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4話:憧れの庭付き一軒家♡
しおりを挟むいやー、綺麗なやつに綺麗な服を着せるってのは最高に楽しい。ローレンスはスタイルも良いし、美人だし、ついつい買いすぎてしまうところだった。でも、そう無駄遣いはできんので、今回はローレンスの新しい服を2セット。あとは、古着を購入した。俺はこだわりがないので、全部古着。安くて上質な服が手に入ってラッキーだ。ああ、あと新品で寝間着を二人分買った。
さて、それから不動産屋に来たわけだが、何とこれまたラッキーなことにとても良い家が売り出されていた。それもつい最近、一人で住んでた婆さんが死んだとかで空き家になったらしい。築年数が古いうえに、森に近く街から少し遠いのと、婆さんがその家で死んだのとで、庭付きなのに安い。これで憧れの家庭菜園ができる。言うまでもないが、湯浴び場もある!
庭付き一軒家、土地代込みで、なんと!
300万ピラール!
なんか俺、最近すごく運が良い。
良いことありすぎて怖いわー、って思いながら内見したら、おまけに家具付きだったので即契約。一括払いで購入した。ちなみに、何の思い出もない俺のオンボロ家だが。家自体は売れないが、どうやら土地には街中ゆえ、それなりの価値があるらしい。大したものは無いけど、一応荷物もあるので、まだ売らない。余程困ったときのために、取っておくつもりだ。
洋服代◯q-12,000
一軒家◯q-3,000,000
残 高◯q988,000
「さぁ、ローレンス、ここが俺たちの新しい家だ!」
鍵を受け取り、さっそく今日からここに住むことにする。善は急げというやつだ。つい最近まで婆さんが住んでいたというおかげか、家は綺麗。マットレスもベッドもあるので、追加でシーツだけ買った。広々としたダブルベッド、贅沢な婆さんだぜ。ソファーに腰を掛けて家を堪能していると、立ち尽くしたままのローレンスが小さく息を吸った。
「……アンタ、馬鹿だな。」
ずっと無言だったローレンスが一言そう言った。
急に喋りだしたかと思ったら、ヒドイやつ。
「馬鹿で悪かったなー。」
「アンタさ、、」
「ゼンだ。俺、一応、ご主人様! ゼン様と呼べー。」
「……やっぱ馬鹿だ。」
「へーへー、馬鹿ですよ。」
「魔族があんな金額になるわけ無いだろ。」
確かに、そうだ。明らかに青年期を迎えたであろう魔族は、脅威の対象。本来なら殺処分だろう。でも、何故かコイツは殺されずにいた。それと随分高値で買わされたのも、偶然じゃない。大方、わざと競合いをさせて金額を上げていった。あの腐れ眼鏡は、知っていたんだ。今回の馬券が何倍になるか、俺がどれくらい金を持っているのかも想像がついていたはず。俺は馬鹿だが、阿呆じゃない。騙されたのも、カモにされたのも分かっている。
「だって、欲しかったんだもん。ローレンスがあんまりに綺麗だからさ。」
「…なんだ、オレを性奴隷にでもするつもりか。」
「んー、まぁ、それもアリだな。」
ニヤッと笑って見せると、ローレンスは明らかに青ざめる。
ま、そうなったら抱かれるのはお前じゃなくて、俺の方だけどなー。
俺、抱かれたい派なんで。
まだ、経験したこと無いけど…。
「こんなに金を使って、オレが逃げたらどうするつもりだ。」
「えー、だって逃げられないでしょ。奴隷紋あるし。」
「殺せば無効になる。」
「わーお、そりゃ、怖いね。」
ソファーに座ったまま、ローレンスを引き寄せる。いつも不思議なのは、心は開かないのに俺が触れても拒まないし、案外従順なこと。引き寄せたローレンスの首に腕を回して、俺はこの美しい魔物を眺めた。ああ、やっぱり信じられない。こんな綺麗な人が俺の側にいる。俺のもの…。
「でも良いよ。ローレンスに殺されるなら、それで良い。いいや、それが良い。最後の記憶が、お前だったら俺は死ぬときとても幸せだろうな。」
だから、いつか、お前の手で殺してくれよ。
「気持ち悪い…。」
そう言って、ローレンスは俺の腕の中から逃げてしまった。
やっぱそうだよなって納得する。俺みたいな背だけでかい平凡な男に言い寄られても気持ち悪いだけだろう。俺だって、ローレンスを汚すようなことはしたくない。だって、こんな綺麗なものに俺が、そんな触れ方したら汚れてしまう。それは、あまりに勿体ない。この美しい人を前に、そんなのは冒涜である。俺は不浄、ローレンスは純白。だから、抱いてくれと言うつもりもさらさら無い。性奴隷になんてしない。俺は男が好き、ローレンスが好み、それだけ。
「はははっ…、辛辣だね。」
だから、お前を好きになってしまわないように俺は気を付けなくちゃいけないね。
■
部屋は綺麗だが、やはり数週間でも人が居なくなるとホコリが溜まるらしい。俺的には、家具付きでお得だと思ったこの家は、金目の物と食料なんか以外は殆どそのまま。婆さんの娘という人はお嫁に行って、今はこの街に住んでいないそうだ。後片付けは難しいので、購入者に任せるという判断。とりあえず、残されたホウキや雑巾を使い、ローレンスと手分けして部屋の掃除をはじめた。
この家は、居間の見える台所、寝室、書斎、空き部屋、手洗い場と水浴び場、畑のある広い平屋。2階はないが、ロフトがある。ソファーやテーブル、食器棚、ベッド、ランプ、書斎の机、椅子などが残されていた。小物も少し残っていて、数枚の皿とグラス、スプーンとフォークが2セットずつあった。なにより一番驚いたのは、大量の古い本。書斎の壁を埋めるようにびっしりと並べられていた。本は貴重だ。娘さんは何故、本を置いて行ったのだろう。価値があるので売れると思うんだけど。まぁ、興味のない人からすれば、どんな物も『いらない物』になってしまう。逆に『いらない物』に価値を見出す人もいる。不思議なものだ。ちなみに俺も本には興味がない。理由は単純、俺には学がなくて難しい文字が読めないから。
居間の掃除を終えて、ベッドのシーツを取り替えたので、ローレンスの様子を見に行く。ローレンスには先程、書斎の掃除を頼んだ。
「進んだかー?」
本まみれの書斎に入ると、ローレンスが立ったまま、本を開いてじっくりと紙を凝視している。俺の声かけに気がついていないのか、心地よい紙の音を立て、長い指先で頁を丁寧にめくっている。その瞳は心なしか輝きを見せていた。尻尾も楽しげに揺れている。真剣に本を読むローレンスは、いつにもまして綺麗だ。中性的で、華やかで、そこにいるだけで花が綻ぶような品のある姿。そんなローレンスに俺は見惚れていた。しばらくして俺の存在に気が付いた彼に強く睨まれ、我に返った。
「本、好きなの?」
「……別に」
ローレンスは、パタンっと本を閉じて棚にしまってしまう。
尻尾がピンッ!と張っている。
素直じゃないやつ。
あんな真剣になって読んでおいて、興味ないわけないだろ?
「じゃあ、この部屋はお前にやるよ。」
「…いらん」
「ふーん、そうか。なら、この本は全部燃やすか売りに出すかだな。俺、難しい文字読めないから興味ないし。邪魔だから早速、明日にでも、」
「や、わ、わかった、いる…、オレによこせ。」
ちょっとだけ焦ったように口を挟むローレンスに、俺はニンマリ笑って「そんなに言うなら、仕方がないなぁ!」と書斎をくれてやることにした。ローレンスを買ってまだ数日だが、彼には可愛げがあると感じる。表情筋の死んだローレンスの焦った声も聞けたし、おまけに本が好きだということも知れた、今日は大収穫だな。
俺は上機嫌に書斎を出て、台所周りの掃除をはじめた。
「あ…、ベッド一つしかない。」
そのことに気が付いたのは、夕食を終え、湯浴びを済ませた、寝る頃になってから。どちらかがソファーで寝るという選択肢もあるが、今日は互いに疲れている。結局、広いダブルベッドということもあって、一緒に寝ることにした。
「さぁ、寝るぞ。」
そう言って、ローレンスを寝室まで連れてくる。
すると、彼の表情が少し強張った。
「なんだ、寝ないのか?」
いつもなら言われるがままについて来るのに、ローレンスは扉の前につっ立って動かない。
パジャマ姿でも可愛いなぁ、なんて思いながら様子のおかしいローレンスに俺は首を傾げた。
どうしたものかと、様子を見ているとローレンスが唇を噛んでいる事に気が付く。
手はギュッと拳を握り、表情は一段と暗い。
尻尾は小さく丸くなって、ローレンスの右足に絡みついていた。
まさか、俺に襲われると思ってるのではないだろうか。
奴隷として売り出されていたくらいだ、そういう目的で別の誰かに買われていたとしてもおかしくない…。
「一人で寝たいならソファーでもいいけど、明日も忙しいぞ。今夜はしっかり寝て疲れを取った方がいい。仕方がないだろう? ベッドが一つしかないんだ。」
「えっ、?」
「あの書斎は、ローレンスの部屋だから好きに使え。ベッドを置きたいなら、自分で見つけて買ってこいよ。あ!小遣いはやらんからな!」
「…どうやって」
どうやって、と聞かれてすぐに答えられなかった。
え、どうしよう。
どうやって…、うーーん。
「えーーと、考えとく。とにかく! 今日はもう疲れた! 寝るぞ! てか、寝ろ!」
ランプの火を消すと、部屋は真っ暗になる。布団をかぶってモゾモゾ動きながら目を瞑ると、そっと布団に入り込む気配がした。結局、同じベッドで寝ることにした様子のローレンスに俺は、どこか安堵を感じた。そうしたら、だんだん眠くなってきて、あっという間に眠りの中へと引きずり込まれた。
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