【完結】大金を手に入れたので奴隷を買った!

セイヂ・カグラ

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1話:大金を手に入れたので奴隷を買う。

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「えっ、はっ、ははは、マジ?」


 気まぐれに馬券を買ったら、当たった。
 500ピラールが55,000,000ピラールになった。





 その日暮らしの貧乏人。
 呑んだくれの親父が作った借金を返す日々。母親は呆れ、俺を置いて出て行った。行方は知らん。当の親父は数年前に馬車で轢かれてコロッと死んだ。残ったのは親父の服と家と借金。

 オンボロだが、屋根があるだけマシな狭い家。部屋にあるのは、どこかから拾ってきた古びたベッド、ペラペラの布と硬い布団。それから小さいテーブルともう必要のない2脚の椅子。ヨレヨレの服、欠けた花瓶、雨漏りを受け止めるブリキのバケツ、雑巾。必要最低限の物だけ。とくに魔法能力もなく、武術に長けているわけでもない俺。ギルドに行って受けられる仕事は、薬草摘みか犬の散歩、家の掃除。でも、そんな簡単な仕事も魔法の使えるガキに持っていかれる。最近じゃあ、ギルドの奴らにすら煙たがられている。仕事にありつくのもやっと。俺は、この世界で、とにかく使えなかった。

 やっと金ができたら減ることのない借金を返して、残した50ピラールでパンを買う。毎日そんな生活をしていると、ふと思うわけだ。『あー、俺、何のために生きてるんだろう。』って。そんで、ぐるぐる考えてたら借金返すのも生きているのも馬鹿らしくなって、パンじゃなくて馬券を買った。死のう、死ぬ前に金を使ってやろうじゃないか。手に握りしめた全財産500ピラールが無くなったら、俺は死ぬんだ。人生で最初で最後の娯楽。

 正直、死ぬ気でいる俺的には、全財産の掛かった馬が走っていても案外つまらなかった。走る馬をぼーと見ながら、どうやって死のうか模索していると番号が高らかに叫ばれた。

「3番5番7番2番!! 3572! 3572!」

 3572…。
 当たるなんてはじめから思っていない。
 これは、気まぐれ。 
 人生で最初で最後の娯楽。
 そう思いながらも、選んだ番号の印字された紙を見て目を疑った。
 
「さん、ご、なな、に……」
 
 適当に選んだ数字だ。
 自分が何を選んだかも覚えていない。
 でも、その紙には確かに叫ばれた数字と同じ数字が書かれている。

「うそ…、だろ…、、?」

 何度も見返した。だが、その数字に間違いはない。ドグドグと心臓が激しく動く音がした。これなら…、毎日増える借金を一括で返せる。腹いっぱい食える。好きなものも買える。遊んだって良い…。

 俺は馬券をすぐに換金して、ギルドの銀行口座にぶち込んだ。入ってきた金を下ろすだけで、今まで意味を成さなかった口座に多大な貯蓄…。俺は、喜びに震えた。それから一括で借金を返済して、とある店に入った。

 店構えは普通の酒屋。 

 だが、店の奥にある扉を開けると、左右に扉がある。右は便所、左は掃除用具入れ。掃除用具入れの方の扉を開けると、実は更に扉がある。小さなトンネルのような道を屈みながら進むと、またも扉。とても重たい扉を全体重を掛けて開け、中に入る。すると、今度こそ広い部屋が現れた。

「おや…、また売られに来たんですか?」

 部屋に入るなり、そう言われる。
 
 俺がこの奴隷オークション会場を知っている理由。それは以前、クソ親父に売られた事があるからだ。まぁ結局、俺みたいな魔法も使えず、平凡で背だけのっぽな痩せ細った男なんて商品にはならなかった。1ピラールで一応オークションに出たは良いが、値が付かなくて返品された。そんなやつ今までいないらしく、散々馬鹿にされた。本当、せめて売れたら良かったものの最悪の思い出。

「違がいますー。逆だよ、逆。買いに来たんだ。」
「ぷっ…、あなたが?」

 笑うな、腐れ眼鏡。
 本当、品を被っただけの下品な男だな。

「ふっ、馬券が当たったんだよ。」

 ガキや女や美青年を拾ったり拐ったり、親が売りに来たり。そんで変態や奴隷が欲しい金持ちが買う。ここは、そういう最悪の場所。だが、そんなの俺にとってはどうでもいいこと。関係ない。興味もない。

 なぜなら俺は、とにかく働きたくないからだ。
 金の心配をしたくない。
 働かずにゆっくり過ごしたいんだよ!
 欲を言うなら遊びたい!
 ああ、それと余談だが、俺は男が好きだ。
 それもとびきり綺麗な男が。

 どうせ55,000,000ピラールなんて生活すれば無くなる。すでに借金返して-3,000,000ピラール。この金で一生は暮らせない。金があっても、学のない俺に経営はできないし、働き口もないんだ。ならば、働いてくれる奴を探すしかない。頭のいいヤツに考えてもらうしかない。


 腐れ眼鏡に持って来た金を半分だけ見せると、渋々中に入れてくれた。「その額じゃ、安物しか買えませんけどね。」とまた鼻で笑われる。これで、安物か…。奴隷って案外高いんだな。結局通されたのは、後方端っこの誰もいない狭い席。別に、ここからでも奴隷の顔は見えるから別にいいけど。

 座る客の服は、高そうだ。どうやって入ってきたのか分からん、でっぷりと太ったやつばかり。きっと、別の入口があるのだろう。金持ちの奴らに比べ、俺の服はボロくて汚いし、俺自身は骨と皮。誰がどう見てもこの場には相応しくない。少し緊張してくる。

 程なくして、オークションがはじまった。
 最初は、若い女、子ども、少年少女、ガタイの良い男……。
 どれも俺の好みではない。
 ぼーと観ていたステージの鳥籠に目を奪われた。
 照明が反射してキラリと光る銀髪。
 誰もが息を呑むほどの美形。
 耳の先はツンっと尖っている。
 あれは…、エルフか?
 いや、尻尾がある。まさか魔族?

「ご覧くださいとても美しい顔立ちをしています。安心してください。見ての通り魔族のオスですが、まだ若いです。強い奴隷紋を首に着けてあるので躾も容易ですよ。懐けば最強のペットになります。さぁ、100万ピラールから!」

 なんて綺麗な顔立ちなんだ…。
 それに、懐けば最強になるだって?
 だが、魔族は凶暴だと言うし。
 若くても、子どもでも力は強大だと聞く。
 大人になれば絶対に敵わない、なぶり殺される日を待つようなものだ。
 魔族は皆美しいそうだ。そしてその美しさに惑わされる人間は多い。
 むしろ魔族の奴隷なのは俺たち人間の方…。
 実際、『魔族』というのを聞いて会場には悲鳴やどよめきが広がった。
 明らかに嫌悪する者もいる。
 100万ピラールか…初っ端の金額にしては安いな。
 
 くぅ…!正直言ってめちゃくちゃ好みではある!
 

 俺は、今日初めて札を上げた。

「150万ピラール!」
「お150万!150万!よろしいですか?」

 魔族のオスなんて買うやつはいないだろう。
 そう高を括っていたら、俺の他に一つ声があがった。

「500万」
「ご、500万!500万!」

 はっ⁉ おいおいまじかよ、オッサン!
 魔物に500万は、跳ねすぎだ。

 最前席にいる相当金のありそうなオッサンが札を上げた。でっぷりと太っている他の金持ちとは違い、背中しか見えないが引き締まった身体をしている。鍛えているようだ。髪は、黒…? いや、光の加減で青みがかっても見えるな。肩まである髪は、ふわふわ。肌が褐色なのは、異国の人ということか。俺とは、まるで正反対の人。競えるとしたら背の高さくらい。

 だが、俺は負けたくない。
 だって、アイツが欲しいんだ!
 鎖に繋がれながらも客席を睨むあの瞳がすげぇ良い!


「550万!」
「600万」
「680万…!!」
「700万」
「800万!!」
「900万」

「1000万…!!」
「ぃ、いっ1000万!1000万!決まりでしょうか?!」
「1500万」

 クッソォー!!
 最前席に座る顔も見えない男との競合い。
 こうなると、何となく意地が湧いてくる。
 ギャンブル好きの親父の血を引いてる俺は十分馬鹿だったわけだ。
 
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