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10話
しおりを挟む「付いて来なくてもいいのに」
長椅子の隣に座る三船は、何故か一緒に保健室に来ていた。
擦り傷程度の傷、1人で行くつもりが『心配なので一緒に行きます』と三船が言うから仲良く一緒に行く羽目になった。
「なぁ、聞いてる」
「聞いてるから、大人しくしてろ」
「もう、帰っていいってば」
「ん」
返事はするものの、背もたれにもたれ掛かる。戻る気は無いらしい。
先ほど、保険医に診てもらったがやはり鼻の中を切っているだけと言われた。
鼻に詰めるワタと腫れている所に当てる氷をもらった。鼻血が引き次第勝手に戻ってもいいと言われたので、大人しくしている。
もう、心配するような傷では無い。
保健室の中で2人、保険医は用事があると出て行ったきり帰ってこない。
まだ気持ちの整理もついていない状況で、2人にされるのはどうも気まずい、このまま無言で乗り切ろうか。
切り出す勇気もなく、いじいじと目線を遊ばせていると先に三船の方が切り出してきた。
「なんで……庇った」
「えっと」
あの時、側から見ればただの事故。どうやら三船には伝わっていたようだ。
「別に俺の事、庇わなくてもどうにか俺1人で出来てた」
「……確かに失敗したけど、見てるのに無視する事が出来なくて。余計な事した自覚あるけど」
「そういう話じゃない」
怒りを滲み出した声、余計な事して怒らせてしまった。
突然出て来たと思えば、鼻血出して怪我するなんて呆れ返るよな。
「ごっごめん」
「違う。俺はアンタのこと頼まれたのに、なのに俺はアンタの事怪我させて……守るって言って護られるなんて世話ないな」
膝につく手を震えさせ情けないと悔しがる彼。そうか、大事な義宗さんとの約束を破った事になるのか。
あの家に来てから俺は勘違いをしていた。三船にとって俺は邪魔な存在だと、嫌われていると思っていたけど、そんな事無くて、ずっと三船は俺を護ってくれていたのだ。
ただの約束だけど、三船はとっては大事な事。俺を好きとか嫌いとかの話じゃない。
「三船、ありがとう。あいつらの事を知ってたから、当たらないよに惹きつけてくれていたんだね。俺馬鹿だから気づかなかった」
「スズには危害加えたくなかったから……頬腫れたな」
俺の頬に優しく触れる。三船の指先は冷たく気持ちいい。
「ごめん、護れなくて」
「いいよ、お互い様だろ。そもそも俺のドジが原因だし。それに、三船が駄目だって言われても俺は飛び出してた」
「ふっ、馬鹿だろ」
「まぁ、馬鹿だからな」
鼻で笑う三船を見て、少しだけ彼の事が理解できた気がした。
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