転生先が同類ばっかりです!

羽田ソラ

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異世界転生編

19.結構深刻な問題だったよ

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 それはこの村に入った時から……いや、この世界に転生した時から抱いていた違和感だった。

 仮に転生者が日本人だけだったとして、神様のあの口ぶりだと日本人という集団が多神教的な信仰を獲得した時期を起点としているはずだから……日本人の転生が始まったのが2600年以上前――よりは後としても4桁の年数は経っているはず。

 昔の日本の人口とか転生先の選択肢の多さなど諸々あったにしても、この世界にだって俺がいた頃の日本の人口と同じくらい日本人がいないとおかしい。こんな集落と言ってもいい規模の村に30人程度が細々と暮らしているなんてことがあるとは思えない。
 世界中に散らばっているにしても、この村ひとつとってももっと規模が大きくていいはずだ。

 それもこれも転生特典としての不老不死がデフォルトになっているからこそ生じた疑問だけど、一体どういうことなんだろう。

「その質問に答える前にひとつ確認させてください。水元さんは転生者が皆等しく不老不死であることは把握しているのですね?」
「もちろんです、転生前にそう説明を受けましたから」

 今更にすぎる話だ。でも何で今そんな確認を?

「そうですか……いえ、確かに我々転生者は不老不死と不可視インベントリを皆等しく持たされてこの世界に転生してきます。後は個別に望んだスキルを、制約はそれなりにあれど比較的自由に、ですね。
 しかし――それだけの話なのです」
「それだけの話?」
「ええ。ほとんどの転生者が誤解していることなのですが、我々はただ単に我々が不老不死であるというだけ。あらゆる病気にかからない程度の耐性はありますが、例えば崖から落ちて体を強く打ったり誰かに刺されたりすれば普通に死亡します。
 そして転生者同士でも子孫を残すことは可能ですが、その子孫には不老不死は受け継がれません。彼らは普通の長さの寿命で死にますし、病気で死ぬことも多々あります」
「……は? え、それってつまり」

 不老不死は普通に不老不死であるだけ、普通に過ごしていればたとえ子孫をなしても自分を残して先に死んでしまう。しかも他の地域とのコミュニケーションをとれないコミュニティで生まれた子孫は、ここから出ることも能わず。
 そんな人生を延々と続けている、いや続けなければならない転生者は結果として――

「ええ、最終的に転生者はこの村を去ります。他の人に迷惑をかけまいと、自分の死に場所を他の土地に探しに。
首を吊るか崖から飛び降りるか割腹か……彼らがどういう死に方を選んだのかは我々には分かりかねますが」

 つまり、ここに住んでいる転生者たちはそれこそ本当の生き地獄を体験しているということだ。いや、ここにいる人たちの場合は既にそんな時期を過ぎて諦めの境地に入っているのかもしれない。生まれ変わった先でも人に置いていかれ続けるって、正直気が狂ってもおかしくない。

 ……っていうか神様、色欲にまみれた世界の話で死ぬことすら許されないとか言ってたじゃん! 死ねるんじゃん! 今のところ死ぬ気はないけど。

「つまりこの村は、本来もっと人口が多かったんですね。それで多くの人が孤独に耐え切れず、転生者の受け入れ数を上回るペースで自害や事故で命を落とした結果これほど小規模になったと」
「そういうことです。……正直、水元さんが羨ましいですよ。と同時に、先程も言いましたが自分自身を責めたい気持ちでいっぱいです。何故コミュニケーションを重視しなかったのかとね」

 ……気持ちはわかる。
 俺だって万が一のことを考えて希望を出さなければ、村長のようになっていた可能性が非常に高かったんだ。言語にかかるコミュニケーションも、集団の中にいるはずなのに何故か覚える強烈な孤独感も。

 その差は結局、ちょっとした運と判断でしかなかったんだ。

 そして多分、情報交換と称してなされているこの会話も、村長にとっては――

「……長々と引き留めて申し訳ございませんでした。水元さんからもたらされた情報は、村の皆で共有させていただきます。その程度はお許しいただけますね?」
「ええ、もちろん」
「よかったです。ペトラ杉は表に5本用意してありますので、確認してお持ちください。いずれまたどこかでお会い出来ることを願っています」

 それは、諦めの中にも寂しさを感じさせる、村長の穏やかな声だった。



 ペトラ杉を不可視インベントリに収納し、村に皆に挨拶をしてからエステルの街へと魔動車を走らせる。思いの外依頼が早く終わって外もまだ太陽が昇り切っていないにも関わらず、何故か物凄く時間が経っている気がしてならなかった。

 村にいた間ずっと蚊帳の外状態だったエリナさんには、車内で先程の話を聞かせた。正直この話は、自分ひとりで抱えるにはきつすぎる……自分の辛さを彼女にも背負わせようとしているようで気は引けたけど、説明はしておいた方がいいと思ったんだ。

「そう……そういうことだったんですね……」

 一通り話を聞いたエリナさんは、車の窓から外を眺めてぽつりとそうつぶやいた。思えばエリナさんは、俺よりずっと彼らに近い――いや、ほんのひとつの偶然を除いては完全に同じ立場だったんだから色々複雑なんだろう。

「話が通じない人間や集団だと思われるのって、私が想像していたよりもずっと絶望的だったんですね……今朝、ギルドから飛び出していった人がいましたよね?」
「ああ」
「あの人も、ああいった村にたどり着いて同じ人生を歩むんでしょうか」
「……かもね。もしかしたら何か違う人生があるかもしれないけど」

 そのやり取りの後、しばし訪れる沈黙。しょうがないかもしれないけど、あまり精神衛生上いい沈黙じゃないな……なんて思ってふと見ると、肩を震わせてすすり泣きをしているエリナさんの姿があった。

「エリナさん……?」
「ごめん、なさい……ごめんなさい……!」
「え、突然どうしたの!?」
「トーゴさん……お願いです……! わたしのこと、捨てないでください……! 何でもしますから……! 何されてもいいですから……!」
「言われなくても捨てないよ! 何でそういう方向に行った!?」
「だ、だって……わたし、ここのこと何も知らなくて……絶対、トーゴさんの足引っ張っちゃう……! 役立たずだって見捨てられちゃうんじゃないか、って……!」
「いや、だからね……?」

 ……もっとも、エリナさんがこういう思考に至った気持ちも痛いほどわかるからあまり下手なことは言えないんだけど……でも不安は拭ってやった方がいいな、本当に精神衛生上よくない。

「あのね、俺がエリナさんのことを捨てるなんて絶対あり得ないから。そもそも何でエリナさんだけ助けたと思ってんの」
「……え、気まぐれとかじゃないんですか……?」
「単純に一目惚れだったからだけど」
「ひとっ……お? おー!?」
「シルバーブロンドの可愛い女の子が天然に見えてしっかり物事考えてるとか俺にとっては中身までどストライク過ぎて動揺するレベルなんだけど。だからこそ立場を盾にはしたくないんだよね。捨てるなんてもってのほかだ」
「あ……あ……んー……!」

 眼だけでなく顔まで赤くしたエリナさんは、気持ちが落ち着かないのかうんうんうなり始めた。……これで少しは落ち着いてくれるといいんだけど。
 なんて思ってたら、こちらに満面の笑みを向けて言ってくれた。

「マンガで見た日本人男性そのものですね、トーゴさんって!」
「え、それどういう意味!?」
「褒めてるんです! ……ありがとうございます、トーゴさん。元気づけるために、そんなふうに言ってくれて嬉しいです」
「お、おう」

 やべ、今度はこっちがちょっと上ずった。そのセリフと顔は反則だ反則。
 にしてもこの子どんだけ自己評価低いんだ……あながち全部嘘ってわけでもないのに。



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何という地獄なのか、そしてそんな中でラヴをぶっこもうとするのはいかがなものなのか(他人事

次回更新は11/02の予定です。
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