転生先が同類ばっかりです!

羽田ソラ

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スティビア通過編

109.大臣閣下に報告して確認するよ

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「……というわけで、国境を越える前に一旦オンディーに滞在していますので、その旨よろしくお願いしますマルキバイス」
『分かりました、スリーワン』

 オンディーに到着した夜、俺はエリナさんと一緒に駐車場で大臣閣下に2日分の報告をしていた。オンディーに着いて割とすぐ駐車場の近くにホテルが見つかってくれたので、その辺りもラッキーだった。

『それにしても……豪華客船ですか……部屋も食事も豪華で、大海原をバックにプールサイドで至福のひと時なんて……私も今の立場がなければ、今すぐにでもウルバスクから乗りたいところですのに……!』
「いや、あの、確かにマルキバイスの言いたいことも気持ちも分かりますけども? 今はその話じゃないですよね?」
『あ、ああ……確かにそうですね、エスタリスとスティビアの国境に関する情報、でしたよね』
「お願いします」

 ……うん、本当にお願いします。土産話であれば、いずれ戻った時にいくらでもして差し上げますから。……今後俺たちがマジェリアに戻るかどうかは全く分からないから、そこは勘弁してほしいけど。

「それで、トーヴィーの国境は今現在どういった状況になっているんでしょうか」
『トーヴィー……エスタリスの首都、ヴィアンとの国境の街ですね。そちらでの情報収集の結果はいかがですか?』
「……芳しくありませんね。こちらの方にはあまりその手の情報は入ってきていないみたいで。そもそもこういった事態に陥ったの自体、ここ最近の話だからしょうがないのかもしれませんが」
 『ええ、確かに……ちなみにこちらに入ってきている情報によれば、トーヴィーの国境は昨日警戒が解かれて通行可能になっているそうです。そもそもドラゴンが出た場所と同じ地域に属しているとはいえ、あの街は現場からだいぶ離れていましたから』
「そうですか……」

 となると、俺たちはトーヴィー経由でヴィアンに向かった方がいいのかな。それだけ早く警戒が解かれたって言うんなら、後になってやっぱり閉鎖しますなんて事態にはならないだろうしな……

「それでは明日トーヴィー経由でヴィアンに向かいます。距離もポーリからここに来るまでとそう変わらなさそうですし、朝のそこそこ早い時間に出れば夕方になる前には着くかと」
『そうですね、それがよろしいかと……それはともかく、現在までの報告を聞く限りですと我が国と他国の間にはどうしようもないほど魔導技術の発展度合に開きがあるようですね』
「……まあ、確かにその通りでしょうが」

 何せ他の国ではほとんど見なかった馬車が未だに現役だったくらいだもんなあ……現にここまで来る途中に走ったスティビアの道路にしても、最初から魔動車で走ることを前提にしていた感じだし。

『いえ、我が国が田舎なのはもはや否定しようのない事実なので受け入れるしかありません。今後発展させていけばよいので、そこについては置いておきます。
 問題なのは、中部諸国連合というものを設立して交易がかなり自由化されているにもかかわらず、エスタリスからの魔導工学製品がほとんど入っていないことです。これはマジェリアだけの話ではなく、ウルバスクでも同様かと』
「ほとんど入っていない……? ウルバスクでもですか? 俺の感覚では、ウルバスクからスティビアにかけてはもうだいぶ技術が発展しているように思えますが」
『いえ、ウルバスクで普及している技術はエスタリスでは既に2世代ほど遅れているものだと報告が上がっております。それより最新のものですと、エスタリスに隠れて持ち出す以外になさそうだとか』
「密輸ですか……」
『ええ……なので申し訳ありませんが、そちらの方も現在エスタリスに駐在している諜報とは別枠で調べてみてくれませんか? そちらの方にはヴィアンで合流するようにこちらからも伝えておきますので』
「了解、では明日トーヴィー経由でヴィアンに入った後エスタリス駐在の諜報と合流します。それではこれにて報告終了します。アウト」
『ラジャー、アウト』

 定型の応答と共に終了する無線での報告。……さて、そうと決まれば明日も早いわけだし、早めにホテルに行って寝るとするか――

「トーゴさん、今の話――」
「それはまた後でね、エリナさん」

 ――やっぱり、エリナさんも何となく気付いたか。でもそれについては、なるべく周りに聞かれないような状況で話した方がいいだろう。例えば……国境都市に向けて魔動車を走らせている時とか、ね。



 というわけで翌日、俺とエリナさんは早めにホテルをチェックアウトして魔動車で国境近くの都市であるトーヴィーに向かう。オンディーで仕入れた話では、トーヴィーを通り過ぎて10分くらいすると分かりやすい国境が現れるんだとか。
 ……分かりやすい国境って何なんだろう、テレビの旅番組とかでよく見た、踏み切りみたいなアレのことかな?
 まあそれは実物を見てのお楽しみってことにしておいて――

「……それでトーゴさん、昨日の話だけど」
「ああうん、分かってるよ」

 ……やっぱりその話が来るか。実は俺とエリナさんは、昨日の大臣閣下への報告であることに気が付いていた。……もっとも同じことに気が付いているかどうかは分からないけど。

「トーゴさんも気づいてると思うけど……いや、同じことに気付いているかどうかは分からないわよ? でも、エスタリスの技術がウルバスクやマジェリアに入っていかないのってもしかして――」
「……ああ、そのまさかだと思うよ。ああよかった、やっぱりエリナさんが気付いたのもそこだったんだ」
「ええ……もしかして、中部諸国連合の国境システムがあるせいじゃないかって思ってるんだけど」
「ああ、多分そうだろうね」

 ――中部諸国連合の国境システムとは、ご存知の通り越境可能な国境都市を緩衝地帯および交易都市に設定して、出入国業務及び税関業務を簡略化するというものだ。
 これは一見すると国家間の交易や人的交流を盛んにして技術レベル及び文化レベルなどを均一化し、それによって連合内の各国を平等に発展させる制度に見える。実際、連合の最たる目的はそこにあるのだろう。
 ……しかし、ここには落とし穴がある。

「確かに国境都市内では自由な交易が認められていて、各国はそこの法規に干渉出来ないわけだけど……逆に言えば」
「ああ、国境都市内でなければ例えギリギリであっても各国の法規において統治することが出来る。まあ当たり前の話なんだけどね」

 マジェリアでもウルバスクでも目にした光景だが、国境都市にはその性格上普通の都市へアクセスするより厳しめの検問がある。これは通貨を換算し、犯罪者を水際で食い止める目的があるわけだけど、ここに関しては当然のことながら各国の法規の元に置かれる。
 つまり、国境都市に入る検問に関してどういった審査が行われているかについては、他国が干渉することは許されていない。言ってしまえば水際で止めてしまうのは犯罪者だけではないということだ。

「本来の国境であってもそれは間違いなく存在する話だけど、自由貿易に関する条約を結んでいる場合は通常の国境では国際法の管轄になるしね。まあそれでも軍事転用なんかに関しては厳しいだろうけど、それでも家電なんかのレベルでは流出を防ぎにくいのが実際のところだ。
 けど連合の国境システムだと、その辺りは国内法の管轄になるから――」
「自国が表に出したくない技術に関してはあえて水際で止めてしまうことが出来る、と。密輸がどうのって話は、そういう事情でもないと出て来ようがないわよね」

 まあその辺の話は不可視のインベントリを持ってる俺たちふたりだったら結構何でもありで出来そうなもんだけど、あまり大型のものを持って帰るとなると怪しまれること間違いないだろうからやっぱりリスクは高いな。話を総合すればするほど、大物を買った時の記録の採られ方はヤバいだろうし。

 ……それにしても皮肉なものだ。

 本来であればみんな平等に仲良く発展しましょう、っていう趣旨の制度のはずが、かえって技術流出を阻止するシステムになっていたなんて誰が想像出来るだろう。……いやまあ、この話も予想であって事実かどうかは分からないけども。
 ただその辺りの話は別にしても、みんなで仲良く足並み揃えて発展なんてのが絵空事でしかなくて、にも拘らずそれを大真面目に考えて実行する人たちがいるっていうのは、前世もこの世界も一緒なんだなあ……



---
みんな仲良くと思って打ち出した政策でも余計に事態を悪化させる好例というやつです。
そして久々のご登場、ベアトリクス大臣閣下。まだしばらくこのお方の出番は続くんじゃ。

次回更新は07/30の予定です!
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