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エスタリス・ジェルマ疾走編
113.ヴィアンに着いたよ
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色々と衝撃的だったサービスエリアを出ておおよそ1時間後、俺たちは滞りなく目的地たるヴィアンに着いた。これで早4か国目、違う土地に移動してその風景を見るのももう割と慣れてきた感もある。
……あるんだけど、ここは今までの街とは別格だった。
「ええと……何? ここはタリンの新市街? いえ、それよりもっと何か、ニューヨーク的なメトロポリタン感があるというか……」
「いやそんなこと言われても、そもそもタリンの様子が分からないから」
俺の感覚で強いて言うなら、東京臨海副都心の内陸版って感じの作りだな……はっきり言って今まで見てきた街とは根本的に違う。明確に前世の大都会寄りだ。
しかしおかしいな、確かにエスタリスは魔導国家という風に聞かされてはいたけど、こういう街の光景を期待出来るのはむしろ隣の大国たるジェルマだったような気がするんだけど……?
「それでトーゴさん、この後はどうするの? 寝泊まり可の駐車場を探して――」
「それだとホームレスっぽく聞こえるからやめようか……それはともかく、今回は車には泊まらないでホテルを探すよ」
「え、何で?」
「ウルバスクみたいにある程度マジェリアにも近しい技術や文化レベルの国だったらそんなことする必要はないんだけど、エスタリスはこういう国だからね……ちょっと確認したいこともあるし」
とは言え今からホテルを探して見つかるものだろうかって懸念は確かにあるんだけどね……
ええと、確かヴィアンは宿泊施設が一定のところに固まってなくて、中心部から広範囲で点在してるって話だったな。思いがけず時間も早くに着いたし、少し街並みを見つつ探してみるか……
「それにしても何から何まで違い過ぎて訳が分からないわね……」
「と言っても、俺たちにとってはこっちの方がむしろ馴染み深かったりしない?」
「んー、確かに今までを考えるとそうかもだけど……ここまで大きい街は私も行った経験がなくて……って、トーゴさんはもしかして?」
「このくらいだと東京全体より規模は小さいからね。街並みのレベルも見慣れた感じではあるし……」
「えっ、東京ってそんなに大都会だったの?」
そんな大げさな話でもないと思うんだけど……ああそうだ。
「エリナさん、後ろに移動して大臣閣下に連絡とってくれない?」
「え、今? 夜じゃないの?」
「そう思ったんだけど、この街でホテルに泊まることを考えると、あまり駐車してある車に戻るのもよくなさそうだからね。それと動作チェックも兼ねるってことで」
「了解。あ、トーゴさんも喋る?」
「いや、エリナさんが全部報告してくれる? 内容はエスタリスの街並みと文明レベル。サービスエリアでの出来事も余さずね。
それと明日、この近辺に出張っている諜報担当と引き合わせてほしいと伝えておいて。引き合わせる際の暗号も決めておこう」
「結構すること多いわね……暗号については私たちの方で決めていい?」
「……あまり変なのにしないでもらえるなら」
オッケー、なんて軽い調子で後ろに移動し、いつも通り大臣閣下の部屋直通の通信用魔道具のスイッチをオンにするエリナさん。何というか、当たり前だけどこれだけ長くやってれば手馴れるよね……
「レディオチェック、マルキバイス、ディスイズスリーツー、オーバー」
『スリーツー、ディスイズマルキバイス、ラウデンクリア、オーバー』
「お疲れ様です、スリーワンは現在私に報告の指示を出して席を外しておりますので、このスリーツーが報告します」
『ご苦労様ですスリーツー、報告宜しくお願いします。いかがですか、スリーワンは相変わらず美味しいものを作っていますか?』
……まあ、ここから先は聞き耳を立てる必要もないだろう。
10分ほど経ってエリナさんが報告を終わらせるのと同時に、俺もホテルらしき場所を見つけた。前世の大きめなホテルにもあるような、ロータリーを玄関先に備え付けてあるよさげなホテル。
車をロータリーに滑らせると、ドアマンが近寄ってきてご丁寧に車のドアまで開けて出迎えてくれる……どれほどの金額になるかちょっと怖くはあるけど、まあある程度の出費は覚悟しないといけないか……
「取り敢えずさっきの話は後で聞くから、フロントで泊まれるかどうか確認しよう。エリナさんはロビーで待ってて」
「はーい」
言いつつホテルに入ると、これまたとんでもなく広いフロントにロビー。内装は赤大理石が中心で、調度品もひと目見ただけでレベルが違うのが分かる。……いかんひるむな俺たちはただ泊まりに来ただけなんだ。部屋があればだけど。
「すいません、予約していないんですけど部屋空いてますか? ふたりなんですが」
「いらっしゃいませ。お調べいたします、少々お待ちくださいませ……ダブルでよろしければひと部屋空いてございます。お連れ様は……」
「今はロビーで休んでもらっています。あの……あれです」
「さようでございますね。1泊2食付きで2000サルーンとなりますが、いかがいたしますか?」
2000サルーン……2小金か!! 物価の水準考えてもやっぱりめちゃくちゃ高い……けど!
「でしたらそうですね、取り敢えず2泊分お願い出来ますか?」
「かしこまりました、2泊でお部屋をとらせていただきまして、キーカードをお作り致します。お名前を頂戴してもよろしいですか?」
「トーゴ=ミズモト=サンタラです。妻はエリナ=サンタラ=ミズモト」
「トーゴ=ミズモト=サンタラ様、エリナ=サンタラ=ミズモト様でございますね。少々お待ちください」
言って作業を始めるフロントのスタッフ。……しかしイメージ通りの場所だなここは。そう言えばこの国の言葉ってどうなんだろう、俺はともかくエリナさんはジェルマ語しか話せないからな……
「お待たせ致しました、ミズモト=サンタラ様。お部屋の方12階の1263号室になります。こちらキーカードになります。お部屋に入る際に必要となりますので置き忘れ等にご注意願います。
朝食は7時半から9時まで、夕食は6時から9時まで2階レストランにて承ります。朝食後はラウンジに、夕食後はバーとなります。カードキーでご利用可能ですので、よろしければご利用ください。
またお部屋のミニバーに備え付けの冷蔵庫に関しまして、備え付けのお飲み物に関しましては卓上の伝票にご利用の分だけご記入ください。
チェックアウトは正午、清算はチェックアウト時にまとめて承ります。現金の他各種決済カードをご利用になれますのでよろしくお願いします。
館内設備につきましてはお部屋に備え付けの館内案内をご確認ください。ここまでで何か質問ございますでしょうか」
「いえ、今のところは」
「それでは以上になります。スタッフが客室へとご案内いたしますので、目の前のエレベーターより12階までお上がりください。ごゆっくりどうぞ」
恭しく頭を下げるフロントスタッフからカードキーを受け取って、エリナさんの元に向かう。すると何やら同じ宿泊客らしき女性とにこやかに話していた。
「お待たせ、エリナさん。エレベーターで客室に行けって」
「ああうん、ありがとう。それでは失礼致しますね。また機会ありましたら」
「こちらこそ、ありがとうございました」
言って、女性の方も俺たちから離れていく。……ジェルマ語が通じていたみたいだったけど……
「エリナさん、今の人って俺たちみたいに外国から来た人? それとも地元民?」
「この近くに住んでるって話だったわよ。ああ、この国ではジェルマ語が公用語になっているんですって。流石に私が話しているのとは語彙や発音が微妙に違ってるみたいだったけど」
「……そっか」
まあ、そのくらいの差だったら全然コミュニケーションに問題はなさそうだな。今から新しい言葉をそれなりに覚えてもらうのも難しいだろうし。
「それはともかく部屋に行くよ、結構階数が高いんで待つかもしれないけど」
「何階?」
「12階だって」
「それは……確かに高いわね。っていうか値段も高そうで聞くのが怖いんだけど」
うん、まあ、気持ちはわかるよエリナさん……
---
田舎から突然都会に行ったような感覚(
そして中部諸国連合の中でも大国並に発展してるので物価は高めです。
次回更新は08/11の予定です! 夏コミに委託参加しますので、西ま16bにてお願いします。
……あるんだけど、ここは今までの街とは別格だった。
「ええと……何? ここはタリンの新市街? いえ、それよりもっと何か、ニューヨーク的なメトロポリタン感があるというか……」
「いやそんなこと言われても、そもそもタリンの様子が分からないから」
俺の感覚で強いて言うなら、東京臨海副都心の内陸版って感じの作りだな……はっきり言って今まで見てきた街とは根本的に違う。明確に前世の大都会寄りだ。
しかしおかしいな、確かにエスタリスは魔導国家という風に聞かされてはいたけど、こういう街の光景を期待出来るのはむしろ隣の大国たるジェルマだったような気がするんだけど……?
「それでトーゴさん、この後はどうするの? 寝泊まり可の駐車場を探して――」
「それだとホームレスっぽく聞こえるからやめようか……それはともかく、今回は車には泊まらないでホテルを探すよ」
「え、何で?」
「ウルバスクみたいにある程度マジェリアにも近しい技術や文化レベルの国だったらそんなことする必要はないんだけど、エスタリスはこういう国だからね……ちょっと確認したいこともあるし」
とは言え今からホテルを探して見つかるものだろうかって懸念は確かにあるんだけどね……
ええと、確かヴィアンは宿泊施設が一定のところに固まってなくて、中心部から広範囲で点在してるって話だったな。思いがけず時間も早くに着いたし、少し街並みを見つつ探してみるか……
「それにしても何から何まで違い過ぎて訳が分からないわね……」
「と言っても、俺たちにとってはこっちの方がむしろ馴染み深かったりしない?」
「んー、確かに今までを考えるとそうかもだけど……ここまで大きい街は私も行った経験がなくて……って、トーゴさんはもしかして?」
「このくらいだと東京全体より規模は小さいからね。街並みのレベルも見慣れた感じではあるし……」
「えっ、東京ってそんなに大都会だったの?」
そんな大げさな話でもないと思うんだけど……ああそうだ。
「エリナさん、後ろに移動して大臣閣下に連絡とってくれない?」
「え、今? 夜じゃないの?」
「そう思ったんだけど、この街でホテルに泊まることを考えると、あまり駐車してある車に戻るのもよくなさそうだからね。それと動作チェックも兼ねるってことで」
「了解。あ、トーゴさんも喋る?」
「いや、エリナさんが全部報告してくれる? 内容はエスタリスの街並みと文明レベル。サービスエリアでの出来事も余さずね。
それと明日、この近辺に出張っている諜報担当と引き合わせてほしいと伝えておいて。引き合わせる際の暗号も決めておこう」
「結構すること多いわね……暗号については私たちの方で決めていい?」
「……あまり変なのにしないでもらえるなら」
オッケー、なんて軽い調子で後ろに移動し、いつも通り大臣閣下の部屋直通の通信用魔道具のスイッチをオンにするエリナさん。何というか、当たり前だけどこれだけ長くやってれば手馴れるよね……
「レディオチェック、マルキバイス、ディスイズスリーツー、オーバー」
『スリーツー、ディスイズマルキバイス、ラウデンクリア、オーバー』
「お疲れ様です、スリーワンは現在私に報告の指示を出して席を外しておりますので、このスリーツーが報告します」
『ご苦労様ですスリーツー、報告宜しくお願いします。いかがですか、スリーワンは相変わらず美味しいものを作っていますか?』
……まあ、ここから先は聞き耳を立てる必要もないだろう。
10分ほど経ってエリナさんが報告を終わらせるのと同時に、俺もホテルらしき場所を見つけた。前世の大きめなホテルにもあるような、ロータリーを玄関先に備え付けてあるよさげなホテル。
車をロータリーに滑らせると、ドアマンが近寄ってきてご丁寧に車のドアまで開けて出迎えてくれる……どれほどの金額になるかちょっと怖くはあるけど、まあある程度の出費は覚悟しないといけないか……
「取り敢えずさっきの話は後で聞くから、フロントで泊まれるかどうか確認しよう。エリナさんはロビーで待ってて」
「はーい」
言いつつホテルに入ると、これまたとんでもなく広いフロントにロビー。内装は赤大理石が中心で、調度品もひと目見ただけでレベルが違うのが分かる。……いかんひるむな俺たちはただ泊まりに来ただけなんだ。部屋があればだけど。
「すいません、予約していないんですけど部屋空いてますか? ふたりなんですが」
「いらっしゃいませ。お調べいたします、少々お待ちくださいませ……ダブルでよろしければひと部屋空いてございます。お連れ様は……」
「今はロビーで休んでもらっています。あの……あれです」
「さようでございますね。1泊2食付きで2000サルーンとなりますが、いかがいたしますか?」
2000サルーン……2小金か!! 物価の水準考えてもやっぱりめちゃくちゃ高い……けど!
「でしたらそうですね、取り敢えず2泊分お願い出来ますか?」
「かしこまりました、2泊でお部屋をとらせていただきまして、キーカードをお作り致します。お名前を頂戴してもよろしいですか?」
「トーゴ=ミズモト=サンタラです。妻はエリナ=サンタラ=ミズモト」
「トーゴ=ミズモト=サンタラ様、エリナ=サンタラ=ミズモト様でございますね。少々お待ちください」
言って作業を始めるフロントのスタッフ。……しかしイメージ通りの場所だなここは。そう言えばこの国の言葉ってどうなんだろう、俺はともかくエリナさんはジェルマ語しか話せないからな……
「お待たせ致しました、ミズモト=サンタラ様。お部屋の方12階の1263号室になります。こちらキーカードになります。お部屋に入る際に必要となりますので置き忘れ等にご注意願います。
朝食は7時半から9時まで、夕食は6時から9時まで2階レストランにて承ります。朝食後はラウンジに、夕食後はバーとなります。カードキーでご利用可能ですので、よろしければご利用ください。
またお部屋のミニバーに備え付けの冷蔵庫に関しまして、備え付けのお飲み物に関しましては卓上の伝票にご利用の分だけご記入ください。
チェックアウトは正午、清算はチェックアウト時にまとめて承ります。現金の他各種決済カードをご利用になれますのでよろしくお願いします。
館内設備につきましてはお部屋に備え付けの館内案内をご確認ください。ここまでで何か質問ございますでしょうか」
「いえ、今のところは」
「それでは以上になります。スタッフが客室へとご案内いたしますので、目の前のエレベーターより12階までお上がりください。ごゆっくりどうぞ」
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「お待たせ、エリナさん。エレベーターで客室に行けって」
「ああうん、ありがとう。それでは失礼致しますね。また機会ありましたら」
「こちらこそ、ありがとうございました」
言って、女性の方も俺たちから離れていく。……ジェルマ語が通じていたみたいだったけど……
「エリナさん、今の人って俺たちみたいに外国から来た人? それとも地元民?」
「この近くに住んでるって話だったわよ。ああ、この国ではジェルマ語が公用語になっているんですって。流石に私が話しているのとは語彙や発音が微妙に違ってるみたいだったけど」
「……そっか」
まあ、そのくらいの差だったら全然コミュニケーションに問題はなさそうだな。今から新しい言葉をそれなりに覚えてもらうのも難しいだろうし。
「それはともかく部屋に行くよ、結構階数が高いんで待つかもしれないけど」
「何階?」
「12階だって」
「それは……確かに高いわね。っていうか値段も高そうで聞くのが怖いんだけど」
うん、まあ、気持ちはわかるよエリナさん……
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田舎から突然都会に行ったような感覚(
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