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第一章
31 神様ヘルプ!
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「ポーション、てなぁに?」
「魔力あるいは体力、精神力、使えば削がれ擦り減るそれらを、飲むだけで取り戻せる妙薬さね」
ええと、地球でいうエナジードリンク的なものなのかしら?
ほれ飲みな、と渡された小瓶の中身はなんとも不思議な色合いで、淡いメタリックブルー? 所々は紫っぽくて透明感はゼロ。
……これ本当に飲んで大丈夫なやつなの?
「減った力の種類によって使う回復薬も変わるんだが、今のお前さんにはこいつだね」
「ねぇ婆さん……これ人が飲んじゃダメな色してなぁい?」
「黙って飲みな」
「えぇ~……」
だってこれ、少しトロッとしててこんな色で、絶対ヤバいやつでしょう!?
ランディが横でぼそっと「死んだスライムみたいだ」って言ったわよ!?
マジで中身はなんなの、どうやって作ったの!?
「ヒヒッ、そいつは教えてやれないね」
「なんでよぉ? せめて材料だけでも教えてちょうだいよ」
「さぁてねぇ」
「ちょっとぉ~こんな得体の知れないもの飲むの怖いじゃないの……」
「レイ、視てみたらどうだ?」
「あ、……そうね」
やだわあたしったら。頭がクラクラしてる所にこんなもん渡されて動揺しちゃってたのかしら。
ランディに言われるまでそんな簡単なことにも気付かなかったし、突っ込みもいつものテンションにならないもの。
早速視ちゃうわよ。どれどれ……ポーションとはなんぞや?
「視えるもんかね。そいつはこの世界にない製法で、あたしが作ったものだよ」
「本当だわ、何かあるのはわかるのに全然読み取れない……」
「毒は入っちゃいないよ」
そう言われてもねぇ、これを飲むのはかなり勇気がいるわよ。
でもいつまでもグダグダしていられないし、ランディのためにもいくしかない、いけ、いくのよ! よし!
「レイ、一気いきまぁ~す!」
目を閉じれば思い浮かぶ、あたしのお城【barアネモネ】の賑やかな店内。
あたしの宣言にいつもの徒花達がやんややんやと囃し立て、キンキンに凍らせたショットグラスに炎を灯す。
そうよ、いつだったかやらされた罰ゲーム『スピリタス三本一気』、アレを思えばこんなもの!
「……っ!」
味わう前に飲み下し、喉を冷やりと通るとろみのある液体が、胃袋にじわじわと伝い広がっていくのを感じる。
すると途端にシュッと頭が冴えたような感覚がして、さっきまでのダルさが嘘みたいに消えてなくなった。
「すっごい、なにこれ!」
「凄かろ?」
「えぇ、驚いたわ……こんな一瞬で効果があるなんて」
「ヒヒヒッ散々ガキ共で実験したからねぇ」
「……はい?」
ガキ共、ってまさか、魔法を習いに来てた子供達のこと!?
地域の皆様に数多のトラウマを植え付け、あのギルマスでさえ今も夢に見るという地獄の特訓で、あんたまさか自分の作った回復薬の実験してたっていうの!?
「当然さね、使えるものは何だって使うさ」
「なんって碌でなしなの……! 幼気な子供を使って人体実験するなんて!」
「くたばらない限りは何があったところであたしの自力で治してやれるんだ。こんなに都合のいい話はなかろ?」
「悪魔ね!?」
「ヒヒヒッ」
ドヤ顔の婆さんは空き瓶を受け取ると手近な箱にぽいと放り込み、そしてあたしに手のひらを向け、クイクイと指を動かした。
わかってるわよ。アレでしょう?
あたしは鞄の中から兄主神様にいただいた兎の脚を取り出して、ニヤつく婆さんに渡した。
「悪魔と取引してる気分だわぁ……」
「ヒヒッ、こんなに早く手に入れて来るとはね」
「あぁ、ちょっとあっちに行ってきたのよ」
「例の件だろう? おかげで久々に白の神の顔を拝んで来たよ」
「そういえばそんなこと言ってたわねぇ。協力ありがとね婆さん」
「その分ちゃあんといただいて来たさ」
「がめついわねぇ……」
「ヒーッヒッヒ!」
メルネ婆さんはショタ神様にいただいた腕輪のおかげで、喚ばれれば神域へ行くことが出来たんですって。
落ち人である婆さんがどうやって神域に行けたのかしらと思っていたんだけど、まぁ婆さんとショタ神様だし……とスルーしてたわ。
この最凶タッグじゃ何が起きても不思議じゃないもの。
さて、ともあれこれで回復できたし、すぐにでも行動開始しちゃいましょう。
テーブルに世界地図を広げて目当ての場所を確認してみると、思った通りレジナステーラ大陸の西端にある国で、ロキシタリア大陸に割と近い地域だったわ。
だけど距離は今までの比じゃない。ここまで一気に転移したとして、また倒れたりはしないかしら。
「ねぇ婆さん、さっきの回復薬、何本か譲ってくれないかしら」
「馬鹿をお言いだね。隣町程度でそのザマじゃ大陸越えなんて何本あっても足りゃしないよ」
「そんなぁ……」
すぐにでも行ってあげたいのに、また役立たずなの? これじゃランディを止めた意味がないじゃない。
でも、ショタ神様も言ってたわよね。あたしは神様じゃないんだもの。出来ないことの方が多くて当たり前なんだわ。
……ん? 待って、ショタ神様?
「そうだわ! なんとかなるかも!」
「レイ?」
「待っててランディ、ちょっと相談してみるから」
「だ、誰にだ?」
そんなの決まってるじゃない!!
あたしはネックレスをスヌードの中から引っ張り出して、ぎゅっと握りしめた。
「ねぇ、ちょっとお願いがあるんだけど!」
『ふふふ、なにかなレイ』
やっぱり聞いてたわね。相変わらずレスポンスの早いこと。
でも今回はありがたいわ。それにこないだ相談しろって言ってくれたものね?
「ねぇ、出来るでしょう?」
『勿論出来るけれど、そうだなぁ、ひとつだけ条件を出してもいいかい?』
「条件? なにかしら」
『彼の記憶、私のことは消しておきたいんだ』
あら、やっぱり主神だなんて存在は知られない方がいいってことなのかしら。
ランディが特にどこかの宗教とかは聞いてないけれど、常識が根底から変わってきちゃうものね。
「わかったわ、なら眠らせてから行くのはどうかしら。その方が色々簡単じゃない?」
『ははっ流石レイ、妙案だ』
「でしょう? じゃあ先にこっちで説明しておくから、少し待っててくださる?」
うふふ、言ってみるものね!
あらやだランディ、なぁに化け物でも見るような顔しちゃって。失礼ねぇ。
「……なぁ、それ、相手」
「あんた時々カタコトになるわよねぇ」
「まさか、創造神、なのか?」
「えぇとねぇ、違うけど、確かに神様よ」
うわ、と言ってランディは固まってしまった。
もしかして、凄く信仰心が篤いのかしら。
「それでね、神様が移動を手伝ってくださることになったの。ただ、神様はあまり姿を見せられないから、あんたには移動する前に眠ってもらうことになるんだけど」
「……い、いいのか? そんな、個人的なことのために神の助力を賜るなど」
「いいって言ってくれてるからいいんじゃない?」
こっちの神様ってそんなに畏怖されてるの?
あたしはその創造神様とやらは知らないし、こっちの神話や信仰なんかもよくわからないけれど、なにかしらこの畏まりよう。
「恐れ多い……。拝謁賜れないことなど、どうして俺ごときが異を唱えられようか」
「あんたキャラ変わってなぁい?」
「直接感謝の意を伝えられないのは身の縮む思いだが、お許しくださるだろうか」
「大丈夫よ! そんなこと気にするような神様じゃないわ。だってあたしやメルネ婆さんを気に入るような方よ?」
自分で言うのもなんだけどね! でも説得力はあるでしょう?
ランディはぽかんとした後、ふはっと笑って緊張を解いてくれた。
「確かにそれもそうだな」
「でしょ? あたしからもちゃんとお礼を言っておくから、少しだけ眠っていてくれる?」
「あぁ、わかった。神にくれぐれもよろしくお伝えしてくれ」
そして瞳を閉じたランディに眠りの魔法をかけ、彼の手を取ってショタ神様へ声を飛ばす。
「準備出来たわ」
『うん、じゃあ喚ぶよ』
「えぇお願い。じゃあ婆さん色々ありがとうね、行ってくるわ」
「……待ちな」
「え? ちょ、ちょっと待って主神様!」
急にストップをかけた婆さんは何やら机や薬棚をガサガサ漁り、壁に立て掛けてあった自分の背丈より長い杖を手に戻ってきた。
なにかしら。ひょっとしてまさかもしかして……
「連れていきな」
「えぇ!? いや助かるかもしれないけど、遊びに行くんじゃないわよ!?」
「いいからほれ、白の神、喚んでおくれな」
あんもう知らないからね!?
何しに着いてくるのかわからないけど、来るなら頼っちゃいますからね!?
そうして眠るランディと共に、白い神域へと揃って引き寄せられた。
「やぁ数日ぶりだねメルネ。君も来るなんて思わなかったよ」
「ヒヒッそこいらはまだ行ったことがなくてねぇ」
「そういうことか。なら帰りは任せるよ」
知ってはいたけどこのコンビが並んでる絵面ひどいわね!? めっちゃ不吉だわ!!
何の利もなく動くはずのない強欲婆さんと人をおちょくり掌で転がす腹黒ニッコリショタ神様。
頼りにはなるし心強くもあるけれど、どうにも嫌な予感が拭い去れないわねぇ。
「あたしゃ別行動だよ。向こうに着いたらエルトを出しておきな」
「じゃあ何しに行くのよ」
「ヒヒッ、神を移動手段として顎で使うなんざ、あたしにゃ思い付かなかっただけさね」
「全くだよ。ひどい契約者だ」
「えぇ!? 出来るって言うからお願いしたんじゃない!」
「まずその発想が出やしないよ」
「そうだよねぇ」
なんで? なんであたしこんな非難されてるの? あとついでに話をはぐらかしたわね!?
もうほっんとに嫌こいつらぁ!!
「ふふ、君の想いが伝わってきていたからね、人の世に干渉はしない主義だけれど、今回は特別だ」
「……色々聞きたいことも言いたいことも山のようにあるけど、とりあえずありがとう主神様。あと今回は頼まれ物を集めるの無理だと思うの。ごめんなさい」
「それは一向に構わないよ。さぁ頑張っておいで。お茶を用意して待っているよ」
話を聞いてくれる気はあるってことね?
わかったわ。じゃあさっさとニーネちゃんを取り返して、またすぐここに戻って来てやるわよ!
「魔力あるいは体力、精神力、使えば削がれ擦り減るそれらを、飲むだけで取り戻せる妙薬さね」
ええと、地球でいうエナジードリンク的なものなのかしら?
ほれ飲みな、と渡された小瓶の中身はなんとも不思議な色合いで、淡いメタリックブルー? 所々は紫っぽくて透明感はゼロ。
……これ本当に飲んで大丈夫なやつなの?
「減った力の種類によって使う回復薬も変わるんだが、今のお前さんにはこいつだね」
「ねぇ婆さん……これ人が飲んじゃダメな色してなぁい?」
「黙って飲みな」
「えぇ~……」
だってこれ、少しトロッとしててこんな色で、絶対ヤバいやつでしょう!?
ランディが横でぼそっと「死んだスライムみたいだ」って言ったわよ!?
マジで中身はなんなの、どうやって作ったの!?
「ヒヒッ、そいつは教えてやれないね」
「なんでよぉ? せめて材料だけでも教えてちょうだいよ」
「さぁてねぇ」
「ちょっとぉ~こんな得体の知れないもの飲むの怖いじゃないの……」
「レイ、視てみたらどうだ?」
「あ、……そうね」
やだわあたしったら。頭がクラクラしてる所にこんなもん渡されて動揺しちゃってたのかしら。
ランディに言われるまでそんな簡単なことにも気付かなかったし、突っ込みもいつものテンションにならないもの。
早速視ちゃうわよ。どれどれ……ポーションとはなんぞや?
「視えるもんかね。そいつはこの世界にない製法で、あたしが作ったものだよ」
「本当だわ、何かあるのはわかるのに全然読み取れない……」
「毒は入っちゃいないよ」
そう言われてもねぇ、これを飲むのはかなり勇気がいるわよ。
でもいつまでもグダグダしていられないし、ランディのためにもいくしかない、いけ、いくのよ! よし!
「レイ、一気いきまぁ~す!」
目を閉じれば思い浮かぶ、あたしのお城【barアネモネ】の賑やかな店内。
あたしの宣言にいつもの徒花達がやんややんやと囃し立て、キンキンに凍らせたショットグラスに炎を灯す。
そうよ、いつだったかやらされた罰ゲーム『スピリタス三本一気』、アレを思えばこんなもの!
「……っ!」
味わう前に飲み下し、喉を冷やりと通るとろみのある液体が、胃袋にじわじわと伝い広がっていくのを感じる。
すると途端にシュッと頭が冴えたような感覚がして、さっきまでのダルさが嘘みたいに消えてなくなった。
「すっごい、なにこれ!」
「凄かろ?」
「えぇ、驚いたわ……こんな一瞬で効果があるなんて」
「ヒヒヒッ散々ガキ共で実験したからねぇ」
「……はい?」
ガキ共、ってまさか、魔法を習いに来てた子供達のこと!?
地域の皆様に数多のトラウマを植え付け、あのギルマスでさえ今も夢に見るという地獄の特訓で、あんたまさか自分の作った回復薬の実験してたっていうの!?
「当然さね、使えるものは何だって使うさ」
「なんって碌でなしなの……! 幼気な子供を使って人体実験するなんて!」
「くたばらない限りは何があったところであたしの自力で治してやれるんだ。こんなに都合のいい話はなかろ?」
「悪魔ね!?」
「ヒヒヒッ」
ドヤ顔の婆さんは空き瓶を受け取ると手近な箱にぽいと放り込み、そしてあたしに手のひらを向け、クイクイと指を動かした。
わかってるわよ。アレでしょう?
あたしは鞄の中から兄主神様にいただいた兎の脚を取り出して、ニヤつく婆さんに渡した。
「悪魔と取引してる気分だわぁ……」
「ヒヒッ、こんなに早く手に入れて来るとはね」
「あぁ、ちょっとあっちに行ってきたのよ」
「例の件だろう? おかげで久々に白の神の顔を拝んで来たよ」
「そういえばそんなこと言ってたわねぇ。協力ありがとね婆さん」
「その分ちゃあんといただいて来たさ」
「がめついわねぇ……」
「ヒーッヒッヒ!」
メルネ婆さんはショタ神様にいただいた腕輪のおかげで、喚ばれれば神域へ行くことが出来たんですって。
落ち人である婆さんがどうやって神域に行けたのかしらと思っていたんだけど、まぁ婆さんとショタ神様だし……とスルーしてたわ。
この最凶タッグじゃ何が起きても不思議じゃないもの。
さて、ともあれこれで回復できたし、すぐにでも行動開始しちゃいましょう。
テーブルに世界地図を広げて目当ての場所を確認してみると、思った通りレジナステーラ大陸の西端にある国で、ロキシタリア大陸に割と近い地域だったわ。
だけど距離は今までの比じゃない。ここまで一気に転移したとして、また倒れたりはしないかしら。
「ねぇ婆さん、さっきの回復薬、何本か譲ってくれないかしら」
「馬鹿をお言いだね。隣町程度でそのザマじゃ大陸越えなんて何本あっても足りゃしないよ」
「そんなぁ……」
すぐにでも行ってあげたいのに、また役立たずなの? これじゃランディを止めた意味がないじゃない。
でも、ショタ神様も言ってたわよね。あたしは神様じゃないんだもの。出来ないことの方が多くて当たり前なんだわ。
……ん? 待って、ショタ神様?
「そうだわ! なんとかなるかも!」
「レイ?」
「待っててランディ、ちょっと相談してみるから」
「だ、誰にだ?」
そんなの決まってるじゃない!!
あたしはネックレスをスヌードの中から引っ張り出して、ぎゅっと握りしめた。
「ねぇ、ちょっとお願いがあるんだけど!」
『ふふふ、なにかなレイ』
やっぱり聞いてたわね。相変わらずレスポンスの早いこと。
でも今回はありがたいわ。それにこないだ相談しろって言ってくれたものね?
「ねぇ、出来るでしょう?」
『勿論出来るけれど、そうだなぁ、ひとつだけ条件を出してもいいかい?』
「条件? なにかしら」
『彼の記憶、私のことは消しておきたいんだ』
あら、やっぱり主神だなんて存在は知られない方がいいってことなのかしら。
ランディが特にどこかの宗教とかは聞いてないけれど、常識が根底から変わってきちゃうものね。
「わかったわ、なら眠らせてから行くのはどうかしら。その方が色々簡単じゃない?」
『ははっ流石レイ、妙案だ』
「でしょう? じゃあ先にこっちで説明しておくから、少し待っててくださる?」
うふふ、言ってみるものね!
あらやだランディ、なぁに化け物でも見るような顔しちゃって。失礼ねぇ。
「……なぁ、それ、相手」
「あんた時々カタコトになるわよねぇ」
「まさか、創造神、なのか?」
「えぇとねぇ、違うけど、確かに神様よ」
うわ、と言ってランディは固まってしまった。
もしかして、凄く信仰心が篤いのかしら。
「それでね、神様が移動を手伝ってくださることになったの。ただ、神様はあまり姿を見せられないから、あんたには移動する前に眠ってもらうことになるんだけど」
「……い、いいのか? そんな、個人的なことのために神の助力を賜るなど」
「いいって言ってくれてるからいいんじゃない?」
こっちの神様ってそんなに畏怖されてるの?
あたしはその創造神様とやらは知らないし、こっちの神話や信仰なんかもよくわからないけれど、なにかしらこの畏まりよう。
「恐れ多い……。拝謁賜れないことなど、どうして俺ごときが異を唱えられようか」
「あんたキャラ変わってなぁい?」
「直接感謝の意を伝えられないのは身の縮む思いだが、お許しくださるだろうか」
「大丈夫よ! そんなこと気にするような神様じゃないわ。だってあたしやメルネ婆さんを気に入るような方よ?」
自分で言うのもなんだけどね! でも説得力はあるでしょう?
ランディはぽかんとした後、ふはっと笑って緊張を解いてくれた。
「確かにそれもそうだな」
「でしょ? あたしからもちゃんとお礼を言っておくから、少しだけ眠っていてくれる?」
「あぁ、わかった。神にくれぐれもよろしくお伝えしてくれ」
そして瞳を閉じたランディに眠りの魔法をかけ、彼の手を取ってショタ神様へ声を飛ばす。
「準備出来たわ」
『うん、じゃあ喚ぶよ』
「えぇお願い。じゃあ婆さん色々ありがとうね、行ってくるわ」
「……待ちな」
「え? ちょ、ちょっと待って主神様!」
急にストップをかけた婆さんは何やら机や薬棚をガサガサ漁り、壁に立て掛けてあった自分の背丈より長い杖を手に戻ってきた。
なにかしら。ひょっとしてまさかもしかして……
「連れていきな」
「えぇ!? いや助かるかもしれないけど、遊びに行くんじゃないわよ!?」
「いいからほれ、白の神、喚んでおくれな」
あんもう知らないからね!?
何しに着いてくるのかわからないけど、来るなら頼っちゃいますからね!?
そうして眠るランディと共に、白い神域へと揃って引き寄せられた。
「やぁ数日ぶりだねメルネ。君も来るなんて思わなかったよ」
「ヒヒッそこいらはまだ行ったことがなくてねぇ」
「そういうことか。なら帰りは任せるよ」
知ってはいたけどこのコンビが並んでる絵面ひどいわね!? めっちゃ不吉だわ!!
何の利もなく動くはずのない強欲婆さんと人をおちょくり掌で転がす腹黒ニッコリショタ神様。
頼りにはなるし心強くもあるけれど、どうにも嫌な予感が拭い去れないわねぇ。
「あたしゃ別行動だよ。向こうに着いたらエルトを出しておきな」
「じゃあ何しに行くのよ」
「ヒヒッ、神を移動手段として顎で使うなんざ、あたしにゃ思い付かなかっただけさね」
「全くだよ。ひどい契約者だ」
「えぇ!? 出来るって言うからお願いしたんじゃない!」
「まずその発想が出やしないよ」
「そうだよねぇ」
なんで? なんであたしこんな非難されてるの? あとついでに話をはぐらかしたわね!?
もうほっんとに嫌こいつらぁ!!
「ふふ、君の想いが伝わってきていたからね、人の世に干渉はしない主義だけれど、今回は特別だ」
「……色々聞きたいことも言いたいことも山のようにあるけど、とりあえずありがとう主神様。あと今回は頼まれ物を集めるの無理だと思うの。ごめんなさい」
「それは一向に構わないよ。さぁ頑張っておいで。お茶を用意して待っているよ」
話を聞いてくれる気はあるってことね?
わかったわ。じゃあさっさとニーネちゃんを取り返して、またすぐここに戻って来てやるわよ!
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