転生先が同類ばっかりです!

羽田ソラ

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異世界転生編

17.村の様子が何か変だよ

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 市外に出てしばらく魔動車を運転していると、再び城壁のような場所が現れた。ただしこちらはエステルの境界にあるものよりもさらに強固な作りになっていて、城壁手前で幹線道路上に検問らしき建物があった。
 他の魔動車も少し並んでいたので時間がかかるかと思ったものの、思いの外スムーズに進んでくれて10分後くらいには検問を通過出来た。

「……さっきの検問、何だったんですか?」
「ああ……多分アレだ、フィラーへの両替」
「両替? フィラー? ここ、マジェリア公国内ですよね? っていうかフィラーって何ですか?」
「俺も詳しくはよくわからないんだけど、銅貨だの銀貨だのってのはエステルみたいな国境の街限定の通貨なんだってさ」

 その辺りについてギルドの方で受けた説明によると、マジェリア公国の公式通貨はフィラーと言って、レートは10フィラー1穴あき銅。ただし最近は2フィラー単位での使用が主になってて、価格が奇数の場合は1フィラーだけ切り下げになるとのこと。

 つまり事実上1穴あき軽銀単位の価格設定になるわけだけど、そもそも何でそんなにめんどくさいことをしているのかというと他国に自国の通貨が流れないようにするための措置だという。あの銅貨や銀貨はあくまで世界中で統一された貿易流通用の貨幣で、それ故にほぼ全ての国境沿いで使用可能なのだとか。

 そしてこの貨幣、固定レートと変動レートのどちらを採用するか選べる。国力が強かったり経済活動が活発だったりする国の場合は変動レートを使う場合が多いらしいが、それほどでもなく物価が大きく変動しにくい国が隣り合っている場合は固定レートを採用する国が多いのだとか。

 ちなみにマジェリア公国と隣国のスローヴォ共和国、スヴェスダ共和国、エスタリス連邦、ウルバスク共和国は固定レート。エスタリスを挟んでマジェリアの向かいに位置するもっと大きい国のジェルマ連邦は変動レートを使用しているとのこと。

 ……何か元居た世界と発想があまり変わらんような……

「そうですよね! 私も違和感あるなーと思って聞いてたんですけど、それじゃやってることまるっきりユーロと同じじゃないですか! 経済規模の大きい国が変動相場で逃げ道を残してる時点でそれより性質が悪いかも」
「そういう通貨を作るなら全部の国が変動レートを採用しなければおかしいのにねえ……まあその是非は置いておくとして、あの検問で一旦通貨の両替が行われるんだよ。エステルの街から来た人らはほぼ全員が総合職ギルドにお金預けるから、情報を書き換えるだけで済むみたいだけどな」

 というか、現金を金庫に預けるのがほぼ強制だったり、他国との連携もされているというのはそういう理由からなんだろうな……結局今まで使っていたお金はあくまで貿易用なもんだから、総合職ギルド1か所に管理を集中させるような形にした方がいろいろ面倒がないってことなんだろう。

「それにしても結構開けてますよねえ、市内の路面電車っぽい乗り物といい、この舗装された道路といい」
「ああ、全くだよな」
「何か元居た世界とそう変わらない感じがします。これでは無双するのは無理かな……なんて。私、これでも結構日本のマンガとか読んでたので、そういう展開とかたくさん見てきたんですよね」
「いきなり何を言ってるんだ……」

 異世界ものだとそういう展開になりがちなのは否定しないけど。どっちかって言うとラノベとかの方がそういう展開多いんじゃないかなあ……

「っていうかマンガ読んでたんだね、どこで手に入れたの?」
「普通に街中の本屋さんとかに行けばありましたよ? 本屋じゃなくてもキオスクでも売ってましたし」

 マジか。フィンランドやべえな。
 もとい、そんな感じで日本の異世界ものに触れてたんなら今のこの状況は結構がっかりする点が多いんじゃなかろうか。無双どころかそもそも言葉自体が通じないから、現地の人とコミュニケーションを取りようがないしな。



 そのまましばらく、取り留めのない話をしながら進むこと50分ほど。どうやら目的地付近に着いたようで、城壁を出てからこっち草原や畑しかなかった風景にちらほらと民家らしきものが見え始めてきた。
 辺りを見渡すと、1か所だけ林っぽい場所が見える。遠目から見てもそれとはっきりわかる針葉樹――おそらくはペトラ杉だろう。しかし規模が小さめとは言えあんなに密集した杉林があるって、この世界にはスギ花粉症はないんだろうか……?

「思ったよりすんなりとたどり着きましたね……それでトーゴさん、このままペトラ杉を5本回収しておしまいですか?」
「そう上手く行ってくれればいいけど、流石に無理だろうね。昔からこの地に住んでる人たちって言うんだったら、まずその人たちと交渉しなきゃならないでしょ。場合によってはお金払わなきゃいけないかもしれないし」
「お金払うんですか!?」
「むしろ払わずに済めばラッキーだと思うわ。間伐材か何か手に入れられれば儲けものだけども……」

 言葉の問題は、多方向翻訳認識能力がある以上問題にはならない。お金を払うことになってもある程度までなら何とか行けるだろう。それ以上に問題なのは、あの集落というか村にどんな人たちが住んでいるかという点だ。
 そんなことを考えつつ、杉林のある方向にハンドルを切る。こちらが警戒されるのはしょうがないにしても、いい人たちだといいんだけど――

「トーゴさん、前を誰かが通せんぼしてますよ?」
「だよねえ……」

 普通に考えれば向こうの立場ではここから先立ち入り禁止にしたいわけで、それも言葉が通じない以上結構はっきりとしたジェスチャーを見せないと分かってくれない。だからこの状況はある意味想定通りなんだけど……

「なーんか、あんまりいい状況じゃなさそうだね……」

 周囲にあまり隠れる場所がないせいか、物々しい雰囲気を纏った住人らしき――見た感じ東アジア系っぽい人たちがちらほらと見える。取り囲まれてるようにも感じるけど、このままバックすれば危害を加えないつもりなのだろう、積極的に動こうとはしない。

 なら、こちらからもアプローチする余地があるってことだ。

「すいません、こちらの村に少しお願いがあって伺ったのですがよろしいですか?」

 すると、目に見えて広がる動揺。……自動翻訳されるということは向こうにも分かる言語になってるということだけど、少し話しかけただけでこれって言うのはちょっとおかしい気もする……
 すると、先程通せんぼしてきた男がこちらに歩いてきた。話をしようと窓を開けると、警戒した様子のままこんなことを言い出した。

「日本語をしゃべっているということは、君は日本人か? ここに来るのはともかくとして、何故自動車紛いの乗り物なんかに乗っている?」

 ああ、この人たちは日本からの転生者だったのか。道理で東アジアの顔してると思った……って、魔動車に乗ってるのが不審だったのか! そりゃそうだ、この人たちはこの世界の人たちとコミュニケーションが出来ないせいで乗ろうとしても乗れるものじゃないんだからな……

「はい、日本人です。隣にいるのはフィンランド人ですが……我々はエステルの街でペトラ杉伐採の依頼を受けてきました。つきましてはあの林のペトラ杉を5本ほど分けて頂きたく――」
「エステルの街? ペトラ杉? 何を言ってるんだ?」

 あれ、話が通じない……受付の人の話じゃ言語が通じないだけだって話だったと思ったけど……って、そう言えばエステルもペトラ杉もどっちも固有名詞だった! そんなのこの人たちが知るわけないじゃん!

「トーゴさん、大丈夫ですか……?」
「……あんまり。これ、1から説明しなきゃいけないパターンだきっと」

 えらいことになってしまった……コミュニケーション不可ってこんなに問題なのか。



---
今まであえてガン無視されてきたネタをあえてここで。というかやってる人いると思いますがそこはそれということで……しかし自分で書いてて何だけどレート云々はクソですねクソ。
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