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6.入学試験審査会
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イフリート王立学園。
王都イフリートの興りと同時に創立された由緒正しき学園である。
かつてより、学園は優秀な人材を世の中に輩出し続け、時には歴史に名を残す偉人や傑物を生み出してきた。
その実績は学園の洗練された教育によるものであり、在学中に学園生たちは総じて己の能力を昇華させ、卒業後には王国を支える屋台骨としてありとあらゆる方面において活躍の場を与えられる。
すなわち、学園へ入学するということは将来を約束されることと同義であり、毎年膨大な数の入学志願者が王国全土から殺到する。
ただ、学園への入学条件は極めてシンプル。
“一芸に秀でていること”。
学問・武芸・魔法など、その分野に縛られることなく、たった一つでも突出した才能を示しさえすればよいのだ。
多種多様である才能を見出すために、入学試験では百を超える試験項目が受験者に課せられ、試験後には学園のすべての教職員による厳しい審査が待ち受ける。
そして、審査を通過した者だけがイフリート王立学園への入学を認められるのだ。
「静粛に!」
イフリート王立学園の理事長であるアラスター・ヘイスティングズが木槌を打ち鳴らす。
渇いた木の音がこだまし、教職員たちが集う講堂は静まりかえった。
「これより、入学試験審査会を開会する!この審査会において、将来有望な若人に道を示すこととなる!決してその才を取りこぼすことはあってはならない!したがって、厳正かつ公正な判断を貴君らに求める!この意に賛同するならば挙手を!」
アラスターの語りかけに、教職員たちの手が挙がる。
そのすべてが挙げられたことを確認し、アラスターは再び木槌を鳴らす。
「では、始めよう!受験番号1番!」
前方のスクリーンに受験者の情報が映し出され、アラスターの傍に控える秘書が説明を始める。
「えー、彼の評価ですが総合Cマイナス。最高評価は弓術のCプラスです」
「担当試験官の意見は?」
「まあ、最も良い弓術でも平凡の一言に尽きます。的に当てることはできるようですが、今以上の成長は期待できないでしょう」
「…他に意見はあるか?」
アラスターが意見を求めるが、誰からも声が挙がらない。
しばらく周囲に見渡した後、アラスターは木槌を鳴らす。
「では、受験番号1番は不合格とする!次!」
不合格が宣言されると、息つく間もなく、次の審査へと進む。
すでに、その場にいる者から不合格となった受験生の存在は忘れ去られているだろう。
非情に思えるかもしれないが、学園に所属する教職員たちは才能のない生徒に興味などないのだ。
そして、幾度も木槌が鳴らされ、次々と合否が判定される。
「受験番号220番!」
「彼女の評価は総合Bプラス。最高評価は槍術A、軍事学Aです」
その評価結果に教職員から感嘆の声が上がる。
「武と学を同等に修めているとはすばらしい」
「それだけじゃない。どの試験項目も高い評価水準だな」
「魔法の評価もすべてAマイナスかBプラス。これは入学してからが楽しみですわ」
期待の声が続々と揚がり、中には拍手を送る者もいた。
静まる気配のない騒ぎを切り裂くように木槌が叩かれる。
「静粛に!では、受験番号220番を合格とする!」
アラスターの宣言に再び拍手が鳴った。
「さすがは公爵家の御令嬢ですね」
「ちょっと、受験者の身分を持ち出してはいけませんよ?合否はあくまで試験評価によるものであり、身分で決まるようなことがあってはならないのですから」
「これは失礼。ですが、彼女には期待してしまいますね」
スクリーンに映る少女の姿に教職員たちからは期待の目が向けられていた。
そして、その後も審査会は滞りなく進行され、合否を下した数は半分を超える。
「…では、受験番号666番!」
画面に情報が映された瞬間、少し会場がざわめいた。
「エッジタウンの出身?」
「辺境も辺境だな」
「しかも、平民なのね」
ひそひそと話す声があちこちから聞こえてくる。
「静粛に!説明を!」
「はい。試験評価は総合Bマイナス。特筆すべきは剣術がAプラス、基礎魔法がAです」
滅多に与えられることのないAプラスという最上位の評価に、会場からどよめいた。
「担当試験官、意見を」
「おう。そいつはよく覚えてるぞ。模擬戦で一歩も動かないと決めた俺の足をずらさせたからな。剣術に関しては期待できるぜ」
「ああ、彼ですか。魔法の精度と持続力は並外れたもので、基礎魔法に関しては受験生の中で頭一つ抜けていました。きっと良い師匠に師事していたのでしょう」
担当の試験官たちの評価は高く、疑念をささやいていた教職員たちは口を閉じる。
「他に意見は?」
「すみません。一つ気になった点が。基礎魔法はすばらしいようですが、他の初級・中級・上級魔法についてはEとなっていますよね?どうしてですか?」
「その点は初級魔法担当の私から説明を。初級以上の項目をEとしている理由としては、彼は初級以上の魔法を使えませんでした。おそらく基礎魔法しか知らなかったのだと」
「なるほど。さて、この件について、皆はどう考えるか?」
アラスターがその場にいる教職員に問いかける。
すると、一人が手を挙げて発言をする。
「問題ないと思うよ。初級以上の魔法は学園に入学してからでも覚えられる。基礎魔法で才能を示しているならば尚更。それに魔法で審査を落ちても、剣術でAプラスをもらってるし、何よりギルバートが黙ってないでしょ?」
「その通りだ。俺はそいつを気に入った。誰が何と言おうと、入学させるぞ」
その意見を聞いたアラスターは小さく頷き、勢いよく木槌を鳴らす。
「それでは、受験番号666番を合格とする!次!」
そして、審査会は一晩中続き、日が昇る前にはすべての受験者の合否が決定された。
今回の受験者数は1324名。
その中で見事合格を勝ち取ったのは153名であった。
王都イフリートの興りと同時に創立された由緒正しき学園である。
かつてより、学園は優秀な人材を世の中に輩出し続け、時には歴史に名を残す偉人や傑物を生み出してきた。
その実績は学園の洗練された教育によるものであり、在学中に学園生たちは総じて己の能力を昇華させ、卒業後には王国を支える屋台骨としてありとあらゆる方面において活躍の場を与えられる。
すなわち、学園へ入学するということは将来を約束されることと同義であり、毎年膨大な数の入学志願者が王国全土から殺到する。
ただ、学園への入学条件は極めてシンプル。
“一芸に秀でていること”。
学問・武芸・魔法など、その分野に縛られることなく、たった一つでも突出した才能を示しさえすればよいのだ。
多種多様である才能を見出すために、入学試験では百を超える試験項目が受験者に課せられ、試験後には学園のすべての教職員による厳しい審査が待ち受ける。
そして、審査を通過した者だけがイフリート王立学園への入学を認められるのだ。
「静粛に!」
イフリート王立学園の理事長であるアラスター・ヘイスティングズが木槌を打ち鳴らす。
渇いた木の音がこだまし、教職員たちが集う講堂は静まりかえった。
「これより、入学試験審査会を開会する!この審査会において、将来有望な若人に道を示すこととなる!決してその才を取りこぼすことはあってはならない!したがって、厳正かつ公正な判断を貴君らに求める!この意に賛同するならば挙手を!」
アラスターの語りかけに、教職員たちの手が挙がる。
そのすべてが挙げられたことを確認し、アラスターは再び木槌を鳴らす。
「では、始めよう!受験番号1番!」
前方のスクリーンに受験者の情報が映し出され、アラスターの傍に控える秘書が説明を始める。
「えー、彼の評価ですが総合Cマイナス。最高評価は弓術のCプラスです」
「担当試験官の意見は?」
「まあ、最も良い弓術でも平凡の一言に尽きます。的に当てることはできるようですが、今以上の成長は期待できないでしょう」
「…他に意見はあるか?」
アラスターが意見を求めるが、誰からも声が挙がらない。
しばらく周囲に見渡した後、アラスターは木槌を鳴らす。
「では、受験番号1番は不合格とする!次!」
不合格が宣言されると、息つく間もなく、次の審査へと進む。
すでに、その場にいる者から不合格となった受験生の存在は忘れ去られているだろう。
非情に思えるかもしれないが、学園に所属する教職員たちは才能のない生徒に興味などないのだ。
そして、幾度も木槌が鳴らされ、次々と合否が判定される。
「受験番号220番!」
「彼女の評価は総合Bプラス。最高評価は槍術A、軍事学Aです」
その評価結果に教職員から感嘆の声が上がる。
「武と学を同等に修めているとはすばらしい」
「それだけじゃない。どの試験項目も高い評価水準だな」
「魔法の評価もすべてAマイナスかBプラス。これは入学してからが楽しみですわ」
期待の声が続々と揚がり、中には拍手を送る者もいた。
静まる気配のない騒ぎを切り裂くように木槌が叩かれる。
「静粛に!では、受験番号220番を合格とする!」
アラスターの宣言に再び拍手が鳴った。
「さすがは公爵家の御令嬢ですね」
「ちょっと、受験者の身分を持ち出してはいけませんよ?合否はあくまで試験評価によるものであり、身分で決まるようなことがあってはならないのですから」
「これは失礼。ですが、彼女には期待してしまいますね」
スクリーンに映る少女の姿に教職員たちからは期待の目が向けられていた。
そして、その後も審査会は滞りなく進行され、合否を下した数は半分を超える。
「…では、受験番号666番!」
画面に情報が映された瞬間、少し会場がざわめいた。
「エッジタウンの出身?」
「辺境も辺境だな」
「しかも、平民なのね」
ひそひそと話す声があちこちから聞こえてくる。
「静粛に!説明を!」
「はい。試験評価は総合Bマイナス。特筆すべきは剣術がAプラス、基礎魔法がAです」
滅多に与えられることのないAプラスという最上位の評価に、会場からどよめいた。
「担当試験官、意見を」
「おう。そいつはよく覚えてるぞ。模擬戦で一歩も動かないと決めた俺の足をずらさせたからな。剣術に関しては期待できるぜ」
「ああ、彼ですか。魔法の精度と持続力は並外れたもので、基礎魔法に関しては受験生の中で頭一つ抜けていました。きっと良い師匠に師事していたのでしょう」
担当の試験官たちの評価は高く、疑念をささやいていた教職員たちは口を閉じる。
「他に意見は?」
「すみません。一つ気になった点が。基礎魔法はすばらしいようですが、他の初級・中級・上級魔法についてはEとなっていますよね?どうしてですか?」
「その点は初級魔法担当の私から説明を。初級以上の項目をEとしている理由としては、彼は初級以上の魔法を使えませんでした。おそらく基礎魔法しか知らなかったのだと」
「なるほど。さて、この件について、皆はどう考えるか?」
アラスターがその場にいる教職員に問いかける。
すると、一人が手を挙げて発言をする。
「問題ないと思うよ。初級以上の魔法は学園に入学してからでも覚えられる。基礎魔法で才能を示しているならば尚更。それに魔法で審査を落ちても、剣術でAプラスをもらってるし、何よりギルバートが黙ってないでしょ?」
「その通りだ。俺はそいつを気に入った。誰が何と言おうと、入学させるぞ」
その意見を聞いたアラスターは小さく頷き、勢いよく木槌を鳴らす。
「それでは、受験番号666番を合格とする!次!」
そして、審査会は一晩中続き、日が昇る前にはすべての受験者の合否が決定された。
今回の受験者数は1324名。
その中で見事合格を勝ち取ったのは153名であった。
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