オリーブの祝福

坂田火魯志

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第七章

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 トマトとチーズ、それにガーリックが効いていた。尚且つ。
  オリーブだ、これが必ずあってだった。
  オリーブの効いたそのイタリア料理を口にしつつだ、カテリーナはシャハラザードとフロリースに対して言った。
 「私の国の花ですね」
 「そうだね、イスラエルの国花はね」
 「はい、オリーブです」
  この通りだ、それだけになのだ。
 「オリーブは大好きです」
 「美味しいしね」
 「本当に。こんな素晴らしいものはないと思います」
 「オリーブは昔から使われていたわね」
  シャハラザードもだ、そのオリーブがよく効いたイタリア料理を食べつつ言う。
 「そうだったわね」
 「ええ、ギリシア神話の頃からね」
 「歴史は古いわね」
 「そう、それにね」
  カテリーナはさらに言おうとした、だが。
  言おうとしたところだ、フロリースが言ってきたのだった。
 「平和を象徴するものだね」
 「はい、そうです」
 「平和だね、まさに」
 「そうですね、ですから余計にです」
 「オリーブが好きなんだね、君は」
 「美味しいだけでないですから」
 「そう、だからね」
  それでだとだ、フロリースは言う。彼もまたオリーブが効いているイタリア料理を食べている。
  その中でだ、こう言うのだった。
 「素晴らしいものなんだよ」
 「そうですね」
 「オリーブは美味しい、だから」
  今度はだ、彼はシャハラザードを見て彼女に言った。
 「君も好きだね」
 「大好きです」
  にこりとしてだ、シャハラザードは彼の言葉に答えた。
 「本当に」
 「そうだね、美味しいから」
  シャハラザードもそうであることを確認してだった、そのうえで。
  彼はだ、二人に言うのだった。
 「オリーブは誰が食べても美味しい、そして受け入れられるものなんだよ」
 「オリーブが受け入れられる、つまり」
 「そのことは」
 「そう、平和もね」
  それもだというのだ、オリーブが象徴するそれもまた。
 「受け入れられるものなんだよ」
 「そうなんですね、平和も」
 「それも」
 「確かに君達の国は激しく対立している」
  世界の誰もが知っていることだ、ましてや仮にも知識人であるフロリースが知らない筈がない。彼は全うな知識人であるから。
 「だがね」
 「平和はですか」
 「受け入れられますか」
 「そうだよ、ただ」
 「ただ?」
 「ただといいますと」
 「努力は必要だよ」
  平和になる為のそれはというのだ。
 「それはね」
 「努力はですか」
 「それは」
 「オリーブは確かに美味しいよ」
  このことはこの場で何度も言っている通りだ、本当に美味し。そのオイルが料理を最高のものにしてくれている。
  しかしだ、それでもなのだ。
 「けれどオイルは出さないとね」
 「駄目ですね」
 「それは」
 「その為にはオリーブを植えて育てて」
  そしてだった。
 「油を採らないと駄目だね」
 「そこまでの努力が必要ですね」
 「オリーブを美味しく口にする為には」
 「平和もだよ」
  オリーブが象徴するこの素晴らしいものもだというのだ。
 「何もしないのではね」
 「手に入らない」
 「そういうものですね」
 「そう、だからね」
  それ故にだというのだ。
 「イスラエルとパレスチナが平和になる為にも」
 「努力しないといけない」
 「そういうことですね」
 「つまりは」
 「ただ憂いたり嘆いたりするのではなく」
 「今だってね」
  激しくいがみ合っている現状でもだというのだ。
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