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番外編:彼らの秘密
番外編:サドがマゾと出会ったら
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▼Side アシュル
兄さん…!兄さん…!兄さん…!
フランドール…っ!
『アシュルも男の子だったんだなぁ…』
兄さんに抱き締められるのが好きだ。
兄さんの大きな胸に埋もれて窒息しそうになると、たまらなく興奮した。
それから、とても安心した。
でも今日は、いつもと違った。抱き締められて嬉しいけれど、それが慰めだと分かっていたから酷く苦しかった。
兄さんの胸が大きいからじゃない、僕の胸の中が苦しくて息ができなかったんだ。
フランドールの体温を、声を、今だけは忘れたい。
誰かに心を奪われて、幸せそうにけれども恋に苦しむ彼の優しい顔を忘れたい。
アシュルは、息が絶え絶えになるのも構わずただひたすらに走った。
無我夢中に夜の中、寮から抜け出し、賑わう街を駆け抜けた。
「ふっ、ふぐぅうう、ううう」
いよいよ走り疲れて、トボトボと泣きながら歩いていると、ドンっと壁にぶつかった。
壁?いや、壁にしては柔らかい。
この埋もれる感触…まるで、兄さんのおっぱいみたい。
心地よさに壁にくっついていると、その壁から響くような振動がした。
「やぁ、お兄さん。そんなに泣いてどうしたの?」
ああ、これは声の振動だ。
「もしかして振られちゃった? だったら寄っていきなよ。カワイイ子に慰めてもらいな」
いつの間にか、繁華街に来てしまっていたようだ。
厄介な客引きか、なんて思いながら顔を上げる。
「……あんた、いくら?」
「え…?」
大男は、困惑した様子で聞き返してきた。
「だから、アンタいくら?」
「は…、あ、、オレは、雄嬢じゃねぇよ」
薄暗がりなら黒髪にも見えなくもない焦げた茶色い髪は目にかかるくらいに長い。表情は見えないが、醜い顔ではないな。見上げた男の胸は広く、けれども使われる筋肉ではなく見せるための筋肉の付き方をしている。どこからどう見ても、少しガタイが良いだけの普通の男。
「アンタ、金に困っているんじゃない?」
「なっ、あ、」
平民といっても下の方のカーストか。
学も無さそう。
目の隈を見るに昼も働いている様子、服が汚れている、ペンキ屋の雇われか。
雄嬢としては売れないから客引きやってるってところだな。
「ほら、一晩で金貨2枚あげる。」
金をちらつかせれば、男はゴクリと固唾をのんだ。
「僕は、貴族だよ。命令ではなく、金を払ってやると言っているんだ。頷きなさい」
「そ、そんな」
「簡単でしょ、僕を慰めてくれれば良いんだよ? お前がもしも良い子で、僕をとっても満たしてくれたら、定期的に会って…‥」
この男では一生掛かっても稼げない金を耳打ちしてやると、男はあからさまに口角を持ち上げた。
最下層の人間だ、飽きたらその辺に捨てれば良い。
面倒なら適当に始末しよう。
今夜はただ、この胸の苦しみを慰めて貰えればそれで良い。
この苛立ちも悲しみもこの男にぶつけてやればいい。
「さぁ、行こうか。優しくしてあげるからね」
アシュルは、この時、知らなかったのだ。
自分の加虐性を求める者が存在するということを…
アシュルのすることなすこと全てに、男が悦びを見せることになるということを…
兄さん…!兄さん…!兄さん…!
フランドール…っ!
『アシュルも男の子だったんだなぁ…』
兄さんに抱き締められるのが好きだ。
兄さんの大きな胸に埋もれて窒息しそうになると、たまらなく興奮した。
それから、とても安心した。
でも今日は、いつもと違った。抱き締められて嬉しいけれど、それが慰めだと分かっていたから酷く苦しかった。
兄さんの胸が大きいからじゃない、僕の胸の中が苦しくて息ができなかったんだ。
フランドールの体温を、声を、今だけは忘れたい。
誰かに心を奪われて、幸せそうにけれども恋に苦しむ彼の優しい顔を忘れたい。
アシュルは、息が絶え絶えになるのも構わずただひたすらに走った。
無我夢中に夜の中、寮から抜け出し、賑わう街を駆け抜けた。
「ふっ、ふぐぅうう、ううう」
いよいよ走り疲れて、トボトボと泣きながら歩いていると、ドンっと壁にぶつかった。
壁?いや、壁にしては柔らかい。
この埋もれる感触…まるで、兄さんのおっぱいみたい。
心地よさに壁にくっついていると、その壁から響くような振動がした。
「やぁ、お兄さん。そんなに泣いてどうしたの?」
ああ、これは声の振動だ。
「もしかして振られちゃった? だったら寄っていきなよ。カワイイ子に慰めてもらいな」
いつの間にか、繁華街に来てしまっていたようだ。
厄介な客引きか、なんて思いながら顔を上げる。
「……あんた、いくら?」
「え…?」
大男は、困惑した様子で聞き返してきた。
「だから、アンタいくら?」
「は…、あ、、オレは、雄嬢じゃねぇよ」
薄暗がりなら黒髪にも見えなくもない焦げた茶色い髪は目にかかるくらいに長い。表情は見えないが、醜い顔ではないな。見上げた男の胸は広く、けれども使われる筋肉ではなく見せるための筋肉の付き方をしている。どこからどう見ても、少しガタイが良いだけの普通の男。
「アンタ、金に困っているんじゃない?」
「なっ、あ、」
平民といっても下の方のカーストか。
学も無さそう。
目の隈を見るに昼も働いている様子、服が汚れている、ペンキ屋の雇われか。
雄嬢としては売れないから客引きやってるってところだな。
「ほら、一晩で金貨2枚あげる。」
金をちらつかせれば、男はゴクリと固唾をのんだ。
「僕は、貴族だよ。命令ではなく、金を払ってやると言っているんだ。頷きなさい」
「そ、そんな」
「簡単でしょ、僕を慰めてくれれば良いんだよ? お前がもしも良い子で、僕をとっても満たしてくれたら、定期的に会って…‥」
この男では一生掛かっても稼げない金を耳打ちしてやると、男はあからさまに口角を持ち上げた。
最下層の人間だ、飽きたらその辺に捨てれば良い。
面倒なら適当に始末しよう。
今夜はただ、この胸の苦しみを慰めて貰えればそれで良い。
この苛立ちも悲しみもこの男にぶつけてやればいい。
「さぁ、行こうか。優しくしてあげるからね」
アシュルは、この時、知らなかったのだ。
自分の加虐性を求める者が存在するということを…
アシュルのすることなすこと全てに、男が悦びを見せることになるということを…
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