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2 友人のY
26 文化祭3
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薮内が来るまでの間自己紹介してくれた、四条柊悟は苗字も名前も前世とは変わらず。
そして柊悟が、薮内の従兄弟だったとは知らなかった。
薮内と会った時から四条との接点が出来ていたという発覚した事実に、腹が痛くなる。
「まさか、話しかけたのが弥生君の友人だったとは。世間って狭いね」
「そうですね」
運命みたいだねとお気楽に笑う柊悟に対して、苦笑いすることしか出来なかった。
「でも、君が友人で本当に良かったよ。弥生君と連絡がつかなくて心配していたから」
連絡が取れないと嘆いていた柊悟には薮内が体調不良で休んでいることは伝え、薮内には従兄弟が来ている事を電話で伝えた。
体調不良もあって薮内は、従兄弟からの連絡に気づかなかったようで、すぐ行くからと電話の奥で扉が開く音が聞こえた。
それから、数分で薮内は息を切らして俺達の元に駆けつけた。
「来るなら連絡してくださいよ」
顔色は鈍い色のまま。
「うわ、本当に顔色が悪いね。色々言いたいことあるけど、とりあえず座ろうか」
「えっ、はぁ」
柊悟は心配そうに近づいて薮内を、小高い花壇の上に座らせた。
柊悟の背後に張り付く娘は「ゾンビみたい」と指差し小動物みたいに笑う。
「こら、世莉。そういうこと言わない」
「はーい」
叱る父親と、やんちゃな娘、普通の親子の会話。
なんかーーー、なんか拍子抜けした。
この人は本当に四条柊悟なのだろうか、と考えてしまうほどにほんのり甘く穏やかな空気があの人から出ている。
もっと、あの人は蛇のような鋭く、狡猾でそれでいて物腰柔らかな態度が気持ち悪くて怖かったはずだ。
でも俺の前にいる人物は、ただの平凡な人生を生きてきた普通の父親だ。
「どうして、柊悟おじさんがここに」
「いつも言うけど、お兄さんな。ほら、この前言っただろう、文化祭するって。もちろん、迷惑とか考えて行くつもりはなかったが、世莉が行きたいって言うこと聞かなくて」
娘はニッと歯を出してピースを薮内に向けた。
「あー、わがままに負けたんですね」
「そう言わずに。案内してもらいたかったけど、無理そうだね」
「です」
「常備しときなさい」
肩にかけていた鞄から錠剤シートを取り出した柊悟は膝を曲げて、薮内に手渡した。
「吐き気止め、ありがとうございます」
「吐くなら飲まない。分かった」
「はい、すいません」
幼い子供を叱りつけられるように怒られる薮内を見届けた。
「挨拶出来たし、そろそろ帰るよ。ありがとうね、えっと、お名前訊いてもいいかな」
立ち上がり、こちらに振り向く四条修吾の笑顔に曇りはない。
もしかしたら、この人は……
「赤橋新です」
「赤橋君だね。今日は色々お世話になったね、ありがとう」
手を差し出された。あの兄から握手を求められている事が異常すぎて、何もせずぶら下げていた手に恐怖という重みがのし掛かる。
鼓動は早く、息遣いも自然と薄くなり、背中に冷や汗が流れていく。
これは、握手していいのか。こう握手した瞬間、握り潰されるとか、それとも殺されるとか、前世の不安が過ぎる。
しかし、向けてくるのは裏もない笑顔。ここでしないと怪しいし、薮内の友人として失礼だ。
大丈夫、今の俺は赤橋新だろうと何度も心の中で言い続けた。
一度、後ろで握り拳を作ってからゆっくりと腕を上げたが、突然視界は真っ暗となり後ろ側に引っ張られた。
温かくて、硬さもありつつ弾力があるものに包まれた。
なに、一体何が起きたと、真っ白な思考の上から聞こえてきたのは、また違う冷たくて恐い人。
「ゆきひさ…….」
「触るな」
長い指の隙間から見えるのは、混じり気のない凹凸を描いた綺麗な横顔。
帰ってきた彫刻のような顔は、今は中心に皺を寄せて、鋭い目つきは牙を研ぎ澄ました獣のようだ。
そして、すぐに雪久が勘違いしている事に気がついた。
「雪久、ちょっと待って。違う、その人ないから」
この人はそうじゃない。雪久の腕から逃れようと身を捻るが、駄目だと言わんばかりに肩に置かれた手は力が入り、体を締め付け雪久の胸板に引き寄せられる。
男同士だというのに、歯が立たないのが悔しい。
「お前が触るな」
「えっと……、ごめんなさい。どちら様ですか」
握手しようと差し出した手はそのまま、目を小さくまんまるとさせた柊悟は固まる。
この反応、やはりそうだった。
四条柊悟には、前世の記憶がない。
俺が椿だと分からないのはまだ理解できるが、ほぼそのままの雪久を見て、何も表情が変わらないのは記憶がないとしか思えない。
だから、その反応を見た雪久は困惑するように、腕の拘束が緩む。
「雪久、だから。ねっ」
拘束の隙間から手を抜け出し、逆毛を立てた獣を宥めるように雪久の頭を撫でた。
そうすると、やっとこちらに顔を向けては目を見開いた。
あえて言葉にはせずに首を横にふれば、雪久は腕の拘束は自然と解けていく。
「すいません。なんか、友人が人違いしたみたいで」
「そうなの。なら、仕方ないかな」
「先ほどは無礼な事をして、本当にすいません」
「いいよ。よく間違えられるんだ。ほら、世の中には三人いるなんて。あれ、それ以上言われているから三人以上なのか」
一触即発の空気の中、俺の謝罪を快く受け入れ、場が重くならないように冗談まで話してくれる柊悟に感謝しかない。
謝罪をしなければいけない人物はといえば、俺の腰を緩く抱いては、俺の背中に頬をくっつけていた。
何も喋らないし、物を取られた拗ねた子供のようで、いつもと違う様子に、背中がむずむずとしてくる。
「柊悟にいさん、せっかくだから案内しますよ」
タイミングを見計らったように薮内は立ち上がり、柊悟達を誘う。
「体調は大丈夫?」
「ずっと座っている方が、気分が悪くなるので。案内料として後で奢ってくださいよ」
「なるほど、そう来たか」
「案内してくれるの。やった、やった」と娘は人形を持ち上げながら跳ねては、薮内の手首を掴んで表の方に連れていく。
「ねぇねぇ、あっちに行きたい!」
「っ、言っとくけど俺まだ全快じゃないからな」
兄妹のように走っていく二人を、慌ててついていく柊悟を見送った。
なんだが、兄が幸せそうで良かった。
また薮内に気を使われたので後で礼を言っておくかと考えつつ、背中に引っ付く者に指でつついて合図を送る。
「そろそろ、着替えに行っていいですか」
*
着替えは空き教室。クラスから離れた場所は暗くて静かで、遠くから笑い合う声が聞こえてくる。
「着替え終わったらどこに行きます? 案内は……、人が着いてくるし出来るかな」
ここには二人しかいないというのに、あれからずっと黙ったまま。言いたい事が沢山あるのか、それとも言うことがないのか。
どちらでも、俺は話さなくてはならない。
「兄様に記憶がないと、俺は思っています。だから、俺が知っているあの人とは別人なんだと思います。因縁とか、血縁とか関係ないです」
あんなに楽しそうに笑う兄を見たのは初めてだ。
「……、頭では分かっている。感情の方が抑えられなかった。俺はあの人が苦手だ」
扉の前にもたれかかっていた雪久が動く。
嫌いだと言うが雪久と兄が会話をしていたのは、結婚式くらいだと認識している。
会う機会もなければ、嫌いになる要素がないはず。
「兄と何かあったんですか」
「何かあったか」
雪久の影がこちらに近づいて来て、自身の落とした影と重なり濃くなっていく。
無言で近づいてくる雪久が恐い。
いつのまにか壁に追いやられて、抵抗するとわかっていたからこそ、俺の両頬を両手でしっかりと包み込み、双眼がこちらを真っ直ぐと射抜く。
「!」
鼻先に当たるのはフニフニと柔らかく、張りがあるもの。暖かくて、でも少し冷たい感覚を知っている。
空いた口が塞がらなくて、2本で地に立っていたはずの浮いた感覚になり、力が抜けた。
「あぶな」
「ゆきひさっ、おまえは突然なにを」
きっ、キスされると思って焦ってしまった。
そのせいで腰が抜けてしまったが、落ちる前に雪久が腰と尻を支えてくれた。
後ろのスカートがグシャリと折り畳まれて沢山のシワを作り、なんとも言えない恥ずかしい格好だが、地面に打ちつけるよりいい。
「ーーー俺は、お前に触れて、息遣いを聞いて、体温を感じて、生きているだけで安心する。もう二度、あんな形は見たくない」
四条柊悟に会ってから、ずっと心を掻き乱されて苦しいそうな雪久。
あの日の最後を聞いたのかな、言われたのかな。
でもね、兄が手渡してくれたのは選択を増やしただけで、それを選んだのは私なんだよ。兄は何一つ悪くない。どのみち、独房で本当の孤独になった私は、罪を背負うためにあの結末を選んでいた。
「雪久、あのな。俺は」
「何があってもずっと、そばにいてくれ」
こちらが話そうとすれば今度は、両手は重なるように握られ、瞼は閉じ、額同士を合わせてきた雪久。
まつ毛に白い髪が当たる。それだけで顔から熱が吹き出しそうになるが、掠れた声があまりにも神に願うようで息が詰まる。
このまま飲まれていく感覚。破裂しそうな心臓と、ジンジンと染み渡るような甘さ。
離れたら残らず一瞬だというのに再び求めて、駄目になっていくのが、手に取るように分かっているのに俺は、俺は、振り払えない。
ああ、頭がおかしくなる。
きっと、こんな格好しているからだ。
そして柊悟が、薮内の従兄弟だったとは知らなかった。
薮内と会った時から四条との接点が出来ていたという発覚した事実に、腹が痛くなる。
「まさか、話しかけたのが弥生君の友人だったとは。世間って狭いね」
「そうですね」
運命みたいだねとお気楽に笑う柊悟に対して、苦笑いすることしか出来なかった。
「でも、君が友人で本当に良かったよ。弥生君と連絡がつかなくて心配していたから」
連絡が取れないと嘆いていた柊悟には薮内が体調不良で休んでいることは伝え、薮内には従兄弟が来ている事を電話で伝えた。
体調不良もあって薮内は、従兄弟からの連絡に気づかなかったようで、すぐ行くからと電話の奥で扉が開く音が聞こえた。
それから、数分で薮内は息を切らして俺達の元に駆けつけた。
「来るなら連絡してくださいよ」
顔色は鈍い色のまま。
「うわ、本当に顔色が悪いね。色々言いたいことあるけど、とりあえず座ろうか」
「えっ、はぁ」
柊悟は心配そうに近づいて薮内を、小高い花壇の上に座らせた。
柊悟の背後に張り付く娘は「ゾンビみたい」と指差し小動物みたいに笑う。
「こら、世莉。そういうこと言わない」
「はーい」
叱る父親と、やんちゃな娘、普通の親子の会話。
なんかーーー、なんか拍子抜けした。
この人は本当に四条柊悟なのだろうか、と考えてしまうほどにほんのり甘く穏やかな空気があの人から出ている。
もっと、あの人は蛇のような鋭く、狡猾でそれでいて物腰柔らかな態度が気持ち悪くて怖かったはずだ。
でも俺の前にいる人物は、ただの平凡な人生を生きてきた普通の父親だ。
「どうして、柊悟おじさんがここに」
「いつも言うけど、お兄さんな。ほら、この前言っただろう、文化祭するって。もちろん、迷惑とか考えて行くつもりはなかったが、世莉が行きたいって言うこと聞かなくて」
娘はニッと歯を出してピースを薮内に向けた。
「あー、わがままに負けたんですね」
「そう言わずに。案内してもらいたかったけど、無理そうだね」
「です」
「常備しときなさい」
肩にかけていた鞄から錠剤シートを取り出した柊悟は膝を曲げて、薮内に手渡した。
「吐き気止め、ありがとうございます」
「吐くなら飲まない。分かった」
「はい、すいません」
幼い子供を叱りつけられるように怒られる薮内を見届けた。
「挨拶出来たし、そろそろ帰るよ。ありがとうね、えっと、お名前訊いてもいいかな」
立ち上がり、こちらに振り向く四条修吾の笑顔に曇りはない。
もしかしたら、この人は……
「赤橋新です」
「赤橋君だね。今日は色々お世話になったね、ありがとう」
手を差し出された。あの兄から握手を求められている事が異常すぎて、何もせずぶら下げていた手に恐怖という重みがのし掛かる。
鼓動は早く、息遣いも自然と薄くなり、背中に冷や汗が流れていく。
これは、握手していいのか。こう握手した瞬間、握り潰されるとか、それとも殺されるとか、前世の不安が過ぎる。
しかし、向けてくるのは裏もない笑顔。ここでしないと怪しいし、薮内の友人として失礼だ。
大丈夫、今の俺は赤橋新だろうと何度も心の中で言い続けた。
一度、後ろで握り拳を作ってからゆっくりと腕を上げたが、突然視界は真っ暗となり後ろ側に引っ張られた。
温かくて、硬さもありつつ弾力があるものに包まれた。
なに、一体何が起きたと、真っ白な思考の上から聞こえてきたのは、また違う冷たくて恐い人。
「ゆきひさ…….」
「触るな」
長い指の隙間から見えるのは、混じり気のない凹凸を描いた綺麗な横顔。
帰ってきた彫刻のような顔は、今は中心に皺を寄せて、鋭い目つきは牙を研ぎ澄ました獣のようだ。
そして、すぐに雪久が勘違いしている事に気がついた。
「雪久、ちょっと待って。違う、その人ないから」
この人はそうじゃない。雪久の腕から逃れようと身を捻るが、駄目だと言わんばかりに肩に置かれた手は力が入り、体を締め付け雪久の胸板に引き寄せられる。
男同士だというのに、歯が立たないのが悔しい。
「お前が触るな」
「えっと……、ごめんなさい。どちら様ですか」
握手しようと差し出した手はそのまま、目を小さくまんまるとさせた柊悟は固まる。
この反応、やはりそうだった。
四条柊悟には、前世の記憶がない。
俺が椿だと分からないのはまだ理解できるが、ほぼそのままの雪久を見て、何も表情が変わらないのは記憶がないとしか思えない。
だから、その反応を見た雪久は困惑するように、腕の拘束が緩む。
「雪久、だから。ねっ」
拘束の隙間から手を抜け出し、逆毛を立てた獣を宥めるように雪久の頭を撫でた。
そうすると、やっとこちらに顔を向けては目を見開いた。
あえて言葉にはせずに首を横にふれば、雪久は腕の拘束は自然と解けていく。
「すいません。なんか、友人が人違いしたみたいで」
「そうなの。なら、仕方ないかな」
「先ほどは無礼な事をして、本当にすいません」
「いいよ。よく間違えられるんだ。ほら、世の中には三人いるなんて。あれ、それ以上言われているから三人以上なのか」
一触即発の空気の中、俺の謝罪を快く受け入れ、場が重くならないように冗談まで話してくれる柊悟に感謝しかない。
謝罪をしなければいけない人物はといえば、俺の腰を緩く抱いては、俺の背中に頬をくっつけていた。
何も喋らないし、物を取られた拗ねた子供のようで、いつもと違う様子に、背中がむずむずとしてくる。
「柊悟にいさん、せっかくだから案内しますよ」
タイミングを見計らったように薮内は立ち上がり、柊悟達を誘う。
「体調は大丈夫?」
「ずっと座っている方が、気分が悪くなるので。案内料として後で奢ってくださいよ」
「なるほど、そう来たか」
「案内してくれるの。やった、やった」と娘は人形を持ち上げながら跳ねては、薮内の手首を掴んで表の方に連れていく。
「ねぇねぇ、あっちに行きたい!」
「っ、言っとくけど俺まだ全快じゃないからな」
兄妹のように走っていく二人を、慌ててついていく柊悟を見送った。
なんだが、兄が幸せそうで良かった。
また薮内に気を使われたので後で礼を言っておくかと考えつつ、背中に引っ付く者に指でつついて合図を送る。
「そろそろ、着替えに行っていいですか」
*
着替えは空き教室。クラスから離れた場所は暗くて静かで、遠くから笑い合う声が聞こえてくる。
「着替え終わったらどこに行きます? 案内は……、人が着いてくるし出来るかな」
ここには二人しかいないというのに、あれからずっと黙ったまま。言いたい事が沢山あるのか、それとも言うことがないのか。
どちらでも、俺は話さなくてはならない。
「兄様に記憶がないと、俺は思っています。だから、俺が知っているあの人とは別人なんだと思います。因縁とか、血縁とか関係ないです」
あんなに楽しそうに笑う兄を見たのは初めてだ。
「……、頭では分かっている。感情の方が抑えられなかった。俺はあの人が苦手だ」
扉の前にもたれかかっていた雪久が動く。
嫌いだと言うが雪久と兄が会話をしていたのは、結婚式くらいだと認識している。
会う機会もなければ、嫌いになる要素がないはず。
「兄と何かあったんですか」
「何かあったか」
雪久の影がこちらに近づいて来て、自身の落とした影と重なり濃くなっていく。
無言で近づいてくる雪久が恐い。
いつのまにか壁に追いやられて、抵抗するとわかっていたからこそ、俺の両頬を両手でしっかりと包み込み、双眼がこちらを真っ直ぐと射抜く。
「!」
鼻先に当たるのはフニフニと柔らかく、張りがあるもの。暖かくて、でも少し冷たい感覚を知っている。
空いた口が塞がらなくて、2本で地に立っていたはずの浮いた感覚になり、力が抜けた。
「あぶな」
「ゆきひさっ、おまえは突然なにを」
きっ、キスされると思って焦ってしまった。
そのせいで腰が抜けてしまったが、落ちる前に雪久が腰と尻を支えてくれた。
後ろのスカートがグシャリと折り畳まれて沢山のシワを作り、なんとも言えない恥ずかしい格好だが、地面に打ちつけるよりいい。
「ーーー俺は、お前に触れて、息遣いを聞いて、体温を感じて、生きているだけで安心する。もう二度、あんな形は見たくない」
四条柊悟に会ってから、ずっと心を掻き乱されて苦しいそうな雪久。
あの日の最後を聞いたのかな、言われたのかな。
でもね、兄が手渡してくれたのは選択を増やしただけで、それを選んだのは私なんだよ。兄は何一つ悪くない。どのみち、独房で本当の孤独になった私は、罪を背負うためにあの結末を選んでいた。
「雪久、あのな。俺は」
「何があってもずっと、そばにいてくれ」
こちらが話そうとすれば今度は、両手は重なるように握られ、瞼は閉じ、額同士を合わせてきた雪久。
まつ毛に白い髪が当たる。それだけで顔から熱が吹き出しそうになるが、掠れた声があまりにも神に願うようで息が詰まる。
このまま飲まれていく感覚。破裂しそうな心臓と、ジンジンと染み渡るような甘さ。
離れたら残らず一瞬だというのに再び求めて、駄目になっていくのが、手に取るように分かっているのに俺は、俺は、振り払えない。
ああ、頭がおかしくなる。
きっと、こんな格好しているからだ。
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