寂しいと死んじゃう兎の王子様と最強だけど抱かれちゃう熊騎士のお話

セイヂ・カグラ

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剣術担当→閨担当

朝◯聞き込み調査

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「へ? 閨でのレオンハルト様ですか?」

 1日休みを宛てがわれたボロルフは、王宮の閨仕事の者たちに質問をして回っていた。
 初物なのだから閨では自分から何もするなと言われているが、それでも一応の知識だけは入れておきたい。どうすれば、彼を不愉快にさせないで済むのか、彼を喜ばせることができるのか。レオンハルトに就く閨担当に片っ端から話を聞き、メモを取っていく。ボロルフは生粋の馬鹿真面目であった。

『それはもう、とても情熱的で優しくて愛されてると感じます。』
『レオンハルト様は私を愛してくださる。だから私にも心からの愛をたくさんお返ししたいと思いますもの』
『えっと、とにかく、気持ちよくして頂けるというか…、今までのどんな殿方より達者でいらっしゃいます』
『僕はもうレオンハルト様以外に抱かれるなんて考えられないね!だってすごいんだもんっ、皇太子のセックス。愛されてるって感じ!』
『朝、目覚めるときまで側にいてくださいますから嬉しくて』
『正面で抱き合ってキスをしてくれると好き~って溢れてくる!オレのこと本気で好きなんだって信じられるよ』

 どれもこれも、ほとんどが自分の経験した昨夜とは違う。
 皆が口を揃えて言うのは『愛されていると感じる』というもの。

「貴重なお話、ありがとうございました」

 俺との時は、ずっと背後からで正面からお顔を見ることは無かった。
 それに、朝まで一緒にいることはしなかった。
 それはもちろん俺が閨から出たのもあるが、レオンハルト様は俺を引き止めなかった。
 キスだって、してくれなかった。
 情熱的?愛されている?それをかんじるようなものは無い。
 はじめこそ優しい声色に嫌われていないのだと錯覚を起こしたが、結果的にそれは間違い。
 やはり俺は、他の閨の者たちとは違うようだ。

「っ……どうすれば…」

 俺が項垂れていると、一人の青年が声をかけてきた。
 華奢で小柄な猫族の可愛らしい青年。
 クリクリとした金色の大きな瞳を細めて、ふんわりとしたクリーム色の毛を靡かせる。

「なに? 閨、上手くいっていないの? 珍しいじゃん」

 直球に言われると俺の胸がズキっと痛む。
 そう、確かに上手く行っていないのだ。
 それも、もうずっと何年も。

「兎族は寂しいと死んでしまうからちゃんと愛を伝えなくちゃいけないよ? それは別に言葉じゃなくたって良いんだ。たとえば態度とかさ」
「た、態度、ですか?」

 クリーム色の髪をくるくると指に巻き付けながら青年が言う。
 貴重なアドバイスだとボロルフはメモ帳とペンを取りだした。

「くふふっ、アンタ真面目すぎ。ただの閨だよ? そんなに真剣にならなくてもさぁ」
「お、俺は、その至らないことばかりで…華奢でもなければ君のように綺麗でもない、ので、勉強というか、、」
「へぇっ…、アンタやっぱ変わってるね」

 大きな瞳を一際大きくまんまるにして猫の青年が笑う。

「閨担当なんて皆、独占欲と嫉妬に塗れてるってのに。あっちこっちで聞いてるんでしょ? こんなこと聞いてもマウント取りな返事しか返ってこなかったんじゃない?」
「? いえ、皆さんとても親切に教えてくださいました。前戯の内容やレオンハルト様から掛けられたお言葉。ああ、例えば『愛されていると感じるほど情熱的』と言ったような…」
「それをマウントって言うの! 大体、みんな大袈裟に言ってんだよ。レオンハルト様のことを愛しているからね、自分がレオンハルト様の一番だと思いたいのさ。ただの閨担当なのにね」

 レオンハルト様の一番。
 あの美しい人を独り占めできる者は、一体どんな御方なのだろうか。
 レオンハルト様の笑顔すら引き出すことのできない俺には考えにも及ばない。

「まぁ、次に閨のことで何か知りたくなったらオレに聞きなよ。オレは、ミュラ。よろしく」
「ボロルフ・ベアルドです。よろしくお願いします、ミュラ殿。貴方のような方と出会えて良かった」
「ふふ、そうやってすぐ信用しちゃうと危ないよ?」
「そんなことありません。俺、人を見る目が良いので。ミュラ殿は、親切なお方です」
「あははっ、はじめて言われた!」

 くしゃりとしたミュラの豪快な笑顔は気持ちが良い。なんだか落ち込んだ心が晴れやかになるその笑い声に、この猫族の青年とまた話したいと感じた。握手を交わし、手を降った別れ際、ミュラが振り返り言った。

「アンタの仏頂面、ハンサムでオレは好きだけど、たまには笑ってみたら?」
「笑う?」
「人ってのはね、笑ってる方が好かれるんだよ。難しかったら微笑むだけでも良いのさ、こんな感じで、にぃ~」
「にぃ~~、…?」
「あはっ、良いよ!似合ってる!」

 不器用ながらも口角を上げて手を振れば、ミュラもまたくしゃりとした笑顔で返してくれる。
 ああ、確かに笑った顔というのはすごいな。
 笑顔の彼はとても魅力的に見える。

 ボロルフは、思い出したかのように慌ててメモを残した。

 ミュラ殿からもらった貴重なアドバイスだ、忘れないようにしなければ。

 その後、部屋に戻ったボロルフは、自室の鏡で笑顔の練習をした。ニカッと笑うと自分でも怯えるような恐ろしい形相になったので、取り敢えず言われた通り『微笑み』の習得を試みた。
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