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男だらけの異世界転生〜学園編・第一部〜
フィアンセ様が何故か冷たい
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▼Side ウェルギリウス
『オレがフランを守りたい』いつかそう告げたことがある。
守りたい、この男を。
願わくば自分のことを親友としてではなく、もっと柔らかで甘い気持ちを自分に対して抱いて欲しい、そう思っていた。
けれど、オレがどんなにアプローチをしようともフランドールの気持ちは変わらなかった。
フランにとってオレは親友のままだ。
恋は苦しい、確かにそうだ。
守りたいと思っているはずの相手を自分のせいで傷つけてしまう日が来るなんて想像もしていなかった。フランの気持ちが変わらないことに一方的に苛立った。オレからフランに会いに行くことは会ってもフランがオレに会いに来ることなど殆どない。入学式、視線が合って彼が手を振ってくれたことが嬉しかった。でも、オレがそれに反応すればフランに興味や注目が向けられることは明らかで、視線を逸した。フランが他の男との同室を選んだことにも腹が立った。でも、オレには何も言えない。生徒会には入りたくない、というフランの主張にオレは、フランがオレとは一緒に居たくないと言っているような気がしてムキになった。うんざりするような生徒会長という役割もフランが居るだけで頑張れる、そう思っていたのに…。フランドールからの拒絶、そう感じて。だから、自分の立場を忘れて引き止めた。それがいけなかった。
「フラン…っ、フラン…っ、すまない。」
転移して、フランを部屋のベッドに寝かす。
魔力の中和と治癒を繰り返す。
フランドールの体温が下がって、冷たくなる。
小さく弱々しい呼吸はいつもの逞しいフランからは想像できないもので、オレの背には冷たい汗が伝った。
「ああ、どうか、目を覚ましてくれ…っ。」
必死に魔力を注げば、フランの体温がだんだんと戻ってきた。
あのとき、フランは酷く傷ついた顔をしていた。
見たことのない、悲しい顔だった。
笑って欲しい。
もう一度、笑いかけて欲しい。
嫌われたくない…。
「……んっ、っ…。」
「!、フランっ、大丈夫かっ。」
睫毛の先が震えて、瞼が開く。
吸い込まれそうなほど真っ黒な瞳がぼんやりとこちらを見据えた。
「…なんか疲れてる? どうしたんだ、うぇる……、きれいな顔がだいなしだぞ…。」
フランの手がオレの頬を撫で、指先が目元の水分を拭う。
大きな手が、か弱く思えた。
離れようとする、その手を掴んで握りしめた。
「……フラン、すまない。」
「…? なんで?」
「すまなかった…。」
「あやまるなよ。よくわかんねぇけど俺、怒ってないぜ。」
ああ、オレはこの手を離さなければならない。
きっと、オレでは彼を幸せにはできない。
それでも……、それでも…。
オレは、フランドールが欲しい。
この男を自由にしてやることなどできない。
▽
「君にとって生徒会は王妃になるための下稽古だ。」
目が覚めると、そこは寮の部屋のベッドの上で側には椅子に腰掛け腕を組んだ金髪の美少年がいる。冷たい視線と声は変わらない。ウェルはいつから俺を嫌いになったのだろうか。
あんな事があった後で絶対生徒会には入りません! と言えるほど俺は図太くない。生徒会には入る、というか入らざるを得ない。不本意ではあるけど。
「生徒会にはちゃんと入るから安心しろよ。」
そう俺が言えば、ウェルは少しほっとした顔をした。
「君は未来の王妃、学園を小さな国だと仮定し王妃としての公務の練習をしていくんだ。」
「…何言ってんだ。俺たち、婚約破棄するんだろ?」
「まだ本気で言っているのか? 無理に決まっているだろう。いい加減、諦めた方が良い。」
ウェルは窓の外を眺めたまま、静かに言う。
表情が見えないから感情が読み取れない。
「なんていうか、そのために色々頑張ってきたじゃねーの…? 俺、お前には本当に愛する人と幸せになって欲しいんだよ。お前のこと、好きだから。」
「…! フラン、オレはっ。」
「大事な親友だから。」
カタ、と音がした。
座っていたウェルがゆっくりと立ち上がる。
やはり、こちらを向いてはくれない。
俺たち親友だよな?
不安になり胸の中で呟く、するとウェルが振り向いた。
「…本気でそう思っているのか。」
「おう、助けてくれてありがとな。俺、お前がいなかったら死んでたかも、ははっ。」
なんてな、って笑った。ウェルは無言で、俺の乾いた胡散臭い笑い声だけが部屋に取り残される。無理矢理にあげた口角が引き攣ったまま張り付いた。
「俺は、お前を親友だと思ったことはない。」
吐き捨てるみたいにウェルが言った。胸にズドンっと何かが落ちてきて、じわじわと苦しさが広がる。魔法でも攻撃でもない。俺の心臓が勝手にドクドクと脈を打つ。
頭が真っ白になって、何も言えなくなった。
「親友ごっこは終わりだ、フランドール。」
ウェルは音もなく歩き、そのまま魔法でどこかに消えてしまった。
引き留めようと思った、でも身体は動かない。
崖から突き落とされたような、何とも言えぬ感覚。
どこからとも無く苛立ちが湧いてきて、それから涙が溢れてきた。
悔しいみたいな、苦しいみたいな、腹が立つのと、泣きたいのと、こういう気持ち何ていうんだろう。
俺、いつの間にか、ウェルにあんなこと言わせるようなことしたんだ。
いつだろう、何だろう。
「ぜんぜん、わっかんねー…。」
動かない身体をベッドに投げ出したまま溢れる涙を隠すように腕で抑えた。考えても分からない。でも、自分のせいなのは明らかで、俺は同居人の存在もお構いなしに一晩中、独り惨めに泣いた。
ああ、俺、マジで子どもみたいだ。
『オレがフランを守りたい』いつかそう告げたことがある。
守りたい、この男を。
願わくば自分のことを親友としてではなく、もっと柔らかで甘い気持ちを自分に対して抱いて欲しい、そう思っていた。
けれど、オレがどんなにアプローチをしようともフランドールの気持ちは変わらなかった。
フランにとってオレは親友のままだ。
恋は苦しい、確かにそうだ。
守りたいと思っているはずの相手を自分のせいで傷つけてしまう日が来るなんて想像もしていなかった。フランの気持ちが変わらないことに一方的に苛立った。オレからフランに会いに行くことは会ってもフランがオレに会いに来ることなど殆どない。入学式、視線が合って彼が手を振ってくれたことが嬉しかった。でも、オレがそれに反応すればフランに興味や注目が向けられることは明らかで、視線を逸した。フランが他の男との同室を選んだことにも腹が立った。でも、オレには何も言えない。生徒会には入りたくない、というフランの主張にオレは、フランがオレとは一緒に居たくないと言っているような気がしてムキになった。うんざりするような生徒会長という役割もフランが居るだけで頑張れる、そう思っていたのに…。フランドールからの拒絶、そう感じて。だから、自分の立場を忘れて引き止めた。それがいけなかった。
「フラン…っ、フラン…っ、すまない。」
転移して、フランを部屋のベッドに寝かす。
魔力の中和と治癒を繰り返す。
フランドールの体温が下がって、冷たくなる。
小さく弱々しい呼吸はいつもの逞しいフランからは想像できないもので、オレの背には冷たい汗が伝った。
「ああ、どうか、目を覚ましてくれ…っ。」
必死に魔力を注げば、フランの体温がだんだんと戻ってきた。
あのとき、フランは酷く傷ついた顔をしていた。
見たことのない、悲しい顔だった。
笑って欲しい。
もう一度、笑いかけて欲しい。
嫌われたくない…。
「……んっ、っ…。」
「!、フランっ、大丈夫かっ。」
睫毛の先が震えて、瞼が開く。
吸い込まれそうなほど真っ黒な瞳がぼんやりとこちらを見据えた。
「…なんか疲れてる? どうしたんだ、うぇる……、きれいな顔がだいなしだぞ…。」
フランの手がオレの頬を撫で、指先が目元の水分を拭う。
大きな手が、か弱く思えた。
離れようとする、その手を掴んで握りしめた。
「……フラン、すまない。」
「…? なんで?」
「すまなかった…。」
「あやまるなよ。よくわかんねぇけど俺、怒ってないぜ。」
ああ、オレはこの手を離さなければならない。
きっと、オレでは彼を幸せにはできない。
それでも……、それでも…。
オレは、フランドールが欲しい。
この男を自由にしてやることなどできない。
▽
「君にとって生徒会は王妃になるための下稽古だ。」
目が覚めると、そこは寮の部屋のベッドの上で側には椅子に腰掛け腕を組んだ金髪の美少年がいる。冷たい視線と声は変わらない。ウェルはいつから俺を嫌いになったのだろうか。
あんな事があった後で絶対生徒会には入りません! と言えるほど俺は図太くない。生徒会には入る、というか入らざるを得ない。不本意ではあるけど。
「生徒会にはちゃんと入るから安心しろよ。」
そう俺が言えば、ウェルは少しほっとした顔をした。
「君は未来の王妃、学園を小さな国だと仮定し王妃としての公務の練習をしていくんだ。」
「…何言ってんだ。俺たち、婚約破棄するんだろ?」
「まだ本気で言っているのか? 無理に決まっているだろう。いい加減、諦めた方が良い。」
ウェルは窓の外を眺めたまま、静かに言う。
表情が見えないから感情が読み取れない。
「なんていうか、そのために色々頑張ってきたじゃねーの…? 俺、お前には本当に愛する人と幸せになって欲しいんだよ。お前のこと、好きだから。」
「…! フラン、オレはっ。」
「大事な親友だから。」
カタ、と音がした。
座っていたウェルがゆっくりと立ち上がる。
やはり、こちらを向いてはくれない。
俺たち親友だよな?
不安になり胸の中で呟く、するとウェルが振り向いた。
「…本気でそう思っているのか。」
「おう、助けてくれてありがとな。俺、お前がいなかったら死んでたかも、ははっ。」
なんてな、って笑った。ウェルは無言で、俺の乾いた胡散臭い笑い声だけが部屋に取り残される。無理矢理にあげた口角が引き攣ったまま張り付いた。
「俺は、お前を親友だと思ったことはない。」
吐き捨てるみたいにウェルが言った。胸にズドンっと何かが落ちてきて、じわじわと苦しさが広がる。魔法でも攻撃でもない。俺の心臓が勝手にドクドクと脈を打つ。
頭が真っ白になって、何も言えなくなった。
「親友ごっこは終わりだ、フランドール。」
ウェルは音もなく歩き、そのまま魔法でどこかに消えてしまった。
引き留めようと思った、でも身体は動かない。
崖から突き落とされたような、何とも言えぬ感覚。
どこからとも無く苛立ちが湧いてきて、それから涙が溢れてきた。
悔しいみたいな、苦しいみたいな、腹が立つのと、泣きたいのと、こういう気持ち何ていうんだろう。
俺、いつの間にか、ウェルにあんなこと言わせるようなことしたんだ。
いつだろう、何だろう。
「ぜんぜん、わっかんねー…。」
動かない身体をベッドに投げ出したまま溢れる涙を隠すように腕で抑えた。考えても分からない。でも、自分のせいなのは明らかで、俺は同居人の存在もお構いなしに一晩中、独り惨めに泣いた。
ああ、俺、マジで子どもみたいだ。
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