を行うとしている。







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