転生先が同類ばっかりです!

羽田ソラ

文字の大きさ
60 / 132
放浪開始・ブドパス編

59.許されるわけがなかったよ

しおりを挟む
「あの、聞き間違えかもしれないんでもう1回言っていただけますか?」
「エリナ=サンタラさんと離縁してください」

 めっちゃはっきり言われた! いや、おかしいだろマジで何言ってんだこいつ。というかさっきから結構ディスられてる気がするんだけどコレ怒っていいかな。……いや、でもこんな無茶言うだろうってことは何となく予想は出来てたけどね……

「で、離縁してどうしろと」
「離縁後には、ベアトリクス殿下の配偶者になっていただきます」
「いただきますって……どんな権利でそんな事を言うんです?」
「そもそも、あなたはこのまま国外に出すには危険すぎる。それはそうでしょう、歩く万能翻訳機そのものを歩かせたら、我が国からどんな秘密の情報が洩れるか分かったものではない。
 なれば、殿下の配偶者にしてこの土地に縛り付けておいた方が我が国にとっても幾分安心というものです。それに、殿下もそう言った存在を取り込むことによってさらに地位を盤石となさることでしょう。殿下は何もなさる必要などございますまい。
 その為にはエリナ=サンタラは邪魔でしかない。最初は普通に排除することも考えましたが、彼女はそのステータス上排除しようとしても出来るものではありませんからね……なので離縁していただくのが一番楽なのですが」
「随分ふざけた要求ですね……そんな物言いをされて、俺がはいそうですかと首を縦に振るとでも?」
「あなたが頷くか頷かないかに関わらず、ギルドマスターである私の指示であれば書類上の離縁は簡単に出来ますのでね……もちろん国際的に交付されたものについては取り消しも手間になりますがね」

 アッダメだこれ。全然話が通じない。
 俺としては何もなければこのまま目の前の男をぶん殴ってさっさとエリナさんを連れて国外に逃げてしまいたいところなんだけど……でもそんなことをして不利になるのは俺たちだ。そもそも国境都市に検問がある以上、ちゃんと国外に逃げられるかどうかなんてわからなくなるし。
 ……まあ、それはここまで何もなければの話なわけで。

「……なるほど、あなたの言うことはよく分かりました」
「分かっていただけましたか、それは良かった」
「ですが離縁はしません。当たり前ですが、俺の妻は銀髪の美しいエリナ=サンタラ=ミズモトただひとりです」
「話を聞いていなかったのですか? 離縁するも結婚するも、私の胸先三寸なのですよ」
「でしょうね、それだけの権利を総合職ギルドマスターたるあなたは与えられている。だからこそ、ベアトリクス閣下は貴方を真っ先に警戒していた」
「……は?」

 俺のセリフに、とんでもない間抜け面をさらす男。そもそも自分の言動がどれほど異常かって事、この男は自覚しているんだろうか。
 第一――

「結婚式のプレゼントに盗聴器を仕掛けるような女性とは、普通の感覚であれば結婚なんか出来ませんよ」
「盗聴器……ですか?」
「ええ。そうですよね、大臣閣下」

 俺の呼びかけに答える形で、執務室のドアが徐に開く。次に入って来たのは、当然と言えば当然かもしれないけど、エリナさんとベアトリクス大臣閣下だった。

「トーゴ=ミズモト=サンタラさん、エリナ=サンタラ=ミズモトさん。こういった形で申し訳ございませんでしたが、ご協力感謝いたします」
「盗聴器を使って盗聴をしていたこと、そして、少しで不穏なことがあれば即座に駆け付けられるようにしていたことなど……ですか?」
「……はい。結果的におふたりを囮にしてしまいましたが、そもそも都市保全局長が不穏な動きを見せていたことははっきりしていましたので。サンタラ=ミズモトさんを通じてこちらの様子を確認した時には、あまりの酷さに言葉を失いました」

 言って、閣下はチラリとギルドマスターの方を見る。その本人は、さっきと変わらず驚愕の表情を崩していない。

 ……ベアトリクス殿下の仕掛けた盗聴器は、あのペンダントの中にあった。
 結婚式後にエリナさんが受け取ったそのペンダントは、あまりにもサイズといい漏れていた雰囲気といい異様過ぎたので、昨日よくよく調べてみたら案の定盗聴機能付きの魔導工学製品が入っていた。
 普通だったらこれだけでも十分信用を失うに値するし、エリナさんに説明をした上で破壊してしかるべきものなんだけど……その割に魔導工学のものにしては隠蔽が下手すぎるというか、むしろまるで隠蔽する気がないとしか思えないほどお粗末な作りだったので、これは何かあるなと踏んだわけだ。
 ただお粗末とは言ってもそれなりに値段がかかるものであったうえ、これが敢えてバレるようにと粗雑な作りにしてある以上は、俺たちに周囲で何か怪しいものがないかどうか確認したいってことなんだろうと思った。

 だとするなら――で、買ったのが指輪型の通信機器。これは声に出さなくとも考えていることをそのまま相手に送れるという便利グッズで、こっちではトランシーバー的に使用されているものだ。一応スマホ……とはいかないまでも携帯くらいの通信性能を持つ魔道具もあるらしいけど、如何せん高い。
 ……とにかく、これとさっきの盗聴器を一時的にリンクさせて閣下にこの部屋での会話が漏れるようにしたのだ。……もちろんリンクはすぐに切れるようにしてるよ。じゃなかったらプライバシーもへったくれもあったもんじゃない。

「さて……都市保全局長。あなたが妙なことを考えていたのを、私は最初から分かっていました。あなたは私が何度言っても、隙あらば殿下と呼ぶのをやめませんでしたね。
 加えて今回の件、そもそも私が公女扱いをしないように通達していたのは、公族に対する政治利用を禁止しているからです。だからこそ大臣の枠も特例扱いだし、実権を持つようなポストに関しては辺境の侯爵を戴くのが内定している公族をつけるのが習わしになっている。
 あなたは今回、それを堂々と破ろうとした。あなたの意識の問題だけならともかく、実際の行動に移されたとあれば処罰せざるを得ません。何か申し開きはありますか?」
「……っ、しかし殿下、この者を国外に出してはいずれ我が国の不利益になります! なればこそここで国内にとどめておく必要があるかと!!」
「まだそんなことを言っているのですか都市保全局長……それについては無理ととどめている方が遅かれ早かれ我が国に甚大な被害をもたらす可能性が高いという話で決着がついたではありませんか。それを補完する意味での指名依頼だと何度言えば分かるのです。
 しかもそのとどめる方法が、夫婦を離縁させての政略結婚? 私も、ミズモト=サンタラさんも、サンタラ=ミズモトさんのこともどれほど低く見積もっているのですか」
「しかし!」
「しかしも何もありません。本日この時をもってあなたの都市保全局長職を解任します。近衛兵! この者を王城へ連行せよ!」
「はっ!」

 言うが早いか、どこに控えていたのか、その近衛兵らしき人達があっという間にギルドマスター……元、ギルドマスターを連行していく。連行中何やらわめいていたような気がするけど、そんなものを誰も聞くはずがない。俺も、エリナさんも聞かない。どうせ大した事は言っていないだろうから。
 大臣閣下は徐に部屋の片隅に歩みを進めると、そこにかかっていた額縁を外して俺たちの方に向き直って言った。

「……あなたたち夫婦にはご迷惑をおかけしました。ミズモト=サンタラさんには私の思惑は早い段階で把握されていたようですが、結果的におとり捜査のようになってしまいまして……」
「ああいえ、こちらも結果的に助かったのでよかったです。もしあのペンダントを戴かなければ、おそらく今頃……」
「そうね、トーゴさんが私と別れるわけはないから……ありがとうございました、大臣閣下。トーゴ=ミズモト=サンタラの妻として御礼申し上げます」
「そう言っていただけると幸いです。新しい都市保全局長にはニャカシュ=エンマを任命します。あの人なら、きっとこのギルドを正しい方向に導き直してくれるでしょうから」
「ニャカシュ=エンマ?」
「ええ、受付に立っているエンマですが。彼女は都市保全局の副長ですので……あら、もしかしてご存じありませんでしたか?」

 えぇ……まあ、でもあの人ならさもありなんってところかな。明らかに空気というか雰囲気が普通の受付係じゃなかったし。

「いずれにせよ、本日はこれまでとさせていただけませんか。明日、再びこちらをお借りして今後の詳細を相談出来ればと思うのですが」
「仕切り直し、ということですね。かしこまりました」

 俺たち夫婦にとっても、それが一番いいだろうな……まあでも、最初に睨んだ通り閣下ご本人にギルドマスターのような悪意がなくてよかった。それだけは本当によかった。盗聴器は通信機とのリンクを切断した後にしっかりと無効化させてもらうけどな!



---
稚拙なギルドマスターの目論見も、プライバシーの侵害も許されるわけなかったね!
とくに後者は、夫婦生活の盗聴とか許されざる行為ですよ全く(

次回更新は03/02の予定です!
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。

たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。 しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。 そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。 ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。 というか、甘やかされてません? これって、どういうことでしょう? ※後日談は激甘です。  激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。 ※小説家になろう様にも公開させて頂いております。  ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。  タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

転生貴族の領地経営〜現代知識で領地を豊かにして成り上がる

ファンタジー
ネーデル王国の北のリーディア辺境伯家には天才的な少年レイトがいた。しかしその少年の正体は現代日本から転生してきた転生者だった。 レイトが洗礼を受けた際、圧倒的な量の魔力やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のレイトを辺境伯領の北の異種族の住むハーデミア領を治める領主とした。しかしハーデミア領は貧困に喘いだ貧乏領地だった。 これはそんなレイトが異世界の領地を経営し、領地を豊かにして成り上がる物語である。

処理中です...