ウザキャラに転生、って推しだらけ?!表情筋を殺して耐えます!

セイヂ・カグラ

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はじまり

7話★恋のキューピッド、俺

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 最高のモブとは当て馬のこという___。
 
 俺は今、メソという人生の中で最も幸福なのではないかと思うほどの日々を送っている。俺に与えられた『当て馬』という使命。この使命を承り遂行するために奮闘する日々はとても鮮やかで美しい。

「カストルの髪はいつ見ても美しいですね」

 丁寧に三つ編みされた髪に触れ、口付けをする。こんなに風に推し様に触れるなど言語道断だと思っていたが、使命のためなら難なくできる。俺のヲタク特有の早口もすっかり落ち着き、最近ではしっかり役に入り込んでいる。俺様な当て馬攻めとしての役に俺は完璧に成りきっているだろう。ああっ、遠くから感じるスピカの視線が痛いほど分かる。

「ポルクス、何だか眠たくなってきました」

 ベンチで日向ぼっこをしながら、ポルクスの肩に頭を乗せる。花のような香りのする双子に挟まれながら薄っすらと瞼を開けば、またもじっと見つめる視線と出会う。武者震いのような興奮を感じながら、俺の指先はカストルの脚にくるくると円を描く。この俺の行動も双子様は、メソ特有のいつものわがままや変な行動の一環と見なしているようで、とくに大きな反応は見せない。ので、俺は気にせず子どものように二人に甘えている。表情筋以外は大胆にしているつもりだ。
 ほら、やっぱり彼はこちらを見ている。けれど、彼がどちらに恋をしているのか、まだわからない。カストルなのか、ポルクスなのか、はたまたどちらもなのか。俺の当て馬作戦をはじめて1週間、そろそろ新しい動きが欲しい。う~ん。

「カストル、ポルクス。質問なのですが、振り向かせたい相手がいる場合、どうすれば良いと思いますか?」
「はっ!?」「え!?」
「な、なに、メソ様、恋バナ⁉ てか、それ僕たちに聞いちゃっていいの?」
「振り向かせたい相手って、どちら、誰、あ、いや、どんな人ですか」
「どんな相手…?うーん、まぁ、なんというか。とにかく、どんな男でもクラッとくるような一押し?があれば良いのですが」

 そもそも、スピカはとびきりかわいい。どんな男でも見つめられたらクラッと来そうなものだが、それをスピカが双子相手にできるかどうかとなると、なかなか難しい。図書室で会ったあの日から俺はスピカと何となくそれとなく距離を詰めている。けれども双子とスピカの距離を縮めるのはどうにも上手くいかない。俺がお茶会に誘ってもスピカは来ないし、双子もスピカに近づこうとしない。 
 けれども、スピカは俺が言った通り前髪を分けて瞳を見せるようになった。それは大きな変化だった。それだけでスピカは学園中からものすごい注目を受けるほどの美形。まぁ、本人は気がついていないみたいだけれど、最近では密かにファンクラブまでできている。

「色仕掛けってことぉ?」
「色仕掛けなら手っ取り早く既成事実でも作れば良いんじゃないですか?」
「ああ、それいいね!手っ取り早く媚薬とかってどう?」
「手っ取り早くって…もっと情緒を……んっ、待てよ、媚薬…」

 媚薬、その手があったか!
 
「作りましょう」
「「何を?」」
「もちろん『媚薬』ですよ」
「えっ、ほ、本気?」
「作るだなんて無茶ですよ!そう簡単に作れるものじゃっ…」

 無茶?それが案外無茶でもない。正直、俺自身驚いているのだが、メソは頭が良い。とにかく記憶力が良いんだ。写真記憶というやつなのだろうか、教科書や書物の内容がページをめくるように簡単に思い出せる。メソの中に俺としての意識があるので、記憶力の良さはどうやらそのままらしい。俺は、メソのおかげでいつも成績上位だ。メソの頭の良さにはとても感謝している!まぁ…、例外もあるけれど。

メソを舐めないで頂きたい」

 まずは材料を集めるところからだ!
 貴族のお坊っちゃんだから金には困っていない俺。
 どんなに高い素材でも構わない!
 受けを幸せにするために俺は媚薬を作ってみせる!!








「で…、できた」

 試行錯誤して1週間。寝る間を惜しんでついに完成した。

 『発情誘発媚薬ボンボン』
 
 有害なものは無いし、一定時間で効果の切れる安心安全な媚薬。
 まぁ、使い方次第ですが…。
 アルコールの代わりに催淫剤、媚薬のもととなる花などの植物と魔物から取った成分を砂糖で包んだボンボンは甘く美味しいはず。
 更にこのボンボンはただの媚薬ではない!
 接種すると本人がエッチな気分になるのと同時にフェロモンが溢れ出し、目の前の相手を発情させることができるのだ!
 ふふっ、ここはBL世界だが残念ながらオメガバース世界線ではない。
 けれどこれで擬似オメガバースができるというわけ!
 俺ってば天才。
 さてさて、けれどまぁ、これもまだとりあえずは試作品。
 試してみないと、効果はわからない。

「カストル、ポルクス来てください」
「はい」「あ~い」
「ついに完成しましたよ。『発情誘発媚薬ボンボン』接種者に対する媚薬効果とフェロモンによる他者に対する誘惑ができる。実際の効果は、試してみないとまだわからないですが」

 色々と配合したものを黒板で書きながら説明する。とりあえず5粒ほど作ったが、どのくらいの摂取量が必要か、どのくらいで効果が現れるのか、そもそも成功しているのか、試さなければわからないことも多い。なので、まずは…。

「もぐっ…、うん、味は、まぁまぁ悪くない」

 ぽいっとボンボンを口の中に放り込み、味を確かめながら飲み込む。試すなら自分。自分で作ったものは自分で試すが俺のモットー。治験は自分で行うが良し。危ないものを他人に接種させるわけにはいかないからね。さて、ここからストップウォッチを開始して…、記録用に水晶(カメラのようなもの)を作動させる。

「た、食べた、たべましたよね?! 今!!」
「なっ、な、何やってるの?!」

 双子様がわたわたと動揺しはじめる。そりゃ無理もないだろう。全くと言って良いほど興味のない相手が目の前で媚薬を摂取したんだ。しかも、フェロモンを出すかもしれない媚薬を。けれども実験する相手が俺には彼らしかいない。仕方がないんだ。それに、興味のない相手であればあるほど効果もわかりやすいだろう。

「まぁ、少し付き合ってください。うーん、1分経過、まだ反応なし。即効性のはずなんだが、失敗か? 5分経っても効果がなかったら摂取量を増やしましょう」
「ま、待ってください!そんな、媚薬なんてもの摂取して、どうするんですか!」
「そうだよ!もしその薬の効果で僕たちが発情しちゃったらどうすんの!」
「ああ、それに関しては問題無いです。好きにしてくれて構いませんから」
 
 摂取者から距離を置いたり、少し時間を置いたりすれば効果は切れるはずだ。金は用意してあるから最悪、男娼を呼ぶでもいいし、なんなら試してほしい秘密兵器も作ってある。対処法は作ってある。

「す、好きにしてって、本気で言ってる?」
「構いません」
「言いましたね、メソ様。あとで言ってないって言っても知りませんよ」
「安心しなさい違えることはしません」

 おや、もうすでに5分経過か。身体に変化は…少し火照るような気がするが、まだ強い効果は感じられない。摂取量を増やすしかないな。

「1つ…、いや、2ついっとくか。あむっ、もぐっ」

 この程度なら一気に2つ食べても問題無いとして、口に入れる。
 さて、どのくらいで効いてくるか…。
 時計の秒針を眺めているそのときだった。

 ドクンッ、ドクンッ

 急に心拍数が上昇して、身体の力が抜けた。
 俺は、腰が抜けて膝から崩れ落ちた。
 やばい、胸が苦しい…。
 血管中の血液が一気に加速するみたいに全身を駆け巡る。
 身体が熱い!次第に呼吸が荒くなる。
 
「はぁっ…ふっ…、5分32びょう、心拍数上昇、身体の火照り…」
「ちょ、ちょっと、メソ様、大丈夫?」
「とりあえず、横になりましょう」

 双子様が心配して近寄ってくる。確かに、ソファでもいいから横たわりたい。そう思って立ち上がろうとするが力が入らない。ああっ、くらくらする。上手く動けずにいると、突然、身体に刺激が走った。

「ッあ…………っ!?」

 肩に触れられただけなのに!
 ゾクゾクとしたものが背中を駆け巡った。

「大丈夫ですか!メソ様!」

 声上げた俺を心配して、カストルが俺の身体にさらに強く触れる。

「ひぅっ…まっ、だ、だめっ」

 これは…、さすがに効きすぎだ。
 想定より少し効き目が遅くて、摂取量を増やしすぎたようだ。
 全身が敏感になって…、布がまとわりつくのですら辛い。

「僕が抱き上げるよ、兄さん。とりあえずベッドに連れて行こう」
「ええ、そうですね」
「まっ、いいっ、ここで…ぇっ、ぁう」

 膝裏に手を入れられ、抱えあげられる。
 いわゆる姫抱きをされて少し喜びながらも、身体中に走る快楽に悶絶した。

「ふっ…ぅ…あっ、」
「…っ、すぐだから、少し我慢しててよ」

 揺れる振動すらも辛い。
 だんだんと腹の奥が熱くなってジンジンしてくる。
 欲しい…、欲しい…、かき回して欲しい…。
 そんな思考が頭をグルグルする。
 ふんわりとしたシーツに下ろされ、またぴくぴくと震えてしまう。

「あぁ…、あつっ、あちゅ……ぃい…んっ」

 熱い…、身体中が熱い。
 俺は無意識に着衣を脱ぎはじめた。
 
「め、めめめメソ様!?」

 まずい、頭が回らない…。
 でも、まだ、はつじょうふぇろもんの記録ができてない…。

「はぁっ…、はぁっ…おれのふぇろもん、でてぅ?」
「「…っ!」」
「でて…、なぁ、い…、?」

 まさか、失敗か?! 
 反応を示さない双子様に俺は失敗したのではと涙目になる。
 なんか、感情まで抑えられなくなってくる。
 
「ぅわっ、なんだこれ、、」
「はぁっ、急に息が、、」

 黙り込んでいた二人が突然、胸を抑えたり鼻を覆った。

「甘い、匂い…?」

 どちらかがそういう。
 これはまさか、フェロモンの効果…!
 7分22秒、フェロモンは、あまい、香り…。

「ふーーっ、メソ様。先程、好きにして良いっておっしゃいましたよね?」
「へ?」
「そうだよ。散々煽っておいて、ちゃんと責任取ってもらわないと…」
「だってメソ様は………」
「僕たちを誘いたかったんでしょ?」
「え?」


 
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