学園最強と言われている術師に何故か好かれている

イケのタコ

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19 会話

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信者、親衛隊など言い方は色々あるが、毎回昼休憩になると集まる場所があるらしいのでヨモギと一緒に行く事にした。もちろん、アルカナも暇だと言ってついてきた。
どんなふうに集まっているのか。学園にあるバラ園に来てみたところ、机と椅子を並べられては執事のような人がケーキと茶が一人一人に配膳していく。

「呑気にアフタヌーンティー決めてやがる」

アルカナが薔薇の向こう側を見て言う。そう、三人は丁度見えない角度から、集団を眺めいていた。

「というか、なんで言いに行くのに隠れてるわけ? このままケーキ食ってる集団を眺めることになるけど」
「ケーキ美味しそう……」
「イーナさん?」
「えっあっ、そうなんですけど……いざ、集団を目の前にすると緊張が」
「あの、すいません一言いいですか!」

アルカナはその場に立ち上がり、集団に呼びかけた。
お茶やケーキに向けられていた視線は、一斉に三人に向けられた。「お前っ」とヨモギはアルカナの首根っこを捕まえて後ろに引っ張る。

「穏便に済ませるって話だったろ」
「いや、どのみち話すからいいかなって」

ヨモギは片方だけ握り拳を作っては震えさせていた。

「貴方は誰ですか。ここは親睦を深める神聖な場。部外者は出て行きなさい」

集団の1人が立ち上がってこちらに詰めてきた。

「はぁ? お前らから喧嘩ふっかけて、ぶっ」
 
また煽るような事を言いそうだったので、イーナとヨモギは集団に向かおうとするアルカナを連れ戻す。

「お取り込み中のところ申し訳ないですが、お話いいですか」

ヨモギが何一つとして怖気づくこともなく、近づいてくる1人に言う。

「貴方達と会話する暇は私達にありません。今回は見逃してあげますから、何も言わずに出て行きなさい」
「イーナさんに対して嫌がらせやめて貰えませんか」
「……はぁ……仕方なかったのです」

集団の一人は少しだけ間を置いてから、しんみりと言葉を吐き出した。

「仕方なかったのです。無礼なものからスズラン様をお守りするには、そうするしかなかったのです。いいですか、私たちはルールを作ってスズラン様を見守り、お守りしている。なのに、その者は無知に踏み荒らした。それがどれだけ失礼なことか、貴方達は分かっていない」

集団の一人に指されるイーナ。周りも賛同するようにテンポ良く拍手する。
 
「私はイーナさんに対して嫌がらせをやめて欲しいと言っているのです。理由なんか訊いていません。貴方達が答えるのは、はいか、いいえだ」
「いいえと答えたらどうする気ですか。暴力ですか? だから野蛮な人達は話を聞かない」

こう言えば、ああ言う。ヨモギとその人はそんな会話を繰り広げているとアルカナがイーナに向かって小声で話す。

「なぁなぁ、イライラしてきた。もう殴った方が早くないか」
「わかりますけど、今殴ればこっちが圧倒的に悪くなります。ヨモギさんに任せましょう」

話し合いとは言い難いが、決着がついたのか「分かりました」とヨモギは一歩身を引く。

「一旦、ここは帰ります。言っておきますが、イーナさんが話し合いで解決したいとおっしゃるから貴方達と会話したまで。次はそうですね……、無いと思った方がいいと思います」
「私達は暴力の脅しには決して屈しない」
「そうですね、話し合いで済まなくて残念です」
「恐ろしい、恐ろしい。話し合いなどと言って結局は脅す。そういう輩は相手をしない、さっさと出て行きなさい」
「では行きますか、お二人さん」

ヨモギがため息吐いて戻ってくる。会話にならないと知っていた。1回目はこのような形に終わるだろうとイーナは予測していたので、素直に校内に方に戻った。

「早く切り上げて珍しい。あれでいいのか」

アルカナはヨモギの背について行く。

「もう、いいです。粗方決着はつきました」
「そうには、見えなかったけどな」
「せっかくこちらが出向いたのに話は聞き入れないと言った時点で、結末は見えましたから。それに、あの人達は、無知は無礼だと散々ほざいていましたが、自分達も無知のために踏み荒らしたことを分かっていない。全く、お互い様って奴ですよ」

ヨモギの話はどんどんと進むが、イーナとアルカナは意味が分からないと顎に手を当て渋い顔する。

「今は分からなくとも、近いうちに分かります。イーナさん、犬は貴方の事が大好きですから」
「あの犬、飼ったことないです。黒兎はいますけど」
「そうでしたか。では、今から手懐けることをお勧めします」

やはりヨモギの言っていることは分からない。あえて本題を避けた言い方にもやもやとするが、いずれ分かるならいいかと思えた。

「キモい言い方」

アルカナは吐き捨てた。

一番の問題の解決はしなかったが、一歩進んだ。二人は最後まで付き合うと言ってくれているので、粘って問題を一個ずつ払っていくしかない。

「……今日はどこで寝るんですか」

三人で廊下を歩いているとヨモギが立ち止まって訊いてきた。

「もちろん、自室です」
「そうですか……」

他に部屋を持っているはずもなく。扉が無くなってしまったけれど、帰るところは変わらない。何故、自室の状況を知っているヨモギは、当たり前のことを訊ねたのだろう。
アルカナが、ヨモギを横目で見てからこちらに視線を戻す。

「部屋を荒らされて可哀想だから、俺の部屋に来ないかっだって」
「あっ、そういうこと。あの、いいんですか? お邪魔して」

部屋を貸してもらえるなら、こちらとしては嬉しい。ヨモギに再び話を戻すと、視線は逸らされアルカナを指す。

「この男と同じ部屋で寝る事になりますけど、いいですか」
「どう意味だ、あぁ?」
「そのままの意味ですよ」
「言っておくけどな、躊躇して言わない方が恥ずかしいからな」
「っうるさい!」

また口喧嘩を始めそうな二人を眺めつつ、イーナの答えは笑顔で泊まらせてくださいだった。




 







「はぁ、ああ言う輩を相手にしていると疲れますね」

大きくため息を吐いて男子生徒は廊下を歩いていた。せっかくの親睦会を、突然入ってきた無礼な三人のせいで台無しにされたからである。

「空気の読めない無知はどうしようもないですね。自分たちに非があること分かっていない」

男子生徒は一人で歩いていることもあり、どんどんと愚痴が溢れていく。

「特にあの、イーナという人間は品性が感じられない。スズラン様はお優しいから言わないだけで、ああいう類は嫌いなはずだ」
「なんて、言った?」
「ですから、イーナという人間はーーー」

独り言を呟いていた男子生徒とは違和感に気がついた。一人だというのに会話している事に。
そしてーーー、男子生徒の目の前は一瞬にして白くなったと思えば、白い壁に頭を打ちつけていた。

「うぐっ!」

壁に打ちつけた衝撃に、目をくらませ、痛みに足が軸を無くして崩れていく。
地面に手をついた時には、ポタポタと血の水滴が落ちる。

「ちっ血がぁ」

血が流れるこめかみを触る男子生徒だったが、手に血がつくだけでこめかみどころか、痛みもなく、顔に一つも傷がなかった。
訳が分からない。では、この手や地面に滴る鉄臭く赤い液体はなんなのか。
幻術でもかかっているのかと、自分の目を疑う。

「一体何が起きて……」
「僕さぁ、今日失敗したんだ。でもね、あまりにも可愛いから仕方ないよね」
「なんの話を……」

四つ這いのまま男子生徒は顔を上げ、目の前に立つ人物を見て絶句した。
見たものを拒絶するかのように手は震え始めて、全身が血という血が引いていくのを感じた。

「昔にね、助けてくれたんだ。本人はなんとも思ってないようだけど、僕はね、あの時に救われたんだ」
「ひぃ」
 
吸った息は鳴り笛のように、恐怖に足は立たず。獣が怯えたように後ろに下がっていく男子生徒。それを追いかけるように、靴を鳴らして一歩ずつ、一歩ずつ、ゆっくりと近づく。
 
「こんなさぁ、腐った世界にも光があるんだって」
「さっきから何を言っているんだぁ! わっ、私は何も関係ない、関係ないからなっ」
「関係ない、意味が分からない、腐るほど聞き飽きた。いつになったら分かるんだよ。なぁ、お前もだろ。お前も、自分が何をしたのか分からないんだろ」
「本当に、しっ知らない」
「僕ね。取られるのも、邪魔されるのも、傷をつけられる事も、大嫌いなんだーーー、だから知っておいてよ」
「やめろっ」
「大丈夫、殺しはしないから」


金色の髪を持った男は、無慈悲にも指を鳴らした。
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