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第一章
28 仲間が増えたわよ!
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「あ、そうだわ、ギルマス達に連絡しなきゃ」
「後でいい」
「ねぇ、おなか、おなか空いてなぁい?」
「後でいい」
オクトから帰ってきたあたし達は、ソファーで向かい合ってにらめっこの真っ最中……ではなく、ランディからの詰問タイムが始まっていた。
なんでよぉ、あたし悪くないわよぉ~!
言うタイミングがなかっただけで隠すつもりはなかったもの。
「この前もそう言ってたな」
「えぇ、そうね」
「もう話してないことはないって言った」
「そうだけど、増えちゃったのよ」
「いつ?」
「さっきお買い物に行ってくれてた間?」
はぁぁぁぁ、と思いっ切り深い溜め息をつかれてしまったわ……。
そんなに? 呆れてる? 怒ってる?
「怒ってるんじゃない」
「じゃあどうして?」
「レイ抜きで奴らとやり合うものだと覚悟していたし、それに……」
「それに?」
「……信用されてないのかと思うだろ」
んま! またこの子ったらあたしのハートをくすぐるのが上手なんだから!
要は拗ねちゃってたのね? んもぉかわいいんだからぁ~!
「茶化すなよ。俺もジギー達も、一度は奴らにやられてるんだ。レイがいるといないとじゃ結果も過程も変わってくる」
「そんな風に買ってくれるのは嬉しいけどね、あたしにだって出来ないことはたくさんあるわよ」
「だが出来ることも多い。この数日でどれだけ驚かされたと思ってる」
それはあたしもどちらかと言うと被害者の立場じゃないかしらって言いたいわよねぇ。
知らないうちにやたらと魔力を積まれてて、婆さんにも魔法の使い方を普通とは違う方法で覚えさせられて……。
ね? 不可抗力よ。
「もうないよな?」
「ないわよ。……ただ、神様も婆さんもすぐ人をおちょくるから、もしかしたらあたしもまだ知らない何かがあるかもしれないけれど」
「創造神ってそんな方なのか」
あら、幻想を砕いちゃったかしら。だけど安心して。きっとあなたが思ってる神様とは違うわよ。
……なんて、それはさすがに言えないけれど。
神様のおかげで滞在日数をオーバーしても大丈夫になったということは話したけれど、どこのどんな神様か、ということだけは隠しつつだから、本当の意味では全部を話してはいないのよ。
この世界には創造神と呼ばれる神様がいて、その方だと思ってくれているみたいだからそこだけは乗らせてもらったの。
ひとつの銀河に一柱の主神様だとか、その創造神とされる『ゴルゾラス』という神様もショタ神様の配下なんだとか、彼にしてみたら突拍子なさすぎて信じてもらえなさそうだもの。
こっちの常識を壊すわけにもいかないし、そこだけは話せなかったのよね。
「……なんか、気が抜けた」
「ええと、ごめんなさい?」
お互いふふっと笑いあって、この話はおしまいになったところで、ランディのおなかが鳴った。
「腹へったな」
「ふふっ、そうね、ごはんにしましょうか」
あたし達はストックの屋台ごはんで食事を済ませた後、ギルマス達に連絡を取った。どうやらティル以外は全員一緒にギルマスのところにいたみたい。
遅い! と怒られたけれど、取引の日と場所を掴んだことや、ふたりいた拐われた子供のこと、時間を示すらしい暗号を伝えて、みんなの意見を聞いてみることにした。
『三日後の夜中か』
『クユ島ってどこだ?』
『ここだ』
向こうでは地図を広げて話している様子ね。こっちもそうしましょう。
まったく暗号なんて面倒くさいことしてくれちゃって、嫌になるわよね。
「沖の方だな」
『魔魚の巣窟、四辻裏? 島の位置か?』
「ねぇ、その魔魚の巣窟っていうのはなぁに?」
『ピキライヤという魔物の魚の群生地がある。恐らくそこのことだろう』
「こないだ食べただろ」
「あれそんな名前だったの?」
ピキライヤは体長一メートル前後のとても歯が鋭い魚の魔物で、小さいボートなんかだと取り付いて噛みつかれちゃうんですって!
群れに出会すと船も船員もボロボロにされてしまうから、その海域には頑丈な船で、かつ腕利きの漁師でないと挑めないらしいわ。
たまに群れから逸れたやつが網にかかって、屋台で売られたりしているみたい。
「その群生地はどこなの?」
『地図はあるか? クユ島から西側に五つ目の島とその上の島の間だ』
『四辻裏ってそういう意味か』
「なるほどねぇ」
そこまで難しい暗号じゃないかもしれないわね。じゃあ次の『岩場のタギの三本目』は?
『知らん』
『わからんな』
『すまない』
「そうよねぇ……」
このメンバーでは誰もクユ島に行ったことがないみたい。そもそも島が割と密集していて海流が複雑で、漁師すらあまり近寄らない海域なんだとか。
よくそんな島を根城にしたわよね。
『逆にそんな島だからこそなんだろうさ』
「まぁ、それもそうね。こそこそするには最適だもの」
『で、お前らはいつ帰ってくる?』
「もう帰ってきてるわよ」
『はぁ!?』
『早すぎないか?』
「えぇと、婆さんのおかげで」
『……そうか』
とりあえずは明日、またギルドで集まる約束をして会話を終えた。
三人ともギルマスの部屋にいたし、婆さんに貰った話具で念話が出来るとわかっていてもつい声を出して話してしまうから、なんとなく誤魔化してしまったけれど、明日会ったときにまた細かい話はするわ。
だからランディ、そんな目で見ないでちょうだい。
「みんなにもちゃんと話すわよ。残れることも、転移のことも」
「……転移は言わない方がいい」
「あらどうして?」
「あまり使える奴はいない。いても国とかに囲われてる」
「やだ、それは困るわねぇ。じゃあそこだけメルネ婆さんに被っておいてもらうことにするわ」
さぁて、明日もまたギルドね。婆さんのところには……行けたら行きましょうか。兎の脚もあるし、エルトをいつまで借りてていいかも聞いてないし。
ひとまず今日のところはもう休みましょうか。神域に行ったりたくさん魔法使ったりして疲れちゃった。
本当に毎日毎日濃いわよねぇ。どういう巡り合わせなのかしら。これもショタ神様のせいだったりするのかしらね?
翌朝。
今日はランディの方が早く起きていて、下の食堂から食事を持って上がってきてくれていたの。
一度起こしたけど目を覚まさなかったからって、んもうなんて優しい子なのかしら。
「朝からレイ泣いちゃうっ!」
「それだけ元気なら心配ないな」
あんもうノリが悪いわねぇ。
それからサクッと食事と身支度を済ませて、あたし達は借りた馬を連れてギルドへと向かった。
結局乗らずじまいだったわねぇ。また機会があったら乗せてちょうだいね。
「お、ラン坊、姉ちゃん」
「ジギー」
「あらおふたり共、おはようございます」
「おはよう、昨日はお疲れさん」
冒険者ギルド前で馬を職員に引き渡していると、ナイルさんとジギーさんが外からやってきた。
おなかをさすっているから、屋台帰りかしらね?
「朝メシついでに漁師に話を聞いて来たんだ」
「例の島に昔住んでたっていうオヤジがいてな」
「え、ほんと!?」
「あぁ、詳しいことは上で話そう」
さっすがねぇ! 朝寝坊しちゃったあたしとは大違いだわ。
それから揃ってギルマスの部屋まで向かい、早速報告会が始まった。
ナイルさんの話では、クユ島の南側にある岩場近くに、タギという大きな木が生えている場所があって、満月の満潮時にはその根本まで海水が上がってくるそうなの。
あたしは釣りはよくわからないけれど、夜釣りでよく釣れる日の目安になっていたんですって。
例の取引の日も満月。夜の満潮時間に合わせているんじゃないかって、ナイルさんが説明してくれたわ。
「割と杜撰じゃなぁい?」
「連中にだけわかればいい符丁なんだ。そんなもんだろう」
そうなのかしら。なーんか引っ掛かるのよねぇ。
うーんと考えていると扉がコンコンとノックされて、初めて見る冒険者の人が三人入ってきた。
「来たか」
ギルマスが立ち上がり、彼らを迎え入れて紹介してくれた。
彼らは今回協力してくれることになった人達で、昨日の夜に呼んでおいてくれたんですって。
「エニです」
「俺はエコ」
「私はニコ」
「若いが腕は立つ、三ツ星の三兄弟だ」
ジギーさん達とは面識があるらしく、あたしとランディはそれぞれ自己紹介して、握手を交わした。
「なんだか凄い治癒魔法使ったのってあなたですよね?」
「え、えぇそうね」
「やっぱり! 下で話題になってましたよ」
「ナイルさん達を助けてくれてありがとうございます。この人は俺達の恩人なんで」
「そうなの?」
「駆け出しの頃、外で助けてもらったことがあるんです」
「古い話をするなよ。もうお前らも一端だろう」
「なに言ってんすか! 俺達あの日のことは今でも感謝してんすよ!」
「そうですよ!」
あらあら元気な若者ねぇ。ランディより少し若いくらいかしら。
ポニーテールでスレンダーなニコさん、ちょっと大人しく真面目そうなエニくん、懐っこいそばかすエコくんの順でひとつずつ歳が違うんですって。
三人とも随分ナイルさんを慕っているみたい。
「もうひとり声をかけてあるが、そいつはどうせ昼まで来ない」
「マイアスか」
「わはは! 日暮れまで来ないんじゃねぇか?」
「だ、大丈夫なのそれ? どんな人なのよ」
「腕は確かなんだがなぁ」
「無類の酒好きだ」
「あらまぁ」
ジギーさんはそのマイアスさんとよく飲みに行く仲らしいんだけど、彼はお酒のために生きていると豪語するような人で、酒代が尽きると大きな依頼を受け、そしてまた尽きるまで飲むんだとか。
人としてはどうかと思うけれどなんだか豪快で楽しそうじゃない。
うちのお店もそうだけど、あたし楽しいお酒の席は大好きだもの。ジギーさんも含めて、一度一緒に飲んでみたいわぁ。
その後ティルも加わって更に人数が増え、ギルマスの部屋では全員が座れないということで隣の会議室へと場所を移した。ここも同じく、外に声は漏れない造りになっているんですって。
地図を広げた大きなテーブルを全員で囲み、それぞれ席につく。
「改めて今回の依頼について話す」
「依頼?」
「そうだ。これはギルドからの特別依頼とした」
「表には貼り出せないし、人も厳選しないといけないからな」
「全員取っ捕まえて警備隊本部の前に転がしてやるんだからな!」
そこまでしてくれていたなんて、ありがたい話だわ。
味方も増えて、心強い限りね!
「後でいい」
「ねぇ、おなか、おなか空いてなぁい?」
「後でいい」
オクトから帰ってきたあたし達は、ソファーで向かい合ってにらめっこの真っ最中……ではなく、ランディからの詰問タイムが始まっていた。
なんでよぉ、あたし悪くないわよぉ~!
言うタイミングがなかっただけで隠すつもりはなかったもの。
「この前もそう言ってたな」
「えぇ、そうね」
「もう話してないことはないって言った」
「そうだけど、増えちゃったのよ」
「いつ?」
「さっきお買い物に行ってくれてた間?」
はぁぁぁぁ、と思いっ切り深い溜め息をつかれてしまったわ……。
そんなに? 呆れてる? 怒ってる?
「怒ってるんじゃない」
「じゃあどうして?」
「レイ抜きで奴らとやり合うものだと覚悟していたし、それに……」
「それに?」
「……信用されてないのかと思うだろ」
んま! またこの子ったらあたしのハートをくすぐるのが上手なんだから!
要は拗ねちゃってたのね? んもぉかわいいんだからぁ~!
「茶化すなよ。俺もジギー達も、一度は奴らにやられてるんだ。レイがいるといないとじゃ結果も過程も変わってくる」
「そんな風に買ってくれるのは嬉しいけどね、あたしにだって出来ないことはたくさんあるわよ」
「だが出来ることも多い。この数日でどれだけ驚かされたと思ってる」
それはあたしもどちらかと言うと被害者の立場じゃないかしらって言いたいわよねぇ。
知らないうちにやたらと魔力を積まれてて、婆さんにも魔法の使い方を普通とは違う方法で覚えさせられて……。
ね? 不可抗力よ。
「もうないよな?」
「ないわよ。……ただ、神様も婆さんもすぐ人をおちょくるから、もしかしたらあたしもまだ知らない何かがあるかもしれないけれど」
「創造神ってそんな方なのか」
あら、幻想を砕いちゃったかしら。だけど安心して。きっとあなたが思ってる神様とは違うわよ。
……なんて、それはさすがに言えないけれど。
神様のおかげで滞在日数をオーバーしても大丈夫になったということは話したけれど、どこのどんな神様か、ということだけは隠しつつだから、本当の意味では全部を話してはいないのよ。
この世界には創造神と呼ばれる神様がいて、その方だと思ってくれているみたいだからそこだけは乗らせてもらったの。
ひとつの銀河に一柱の主神様だとか、その創造神とされる『ゴルゾラス』という神様もショタ神様の配下なんだとか、彼にしてみたら突拍子なさすぎて信じてもらえなさそうだもの。
こっちの常識を壊すわけにもいかないし、そこだけは話せなかったのよね。
「……なんか、気が抜けた」
「ええと、ごめんなさい?」
お互いふふっと笑いあって、この話はおしまいになったところで、ランディのおなかが鳴った。
「腹へったな」
「ふふっ、そうね、ごはんにしましょうか」
あたし達はストックの屋台ごはんで食事を済ませた後、ギルマス達に連絡を取った。どうやらティル以外は全員一緒にギルマスのところにいたみたい。
遅い! と怒られたけれど、取引の日と場所を掴んだことや、ふたりいた拐われた子供のこと、時間を示すらしい暗号を伝えて、みんなの意見を聞いてみることにした。
『三日後の夜中か』
『クユ島ってどこだ?』
『ここだ』
向こうでは地図を広げて話している様子ね。こっちもそうしましょう。
まったく暗号なんて面倒くさいことしてくれちゃって、嫌になるわよね。
「沖の方だな」
『魔魚の巣窟、四辻裏? 島の位置か?』
「ねぇ、その魔魚の巣窟っていうのはなぁに?」
『ピキライヤという魔物の魚の群生地がある。恐らくそこのことだろう』
「こないだ食べただろ」
「あれそんな名前だったの?」
ピキライヤは体長一メートル前後のとても歯が鋭い魚の魔物で、小さいボートなんかだと取り付いて噛みつかれちゃうんですって!
群れに出会すと船も船員もボロボロにされてしまうから、その海域には頑丈な船で、かつ腕利きの漁師でないと挑めないらしいわ。
たまに群れから逸れたやつが網にかかって、屋台で売られたりしているみたい。
「その群生地はどこなの?」
『地図はあるか? クユ島から西側に五つ目の島とその上の島の間だ』
『四辻裏ってそういう意味か』
「なるほどねぇ」
そこまで難しい暗号じゃないかもしれないわね。じゃあ次の『岩場のタギの三本目』は?
『知らん』
『わからんな』
『すまない』
「そうよねぇ……」
このメンバーでは誰もクユ島に行ったことがないみたい。そもそも島が割と密集していて海流が複雑で、漁師すらあまり近寄らない海域なんだとか。
よくそんな島を根城にしたわよね。
『逆にそんな島だからこそなんだろうさ』
「まぁ、それもそうね。こそこそするには最適だもの」
『で、お前らはいつ帰ってくる?』
「もう帰ってきてるわよ」
『はぁ!?』
『早すぎないか?』
「えぇと、婆さんのおかげで」
『……そうか』
とりあえずは明日、またギルドで集まる約束をして会話を終えた。
三人ともギルマスの部屋にいたし、婆さんに貰った話具で念話が出来るとわかっていてもつい声を出して話してしまうから、なんとなく誤魔化してしまったけれど、明日会ったときにまた細かい話はするわ。
だからランディ、そんな目で見ないでちょうだい。
「みんなにもちゃんと話すわよ。残れることも、転移のことも」
「……転移は言わない方がいい」
「あらどうして?」
「あまり使える奴はいない。いても国とかに囲われてる」
「やだ、それは困るわねぇ。じゃあそこだけメルネ婆さんに被っておいてもらうことにするわ」
さぁて、明日もまたギルドね。婆さんのところには……行けたら行きましょうか。兎の脚もあるし、エルトをいつまで借りてていいかも聞いてないし。
ひとまず今日のところはもう休みましょうか。神域に行ったりたくさん魔法使ったりして疲れちゃった。
本当に毎日毎日濃いわよねぇ。どういう巡り合わせなのかしら。これもショタ神様のせいだったりするのかしらね?
翌朝。
今日はランディの方が早く起きていて、下の食堂から食事を持って上がってきてくれていたの。
一度起こしたけど目を覚まさなかったからって、んもうなんて優しい子なのかしら。
「朝からレイ泣いちゃうっ!」
「それだけ元気なら心配ないな」
あんもうノリが悪いわねぇ。
それからサクッと食事と身支度を済ませて、あたし達は借りた馬を連れてギルドへと向かった。
結局乗らずじまいだったわねぇ。また機会があったら乗せてちょうだいね。
「お、ラン坊、姉ちゃん」
「ジギー」
「あらおふたり共、おはようございます」
「おはよう、昨日はお疲れさん」
冒険者ギルド前で馬を職員に引き渡していると、ナイルさんとジギーさんが外からやってきた。
おなかをさすっているから、屋台帰りかしらね?
「朝メシついでに漁師に話を聞いて来たんだ」
「例の島に昔住んでたっていうオヤジがいてな」
「え、ほんと!?」
「あぁ、詳しいことは上で話そう」
さっすがねぇ! 朝寝坊しちゃったあたしとは大違いだわ。
それから揃ってギルマスの部屋まで向かい、早速報告会が始まった。
ナイルさんの話では、クユ島の南側にある岩場近くに、タギという大きな木が生えている場所があって、満月の満潮時にはその根本まで海水が上がってくるそうなの。
あたしは釣りはよくわからないけれど、夜釣りでよく釣れる日の目安になっていたんですって。
例の取引の日も満月。夜の満潮時間に合わせているんじゃないかって、ナイルさんが説明してくれたわ。
「割と杜撰じゃなぁい?」
「連中にだけわかればいい符丁なんだ。そんなもんだろう」
そうなのかしら。なーんか引っ掛かるのよねぇ。
うーんと考えていると扉がコンコンとノックされて、初めて見る冒険者の人が三人入ってきた。
「来たか」
ギルマスが立ち上がり、彼らを迎え入れて紹介してくれた。
彼らは今回協力してくれることになった人達で、昨日の夜に呼んでおいてくれたんですって。
「エニです」
「俺はエコ」
「私はニコ」
「若いが腕は立つ、三ツ星の三兄弟だ」
ジギーさん達とは面識があるらしく、あたしとランディはそれぞれ自己紹介して、握手を交わした。
「なんだか凄い治癒魔法使ったのってあなたですよね?」
「え、えぇそうね」
「やっぱり! 下で話題になってましたよ」
「ナイルさん達を助けてくれてありがとうございます。この人は俺達の恩人なんで」
「そうなの?」
「駆け出しの頃、外で助けてもらったことがあるんです」
「古い話をするなよ。もうお前らも一端だろう」
「なに言ってんすか! 俺達あの日のことは今でも感謝してんすよ!」
「そうですよ!」
あらあら元気な若者ねぇ。ランディより少し若いくらいかしら。
ポニーテールでスレンダーなニコさん、ちょっと大人しく真面目そうなエニくん、懐っこいそばかすエコくんの順でひとつずつ歳が違うんですって。
三人とも随分ナイルさんを慕っているみたい。
「もうひとり声をかけてあるが、そいつはどうせ昼まで来ない」
「マイアスか」
「わはは! 日暮れまで来ないんじゃねぇか?」
「だ、大丈夫なのそれ? どんな人なのよ」
「腕は確かなんだがなぁ」
「無類の酒好きだ」
「あらまぁ」
ジギーさんはそのマイアスさんとよく飲みに行く仲らしいんだけど、彼はお酒のために生きていると豪語するような人で、酒代が尽きると大きな依頼を受け、そしてまた尽きるまで飲むんだとか。
人としてはどうかと思うけれどなんだか豪快で楽しそうじゃない。
うちのお店もそうだけど、あたし楽しいお酒の席は大好きだもの。ジギーさんも含めて、一度一緒に飲んでみたいわぁ。
その後ティルも加わって更に人数が増え、ギルマスの部屋では全員が座れないということで隣の会議室へと場所を移した。ここも同じく、外に声は漏れない造りになっているんですって。
地図を広げた大きなテーブルを全員で囲み、それぞれ席につく。
「改めて今回の依頼について話す」
「依頼?」
「そうだ。これはギルドからの特別依頼とした」
「表には貼り出せないし、人も厳選しないといけないからな」
「全員取っ捕まえて警備隊本部の前に転がしてやるんだからな!」
そこまでしてくれていたなんて、ありがたい話だわ。
味方も増えて、心強い限りね!
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