57 / 65
男だらけの異世界転生〜恋編〜
俺の弟が怖い※
しおりを挟む「兄さん、処女じゃないんだね。」
「…悪夢。」
「悪夢? これは現実。酷いね、兄さん。」
肩を態とらしく竦めて、俺を見下ろすアシュルは冷たい目をしていた。今までの人生、これほどまでに弟を怒らせたことはない。端的に言えば、非常に恐ろしかった。そんで俺の腰は重くなって、動けなかった。
「答えてよ、兄さん。あの日、聞きたいことがあるって言ったでしょ。」
「何を?」
「あの馬鹿王子とセックスしたの?」
「なっ、馬鹿って、アシュルそれは失礼だぞ!」
「うるさい‼ 黙って答えてよ‼」
黙るのか、答えるのか。言葉がごちゃごちゃだ。アシュルは、胸を抑えるように服の胸元を握りしめた。まっすぐに向けられた怒り。俺が答えあぐねて黙り込むと、アシュルはより一層、顔を歪めた。
「ずっと守ってきたのに…。」
アシュルの身体を不穏な魔力が包み込む。
息が苦しくなるくらい重たい魔力。
「兄さん、はじめてのセックス気持ちよかったでしょ?」
「な、に、、」
「ねぇ、全部思い出して。僕が兄さんの身体にたくさん教えたんだよ。」
「……っ‼」
アシュルの手が頬を包み込む。少し退いた俺の背に片腕を回すと、唇に唇が合わさった。舌が固く閉じる隙間を舐める。不意に背を撫でられ、身体の力が抜ける。それと同時に舌が入り込んできた。
「ふ…、ん、、はっ、ぁ」
腰がぞくぞくと震える。歯列、上顎、舌の裏、喉の奥。食べるみたいに舌が口の中を全部撫でていく。離してくれと、アシュルの服を掴むが力ないそれは、縋るみたいになってしまう。舌から温かい魔力が流れ込んできて、身体がどんどん熱くなった。
「ふふっ、接吻だけでとろとろだ。」
アシュルがとろけた顔で、俺を『とろとろ』だという。呼吸を整えながら弟の顔を眺めていると、突然多大な量の映像が頭の中に流れ込んできた。
「うううっ、な、ああっ。」
その膨大な記憶に絶えられず、頭を抱え込む。
なんだこれ、なんだこれ。
おれと、あしゅる…?
「思い出した? 僕が兄さんに教えた、気持ちいいこと…♡」
頭ん中、ぐるぐるする。異様な吐き気。何故、今まで忘れていたのか。混乱が俺を支配していく。次々に思い出されるアシュルとの『イケナイ遊戯』とっくにやめたはずのこと…。
「ふーーー、ふーーーーっ。」
「一気に思い出させたから驚いちゃったかな。気持ちいいこと、たくさんしたよね。僕、兄さんに大好き、愛してるってたくさん言ったよ。兄さんが僕を男として見てくれる日のために、たくさん開発したんだ。兄さんの身体は覚えるのが早くて、どんどんもっともっと教えたくて…でも、初めてだけはちゃんとしたかったから。大事に大事にしてた。」
アシュルは、ニコニコと楽しそうに、それこそ宝物を眺めるみたいに俺を見た。
「なのに…、ひどい!ひどいよ兄さん‼」
顔を覆うように頭を抱え込んで叫ぶ。
「兄さんは、僕のモノでしょう!」
俺は、呆然とアシュルを見た。
アシュルは、いつだって落ち着いていた。もちろん甘えてくる日もあるけれど冷静すぎるほど、年齢に似合わない大人びたものを感じていた。俺のことを心配する以外で取り乱すことは無かった。だから、こんな姿は見たことがない。
「おれ、俺もお前に聞きたいことがあるんだ。」
俺は、何故かあまり関係のない話を始めようとしている。自分でもよくわからない。ただ、落ち着かせたいだけかもしれないし、話を逸らしたいだけかもしれない。でも、これは聞いておかなくちゃならないと思った。俺だって、まだアシュルの質問に答えていないけど。それでも、聞かなくちゃ。
流れ込んできた記憶の中のアシュル。俺の知らないことを知っていて、とにかく快楽に落とされて、巧妙な愛撫に追い詰められた。服を脱がす指先、肌に触れる指先、性感帯に触れる指先、キス、全てが手慣れた行為。今日見てしまった武器庫での少年との交わり。
「そういうことする相手が…、たくさんいるのか?」
今日、確かに聞いた言葉の数々。
それは一度きりしか聞いていないのに俺の脳へとこびりついた。
『えっちの練習』
『ぼくをつかってよぉ』
『お前は肉の塊』
『穴がゆるくなっちゃ意味がない』
『黙れ!うるさい!』
可愛くて優しくて天使のような弟が、こんな、まるでクズみたいな…。
ヤリチンみたいな…!
そんなわけ、そんなわけないよなぁ!
「ん? ああ、セックスの相手?」
お、オブラートに包んだのにぃっ。
「そ、そうだ。」
「まぁ、5~6人くらい? あれ、もっと居たかな。わかんないや。」
やめてくれ…。
そんな、俺の天使が…。
「う、嘘だよな? 冗談だろ、アシュル。さすがに笑えないぞ。」
「何が? 兄さんのためだけど。」
「お、れ?」
「だから、この間も言ったと思うよ僕。『たくさん練習した』って。だって、兄さんのこと気持ちよくしてあげたかったから。下手だと怪我させちゃうし、気持ちよくないって思われたくないし。何人も試して、練習して、良いとこ見つけて、統計出して…。だから、僕上手だったでしょ♡ はじめての日は絶対に失敗したくなかったんだ。」
そう得意げに言って、アシュルは笑った。
「そんな、お兄ちゃんは許しません!」
「なんで?」
「だって、そんな、不埒なこと…。」
「は?」
ギロリと睨まれて、怯んでしまう。
えっ、なに、もしかして反抗期突入?
やだ、やだやだ!いやだよう!
「それ兄さんに言えるの?」
「うぐっ…。」
「僕は兄さんのためにやってるんだよ。」
「俺のためって、、でもっ、」
「それなのに、兄さん勝手に馬鹿王子に処女捧げて…。今までの努力が水の泡。僕の気持ち分かる?!」
俺は、アシュルの腕を掴んだ。
何とか、伝えなければ。でも何を言えば良いんだ?
いや何を言いたいんだ、俺は…。
俺だって大概、不埒じゃないか。
「あのさ、言ってしまうけど。僕、兄だなんて一度も思ったことないから。」
118
あなたにおすすめの小説
妹を救うためにヒロインを口説いたら、王子に求愛されました。
藤原遊
BL
乙女ゲームの悪役令息に転生したアラン。
妹リリィが「悪役令嬢として断罪される」未来を変えるため、
彼は決意する――ヒロインを先に口説けば、妹は破滅しない、と。
だがその“奇行”を見ていた王太子シリウスが、
なぜかアラン本人に興味を持ち始める。
「君は、なぜそこまで必死なんだ?」
「妹のためです!」
……噛み合わないはずの会話が、少しずつ心を動かしていく。
妹は完璧令嬢、でも内心は隠れ腐女子。
ヒロインは巻き込まれて腐女子覚醒。
そして王子と悪役令息は、誰も知らない“仮面の恋”へ――。
断罪回避から始まる勘違い転生BL×宮廷ラブストーリー。
誰も不幸にならない、偽りと真実のハッピーエンド。
転生令息は冒険者を目指す!?
葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。
救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。
再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。
異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!
とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A
【完結】流行りの悪役転生したけど、推しを甘やかして育てすぎた。
時々雨
BL
前世好きだったBL小説に流行りの悪役令息に転生した腐男子。今世、ルアネが周りの人間から好意を向けられて、僕は生で殿下とヒロインちゃん(男)のイチャイチャを見たいだけなのにどうしてこうなった!?
※表紙のイラストはたかだ。様
※エブリスタ、pixivにも掲載してます
◆この話のスピンオフ、兄達の話「偏屈な幼馴染み第二王子の愛が重すぎる!」もあります。そちらも気になったら覗いてみてください。
◆2部は色々落ち着いたら…書くと思います
最強βの俺が偽装Ωになったら、フェロモン無効なのに狂犬王子に求愛されました~前世武道家なので物理で分からせます~
水凪しおん
BL
前世は日本の武道家、今世は平民β(ベータ)のルッツ。
「Ωだって強い」ことを証明するため、性別を偽り「Ω」として騎士団へ入団した彼は、その卓越した身体能力と前世の武術で周囲を圧倒する。
しかし、その強さと堂々とした態度が仇となり、最強のα(アルファ)である第一王子・イグニスの目に止まってしまった!
「お前こそ俺の運命の番だ」
βだからフェロモンなんて効かないのに、なぜかイグニスの熱烈な求愛(物理)攻撃を受ける日々に突入!?
勘違いから始まる、武闘派β×最強王子のドタバタ王宮BLファンタジー!
捨てられた生贄オメガ、魔王城で極上の『巣作り』始めます!~不眠症の魔王様、私のクッションで爆睡して溺愛モードに突入~
水凪しおん
BL
「役立たずのオメガ」として冷遇され、血も涙もない魔王への生贄として捨てられたリノ。
死を覚悟して連れてこられた魔王城は、寒くて硬くて、居住性最悪のブラック環境だった!?
「こんなところで寝られるか!」
極限状態で発動したオメガ特有の『巣作り本能』と、神業レベルの裁縫スキルが火を噴く!
ゴミ同然の布切れをフカフカのクッションに、冷たい石床を極上のラグマットにリフォーム。
すると、不眠症で常にイライラしていた魔王ザルドリスが、リノの作った「巣」のあまりの快適さに陥落してしまい……?
「……貴様、私を堕落させる気か」
(※いいえ、ただ快適に寝たいだけです)
殺されるどころか、魔王様に気に入られ、気付けば城中がリノの虜に。
捨てられた生贄オメガが、裁縫一つで魔王城を「世界一のマイホーム」に変える、ほのぼの逆転溺愛ファンタジー!
王家の影一族に転生した僕にはどうやら才能があるらしい。(完結)
薄明 喰
BL
アーバスノイヤー公爵家の次男として生誕した僕、ルナイス・アーバスノイヤーは日本という異世界で生きていた記憶を持って生まれてきた。
アーバスノイヤー公爵家は表向きは代々王家に仕える近衛騎士として名を挙げている一族であるが、実は陰で王家に牙を向ける者達の処分や面倒ごとを片付ける暗躍一族なのだ。
そんな公爵家に生まれた僕も将来は家業を熟さないといけないのだけど…前世でなんの才もなくぼんやりと生きてきた僕には無理ですよ!!
え?
僕には暗躍一族としての才能に恵まれている!?
※すべてフィクションであり実在する物、人、言語とは異なることをご了承ください。
色んな国の言葉をMIXさせています。
本作は皆様の暖かな支援のおかげで第13回BL大賞にて学園BL賞を受賞いたしました!
心よりお礼申し上げます。
ただ今、感謝の番外編を少しずつ更新中です。
よければお時間のある時にお楽しみくださいませ
【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました
* ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。
BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)
本編完結しました!
おまけのお話を時々更新しています。
きーちゃんと皆の動画をつくりました!
もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。
インスタ @yuruyu0 絵もあがります
Youtube @BL小説動画
プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら!
本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
新年に余り物でおせちを作ったら、冷酷と噂の騎士団長様に「運命の番」だと求婚されました
水凪しおん
BL
料理人だった俺が転生したのは、男性オメガというだけで家族に虐げられる不遇の青年カイ。
新年くらいはと前世の記憶を頼りに作ったのは、この世界にはない『おせち料理』だった。
それを偶然口にしたのは、氷のように冷酷と噂される最強の騎士団長リアム。
「お前は俺の運命の番だ」
彼の屋敷に保護され、俺の作る料理が彼の心を溶かしていく。
不器用で、だけどまっすぐな愛情を注いでくれる彼と、美味しい料理で紡ぐ、甘くて温かい異世界スローライフ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる