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プロローグ
憂鬱な朝
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ああ、まだ寝ていたいのに、起きなければならない。起きて、あのエロゲを攻略しなければならない。可愛い妹のためだ。それに、俺愛用の筋トレグッズが人質に取られている。
10歳年下の俺の妹は、所謂、腐女子だ。年の差もあって、溺愛している。妹の言うことは聞かずにはいられないのだ。はじまりは、BL漫画だった。どうしても一度読んで欲しいと言われ、読んだそれは、過激すぎて頭を抱えたのを覚えている。完全に18禁、こんなものを女子高生が読んでいいのか? と疑問に思うほど。妹のBLのススメは、どんどん加速していき、ついにはドエロいBLゲームをやらされている。まるで女の子のような美少年が画面の向こうでアンアンと喘いでいる、声優さんってのは凄いと感心した。妹のお陰で、セクシュアリティに対する偏見は無くなった。だが、俺はあくまでノーマル、女性が好きだ。エロゲをやるなら、美少年ではなく美少女が良い。そう、妹に告げたら、泣かれた。それはもう、わんわん泣かれたのだ。そして、俺の愛してやまない筋トレグッズを人質に取られてしまった。
「お兄ちゃんの馬鹿!! 筋トレばっかして、攻めみたいになっちゃうなんてありえないんだから!」
「う、みーちゃん…、お兄ちゃんは女の人が好きだ。それに、受けか攻めかで言ったら、攻めになりたいよ。」
妹の言っていることもおかしいが、俺の言っていることも大概おかしい。
「攻め?! お兄ちゃんは受けになるの! もう、筋トレなんてさせないんだからー!」
「み、みーちゃんっ! あっ! 俺のダンベル返してぇ~!」
プロテインの果まで、没収されたときは俺も泣いた。
そうだ……。俺は、筋トレができない禁断症状が出て、ついにジムへの入会を決意したんだった。あれ、おかしい。俺は結局、ジムに行ったんだったけ…?まだ、行ってないのか? ジムに入会もせず、寝ていても良いのか? いや、ダメに決まってる! それなのに、眠くて眠くて仕方がない。眠いというより、ものすごくダルさを感じる。
「ぅう…、だん、べる……。」
モゾモゾと布団の中で寝返りをうつ。
「げーむの、攻略ぅ…、ぅう。」
今日の布団は、やけに心地が良い。何だかフワフワしていて、マットも毛布に包まれるよう、それに生地はツルツル。こんなに心地いいのに、起きる必要はあるのだろうか? そう思いながらも、俺はやっと重い瞼を持ち上げた。
「お、お坊っちゃま‼」
突然、悲鳴のような声がそう叫ぶ。
「お坊ちゃまが、お目覚めに! はやく医師を…! 奥様と旦那様を!」
ドタバタと慌て走る音が聞こえる。その騒がしさに違和感を持って、俺はしっかりと目を開いた。辺りを見渡して、俺はギョッとした。
な、なんじゃこりゃあ~!?
華やかで豪華、いや、むしろ派手すぎる部屋。花や宝石、金色の壁や柱、大きな窓には真っ赤なカーテン。フリフリの天蓋と、おい、待て、布団までフリフリだぞ!そんでもって、あちこちに鏡!鏡!鏡!一体何が起こっているんだ。
「っ、な、ん、」
驚き、声を出そうと思ったが声が出ない。喉が貼り付いて、カサカサしている。ケホケホと咳をするが、その可愛らしく控えめな音に、思わず喉に触れる。細く、華奢な首筋︙、だと? おまけに喉仏が無い。いや、だが、息子の存在は感じる。飛び起きて、ガバりとワンピースのようなフリフリをめくった。
「ち、ち、ちちちち、ちいさっ」
小さくなっている!!
なぜだ! 幼き頃の息子に戻っている!
あの、偉大な我が息子は何処へ!?
俺は、またフラフラとベッドに沈む。
これは、一体何事だ。
いやいや、きっとただの悪い夢だ。
「お坊ちゃま! ああっ、ご無理をなさってはいけませんっ。」
眠ろう、眠れば目が覚めるはず。
そう思い、瞼を閉じれば、すぅっと眠りに吸い込まれていく。ぼんやりとする微睡みの遠くで、ドタドタと走る音が聞こえた。
「フランドール…!」
「フランッ!」
「旦那様! 奥様!」
駆け寄ってきた二人の大人に手を握られ、暖かなぬくもりに包まれたところで、俺はもう一度眠りの中に堕ちていった。
10歳年下の俺の妹は、所謂、腐女子だ。年の差もあって、溺愛している。妹の言うことは聞かずにはいられないのだ。はじまりは、BL漫画だった。どうしても一度読んで欲しいと言われ、読んだそれは、過激すぎて頭を抱えたのを覚えている。完全に18禁、こんなものを女子高生が読んでいいのか? と疑問に思うほど。妹のBLのススメは、どんどん加速していき、ついにはドエロいBLゲームをやらされている。まるで女の子のような美少年が画面の向こうでアンアンと喘いでいる、声優さんってのは凄いと感心した。妹のお陰で、セクシュアリティに対する偏見は無くなった。だが、俺はあくまでノーマル、女性が好きだ。エロゲをやるなら、美少年ではなく美少女が良い。そう、妹に告げたら、泣かれた。それはもう、わんわん泣かれたのだ。そして、俺の愛してやまない筋トレグッズを人質に取られてしまった。
「お兄ちゃんの馬鹿!! 筋トレばっかして、攻めみたいになっちゃうなんてありえないんだから!」
「う、みーちゃん…、お兄ちゃんは女の人が好きだ。それに、受けか攻めかで言ったら、攻めになりたいよ。」
妹の言っていることもおかしいが、俺の言っていることも大概おかしい。
「攻め?! お兄ちゃんは受けになるの! もう、筋トレなんてさせないんだからー!」
「み、みーちゃんっ! あっ! 俺のダンベル返してぇ~!」
プロテインの果まで、没収されたときは俺も泣いた。
そうだ……。俺は、筋トレができない禁断症状が出て、ついにジムへの入会を決意したんだった。あれ、おかしい。俺は結局、ジムに行ったんだったけ…?まだ、行ってないのか? ジムに入会もせず、寝ていても良いのか? いや、ダメに決まってる! それなのに、眠くて眠くて仕方がない。眠いというより、ものすごくダルさを感じる。
「ぅう…、だん、べる……。」
モゾモゾと布団の中で寝返りをうつ。
「げーむの、攻略ぅ…、ぅう。」
今日の布団は、やけに心地が良い。何だかフワフワしていて、マットも毛布に包まれるよう、それに生地はツルツル。こんなに心地いいのに、起きる必要はあるのだろうか? そう思いながらも、俺はやっと重い瞼を持ち上げた。
「お、お坊っちゃま‼」
突然、悲鳴のような声がそう叫ぶ。
「お坊ちゃまが、お目覚めに! はやく医師を…! 奥様と旦那様を!」
ドタバタと慌て走る音が聞こえる。その騒がしさに違和感を持って、俺はしっかりと目を開いた。辺りを見渡して、俺はギョッとした。
な、なんじゃこりゃあ~!?
華やかで豪華、いや、むしろ派手すぎる部屋。花や宝石、金色の壁や柱、大きな窓には真っ赤なカーテン。フリフリの天蓋と、おい、待て、布団までフリフリだぞ!そんでもって、あちこちに鏡!鏡!鏡!一体何が起こっているんだ。
「っ、な、ん、」
驚き、声を出そうと思ったが声が出ない。喉が貼り付いて、カサカサしている。ケホケホと咳をするが、その可愛らしく控えめな音に、思わず喉に触れる。細く、華奢な首筋︙、だと? おまけに喉仏が無い。いや、だが、息子の存在は感じる。飛び起きて、ガバりとワンピースのようなフリフリをめくった。
「ち、ち、ちちちち、ちいさっ」
小さくなっている!!
なぜだ! 幼き頃の息子に戻っている!
あの、偉大な我が息子は何処へ!?
俺は、またフラフラとベッドに沈む。
これは、一体何事だ。
いやいや、きっとただの悪い夢だ。
「お坊ちゃま! ああっ、ご無理をなさってはいけませんっ。」
眠ろう、眠れば目が覚めるはず。
そう思い、瞼を閉じれば、すぅっと眠りに吸い込まれていく。ぼんやりとする微睡みの遠くで、ドタドタと走る音が聞こえた。
「フランドール…!」
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「旦那様! 奥様!」
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