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男だらけの異世界転生〜学園編・第二部〜
見知らぬ人※
「君、フランドール・メディチくんだよね?」
「?はい。」
「私は、魔法師科2年目のシュベルト・ホイスト。ご一緒してもいいかな?」
穏やかそうな笑みを浮かべた青年は、グラスを2つ持っている。そんなことよりフランドールが気になったのは、青年の背たけが自分とさほど変わりなかったことだ。同じ高さにある視線に興味が湧く。
「…魔法師科?ほいすとさん? 身長、俺とそんなに変わらないんですね、でかい。」
ぼんやりと受け答えすると、青年は楽しげに笑った。
「ふふっ、君よりは小さいけれど。ねぇ、フランドールくんと呼んでもいいかな? 私のことは気軽にシュベルトと呼んで。」
「はい、シュベルトさん。」
俺が頷くとシュベルトさんは、にっこりと微笑み、グラスを差し出してきた。
先程まで飲んでいたものとは、どうやら違うらしい。
そろそろ別の味も楽しみたいと思っていたところだ。
俺は、喜んで酒を受け取り、初対面のシュベルトさんとグラスをぶつけ合った。
酒を飲もうとグラスに口を近づけ、ふとキルトの言葉を思い出した。
「あっ、誰かからもらった酒は、飲むなっていわれたんだった。」
「どうして? 私も同じものを飲んでいるよ。だから、安心しなさい。」
そう言われ、シュベルトさんのグラスを見ると同じ桃色の液体が入っている。ならば安心だ、と俺はグラスの中身を口に含んだ。やけに甘い、女の子が好きそうな酒だ。口に含むと薔薇のような香りが広がる。甘すぎて、あまり好みではない味だった。
「う~ん。」
「美味しくない? すこし甘すぎたかな。」
「甘すぎる、ます。」
「ふふっ、呂律が回ってないよ。」
でも、先輩からの酒を断ったり、残したりしてはいけない…。
いっつ、じゃぱにーずるーる!
俺は意を決して、甘ったるい液体をゴクゴクと流し込んだ。
喉に痛みを感じるくらい、甘い。
「いい飲みっぷりだね! じゃあ、これなんかどうかな?」
俺の日本男児精神は先輩の気を良くしたようだ。
次に渡されたのは、赤ワインだった。
ぶどう果実の芳醇な香り、酸味は控えめで少し苦い。
「ん~っ、これ好きです、、。」
先程のものとは違い、喉を通る心地よい酒の美味さに、にへらぁっと笑って返す。
美味い酒に出会えるのは嬉しい。
「最高だ‥…。」
「へ?」
「なんでもないよ。」
何か呟く先輩の声が小さくて聞こえない。聞き返してみたが、人の良い笑みではぐらかされた。たぶん、きっと、ただの独り言。
なかなか始まらない婚約発表が気になって時計を探す。この世界の時間は前世と同じ。ただ、時計は円形と針で作られたものではなく、砂時計のような形をした瓶の中を真青な水が上ったり下りたりするのを見て確認する。会場の隅にある大きな水泡時計を見つけ、時間を見ると婚約発表まであと15分程あった。
それよりも気になったのは、水泡時計の近くに居る見覚えのあるふたり。あまりに遠すぎて、ふたりが何を話しているのかは聞こえない。ただ視界に入るふたりは、とても仲睦まじい。ウェルに腰を抱かれ、リアゼルが頬を染めている。
「あっ……。」
キスしてる。
突然、ウェルがリアゼルを抱き寄せ唇を重ねた。会場には、きゃあっと声が上がり、ざわめきが広がる。顎を持ち上げ、髪を撫で、愛おしそうな目で見て離れていく。
なんだ…、なんか、心臓痛い。
おかしいな、変だ。
これは、なんというか、悲しい…、のか?
親友の恋を祝いたいのに、祝いたい、はずなのに。
こんなの、おかしいよな。
胸が苦しい、とかさ。
「…!……くんっ!……ドール…フランドールくん!」
「えっ…?」
ハッとして頭を上げると、シュベルトが俺の両肩を強く掴んでいた。正面から覗き込む彼の表情は、少しだけ険しい。心配、してくれたのだろうか?
「すみません…、おれ、なんか、酔ったのかな…、ははっ。」
自分でも分かる、乾いた笑い声。
ああ、なんかやっぱり変。
少し、休みたい。
「大丈夫? もしかして、ショックだったのかい? 彼らのキスが…。」
ショック、その言葉にドクリと脈打つ。
ショック?なんで俺が、そんな気持ち。
「わかり、ません…。俺には、何も、分からない。」
途端に温かなぬくもりに包まれた。立ち尽くす俺をシュベルトさんが抱きしめているみたいだ。抱擁は決して強くない、解こうと思えば解ける。それでも、身を委ねてしまう。
「大丈夫だよ。フランドール君の言う通り、君はきっと少し酔ってしまったんだ。」
「……はい。」
「ねぇ、私の名前、覚えてる?」
「…? シュベルトさん。」
「うん、そうだよ。」
「ーーーーーーぁっ…?」
名前を読んだ瞬間、身体が急にカッと熱くなった。血液が全身をものすごい勢いで回っていくみたい。呼吸が、心音が、速まっていく。
「はっ…はぁっ、はっ…。?、?、、??」
足、力が抜けて、上手く立てない。
俺は、自分の身体を支えきれずによろよろと床に座り込んだ。
すると、シュベルトさんが心配そうに俺を引き上げ、立たせてくれる。
支えがあっても立つのが困難で、ほぼ彼に体重を掛けた状態だ。
身体…、熱い……っ。
「どうしたんだい? 酔ったのかな。少し、場所を変えて休憩しよう。」
「っ、すみません。でも、ダイジョ、ブですから。こんやく、はっぴょう、、はじまる。」
「立てないのに何を言っているんだ。さぁ、行くよ。」
そう言って、シュベルトさんは俺の動かない身体を支えながら歩き始める。止めたくて抵抗しようにも、力が入らない。俺は、そのままズルズルと引きずられるみたいに会場外へと連れて行かれる。長く広い廊下をしばらく進むと、突然全身が宙に浮いた。
「えっ??」
横抱きにされている。姫抱っこというやつだ。驚きのあまりジタバタと身じろぐが、動けば動くほど呼吸が荒くなる。おまけに、あらぬところが、あらぬことにらなっていることに気が付いてしまった。
えっ、俺、なんで勃ってんの…?
身をよじり、触れるところがやけに震える。
歩く振動すらも、何かおかしな感覚として奥に響く。
「やっ…しゅべ、るとさんっ、ひっ、も、おろしてっ、。」
「ふふっ、やだね。せっかく連れてこれたのに。」
歩く靴音が止み、ギィという重たい扉の開く音が聞こえた。視界がぼんやりとして、よく見えない。ここは一体どこだ。そんなふうに考えていると、身体が柔らかな上に落とされた。柔らかいが、少し狭い…。大きなソファの上。
「はぁ、はぁっ、ようやく君に触れることができる。」
「ひぅっ…、ぁっ。」
シュベルトの指先が頬をスッと撫でる。
指が首元を通ると、びくんっと肩が震えた。
「さぁ、私が楽にしてあげる…。」
言葉と共に向けられたのは、先程とは違う、狂気じみた恐ろしい笑顔だった。
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