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傍にいる
「うん、すっごく美味しい」
お風呂から上がった玲さんが、夕飯を並べたテーブルについてさっそく温め直した肉じゃがを食べ、そう言って大きく頷いた。
料理上手な玲さんが教えてくれたレシピだし、分量もきっちり測ったから間違いないとは思ってたものの、それでも不安だったオレはホッと胸を撫で下ろす。
全部レシピ通りでも、煮込み方とかで変わるからな。
「良かったー」
「最初は包丁の使い方も分からなかったのに、いつの間にかこんなに上手になってたんだね」
「玲さんが教えてくれたからですよ」
「天音に素質があったんだよ」
一人暮らしを始める前、母さんに少しは出来た方がいいって言われてキッチンに立った事がある。その時はものの数分でオレには向かないって諦めたのに、玲さんに教えて貰った時は不思議とやる気に満ちてて、今では玲さんに食べて欲しいから頑張れてた。
この人の為なら、どんな事でもやってみたいって。
玲さんの言葉も嬉しかったし、こういうのが愛なのかなーってにやにやしてたら、箸を置いた玲さんが手を伸ばしてオレの頬へと触れてきた。
「天音は頑張り屋だから」
「そんな事はないですけど⋯でも、上達したのは確実に玲さんのおかげです」
「天音の努力なのに」
玲さんの要所要所のポイントを記した丁寧なレシピと、手取り足取りで直接指導してくれた賜物には間違いない。
すりすりと撫でる手に自分の手を重ね目を閉じて擦り寄せたら、玲さんは小さく笑い、頬を軽く摘んでから手を離して「そういえば」と視線をソファの方へと向けた。
「あそこにダンボールがあるんだけど、全部天音のだから持って帰っていいし、着替えとしてここに置いててもいいよ」
「え?」
「天音に似合いそうな服を見つけたら止まらなくなって。上は服で、真ん中がパンツ。1番下が靴だよ」
「止まらなく⋯? ⋯え、え?」
確かに玲さんぽくはないなと思ったけど、あれ全部オレのだったの?
しかも服の箱とパンツの箱と靴の箱って⋯いや、多い多い。
「れ、玲さん⋯さすがに全部はいただけないです」
「どうして? 天音に着て欲しくて選んだのに」
「さらっと渡す量ではないかなと⋯気持ちは凄く嬉しいんですけど⋯」
「男が恋人に服を贈る意味、知ってる?」
玲さんの気持ちは本当に嬉しいんだけど、ただでさえ玲さんには貰ってばかりなのにって断る理由を説明してたら、まったく違う話になってオレは驚きつつも首を振る。
服を贈るって行為自体に意味があるのか。
「脱がせたいからだよ」
「⋯⋯」
「自分が贈った服を脱がせたいから。まぁ、これは女性に対してみたいだけど、特別な気持ちがあるなら同性の恋人でも当てはまるんじゃないかな」
そ、そんな意味があったとは⋯。贈られた服じゃなくても何度も脱がされてるのに、気恥ずしさを感じて頬が熱くなってきた。
箸を握ったまま固まるオレの手を玲さんの手が覆う。
「真っ赤だね、可愛い。⋯⋯今日は泊まっていけるの?」
「あ、は、はい⋯明日は夕方からバイトはありますけど」
「そっか。実は俺も休みなんだ」
その言葉がどんな意味を持つのか、もう分からないほど子供じゃないし無知でもない。
オレは包まれてる自分の手を見て目を伏せると、反対の手で玲さんの手を握って持ち上げ指先へと口付けた。
心地いい疲労感が全身を包んでる。
髪を撫でる手にうとうとしていたオレは、不意に聞こえた振動音に少しだけビクッとした。
どうやら玲さんのスマホからだったらしく、ヘッドボードの棚に置いていたスマホを手にした玲さんは確認して息を吐く。
「伯父さんも人使いが荒いな⋯」
「⋯?」
「休みが開けて早々、メインど取引している会社の代表集めてパーティだって」
「パーティ⋯?」
「少しずつ、俺の顔を広めていくらしいよ」
そっか。今までは将生さんが社長で玲さんはいち社員だったから⋯もう継ぐ準備を始めてるし、そういうのも必要になってくるのか。
オレは手をついて身体を起こすと、目を瞬く玲さんの額に口付けた。
「いろいろ大変だと思いますけど、玲さんならやり遂げられますよ」
「天音⋯」
「オレ、ずっと傍にいますからね」
愚痴でも文句でも何でも聞くし、玲さんがしんどいや疲れたを吐き出せる場所でありたい。
玲さんの手を握ってそう言えば、呆けていた玲さんがおもむろに起き上がりオレを抱き締めた。そのまま倒れ込み、唇を塞がれてちゅーっと吸われる。
「ん⋯っ」
「天音が傍にいてくれるなら、俺はいくらでも頑張れるよ」
「⋯っ、玲さ⋯」
「だからパーティの前に、天音をチャージさせてね」
首筋から鎖骨まで降りて、手がお尻を撫でて奥まったところに触れてくる。
さっきまでしてたからお互いまだ裸で、ローションも掻き出してないから玲さんが軽くつつくだけで指が入ってきた。
「したばっか⋯なのに⋯っ」
「足りないよ」
「ぅ⋯」
確かにいつもよりイかされる回数が少ないなとは思ってたけど、やっぱり足りてなかったんだ。
浅いところで指先が抜き差しされて身体を震わせたオレは、玲さんの首に腕を回すと息を吐いた。
「お昼には起きられるように、手加減してくださいね」
「ん。善処はする」
あんまり信用出来ない返事だったけど⋯まぁいっか。
どうせオレだって、途中から訳分かんなくなるんだし。
お風呂から上がった玲さんが、夕飯を並べたテーブルについてさっそく温め直した肉じゃがを食べ、そう言って大きく頷いた。
料理上手な玲さんが教えてくれたレシピだし、分量もきっちり測ったから間違いないとは思ってたものの、それでも不安だったオレはホッと胸を撫で下ろす。
全部レシピ通りでも、煮込み方とかで変わるからな。
「良かったー」
「最初は包丁の使い方も分からなかったのに、いつの間にかこんなに上手になってたんだね」
「玲さんが教えてくれたからですよ」
「天音に素質があったんだよ」
一人暮らしを始める前、母さんに少しは出来た方がいいって言われてキッチンに立った事がある。その時はものの数分でオレには向かないって諦めたのに、玲さんに教えて貰った時は不思議とやる気に満ちてて、今では玲さんに食べて欲しいから頑張れてた。
この人の為なら、どんな事でもやってみたいって。
玲さんの言葉も嬉しかったし、こういうのが愛なのかなーってにやにやしてたら、箸を置いた玲さんが手を伸ばしてオレの頬へと触れてきた。
「天音は頑張り屋だから」
「そんな事はないですけど⋯でも、上達したのは確実に玲さんのおかげです」
「天音の努力なのに」
玲さんの要所要所のポイントを記した丁寧なレシピと、手取り足取りで直接指導してくれた賜物には間違いない。
すりすりと撫でる手に自分の手を重ね目を閉じて擦り寄せたら、玲さんは小さく笑い、頬を軽く摘んでから手を離して「そういえば」と視線をソファの方へと向けた。
「あそこにダンボールがあるんだけど、全部天音のだから持って帰っていいし、着替えとしてここに置いててもいいよ」
「え?」
「天音に似合いそうな服を見つけたら止まらなくなって。上は服で、真ん中がパンツ。1番下が靴だよ」
「止まらなく⋯? ⋯え、え?」
確かに玲さんぽくはないなと思ったけど、あれ全部オレのだったの?
しかも服の箱とパンツの箱と靴の箱って⋯いや、多い多い。
「れ、玲さん⋯さすがに全部はいただけないです」
「どうして? 天音に着て欲しくて選んだのに」
「さらっと渡す量ではないかなと⋯気持ちは凄く嬉しいんですけど⋯」
「男が恋人に服を贈る意味、知ってる?」
玲さんの気持ちは本当に嬉しいんだけど、ただでさえ玲さんには貰ってばかりなのにって断る理由を説明してたら、まったく違う話になってオレは驚きつつも首を振る。
服を贈るって行為自体に意味があるのか。
「脱がせたいからだよ」
「⋯⋯」
「自分が贈った服を脱がせたいから。まぁ、これは女性に対してみたいだけど、特別な気持ちがあるなら同性の恋人でも当てはまるんじゃないかな」
そ、そんな意味があったとは⋯。贈られた服じゃなくても何度も脱がされてるのに、気恥ずしさを感じて頬が熱くなってきた。
箸を握ったまま固まるオレの手を玲さんの手が覆う。
「真っ赤だね、可愛い。⋯⋯今日は泊まっていけるの?」
「あ、は、はい⋯明日は夕方からバイトはありますけど」
「そっか。実は俺も休みなんだ」
その言葉がどんな意味を持つのか、もう分からないほど子供じゃないし無知でもない。
オレは包まれてる自分の手を見て目を伏せると、反対の手で玲さんの手を握って持ち上げ指先へと口付けた。
心地いい疲労感が全身を包んでる。
髪を撫でる手にうとうとしていたオレは、不意に聞こえた振動音に少しだけビクッとした。
どうやら玲さんのスマホからだったらしく、ヘッドボードの棚に置いていたスマホを手にした玲さんは確認して息を吐く。
「伯父さんも人使いが荒いな⋯」
「⋯?」
「休みが開けて早々、メインど取引している会社の代表集めてパーティだって」
「パーティ⋯?」
「少しずつ、俺の顔を広めていくらしいよ」
そっか。今までは将生さんが社長で玲さんはいち社員だったから⋯もう継ぐ準備を始めてるし、そういうのも必要になってくるのか。
オレは手をついて身体を起こすと、目を瞬く玲さんの額に口付けた。
「いろいろ大変だと思いますけど、玲さんならやり遂げられますよ」
「天音⋯」
「オレ、ずっと傍にいますからね」
愚痴でも文句でも何でも聞くし、玲さんがしんどいや疲れたを吐き出せる場所でありたい。
玲さんの手を握ってそう言えば、呆けていた玲さんがおもむろに起き上がりオレを抱き締めた。そのまま倒れ込み、唇を塞がれてちゅーっと吸われる。
「ん⋯っ」
「天音が傍にいてくれるなら、俺はいくらでも頑張れるよ」
「⋯っ、玲さ⋯」
「だからパーティの前に、天音をチャージさせてね」
首筋から鎖骨まで降りて、手がお尻を撫でて奥まったところに触れてくる。
さっきまでしてたからお互いまだ裸で、ローションも掻き出してないから玲さんが軽くつつくだけで指が入ってきた。
「したばっか⋯なのに⋯っ」
「足りないよ」
「ぅ⋯」
確かにいつもよりイかされる回数が少ないなとは思ってたけど、やっぱり足りてなかったんだ。
浅いところで指先が抜き差しされて身体を震わせたオレは、玲さんの首に腕を回すと息を吐いた。
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