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放浪準備編
30.放浪準備が終わったよ
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街の検問を抜けてしばらく市内中心部へ向かう道とは別の大通りを走ると、少し広めにスペースのとってある場所につく。魔動車などの駐車スペースだったりトラムやトロリーバスのターミナルだったりする場所らしく、この時も数台の車が駐車していた。
マリアさんによるとここで魔動車のチェック、いわば車検のようなものを行うとのことだった。というわけで一旦俺たちも車を停め、担当者を迎えにトラムで総合職ギルドに向かうことにした。
駐車場前の停留所からトラムに乗り込む。大体ギルドに着くまで10分弱かな……なんて考えていると、エリナさんがふと思い出したように言う。
「そう言えばトーゴさん、登録が終わったらすぐ出発するんですか?」
「……ん、そのつもりだけど。何か問題でも?」
「いえ、さっきの駐車スペースのすぐ近くに大型の市場らしきものがあったので、そこで当面必要なものを買い揃えてから行こうかなと思ってたんですけど」
「ああ……」
そう言えば移動手段とか路銀とかのことで手いっぱいで、その辺のことは完全に後回しにしてたな……この辺りは都市間もそこまで離れてはいないけど、今後もしもの事があったらと考えると最小限の備蓄はここで買っておいた方がいいか。
取り敢えずは食料品、それと元素結晶の予備を数個……ん?
「買うのはいいけど、その市場ってギルドと関係あるのかな? 関係あるならいいけど、そうじゃないなら買い揃えるのはまずいんじゃ……その辺も総合職ギルドの方で聞いてみるか」
「言われてみれば……でも、そんな事ギルドに聞いていいんですか? 関係ないんだとしたら殊更問題化することになってまずいんじゃ」
「総合職ギルドはギルドと名ばかりの……ってのはちょっと語弊があるけど、出先機関みたいな感じだから大丈夫じゃないかな」
……とはいえ、俺は別の方を向いてて見てなかったからわからないけど、エリナさんが大型の市場っていうあたりそれなりに目立つ感じだろうから多分大丈夫だとは思うけど。
「それにしてもこれまで何回か乗ってますけど、トラムはここも元の世界もそんなに変わりませんね。流石に作りは元の世界の方が現代的でしたけど」
「……ああ、ヘルシンキにはトラムがあったらしいね」
日本も地方によってはあったけど、俺は東京住まいで活動範囲も大体が首都圏だったからあまり見たことないんだよな……荒川線があるところもそこまで行かなかったし。
「まあ、食べ物とか以外でもひとつやふたつは前世と変わらないものがあった方が、個人的には安心出来ますけど」
「俺も。右も左も分からない、全てが馴染みのないものなんてのよりずっといいよね」
『――次は、総合職ギルド前』
……まあ、10分弱の乗車時間なんてちょっと喋ってたらすぐ過ぎちゃうよね、ってことで。
その後総合職ギルドの担当者――は、何とマリアさんだったんだけど、とにかく彼女に魔動車の停めてある駐車場まで来てもらって、ちゃんと基準に合致しているかどうかの確認をしてもらうことになった。マリアさんの手には、何やら色々な書類の束。アレが基準のチェックシートとかなのかな?
「ええと、幅は……2.2メートル、長さは……7.2メートル、高さは……っと、3.1メートル。サイズは基準内ですね。ギルドカードを確認します」
「お願いします」
「ええと……ありがとうございます。魔動車運転許可証確認しました。国際化の手続きは翌日までに行いますので、それまではこの魔動車で出国しないようにしてください。
では次に内部構造の確認を……」
ちなみに運転許可証は実技教習を受けるなどといった過程を経ることなくだいぶ前にとれていた。その事をその日たまたま受付担当だったルサルカさんに聞いてみると、
『ミズモトさんは依頼時に数回魔動車の運転をしていますよね? あれでデータをとって技量に関するテストを済ませていたんです。あとは交通ルールに関して講習を受けて頂ければ、自家用業務用の制限なく魔動車の運転許可が得られます』
『……あの、その許可証を今手渡していいんですか?』
『その許可証には2つ印鑑を押す場所があります。それぞれ実技と座学の合格を表すものですから、両方押されないと有効にならないんですよ』
……なんて、ハイテクだかローテクだか分からない話をされた。いずれにせよ運転に制限なしというお墨付きをもらったのはよかった。
「ミズモトさん、魔動車の確認終わりました。問題ありません、今すぐお乗りいただけます。……それにしても結構凄い車ですねこれ」
「凄いんですか?」
「ええ、車体の作りもさることながら、この黒くて硬くて弾む車輪が凄い。まれに貿易品の中に似たようなものが入ることもありますが、これの方がずっと質が高いかと。……これ、中は空洞ですか?」
「……その通りです。風の結晶をうまく使って空気を大量に入れてありますけど」
「道理でこんな感じの弾み方をするわけですね。同じように硬くて弾むものでも、貿易品のはもっと中が詰まった感じの……あ、申し訳ありません」
「いえいえ、お気になさらず」
……というか、この世界にも一応タイヤってか合成ゴム作ってる国があるんだな。もっともこっちではまれに貿易対象になるっていうレアもの扱いなうえ、こっちの世界の人はタイヤに空気を入れるって発想がないみたいでソリッドタイヤだけみたいだけど、これで少なくとも怪しまれる危険はなさそうだ。
「ではこの金属プレートを魔動車の前面に取り付けてください。左側に登録国の紋章、右側に登録番号がエンボスされていますので、各国首都や国境の都市に行った際には各地の総合職ギルドないしそれに相当する国境市境管理機関にこの番号をお伝えください。
新しく入る国のどの機関が国境市境管理機関かは、出国側の機関に問い合わせて頂ければわかります。あ、先程も言いました通り国境越えは翌日までしないでください」
「ありがとうございます」
言って金属プレートを受け取る。形といい役割といい、完全にこれはナンバープレートだ。前世と同じ感覚でナンバープレートを取り付ける部分をフロントとリアに設定していたけど、転ばぬ先の杖が役に立ったな……
あ、でも前世で見たヨーロッパのナンバープレートより日本のやつにサイズ的には近いな。個人的には長細いヨーロッパタイプも興味あったんだけど。
「それと出入国に関するルールも、この場でお伝えしちゃいますね。もしかしたらご存知かもしれませんけど、そこは一応規則ですので。
出入国は、各国で設定された貿易用国境都市を通じてしか出来ません。それ以外の国境については物理的、魔法的、法規的に厳しく封鎖されています。密出入国は死罪も含めた重罪になりますのでご注意ください。
出入国に関する手続きはそこまで難しくありませんが、少しややこしいです。出国側にアクションを起こす必要はなく、入国側の管理機関に起源国登録証――マジェリアであればギルドカードを持って出頭し登録を受けてください。
貿易用国境都市は検問を通じて各国内と繋がっています。この検問で各国通貨と貿易貨幣を両替し、安全検査を受けて行き来することになりますね。後は各国法規を順守していただければ問題ありません。ここまでで質問はありますか?」
「……国境都市間だけなら自由に出入り出来るんですよね。他に何か国境都市と各国内で法規上違いがあったりしますか?」
「国境都市においては国境都市運用条約というのがありまして、それが基本法になっています。あとはあくまで最低限――というより最大公約数的な各法がありますね。なので国境都市の検問は難民対策なども兼ねているわけなんです」
「なるほど」
各国内より確実に国境都市内の規制の方が緩いから、国内でしか通用しない犯罪を犯した人間が国境都市内に入りたがるから、それを食い止めるってことか……合理的っちゃ合理的だな。
あと所持金はやっぱり越境しても使えるみたいでヨカッタヨカッタ……考えれば当たり前だけど、ちゃんと言ってくれないと不安になるからな。
「さて、それではこれで手続きの方終わりです。見たところ居住性の高い魔動車のようですけど、もう出発されますか?」
「ええ、あの市場で必要なものを買い出ししてから、ですけど。……そういえばあの市場は随分大きいみたいですけど、ギルドの合同市場か何かですか?」
「ああ、あの市場は……別にギルドだけというわけでもありませんけど、専門職だろうがそうでなかろうが自由に持ち寄れる自由市場ですね。ここからでは見えませんけど、地上階は各職ギルド専用で地下階に共有スペースがあります」
「へえ……」
「首都にも同じものがありますけどね。……それにしてももう出発とは、少し寂しくなりますね」
「そうですか?」
「そうですよ」
……街にいてもそんなに注目とかされてる感じはしなかったんだけどな。ド派手に活躍して街のヒーローになったとかならともかく、俺にかける言葉としては微妙にずれてる気がしてならないんだけど、どういうことだろう。
「だって、サンタラさんをこの街に留めてくれたじゃありませんか。言葉が通じなくて早々にこの街から去るに違いないと思われていた人が、ひとりの語学万能な人に救われて街に定着してくれた……それだけで話題となるには十分ですよ」
「ああ、なるほどそういうことか……」
そう言えばエリナさんも、あのままだったら異端のままこの世界での生活を終えることになってたんだよな……エステル市民もその光景を嫌というほど見てきたわけだし、そう考えれば自然っちゃ自然かも。
「ミズモトさん、またいずれエステルに遊びに来てください。首都ブドパスもマジェリア一発展したいい場所ですけど、ここもいいところですから」
「……そうですね。またいずれ」
「サンタラさんも、ですよ? いつでも待っていますから」
「ありがとうございます、マリアさん。……それと最初の日はご迷惑をおかけしてすいませんでしたと、ルサルカさんに伝えてください」
エリナさんもだいぶジェルマ語がうまくなったな。マリアさんが気を遣ってジェルマ語で話しかけたとはいえ、すぐにこれだけの返事を滑らかに出来るなんて。覚え始めはそれこそ片言だったしなあ……っていうかちょっと異常な習得速度だけど。
「では、お二方とも良い旅を。またいずれお会い出来ることを願いまして」
「ありがとうございます、それじゃトーゴさん、さっそく市場に……トーゴさん?」
「……え、ああ。マリアさんもお元気で。んじゃ買い出し行こうか、エリナさん」
「はい!」
いけないいけない、考え事しててもしょうがない。これから安住の地を求めて長い旅に出るんだから。
……さて、それじゃ出発するとしますか!
---
――そして、彼らは安住の地を求めて旅に出る。
というわけで放浪準備編はこれにて終了となります。昨今のあっさり旅立ちに比べると幾分ウェットな気がしないでもありませんがこの作品にはこういうのが合ってるのかなーとか。
次回からは放浪開始・ブドパス編が始まります!
魔動車に乗って首都に向かうトーゴとエリナ。しかしやはり、その道中でも首都についても問題はてんこ盛りだったのだ!
……また書き溜めの日々だぜ全く……
次回更新は12/05の予定となっています!
マリアさんによるとここで魔動車のチェック、いわば車検のようなものを行うとのことだった。というわけで一旦俺たちも車を停め、担当者を迎えにトラムで総合職ギルドに向かうことにした。
駐車場前の停留所からトラムに乗り込む。大体ギルドに着くまで10分弱かな……なんて考えていると、エリナさんがふと思い出したように言う。
「そう言えばトーゴさん、登録が終わったらすぐ出発するんですか?」
「……ん、そのつもりだけど。何か問題でも?」
「いえ、さっきの駐車スペースのすぐ近くに大型の市場らしきものがあったので、そこで当面必要なものを買い揃えてから行こうかなと思ってたんですけど」
「ああ……」
そう言えば移動手段とか路銀とかのことで手いっぱいで、その辺のことは完全に後回しにしてたな……この辺りは都市間もそこまで離れてはいないけど、今後もしもの事があったらと考えると最小限の備蓄はここで買っておいた方がいいか。
取り敢えずは食料品、それと元素結晶の予備を数個……ん?
「買うのはいいけど、その市場ってギルドと関係あるのかな? 関係あるならいいけど、そうじゃないなら買い揃えるのはまずいんじゃ……その辺も総合職ギルドの方で聞いてみるか」
「言われてみれば……でも、そんな事ギルドに聞いていいんですか? 関係ないんだとしたら殊更問題化することになってまずいんじゃ」
「総合職ギルドはギルドと名ばかりの……ってのはちょっと語弊があるけど、出先機関みたいな感じだから大丈夫じゃないかな」
……とはいえ、俺は別の方を向いてて見てなかったからわからないけど、エリナさんが大型の市場っていうあたりそれなりに目立つ感じだろうから多分大丈夫だとは思うけど。
「それにしてもこれまで何回か乗ってますけど、トラムはここも元の世界もそんなに変わりませんね。流石に作りは元の世界の方が現代的でしたけど」
「……ああ、ヘルシンキにはトラムがあったらしいね」
日本も地方によってはあったけど、俺は東京住まいで活動範囲も大体が首都圏だったからあまり見たことないんだよな……荒川線があるところもそこまで行かなかったし。
「まあ、食べ物とか以外でもひとつやふたつは前世と変わらないものがあった方が、個人的には安心出来ますけど」
「俺も。右も左も分からない、全てが馴染みのないものなんてのよりずっといいよね」
『――次は、総合職ギルド前』
……まあ、10分弱の乗車時間なんてちょっと喋ってたらすぐ過ぎちゃうよね、ってことで。
その後総合職ギルドの担当者――は、何とマリアさんだったんだけど、とにかく彼女に魔動車の停めてある駐車場まで来てもらって、ちゃんと基準に合致しているかどうかの確認をしてもらうことになった。マリアさんの手には、何やら色々な書類の束。アレが基準のチェックシートとかなのかな?
「ええと、幅は……2.2メートル、長さは……7.2メートル、高さは……っと、3.1メートル。サイズは基準内ですね。ギルドカードを確認します」
「お願いします」
「ええと……ありがとうございます。魔動車運転許可証確認しました。国際化の手続きは翌日までに行いますので、それまではこの魔動車で出国しないようにしてください。
では次に内部構造の確認を……」
ちなみに運転許可証は実技教習を受けるなどといった過程を経ることなくだいぶ前にとれていた。その事をその日たまたま受付担当だったルサルカさんに聞いてみると、
『ミズモトさんは依頼時に数回魔動車の運転をしていますよね? あれでデータをとって技量に関するテストを済ませていたんです。あとは交通ルールに関して講習を受けて頂ければ、自家用業務用の制限なく魔動車の運転許可が得られます』
『……あの、その許可証を今手渡していいんですか?』
『その許可証には2つ印鑑を押す場所があります。それぞれ実技と座学の合格を表すものですから、両方押されないと有効にならないんですよ』
……なんて、ハイテクだかローテクだか分からない話をされた。いずれにせよ運転に制限なしというお墨付きをもらったのはよかった。
「ミズモトさん、魔動車の確認終わりました。問題ありません、今すぐお乗りいただけます。……それにしても結構凄い車ですねこれ」
「凄いんですか?」
「ええ、車体の作りもさることながら、この黒くて硬くて弾む車輪が凄い。まれに貿易品の中に似たようなものが入ることもありますが、これの方がずっと質が高いかと。……これ、中は空洞ですか?」
「……その通りです。風の結晶をうまく使って空気を大量に入れてありますけど」
「道理でこんな感じの弾み方をするわけですね。同じように硬くて弾むものでも、貿易品のはもっと中が詰まった感じの……あ、申し訳ありません」
「いえいえ、お気になさらず」
……というか、この世界にも一応タイヤってか合成ゴム作ってる国があるんだな。もっともこっちではまれに貿易対象になるっていうレアもの扱いなうえ、こっちの世界の人はタイヤに空気を入れるって発想がないみたいでソリッドタイヤだけみたいだけど、これで少なくとも怪しまれる危険はなさそうだ。
「ではこの金属プレートを魔動車の前面に取り付けてください。左側に登録国の紋章、右側に登録番号がエンボスされていますので、各国首都や国境の都市に行った際には各地の総合職ギルドないしそれに相当する国境市境管理機関にこの番号をお伝えください。
新しく入る国のどの機関が国境市境管理機関かは、出国側の機関に問い合わせて頂ければわかります。あ、先程も言いました通り国境越えは翌日までしないでください」
「ありがとうございます」
言って金属プレートを受け取る。形といい役割といい、完全にこれはナンバープレートだ。前世と同じ感覚でナンバープレートを取り付ける部分をフロントとリアに設定していたけど、転ばぬ先の杖が役に立ったな……
あ、でも前世で見たヨーロッパのナンバープレートより日本のやつにサイズ的には近いな。個人的には長細いヨーロッパタイプも興味あったんだけど。
「それと出入国に関するルールも、この場でお伝えしちゃいますね。もしかしたらご存知かもしれませんけど、そこは一応規則ですので。
出入国は、各国で設定された貿易用国境都市を通じてしか出来ません。それ以外の国境については物理的、魔法的、法規的に厳しく封鎖されています。密出入国は死罪も含めた重罪になりますのでご注意ください。
出入国に関する手続きはそこまで難しくありませんが、少しややこしいです。出国側にアクションを起こす必要はなく、入国側の管理機関に起源国登録証――マジェリアであればギルドカードを持って出頭し登録を受けてください。
貿易用国境都市は検問を通じて各国内と繋がっています。この検問で各国通貨と貿易貨幣を両替し、安全検査を受けて行き来することになりますね。後は各国法規を順守していただければ問題ありません。ここまでで質問はありますか?」
「……国境都市間だけなら自由に出入り出来るんですよね。他に何か国境都市と各国内で法規上違いがあったりしますか?」
「国境都市においては国境都市運用条約というのがありまして、それが基本法になっています。あとはあくまで最低限――というより最大公約数的な各法がありますね。なので国境都市の検問は難民対策なども兼ねているわけなんです」
「なるほど」
各国内より確実に国境都市内の規制の方が緩いから、国内でしか通用しない犯罪を犯した人間が国境都市内に入りたがるから、それを食い止めるってことか……合理的っちゃ合理的だな。
あと所持金はやっぱり越境しても使えるみたいでヨカッタヨカッタ……考えれば当たり前だけど、ちゃんと言ってくれないと不安になるからな。
「さて、それではこれで手続きの方終わりです。見たところ居住性の高い魔動車のようですけど、もう出発されますか?」
「ええ、あの市場で必要なものを買い出ししてから、ですけど。……そういえばあの市場は随分大きいみたいですけど、ギルドの合同市場か何かですか?」
「ああ、あの市場は……別にギルドだけというわけでもありませんけど、専門職だろうがそうでなかろうが自由に持ち寄れる自由市場ですね。ここからでは見えませんけど、地上階は各職ギルド専用で地下階に共有スペースがあります」
「へえ……」
「首都にも同じものがありますけどね。……それにしてももう出発とは、少し寂しくなりますね」
「そうですか?」
「そうですよ」
……街にいてもそんなに注目とかされてる感じはしなかったんだけどな。ド派手に活躍して街のヒーローになったとかならともかく、俺にかける言葉としては微妙にずれてる気がしてならないんだけど、どういうことだろう。
「だって、サンタラさんをこの街に留めてくれたじゃありませんか。言葉が通じなくて早々にこの街から去るに違いないと思われていた人が、ひとりの語学万能な人に救われて街に定着してくれた……それだけで話題となるには十分ですよ」
「ああ、なるほどそういうことか……」
そう言えばエリナさんも、あのままだったら異端のままこの世界での生活を終えることになってたんだよな……エステル市民もその光景を嫌というほど見てきたわけだし、そう考えれば自然っちゃ自然かも。
「ミズモトさん、またいずれエステルに遊びに来てください。首都ブドパスもマジェリア一発展したいい場所ですけど、ここもいいところですから」
「……そうですね。またいずれ」
「サンタラさんも、ですよ? いつでも待っていますから」
「ありがとうございます、マリアさん。……それと最初の日はご迷惑をおかけしてすいませんでしたと、ルサルカさんに伝えてください」
エリナさんもだいぶジェルマ語がうまくなったな。マリアさんが気を遣ってジェルマ語で話しかけたとはいえ、すぐにこれだけの返事を滑らかに出来るなんて。覚え始めはそれこそ片言だったしなあ……っていうかちょっと異常な習得速度だけど。
「では、お二方とも良い旅を。またいずれお会い出来ることを願いまして」
「ありがとうございます、それじゃトーゴさん、さっそく市場に……トーゴさん?」
「……え、ああ。マリアさんもお元気で。んじゃ買い出し行こうか、エリナさん」
「はい!」
いけないいけない、考え事しててもしょうがない。これから安住の地を求めて長い旅に出るんだから。
……さて、それじゃ出発するとしますか!
---
――そして、彼らは安住の地を求めて旅に出る。
というわけで放浪準備編はこれにて終了となります。昨今のあっさり旅立ちに比べると幾分ウェットな気がしないでもありませんがこの作品にはこういうのが合ってるのかなーとか。
次回からは放浪開始・ブドパス編が始まります!
魔動車に乗って首都に向かうトーゴとエリナ。しかしやはり、その道中でも首都についても問題はてんこ盛りだったのだ!
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