お飾りは花だけにしとけ

イケのタコ

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5話

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浅木倫太郎、二年生。一年の時、生徒の人気を買われ、生徒会庶務に就任。
 特に目立った事件などは起こさず模範的な生徒。生徒会活動にも真面目に取り組んでいた。
 しかし二年からは授業にほぼ出ず、不良と連むようになり、空き教室で暇を潰している。
 生徒会の名誉のために、写真付きのデータを読みながら桃谷は浅木がいるという場所へと向かう。

 顔写真からも伺える爽やかそうな青年。生徒と共に先生からも高評価をもらっているのに関わらず、データから察する一年の間にだいぶ心境の変化があったようだ。
 模範的な生徒だったのに何故。やはり去年の事件があってからだろうか。

「入るぞ」

 空き教室の躊躇なく扉を開けた。すると先程まで笑っていたのか、大口を開けたまま複数のギラリとした目が桃谷の方に集中する。

 頭がカラフル!いっぱい

 カーテンも締め切られ、お菓子、クッション、ゲームなど娯楽が散乱する基地のような教室で不良は屯していた。驚きと恐怖で思わず桃谷は仰反る。

「誰だテメェ」
「あれ、なんか見たことねぇ」
「俺も見たことある」

 呆然としていた不良達は続々と桃谷を指し始め、口を交わし始めた。
 何もなかったかのように扉を閉めたくなったが、桃谷は一歩前へと教室の中に入る。

「浅木倫太郎はいるか」
「なに?だれ」

 気怠そうな声が聞こえると、奥の方からピンク色の髪の毛をした不良が出てきた。
 耳にはピアス、制服をだいぶ着崩して、派手な格好を着飾っているが、写真通りの男だった。

「浅木倫太郎、お前に話がある。とりあえず、外に出ろ、それから話をする」
「はぁ?なんで……」

 浅木は否定しようしたが一度言葉を飲み込んで再び俺の顔を見る。

「……あんた、今の生徒会だ」
「そうだ。だから話したいと言っている。」
「今頃、何を話すんだが。もう、ほっといてくれない。」

やはり、素直に頷いてはくれないようだ。話が進まないなら強制的に連れ出そうかと思えば、浅木の横から黄色い頭が顔を出し、『あー』と指を指す。

「思い出した、俺様生徒会長だ!朝会で『静かにしろ、この愚民共』って言った人だ」

 言ってない。ざわついていたから『静かに』とは言ったけど、愚民共は本気で言ってない。

「この俺様を煩わせるな。俺様の前で文句なんか言わせえねぇ。いいからゴミでも詰めて静かにしろ愚民共的な事を言ってた人だ」

 すると、隣で威嚇していた青髪の人も、同調し始めた。

「カス、ゴミとかあの風紀委員長に言ったらしいぜ。」
「副会長を駒のように使うらしい」

 またその周り伝染していき、有る事無い事が飛び交い始めた。
 脚色されすぎてどこから突っ込めばいいのか。不良たちは期待に沿えないぐらいに朝会はキャラとか捨てて、真面目にやっている。
 そんな事言ったら翌日に静さんと水崎さんに殺される。

「そんなのあり得ないから」

 俺が訂正する前に浅木が言ってくれた。

「えーそう。そんな感じだったのにな。皆言ってたし」
「流石に脚色しすぎ、話が途切れるからちょっと黙ってて」
「はーい」

 金髪の人は手を上げイタズラに笑い、素直に浅木の後ろに戻ると、周りの騒つきも自然と落ち着いた。

「で生徒会会長様、話ってなんですか」
「聴く気になったと言う事か」
「そう。そのかわり俺に答えを求めるのはやめて。イエスでもノウだとしても追求しない、ただ俺は話を聞くだけ。」
「分かった」

 横入りした金髪の人のお陰なのか、煩わしそうに皺を寄せる浅木は話だけでも聞いてくれるらしい。
 とりあえず、昼食も兼ねて食堂で話をする事になった。










「これとあとこれ、あっこれもあるじゃん」

 シャデリアに黄金に輝く銅像。煌びやかな装飾を施された食堂でメニュー表を開く桃谷は食べたいものをどんどんと指差して注文していく。
 
「以上だ」
「かしこまりました」

 注文を書き取ったウエイターは注文繰り返す。聞いていた浅木は今にも胃もたれしそうな顔で、向かいに座っていた。
 確認が終わったウエイターは頭を下げ、厨房に戻る。

「頼み過ぎじゃね」
「いいんだよ。食堂にほぼ来る事ないから、食える時に食わないと損だ」
「生徒会長様であろうお人が貧乏症って」
「そうだ」
「認めたよ、この人」
「俺が食いたい時に食う、それだけだ。それより、浅木く……はそれだけいいのか」
「別にがっつく程、そんなにお腹すいてない。あっ言っとくけど遠慮はしてないから。俺が、少食なだけで、アンタに気を使ってない」
「それでいい。緊張されては話が滞るからな」

 生徒会室で話をしても良かったが、浅木の方から『メガネの人いるんなら嫌なだけど。あの人なんか恐いから』と拒まれた。静さんとは一度だけ話事があったらしいが、どうも馬が合わず、微妙な空気なったらしい。何となく分かるが。
そういう事なら食堂でしようとなった。会話の内容が聞こえないように自前に静さんに頼んで人払いをしている。
 食堂にしたかったのは何より、

「こちらおすすめの日替わりランチになります」

 こうして美味しいご飯にありつけるからだ。
 ご飯を運んできたウエイターは、次々と二人の前に置いていく。豪華な食事は机からはみ出る寸前であった。
 そして、浅木が頼んだトーストと紅茶が小さく置かれた。
 
「本当に食べるの」
「食える。まぁ残したら、その時はその時で」
「その時で?」
「タッパーに詰めて帰る」

 浅木は紅茶を吹きかけた。突然咽せる帰る浅木に桃谷は『どうした』と声をかけた。

「いや、なんか。思ってた答えと違いすぎて」
「なんだ、お前は残していくのか。頼んだらちゃんと全部食べないと駄目だからな」
「そうだけど、そうじゃなくて、こうもっと、言われてたイメージとね、ほら会長って気高い人で」

 モゴモゴと言いにくそうに口を動かす。何が言いたいのだろうか、桃谷はご飯を頬張りつつ首を傾げる。

「うーんなんか、自分で言ってて馬鹿らしくなって来た。あれだ、本題の話をしよ」
「それもそうだ。嫌かもしれないが、まずこれを見てくれ」
 
 俺は今朝の記事を取り出し、浅木に見せた。
記事の内容は目を見張る物だが、浅木は特に驚きの声もなく無関心な冷たい表情であった。

「そう。よくもこんなあり得ない話を書き立てるもんだね」
「その言葉確かだな」
「いつの写真か知らないけど、そういうふうに見えるように切り取って書き上げてるだけの、ほんとくっそくだら無い記事。でこれがどうしたの」
「今朝発行されたものだ。配る事を直ぐにやめさせたが、もう何人かの手に渡っている
このままだと、浅木としての尊厳も生徒会の尊厳を失う事になる。だから、来週の役員会議に出て、違うと言ってほしい」
「なんで」

 浅木は切り捨てるよう冷たい眼差しが

「なんで、そんな事をしないといけないの。俺はもう生徒会と関係ない。今更自分の評価とか生徒会の評価なんてどうでもいい。
 関係ないんだ」

 彼は、一言、一言、を噛み締めるようにそう言った。関係ないというのに苦しそうな顔をするのはなぜだろうか。
 
「だが、事実でない事が広がって浅木君が悪く言われるばかりだ。そんなのは、おかしいと俺は思う」
「別にいい。記事が嘘だとしても俺はこういう人間だよ。遅かれ早かれ、こうやって落ちていく。だから、気にもしない。」
「……どうしてだ」
「最初に言った通り俺に答えは求めないで。俺はこの件に関わらないし、知らない」

 話すことはない、浅木は立ち上がる。

 どうして、そんなに生徒会と関わりたく無いのか。興味がないというのに彼は何故苦しそうなのか、俺にはまだ未練があるに思えた。
 けれど、深追いしないと約束した以上、去っていく彼を引き止める事は出来ない。

「なぁ」
「なに、話すこと無いって言ったよね」
「話はもういい。お前にこれやる」

 頼んでいたデザートの一つ、瓶詰めのプリンを渡そうとする浅木さ目をまん丸とさせた。

「はぁ?」
「ここのプリン美味いから持って帰れ。せっかく食堂に来たことだし」
「アンタ分かってる。俺結構散々な事言ったつもりなんだけど。それとも塩でも撒きたいの」
「それはそれ、これはこれ。それに俺は言ったただろ、話に来ただけだって、答えは求めないって。まぁ、プリン要らないなら、俺が食うだけだけど」
「……いる。」

 浅木は桃谷の手からプリンを奪い去ると、座り直し、黙々とプリンを食べ始めた。

「変な生徒会長」

 とポツリと溢したので、桃谷は小さく息を漏らし笑う。

「お互い様だろ、生徒会会計」



 
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