人気アイドルになった美形幼馴染みに溺愛されています

ミヅハ

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好きで大切で仕方がない子(真那視点)

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 俺の幼馴染みである陽向は、二つ年下なのに凄くしっかりした優しい子だ。真面目で素直で真っ直ぐで、俺がアイドルになっても変わらず幼馴染みとして接してくれるヒナの事が、俺は子供の頃から大好きだった。

 ヒナが生まれてから俺が物心着く頃には、俺はもうヒナにべったりだったらしい。ハイハイからよちよち歩き、短い足で走り回るヒナが凄く可愛かったのを覚えている。もちろん今のヒナも凄く可愛いけど、あの頃はニコニコしながら俺のあとを追いかけて来る姿が本当に堪らなくて、俺からヒナの手を繋いでいたくらいだ。
 幼稚園も小学校も中学校も一緒で、さすがに高校は別になるかと思っていたけど、ヒナは勉強を頑張って俺と同じところを受験し見事合格していた。ただヒナが入学する頃にはもうアイドルだったから学校ではほとんど会えなくて、たまに登校出来た時に見るヒナの制服姿は俺の活力だった。

 デビューしたばかりの頃の俺は、慣れない仕事と忙しさで混乱しヒナに会える時間が上手く作れなかった。そんな時にヒナから「前みたいにもっと会いたい、話したい」と言われ、志摩さんと風音にどうしたらいいかを相談してようやく隙間時間の上手な使い方を学んだ。
 俺だってヒナには会いたかったから、ヒナが同じ気持ちでいてくれた事が凄く嬉しい。
 久し振りに会った時の笑顔なんて写真に収めたいくらい可愛かった。


 それから少しずつ仕事にも慣れ、帰れる時はヒナの家に行ってヒナが作ったご飯を食べる日も増やす事が出来た。
 幼馴染みだからか、ヒナは俺に対してひどく無防備だ。本当なら高校生にもなって、ましてや男同士がこんなスキンシップをするはずがないのに、小さい頃からしてきたおかげで頭を撫でても抱き締めても何とも思わない。
 俺にバッチリ下心がある事にも気付かないで体重を預けてくれるヒナが凄く愛おしい。
 さすがにキスした時は驚いてたけど、気持ちを伝えれば嫌な顔一つせず真っ直ぐに受け止めて考えるって言ってくれて……それがどれだけ嬉しかったか、きっとヒナは知らないだろう。

 ヒナに友達が出来るのは喜ばしい事だけど、もしかしたらそれが恋に発展するかもって思ったら堪らず告白してた。 
 でもだからって絶対恋人になれるとは思ってない。それでもやれる事は全部やって、自分なりにアピールして、少しでも意識して貰えるよう頑張るつもりだ。少なくとも、勝率は高めだと思ってるし。





 本格的にツアーの準備期間に入り、テレビ収録や撮影、ダンス練習や新曲のレコーディング、バックバンドとの音合わせ、それぞれの会場での大まかな立ち位置やセトリの確認で慌ただしくて、ここ二週間近くヒナに会えていない。メッセージのやり取りはしてるけど、電話も出来なくて顔どころか声さえ聞けていない状況に絶望してる。
 誕生日が来るまで俺は二十二時以降は働けないとはいえ、ギリギリで帰る俺は早寝のヒナの家には行けないから今は自分の家に帰って気絶するように寝て、朝は水島さんに起こされるっていう日々を送っていた。

 いい加減ヒナの料理が食べたい。ヒナを抱き締めたい、キスしたい。

「おい、真那。聞いてるのか?」

 いつの間にか料理上手になっていたヒナの美味しい料理と、腕にすっぽりと収まるヒナの姿を思い出していると突然目の前に風音が現れる。

「何?」
「〝何? 〟じゃなくて、さっきから呼んでんだけど?」
「聞いてなかった」
「だろーな!」

 風音はいつも馬鹿正直で明るくて、無表情で無感情な俺相手でも気にせず話してくれる。もちろん志摩さんもそうだけど、俺は本当に仲間に恵まれた。
 腰に手を当てて何やら怒っていた風音は、大きな溜め息をつくとやれやれみたいに首を振って腕を組む。

「これが陽向だったらちゃんと聞いてるんだろ?」
「もちろん。ヒナの言葉は一言一句聞き逃さない」
「その熱量をもうちょい俺たちにも向けて欲しいんだけどな」
「…………」
「黙り込むな!」

 ヒナの声を聞き逃すなんて事絶対に有り得ない。それにしても、風音はいつもこんなに大きな声を出して疲れないんだろうか。
 連日の睡眠不足もあり眠さで半分閉じた目で風音を見ていると、志摩さんが苦笑混じりに近付いて来た。

「はいそこまで。真那が陽向くん以外に感情が動かないのは今に始まった事じゃないだろ。ほら、風音も真那も衣装に着替えて」
「はーい」
「……ん」

 今日はこれから歌番組の収録があり、それが終わったら三人での雑誌撮影だ。確か今回はインタビューもあったはず……まぁ俺は頷くか首振るかくらいしかしないけど。
 CM撮影、ボイトレ、ダンスレッスン……今日もヒナに会えないかも。

「ヒナに会いたい……」
「これは重症だね」
「疲れとか寝不足とかじゃなくて、陽向不足で倒れそうだな」
「それは困るなぁ…」

 このままだと本当に風音の言う通り、ヒナと会えない、話せない、顔が見れない辛さで倒れるかもしれない。俺にとってヒナの存在は凄く大きくて、傍にいられないだけで不安になるし心配になる。
 ヒナは可愛くてお人好しだから、邪な気持ちを持って近付いて来る人がいても助けてって言われたら手を差し伸べるだろうし、前にヒナから聞いた女の子たちだって、ヒナに気があるから加勢したのかもしれないし。
 ああ、駄目だ。ヒナの事、考えれば考えるほど会いたくなる。
 他の人の歓声なんていらないから、一目だけでもヒナに会わせてくれないかな。

「……仕方ないか」
「何か言ったか? 志摩さん」
「何でもないよ」

 何かを考えていた志摩さんがポツリと零したあとスマホを操作してたけど、ヒナ関連の話じゃないなら俺には関係ない。
 面倒臭いけど、着替えない訳にはいかないから仕方なく立ち上がり衣装を手にする。俺のイメージカラーは青らしく、ジャケットの襟元とサイドには青色のラインが入ってた。ちなみに志摩さんはオレンジで、風音は黄色だ。
 自分たちで選んだ訳じゃないけど、割と合ってると思う。

「【soar】さん、スタジオまで移動をお願いします」
「あ、はい。ほら、早くジャケット着て」
「うーっす」
「……」

 スタッフさんの呼び掛けで身支度を整え一つ息を吐く。俺が出てる番組をヒナは見てくれてるんだから、せめて収録中は気合い入れて頑張らないとな。
 と言いつつも、頑張る力はなくなりかけてるんだけど。



 リハーサルを経て本番を録った訳だけど、フラフラの頭で楽屋に戻った俺は扉を開けた瞬間の光景に思わず固まってしまった。空っぽだったはずの楽屋に水島さんがいて、ソファには差し入れのお菓子を食べているヒナが座ってたから。

「あ、ほはえいははいおかえりなさい
「……」
「ただいま、陽向くん」
「あれ、陽向じゃん! 何してんの?」
「志摩さんから、〝真那が限界だから来てあげて〟って連絡来て……楽屋だし本当は遠慮したかったんですけど」
「まだ夕方で時間的にも大丈夫そうだったからね。真那もギリギリだったし」

 真面目なヒナは、自分は芸能人じゃないからってこの業界に関わる事をよしとしない。でも優しい子だから、俺の事を心配して悩みながらも来てくれたんだろうな。ホント、俺のヒナ可愛い。

「真那?」
「……ヒナがいる」
「ん? うん、いるよ?」
「真那、皺になるから先に衣装脱ぎなよ」
「ヒナだ」
「聞いてねーな、アレ」
「陽向くんしか見えてないね」

 俺の目にはもうヒナしか映ってなくて、目を瞬いて可愛く小首を傾げているヒナに近付くとその細い身体を抱き締めた。首筋に顔を埋めて大きく息を吸うとふわりと石鹸の香りが全身に広がりホッとする。
 ヒナはいつも優しくていい匂いがするから、出来る事ならずっと腕の中に収めていたい。

「よしよし、お疲れ様」
「ヒナに会えない方がしんどい」
「大袈裟だろ」

 俺よりも小さな手が髪に触れ優しく撫でてくれる。本当に俺、ヒナさえいればいいかもしれない。
 この仕事は嫌いじゃないしむしろ楽しいまであるけど、ヒナに会えない事だけがネックだった。

「真那、一時間後には別室に移動しないといけないから、それまでに着替えてメイク落として、新しくヘアセットして貰いなね」
「………」
「オレがさせます!」
「陽向くんは頼もしいな」

 着替えの時間もメイクを落とす時間もヘアセット変えて貰う時間も惜しいのに、絶対やらないといけない事なのが嫌だ。強めに抱き締めてるとトントンと背中を叩かれて顔を上げる。
 可愛い顔がじっと見て来るから、ここが楽屋だと言う事も忘れてキスしそうになったのを堪えて「何?」と聞くとジャケットの襟が広げられた。

「まず着替えてちゃんとして貰え。この後インタビューと撮影だろ?  全部支度終わったらご褒美やるから」
「ご褒美?」
「今日仕込んだ夕飯の肉じゃが。出来たてだからまだあったかいぞ」
「……ナミさん、次俺やって」
「はいはーい」
「ちょ、俺待ってたんだけど!?」

 志摩さんのメイクを落としたあと新しくヘアセットをしていたナミさんに声をかけると快く応えてくれる。風音が何か言ってたけど無視だ。
 とりあえず着替えも終わらせないといけないから、ステージ衣装を脱いで撮影インタビュー用の服に着替える。派手なパフォーマンスは風音の役目だとしても、飾りがついたジャケットはやっぱり動きにくい。

 ナミさんに呼ばれて椅子に座るとまずメイクを落とされる。鏡越しにお菓子を頬張るヒナを見ていると、ナミさんに「あの子が例の子?」と聞かれて頷いた。ナミさんは俺たちの事務所の人だからヒナの事は話してるけど、俺がヒナを好きな事は知らない。
 本当は言ってしまいたいけど、どこから漏れるか分からないためちゃんと信頼出来る人にしか言っちゃ駄目だって言われてるから、大事な幼馴染みとだけ言ってる。幼馴染みを大切にする事はおかしくないだろうし。

 次の準備も完璧にして貰いヒナの所に戻ると、にこっと可愛く笑ったあと保冷バッグからタッパーを取り出して箸と一緒に俺に渡そうとする。でも何となく嫌で首を振って拒否すると、仕方ないなと溜め息をついたヒナは蓋を開けてじゃがいもと肉を挟み俺の口元へ差し出してくれた。

 手ずから食べさせて貰う姿がまるで雛鳥のようだったとあとから言われたけど、ヒナに会えて、ヒナが作ったご飯が食べられた俺は満足だったから、むしろそれでもいいやと思う。
 ヒナに飼われるのも、それはそれでありかもしれない。そう考える俺は、やっぱり相当ヒナに溺れてるなと実感した。
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