【完結】ぶりっ子悪役令息になんてなりたくないので、筋トレはじめて騎士を目指す!

セイヂ・カグラ

文字の大きさ
36 / 65
男だらけの異世界転生〜学園編・第二部〜

見知らぬ人※


「君、フランドール・メディチくんだよね?」
「?はい。」
「私は、魔法師科2年目のシュベルト・ホイスト。ご一緒してもいいかな?」

 穏やかそうな笑みを浮かべた青年は、グラスを2つ持っている。そんなことよりフランドールが気になったのは、青年の背たけが自分とさほど変わりなかったことだ。同じ高さにある視線に興味が湧く。

「…魔法師科?ほいすとさん? 身長、俺とそんなに変わらないんですね、でかい。」

 ぼんやりと受け答えすると、青年は楽しげに笑った。

「ふふっ、君よりは小さいけれど。ねぇ、フランドールくんと呼んでもいいかな? 私のことは気軽にシュベルトと呼んで。」
「はい、シュベルトさん。」

 俺が頷くとシュベルトさんは、にっこりと微笑み、グラスを差し出してきた。
 先程まで飲んでいたものとは、どうやら違うらしい。
 そろそろ別の味も楽しみたいと思っていたところだ。
 俺は、喜んで酒を受け取り、初対面のシュベルトさんとグラスをぶつけ合った。
 酒を飲もうとグラスに口を近づけ、ふとキルトの言葉を思い出した。

「あっ、誰かからもらった酒は、飲むなっていわれたんだった。」
「どうして? 私も同じものを飲んでいるよ。だから、安心しなさい。」

 そう言われ、シュベルトさんのグラスを見ると同じ桃色の液体が入っている。ならば安心だ、と俺はグラスの中身を口に含んだ。やけに甘い、女の子が好きそうな酒だ。口に含むと薔薇のような香りが広がる。甘すぎて、あまり好みではない味だった。

「う~ん。」
「美味しくない? すこし甘すぎたかな。」
「甘すぎる、ます。」
「ふふっ、呂律が回ってないよ。」

 でも、先輩からの酒を断ったり、残したりしてはいけない…。
 いっつ、じゃぱにーずるーる!
 俺は意を決して、甘ったるい液体をゴクゴクと流し込んだ。
 喉に痛みを感じるくらい、甘い。

「いい飲みっぷりだね! じゃあ、これなんかどうかな?」

 俺の日本男児精神は先輩の気を良くしたようだ。
 次に渡されたのは、赤ワインだった。
 ぶどう果実の芳醇な香り、酸味は控えめで少し苦い。

「ん~っ、これ好きです、、。」

 先程のものとは違い、喉を通る心地よい酒の美味さに、にへらぁっと笑って返す。
 美味い酒に出会えるのは嬉しい。

「最高だ‥…。」
「へ?」
「なんでもないよ。」

 何か呟く先輩の声が小さくて聞こえない。聞き返してみたが、人の良い笑みではぐらかされた。たぶん、きっと、ただの独り言。
 なかなか始まらない婚約発表が気になって時計を探す。この世界の時間は前世と同じ。ただ、時計は円形と針で作られたものではなく、砂時計のような形をした瓶の中を真青な水が上ったり下りたりするのを見て確認する。会場の隅にある大きな水泡時計を見つけ、時間を見ると婚約発表まであと15分程あった。

 それよりも気になったのは、水泡時計の近くに居る見覚えのあるふたり。あまりに遠すぎて、ふたりが何を話しているのかは聞こえない。ただ視界に入るふたりは、とても仲睦まじい。ウェルに腰を抱かれ、リアゼルが頬を染めている。

「あっ……。」

 キスしてる。
 
 突然、ウェルがリアゼルを抱き寄せ唇を重ねた。会場には、きゃあっと声が上がり、ざわめきが広がる。顎を持ち上げ、髪を撫で、愛おしそうな目で見て離れていく。

 なんだ…、なんか、心臓痛い。
 おかしいな、変だ。
 これは、なんというか、悲しい…、のか?
 親友の恋を祝いたいのに、祝いたい、はずなのに。
 こんなの、おかしいよな。

 胸が苦しい、とかさ。

「…!……くんっ!……ドール…フランドールくん!」
「えっ…?」

 ハッとして頭を上げると、シュベルトが俺の両肩を強く掴んでいた。正面から覗き込む彼の表情は、少しだけ険しい。心配、してくれたのだろうか?

「すみません…、おれ、なんか、酔ったのかな…、ははっ。」

 自分でも分かる、乾いた笑い声。
 ああ、なんかやっぱり変。
 少し、休みたい。

「大丈夫? もしかして、ショックだったのかい? 彼らのキスが…。」

 ショック、その言葉にドクリと脈打つ。
 ショック?なんで俺が、そんな気持ち。

「わかり、ません…。俺には、何も、分からない。」

 途端に温かなぬくもりに包まれた。立ち尽くす俺をシュベルトさんが抱きしめているみたいだ。抱擁は決して強くない、解こうと思えば解ける。それでも、身を委ねてしまう。

「大丈夫だよ。フランドール君の言う通り、君はきっと少し酔ってしまったんだ。」
「……はい。」
「ねぇ、私の名前、覚えてる?」
「…? シュベルトさん。」
「うん、そうだよ。」
「ーーーーーーぁっ…?」

 名前を読んだ瞬間、身体が急にカッと熱くなった。血液が全身をものすごい勢いで回っていくみたい。呼吸が、心音が、速まっていく。

「はっ…はぁっ、はっ…。?、?、、??」

 足、力が抜けて、上手く立てない。
 俺は、自分の身体を支えきれずによろよろと床に座り込んだ。
 すると、シュベルトさんが心配そうに俺を引き上げ、立たせてくれる。
 支えがあっても立つのが困難で、ほぼ彼に体重を掛けた状態だ。

 身体…、熱い……っ。

「どうしたんだい? 酔ったのかな。少し、場所を変えて休憩しよう。」
「っ、すみません。でも、ダイジョ、ブですから。こんやく、はっぴょう、、はじまる。」
「立てないのに何を言っているんだ。さぁ、行くよ。」

 そう言って、シュベルトさんは俺の動かない身体を支えながら歩き始める。止めたくて抵抗しようにも、力が入らない。俺は、そのままズルズルと引きずられるみたいに会場外へと連れて行かれる。長く広い廊下をしばらく進むと、突然全身が宙に浮いた。

「えっ??」

 横抱きにされている。姫抱っこというやつだ。驚きのあまりジタバタと身じろぐが、動けば動くほど呼吸が荒くなる。おまけに、あらぬところが、あらぬことにらなっていることに気が付いてしまった。

 えっ、俺、なんで勃ってんの…?
 
 身をよじり、触れるところがやけに震える。
 歩く振動すらも、何かおかしな感覚として奥に響く。
 
「やっ…しゅべ、るとさんっ、ひっ、も、おろしてっ、。」
「ふふっ、やだね。せっかく連れてこれたのに。」

 歩く靴音が止み、ギィという重たい扉の開く音が聞こえた。視界がぼんやりとして、よく見えない。ここは一体どこだ。そんなふうに考えていると、身体が柔らかな上に落とされた。柔らかいが、少し狭い…。大きなソファの上。

「はぁ、はぁっ、ようやく君に触れることができる。」
「ひぅっ…、ぁっ。」

 シュベルトの指先が頬をスッと撫でる。
 指が首元を通ると、びくんっと肩が震えた。

「さぁ、私が楽にしてあげる…。」

 言葉と共に向けられたのは、先程とは違う、狂気じみた恐ろしい笑顔だった。

感想 22

あなたにおすすめの小説

悪役令息の七日間

リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。 気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】

断罪回避のはずが、第2王子に捕まりました

ちとせ
BL
美形王子×容姿端麗悪役令息  ——これ、転生したやつだ。 5歳の誕生日、ノエル・ルーズヴェルトは前世の記憶を取り戻した。 姉が夢中になっていたBLゲームの悪役令息に転生したノエルは、最終的に死罪かそれ同等の悲惨な結末を迎える運命だった。 そんなの、絶対に回避したい。 主人公や攻略対象に近づかず、目立たずに生きていこう。 そう思っていたのに… なぜか勝手に広まる悪評に、むしろ断罪ルートに近づいている気がする。 しかも、関わるまいと決めていた第2王子・レオンには最初は嫌われていたはずなのに、途中からなぜかグイグイ迫られてる。 「お前を口説いている」 「俺が嫉妬しないとでも思った?」 なんで、すべてにおいて完璧な王子が僕にそんなことを言ってるの…?  断罪回避のはずが、いつの間にか王子に捕まり、最後には溺愛されるお話です。 ※しばらく性描写はないですが、する時にはガッツリです

BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください

わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。 まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!? 悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。

氷の騎士団長様の悪妻とかイヤなので離婚しようと思います

黄金 
BL
目が覚めたら、ここは読んでたBL漫画の世界。冷静冷淡な氷の騎士団長様の妻になっていた。しかもその役は名前も出ない悪妻! だったら離婚したい! ユンネの野望は離婚、漫画の主人公を見たい、という二つの事。 お供に老侍従ソマルデを伴って、主人公がいる王宮に向かうのだった。 本編61話まで 番外編 なんか長くなってます。お付き合い下されば幸いです。 ※細目キャラが好きなので書いてます。    多くの方に読んでいただき嬉しいです。  コメント、お気に入り、しおり、イイねを沢山有難うございます。    

転生先のぽっちゃり王子はただいま謹慎中につき各位ご配慮ねがいます!

梅村香子
BL
バカ王子の名をほしいままにしていたロベルティア王国のぽっちゃり王子テオドール。 あまりのわがままぶりに父王にとうとう激怒され、城の裏手にある館で謹慎していたある日。 突然、全く違う世界の日本人の記憶が自身の中に現れてしまった。 何が何だか分からないけど、どうやらそれは前世の自分の記憶のようで……? 人格も二人分が混ざり合い、不思議な現象に戸惑うも、一つだけ確かなことがある。 僕って最低最悪な王子じゃん!? このままだと、破滅的未来しか残ってないし! 心を入れ替えてダイエットに勉強にと忙しい王子に、何やらきな臭い陰謀の影が見えはじめ――!? これはもう、謹慎前にののしりまくって拒絶した専属護衛騎士に守ってもらうしかないじゃない!? 前世の記憶がよみがえった横暴王子の危機一髪な人生やりなおしストーリー! 騎士×王子の王道カップリングでお送りします。 第9回BL小説大賞の奨励賞をいただきました。 本当にありがとうございます!! ※本作に20歳未満の飲酒シーンが含まれます。作中の世界では飲酒可能年齢であるという設定で描写しております。実際の20歳未満による飲酒を推奨・容認する意図は全くありません。

転生令息は冒険者を目指す!?

葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。  救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。  再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。  異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!  とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。

BLゲームのモブに転生したので壁になろうと思います

BL
前世の記憶を持ったまま異世界に転生! しかも転生先が前世で死ぬ直前に買ったBLゲームの世界で....!? モブだったので安心して壁になろうとしたのだが....? ゆっくり更新です。