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オレは教えた記憶がないぞと思うがしかし、よくよく考えれば、里真か母さんが教えていたんだろう。そういうことなら謎ではないかと、食事を続ける。
食べ終わり、洗い物、食器類の片づけを終えてもなつめが戻る気配はない。腹でも壊したのかと様子を見に行くと、静かにドアが開く。
「あれ、セトさん。どうかしましたか?」
「それはこっちの台詞ですけど?」
きょとんとするなつめをリビングまで引き摺り、座るよう促す。手洗い? それはリビングに行く前にさっさと洗ってやったわ! お蔭様でオレの手も冷たくなりましたよ!
「お前、トイレでなにしてた?」
「セトさんの匂いを感じてました」
トイレに行けと言ったのはオレなわけだが、コイツが変態だということをいまのいままで忘れていた。トイレに行かせるなんて危険しかなかったではないか! 長い時間なにをしていたというんだ!?
そんな焦る気持ちとは裏腹に、くそアイドルはにんまりとした顔で答えてくれる。恐ろしい答えを堂々と。その美しい顔に平手打ちでもかましてやりたいが、自業自得である為、ひとり悶えるしかない。くそぅ、トイレになんて行かせなければよかった……。いやでも、あの時はトイレ以外の選択肢はないと思われるんだよなあ。
湧いた怒りと羞恥と恐怖と諦めに戦いながら、半眼でなつめを眺めていると、「冗談ですよ」なんて言葉が聞こえてくる。
「冗談?」
「私はセトさんの嫌がることはしませんよ。メンバーから連絡があったので、話していただけですから」
「隅々まで匂いを嗅いでいたわけじゃないのか?」
「ええ。そこまではしません。触れられる距離にいますしね」
……それは言い換えると、触れられないのなら変態行為に走るともとれますけど? ダメだ。コイツの思考回路はやっぱり、全くと言っていいほど解らないわ。
「まあ、なんにもないならこの話は終わりだな。部屋を見て解るとおりに、ベッドでいっぱいいっぱいで客人用の布団は置いてないんで、なつめの家に戻ろうと思うんだけどもいいか?」
「ええ。問題ありません。あるとするのなら、私の心臓ぐらいですね」
「え、どうした、大丈夫か?」
心臓になにか問題があっただろうかと聞き返すと、なぜか腕の中に収まることとなる。意味が解らないと顔を上げようとするのだが、その前になつめの顔が左耳元に寄せられる方が早く、「解りますか?」と囁かれてしまう。
「わ、解るって、なにを?」
「心音の速さですよ」
苦笑交じりの言葉にそうなのかと胸板に顔を埋めてやると、確かに鼓動が耳を打つ。言われたとおりの速めの鼓動が。
「速いは速いな」
「セトさんといる時はこんなものですよ」
「へー」
「それ、本気にしてませんよね?」
軽く返すが、こうでもしないとオレの様子に気づかれそうだったからしかたがない。なつめの存在は気にしなくていいのだとあっさりと割り切ったはずなのに、どうしてドキドキしたりしているんだ、オレの心臓は。
バレそうになる前に自分からさっさと離れてその場は終わったが、これからどうしたらいいのかという新たな悩みが爆誕した。この分だと解決は遠いだろうなあ。なんてことだよ。
食べ終わり、洗い物、食器類の片づけを終えてもなつめが戻る気配はない。腹でも壊したのかと様子を見に行くと、静かにドアが開く。
「あれ、セトさん。どうかしましたか?」
「それはこっちの台詞ですけど?」
きょとんとするなつめをリビングまで引き摺り、座るよう促す。手洗い? それはリビングに行く前にさっさと洗ってやったわ! お蔭様でオレの手も冷たくなりましたよ!
「お前、トイレでなにしてた?」
「セトさんの匂いを感じてました」
トイレに行けと言ったのはオレなわけだが、コイツが変態だということをいまのいままで忘れていた。トイレに行かせるなんて危険しかなかったではないか! 長い時間なにをしていたというんだ!?
そんな焦る気持ちとは裏腹に、くそアイドルはにんまりとした顔で答えてくれる。恐ろしい答えを堂々と。その美しい顔に平手打ちでもかましてやりたいが、自業自得である為、ひとり悶えるしかない。くそぅ、トイレになんて行かせなければよかった……。いやでも、あの時はトイレ以外の選択肢はないと思われるんだよなあ。
湧いた怒りと羞恥と恐怖と諦めに戦いながら、半眼でなつめを眺めていると、「冗談ですよ」なんて言葉が聞こえてくる。
「冗談?」
「私はセトさんの嫌がることはしませんよ。メンバーから連絡があったので、話していただけですから」
「隅々まで匂いを嗅いでいたわけじゃないのか?」
「ええ。そこまではしません。触れられる距離にいますしね」
……それは言い換えると、触れられないのなら変態行為に走るともとれますけど? ダメだ。コイツの思考回路はやっぱり、全くと言っていいほど解らないわ。
「まあ、なんにもないならこの話は終わりだな。部屋を見て解るとおりに、ベッドでいっぱいいっぱいで客人用の布団は置いてないんで、なつめの家に戻ろうと思うんだけどもいいか?」
「ええ。問題ありません。あるとするのなら、私の心臓ぐらいですね」
「え、どうした、大丈夫か?」
心臓になにか問題があっただろうかと聞き返すと、なぜか腕の中に収まることとなる。意味が解らないと顔を上げようとするのだが、その前になつめの顔が左耳元に寄せられる方が早く、「解りますか?」と囁かれてしまう。
「わ、解るって、なにを?」
「心音の速さですよ」
苦笑交じりの言葉にそうなのかと胸板に顔を埋めてやると、確かに鼓動が耳を打つ。言われたとおりの速めの鼓動が。
「速いは速いな」
「セトさんといる時はこんなものですよ」
「へー」
「それ、本気にしてませんよね?」
軽く返すが、こうでもしないとオレの様子に気づかれそうだったからしかたがない。なつめの存在は気にしなくていいのだとあっさりと割り切ったはずなのに、どうしてドキドキしたりしているんだ、オレの心臓は。
バレそうになる前に自分からさっさと離れてその場は終わったが、これからどうしたらいいのかという新たな悩みが爆誕した。この分だと解決は遠いだろうなあ。なんてことだよ。
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