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ふたたびの夢 ふたたびの誘惑
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薄紅色の垂れ桜のカーテンの下に僕は立っていた。記憶があの時に戻って行く。あれは夢なんかではないと、僕は確信した。本当にミルカはいたのだ。そして何者かによって殺された。僕は魔性の管理人妖子と関係を持ってしまったのだ。アパートメントの下り口に立ち止まったまま僕はすこしづつ思い出していた。妖子に抱き締められた感触、冷たい肌と生ぬるい彼女の唾液。
思い出すのは少し抵抗もあったが、官能が僕の理性を支配する。なんとも言えない艶かしい記憶がカラダを駆け巡るのだ。妖子に逢いたい。僕はその衝動を押さえようと必死になっていた。彼女がたとえ魔性のものであったとしても。逢いたいのだ。
その時だ。アパートメントの横の土手道の藤棚の下に誰かが立っている。時刻は黄昏時。まさに逢魔が時。うすぼんやりした輪郭は見覚えがあった。白地の着物姿の妖子。こっちを見て微笑んでいる。その辺りはミルカが倒れていた草むらの近くになる。僕は惹き付けられるようにそちらへ行った。意識の底で止めるものがあったが、もう自分を抑えることは出来なかった。駄目よ!と小さくミルカの声がした。それを振りほどき妖子の招くまま近づいた。
「お帰りなさい。お待ちしてましたんぇ」
彼女が手を伸ばした。白い着物から出た白い手。あの頃と全く変わらぬ美しい艶かしい美貌。これは夢ではない。僕は妖子の冷たい指に絡め取られた。妖子はふふっと笑った。これは魔物だ。そう思いつつももはやカラダは言うことを聞かない。妖子の息が首すじにかかる。えもいわれぬ良い香りがした。いつか祖父の家で嗅いだ麝香の匂いに似ていた。
「中へお入りやす」
妖子の黒い瞳は潤んでいた。恐怖はなかった。僕は選ばれし者なのだと思うと喜びにうち震えた。そして誘われるまま、月日荘のなかへと入った。そこは時が止まり、外界とは隔てられた空間だった。僕は初めてここに来たあの10代の青年に戻っていた。
管理人室に入るとき、ちらりと床の隅に白い蛇が走るのが見えた気がした。そう言えばミルカの遺体の首に鱗状のアザがあったのだ。再び僕は確信した。ミルカはやはり存在し、何か魔物に死に追いやられたのだと。全身の力が抜け鼓動が速くなった。それでも僕は妖子に誘われたまま彼女の部屋へ入ったのだった。
思い出すのは少し抵抗もあったが、官能が僕の理性を支配する。なんとも言えない艶かしい記憶がカラダを駆け巡るのだ。妖子に逢いたい。僕はその衝動を押さえようと必死になっていた。彼女がたとえ魔性のものであったとしても。逢いたいのだ。
その時だ。アパートメントの横の土手道の藤棚の下に誰かが立っている。時刻は黄昏時。まさに逢魔が時。うすぼんやりした輪郭は見覚えがあった。白地の着物姿の妖子。こっちを見て微笑んでいる。その辺りはミルカが倒れていた草むらの近くになる。僕は惹き付けられるようにそちらへ行った。意識の底で止めるものがあったが、もう自分を抑えることは出来なかった。駄目よ!と小さくミルカの声がした。それを振りほどき妖子の招くまま近づいた。
「お帰りなさい。お待ちしてましたんぇ」
彼女が手を伸ばした。白い着物から出た白い手。あの頃と全く変わらぬ美しい艶かしい美貌。これは夢ではない。僕は妖子の冷たい指に絡め取られた。妖子はふふっと笑った。これは魔物だ。そう思いつつももはやカラダは言うことを聞かない。妖子の息が首すじにかかる。えもいわれぬ良い香りがした。いつか祖父の家で嗅いだ麝香の匂いに似ていた。
「中へお入りやす」
妖子の黒い瞳は潤んでいた。恐怖はなかった。僕は選ばれし者なのだと思うと喜びにうち震えた。そして誘われるまま、月日荘のなかへと入った。そこは時が止まり、外界とは隔てられた空間だった。僕は初めてここに来たあの10代の青年に戻っていた。
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