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【最終話】その後の二人※
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「深月、これはどうする?」
「それはソファの上ー」
理人先輩と出会ってから早三年。俺たちは念願の二人暮しを始めるため現在引っ越し作業の真っ最中だ。
先輩が卒業して、時計塔で会える時に会って、俺が卒業してすぐに先輩は俺の両親に会って付き合ってる事、一緒に暮らしたい事の了承を取ってくれた。父さんも母さんも、先輩の綺麗さと勢いに飲まれて頷いたみたいなものだけど、最終的には俺がしたいようにしていいって言ってくれたんだよな。
んで、家が見付かるまでは先輩の家にお世話になって半年過ぎたくらいに、やっと条件に合うとこが借りれて無事引っ越しってなった訳だ。
「理人先輩、これ……」
「深月」
「?」
「もう先輩じゃなくなって二年経つのに、まだ慣れない?」
「……あ。ご、ごめん、理人、くん」
「呼び捨てでもいいんだよ?」
「だって今まで先輩ってつけてたから」
呼び捨てはさすがに照れ臭くて、最後まで〝くん〟か〝さん〟で迷った俺はせんぱ……じゃなかった、理人くんにも相談して今の呼び方でどうにか収まった。
でも正直まだ慣れない。ついつい先輩って呼んじゃうんだよなぁ。
衣装ケースに服をしまい、どうにか片付け終わった部屋を見回してるとキッチンに立つ理人くんに呼ばれた。首を傾げながら近付くと飲み物を用意してくれてるらしく、何がいいか聞かれて悩んでから冷たいミルクティーをお願いする。
「ソファで待っててもいいよ?」
「邪魔じゃないならここにいてもいい?」
「深月を邪魔に思う事なんて絶対にないから」
それならと背中から抱きつくと、グラスを二つ用意した理人くんはクスクスと笑いながらも俺の好きにさせてくれて、理人くんのカフェオレと俺のミルクティーを作ってくれた。
さすがに運ぶ時は離れないといけないから、代わりに俺は理人くんのお母さんから貰ったクッキーを持って行く。
先にテーブルに飲み物を置いてソファに座った理人くんの隣に、クッキーを置いて腰を下ろした瞬間抱き締められた。
「やっと二人だけの生活が出来るね」
「うん。でも俺もっと時間かかると思ってた」
「そうだね。深月のご両親がすぐに許してくれて良かったよ」
「理人くんがすごすぎて、俺の父さんと母さん気圧されてたぞ」
「あれ以上深月と離れていたくなかったから。どうしても早く許可が欲しかったんだ」
どれだけ俺が好きでどれだけ俺が大事なのかを懇々と説明してて、聞いてる俺の方が恥ずかしかった。
卒業して理人くんの家で暮らし始めてからますます愛情表現がハッキリしてきて、いつだったか平井が言ってた〝溺愛〟って言葉の意味をようやく理解してきた感じ。
本当にずっと甘やかされてる。
「深月、あーん」
「あー」
俺の頭にキスしてた理人くんがクッキーを一つ摘んで俺の口元に運んでくれる。今も変わらず、こうして手ずからお菓子を食べさせられる事はしょっちゅうで、ついうっかり両親の前でもしちゃって…まぁそれがきっかけで許可が降りたって感じなんだけど。
「美味しい?」
「うん。お母さん、相変わらず料理もお菓子も美味しいよな。俺、あそこにいる時太らないか心配だった」
「深月なら丸くなっても可愛いよ」
「やだ。カッコイイ理人くんの隣に並ぶんだから、せめて恥ずかしくない俺でいたい。それに、だらしない俺じゃ理人くんが悪く言われる」
現にずっと変わらなかった体重が三キロも増えた時は衝撃だった。どうにか戻したけど、あの時は理人くんに引かれるかもって不安だったなぁ。ってか俺、ご飯だと太るんだな。
そんな事を思い出しながら、ミルクティーを飲んで新しいクッキーを取ろうと伸ばした手が握られて押し倒された。
目を瞬いて見上げると、柔らかく微笑んだ理人くんがいてあっと思う。
半年以上一緒に住んでたから分かるようになったんだけど、理人くんの目が少しだけ金色を帯びる時は、血を飲みたい時か俺を抱きたい時みたいで……たぶん今は後者。どこでスイッチ入った?
「夕飯、遅くなってもいい?」
「でも今日は食べに行こうって……」
「うん。そのつもりだったけど、デリバリーでもいいかなって」
「……ここじゃやだ」
「分かってる。ベッド行こう」
俺の上からどいた理人くんに腕を引かれて立たされる。そのまま寝室に向かうから少しだけ名残惜しくてテーブルを振り返った。
ミルクティー、まだ残ってるんだけどな。
引っ越しギリギリまで悩んだベッドのサイズは、あまり広くても嫌だからってダブルにした。どうせくっついて寝るし。
フカフカで柔らかくて、毎日寝坊しそうなほど寝心地の良いベッドだ。
そのベッドで俺は理人くんに組み敷かれてる。
「や、ぁ、あ、理人く、そこヤダ…っ」
「深月の好きなところだよ?」
「だって…あっ、ダメ…すぐイっちゃ…ッ」
「もうちょっと我慢出来る?」
「ンッ、ぅ、ん…する、するから……理人くん…っ」
「…深月にそう呼ばれるとゾクゾクするね…」
縋り付きたくて腕を伸ばすと微笑んだ理人くんが屈んでキスしてくれる。その首に腕を回せば大きな手が梳くように髪を撫でてくれた。
俺は理人くんとこうなるまで、性的な事って〝何となく言葉も意味も知ってる〟って程度だった。
でも理人くんに触られて、教えられて、ここまでの関係になってようやく俺ってお子様だったんだなって気付いてさ。みんなが俺を子供扱いしてた理由も分かって、ちょっとショックだった。
今はむしろ、俺だって理人くんを誘ったりするくらいには大人になったんだぞ。
まぁ、そのあとはグズグズにされるけど。
「…っ…理人、くん……好き…大好き…っ」
「俺も……愛してるよ、深月…」
「ひぁ…っ、あ、ん、やぁ…っ」
「…深月……」
「ダメ、ゃ、も、イく、理人く…っ、やぁ、あ、──ッンン…っ!」
「……っ…」
お腹の奥がぎゅうってなる感覚も、出した後の疲労感も、中に注がれる熱の熱さもドクドクと脈打つ理人くんも。全部、理人くんが教えてくれた。
ぐったりとベッドに沈んで呼吸を整えていると、理人くんが出ていく感覚に身体がビクッてなって危うく締め付けそうになる。あとで掻き出して貰わなきゃなんだけど、反応させずにいられるかな。
本当はゴムした方がいいのは分かってる。場所も場所だし不衛生だけど、最初からなかったせいかゴム着けてしたら何か違うっていうか……とにかくゴム嫌だってなって、俺から着けないでってお願いした。
その時の理人くん、困惑してたなぁ。理人くんは、あるなら着けた方がいい派みたいだったし。
掻き出して貰う作業はちょっと申し訳なく思うけど。
「深月、何食べたい?」
「…ハンバーグ」
「じゃあお弁当にしようか」
「うん」
ベッドから降りて下だけを身に着けた理人くんは、一度寝室から出てタオルとスマホを手に戻って来た。暖かい濡れタオルで俺の身体を拭きながら聞いてくれたから、少し考えて答える。
すぐに食べられるかは分かんないけど、今はハンバーグの気分だった。
「中の出すから、力抜いててね」
「うん……んっ…」
「声抑えなくても良いよ」
「…っ…ふ…」
そうは言っても、後処理して貰ってるだけなのに気持ち良いって感じるのはダメだと思う。だって理人くん、掻き出したあとはどんなに大きくなっててももう絶対挿れないし。
俺なりの気遣いだったのに、それまで意図なく動いていた理人くんの指がいきなり前立腺を押してきた。
「ひぅ…っ」
「深月の可愛い声、もっと聞きたいんだけどな」
「やぁ…っ、ダメ、そこしないで…っ」
「気持ち良い?」
「ぁ、あ…んっ…気持ちい、から…やだぁ…っ」
「可愛い」
それから結局指でイかされた俺はさっきよりも疲れてしばらく動けなくて、理人くんが頼んでくれたお弁当も当分食べられなかった。
二日後。
高校卒業後に親戚がやっている飲食店に勤め始めていた理人くんは、引っ越しの間だけ休みを貰って今日からまた出勤する事になっていた。
俺は明日から駅前のファーストフード店でのバイトが始まるんだけど、初めてだからすごくドキドキしてる。
「深月、行ってくるね」
「行ってらっしゃい、理人くん」
一緒に玄関まで行き、ハグとチューをしてから見送るのももうすっかり慣れた。
ちなみに料理の腕は、理人くんのお母さんから習ってそれなりに上がった…とは思う。理人くんの方が圧倒的に上手ではあるけど。
でもお弁当を作れるまでには至ってないから、今の目標は理人くんに俺が作ったお昼を持たせてあげる事だったりする。
ハードルは高そうだけど、理人くんのためなら頑張れる気がするんだ。
「あ、洗濯終わった」
一人気合いを入れていると、ぴーぴーって音がして洗面所に向かう。寮に住んでた時も洗濯はしてたからこれに関しては完璧だ。
シワを伸ばして、ハンガーにかけて物干し竿に吊るす。ベランダに干された二人分の洗濯物が何か照れ臭い。
「今日もいい天気だー」
朝から眩しいくらいに照り付ける太陽が部屋を明るくし、心地良い風がカーテンを揺らす。ベランダから見る室内はまだ見慣れないけど、その内この風景が当たり前になるんだよな。
だってこの先にはきっと幸せしか待ってない。
「よし、散歩がてら買い物に行こう」
まだ越してきたばかりだから、何があるか覚えないといけないしな。
俺は理人くんが書いてくれた買い物メモを忘れないようポケットに入れ、財布が入った鞄を下げて玄関へと向かう。
シューズボックスの上に紙と鍵があって、何かと思えば理人くんの字で『鍵を忘れないように』って書いてあった。
そうだ。ここは二人の家だから、俺も鍵を持って出なきゃ行けないんだ。危うく忘れるところだった。
「…へへ」
こんなところにも理人くんの優しさを感じて嬉しくなった俺は、ちゃんと鍵を掴んで玄関を出ると、しっかり施錠したのを確認してからエレベーターに向かった。
これから先、もしかしたら喧嘩する事もあるかもしれない。優しい理人くんだって腹を立てる事くらいあるだろうし、嫌な事があって不機嫌になる事もあると思う。
それでも俺たちはずっと一緒にいるって信じてるから。
だから俺は、理人くんを世界で一番の幸せ者にしてやるんだ。
俺に出来る事なんてたかが知れてるけど、理人くんを想う気持ちは誰にも負けないし、負けるつもりもない。
「あ、パン屋さん発見!」
その先駆けとして、とりあえずは美味しい物を見付けて理人くんにも教えてあげる事にした俺は、焼きたてパンの良い匂いがするパン屋さんへと飛び込むのだった。
FIN.
⟡.· ⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯ ⟡.·
『怖がりな少年は時計塔の怪物に溺愛される』、これにて完結となります!
途中で迷走してしまいましたが、どうにかハッピーエンドを迎える事が出来て良かったです♪
吸血鬼ってもっとこう…ムーディーなイメージがあったのですが、ずいぶんとかけ離れてしまいました。理人は割と色気があるタイプかなと思いつつ執筆しておりましたが…うーん、どうでしょう。
深月は素直な元気っ子なので楽しく動かせました。もっとはっちゃけても良かったかなと感じる部分はありつつも、皆様におバカな子だなと思って頂けていれば満足です(笑)
こういうファンタジー要素のあるお話は好きなので、また作ってみたいなと思っております。現代なのに魔法が使えたり、狼男みたいな動物に変身したり。オリジナル設定バンザイですね。
それでは、最後まで読んで下さりありがとうございました!
エールを下さった方にも多大なる感謝を込めて…☆
「それはソファの上ー」
理人先輩と出会ってから早三年。俺たちは念願の二人暮しを始めるため現在引っ越し作業の真っ最中だ。
先輩が卒業して、時計塔で会える時に会って、俺が卒業してすぐに先輩は俺の両親に会って付き合ってる事、一緒に暮らしたい事の了承を取ってくれた。父さんも母さんも、先輩の綺麗さと勢いに飲まれて頷いたみたいなものだけど、最終的には俺がしたいようにしていいって言ってくれたんだよな。
んで、家が見付かるまでは先輩の家にお世話になって半年過ぎたくらいに、やっと条件に合うとこが借りれて無事引っ越しってなった訳だ。
「理人先輩、これ……」
「深月」
「?」
「もう先輩じゃなくなって二年経つのに、まだ慣れない?」
「……あ。ご、ごめん、理人、くん」
「呼び捨てでもいいんだよ?」
「だって今まで先輩ってつけてたから」
呼び捨てはさすがに照れ臭くて、最後まで〝くん〟か〝さん〟で迷った俺はせんぱ……じゃなかった、理人くんにも相談して今の呼び方でどうにか収まった。
でも正直まだ慣れない。ついつい先輩って呼んじゃうんだよなぁ。
衣装ケースに服をしまい、どうにか片付け終わった部屋を見回してるとキッチンに立つ理人くんに呼ばれた。首を傾げながら近付くと飲み物を用意してくれてるらしく、何がいいか聞かれて悩んでから冷たいミルクティーをお願いする。
「ソファで待っててもいいよ?」
「邪魔じゃないならここにいてもいい?」
「深月を邪魔に思う事なんて絶対にないから」
それならと背中から抱きつくと、グラスを二つ用意した理人くんはクスクスと笑いながらも俺の好きにさせてくれて、理人くんのカフェオレと俺のミルクティーを作ってくれた。
さすがに運ぶ時は離れないといけないから、代わりに俺は理人くんのお母さんから貰ったクッキーを持って行く。
先にテーブルに飲み物を置いてソファに座った理人くんの隣に、クッキーを置いて腰を下ろした瞬間抱き締められた。
「やっと二人だけの生活が出来るね」
「うん。でも俺もっと時間かかると思ってた」
「そうだね。深月のご両親がすぐに許してくれて良かったよ」
「理人くんがすごすぎて、俺の父さんと母さん気圧されてたぞ」
「あれ以上深月と離れていたくなかったから。どうしても早く許可が欲しかったんだ」
どれだけ俺が好きでどれだけ俺が大事なのかを懇々と説明してて、聞いてる俺の方が恥ずかしかった。
卒業して理人くんの家で暮らし始めてからますます愛情表現がハッキリしてきて、いつだったか平井が言ってた〝溺愛〟って言葉の意味をようやく理解してきた感じ。
本当にずっと甘やかされてる。
「深月、あーん」
「あー」
俺の頭にキスしてた理人くんがクッキーを一つ摘んで俺の口元に運んでくれる。今も変わらず、こうして手ずからお菓子を食べさせられる事はしょっちゅうで、ついうっかり両親の前でもしちゃって…まぁそれがきっかけで許可が降りたって感じなんだけど。
「美味しい?」
「うん。お母さん、相変わらず料理もお菓子も美味しいよな。俺、あそこにいる時太らないか心配だった」
「深月なら丸くなっても可愛いよ」
「やだ。カッコイイ理人くんの隣に並ぶんだから、せめて恥ずかしくない俺でいたい。それに、だらしない俺じゃ理人くんが悪く言われる」
現にずっと変わらなかった体重が三キロも増えた時は衝撃だった。どうにか戻したけど、あの時は理人くんに引かれるかもって不安だったなぁ。ってか俺、ご飯だと太るんだな。
そんな事を思い出しながら、ミルクティーを飲んで新しいクッキーを取ろうと伸ばした手が握られて押し倒された。
目を瞬いて見上げると、柔らかく微笑んだ理人くんがいてあっと思う。
半年以上一緒に住んでたから分かるようになったんだけど、理人くんの目が少しだけ金色を帯びる時は、血を飲みたい時か俺を抱きたい時みたいで……たぶん今は後者。どこでスイッチ入った?
「夕飯、遅くなってもいい?」
「でも今日は食べに行こうって……」
「うん。そのつもりだったけど、デリバリーでもいいかなって」
「……ここじゃやだ」
「分かってる。ベッド行こう」
俺の上からどいた理人くんに腕を引かれて立たされる。そのまま寝室に向かうから少しだけ名残惜しくてテーブルを振り返った。
ミルクティー、まだ残ってるんだけどな。
引っ越しギリギリまで悩んだベッドのサイズは、あまり広くても嫌だからってダブルにした。どうせくっついて寝るし。
フカフカで柔らかくて、毎日寝坊しそうなほど寝心地の良いベッドだ。
そのベッドで俺は理人くんに組み敷かれてる。
「や、ぁ、あ、理人く、そこヤダ…っ」
「深月の好きなところだよ?」
「だって…あっ、ダメ…すぐイっちゃ…ッ」
「もうちょっと我慢出来る?」
「ンッ、ぅ、ん…する、するから……理人くん…っ」
「…深月にそう呼ばれるとゾクゾクするね…」
縋り付きたくて腕を伸ばすと微笑んだ理人くんが屈んでキスしてくれる。その首に腕を回せば大きな手が梳くように髪を撫でてくれた。
俺は理人くんとこうなるまで、性的な事って〝何となく言葉も意味も知ってる〟って程度だった。
でも理人くんに触られて、教えられて、ここまでの関係になってようやく俺ってお子様だったんだなって気付いてさ。みんなが俺を子供扱いしてた理由も分かって、ちょっとショックだった。
今はむしろ、俺だって理人くんを誘ったりするくらいには大人になったんだぞ。
まぁ、そのあとはグズグズにされるけど。
「…っ…理人、くん……好き…大好き…っ」
「俺も……愛してるよ、深月…」
「ひぁ…っ、あ、ん、やぁ…っ」
「…深月……」
「ダメ、ゃ、も、イく、理人く…っ、やぁ、あ、──ッンン…っ!」
「……っ…」
お腹の奥がぎゅうってなる感覚も、出した後の疲労感も、中に注がれる熱の熱さもドクドクと脈打つ理人くんも。全部、理人くんが教えてくれた。
ぐったりとベッドに沈んで呼吸を整えていると、理人くんが出ていく感覚に身体がビクッてなって危うく締め付けそうになる。あとで掻き出して貰わなきゃなんだけど、反応させずにいられるかな。
本当はゴムした方がいいのは分かってる。場所も場所だし不衛生だけど、最初からなかったせいかゴム着けてしたら何か違うっていうか……とにかくゴム嫌だってなって、俺から着けないでってお願いした。
その時の理人くん、困惑してたなぁ。理人くんは、あるなら着けた方がいい派みたいだったし。
掻き出して貰う作業はちょっと申し訳なく思うけど。
「深月、何食べたい?」
「…ハンバーグ」
「じゃあお弁当にしようか」
「うん」
ベッドから降りて下だけを身に着けた理人くんは、一度寝室から出てタオルとスマホを手に戻って来た。暖かい濡れタオルで俺の身体を拭きながら聞いてくれたから、少し考えて答える。
すぐに食べられるかは分かんないけど、今はハンバーグの気分だった。
「中の出すから、力抜いててね」
「うん……んっ…」
「声抑えなくても良いよ」
「…っ…ふ…」
そうは言っても、後処理して貰ってるだけなのに気持ち良いって感じるのはダメだと思う。だって理人くん、掻き出したあとはどんなに大きくなっててももう絶対挿れないし。
俺なりの気遣いだったのに、それまで意図なく動いていた理人くんの指がいきなり前立腺を押してきた。
「ひぅ…っ」
「深月の可愛い声、もっと聞きたいんだけどな」
「やぁ…っ、ダメ、そこしないで…っ」
「気持ち良い?」
「ぁ、あ…んっ…気持ちい、から…やだぁ…っ」
「可愛い」
それから結局指でイかされた俺はさっきよりも疲れてしばらく動けなくて、理人くんが頼んでくれたお弁当も当分食べられなかった。
二日後。
高校卒業後に親戚がやっている飲食店に勤め始めていた理人くんは、引っ越しの間だけ休みを貰って今日からまた出勤する事になっていた。
俺は明日から駅前のファーストフード店でのバイトが始まるんだけど、初めてだからすごくドキドキしてる。
「深月、行ってくるね」
「行ってらっしゃい、理人くん」
一緒に玄関まで行き、ハグとチューをしてから見送るのももうすっかり慣れた。
ちなみに料理の腕は、理人くんのお母さんから習ってそれなりに上がった…とは思う。理人くんの方が圧倒的に上手ではあるけど。
でもお弁当を作れるまでには至ってないから、今の目標は理人くんに俺が作ったお昼を持たせてあげる事だったりする。
ハードルは高そうだけど、理人くんのためなら頑張れる気がするんだ。
「あ、洗濯終わった」
一人気合いを入れていると、ぴーぴーって音がして洗面所に向かう。寮に住んでた時も洗濯はしてたからこれに関しては完璧だ。
シワを伸ばして、ハンガーにかけて物干し竿に吊るす。ベランダに干された二人分の洗濯物が何か照れ臭い。
「今日もいい天気だー」
朝から眩しいくらいに照り付ける太陽が部屋を明るくし、心地良い風がカーテンを揺らす。ベランダから見る室内はまだ見慣れないけど、その内この風景が当たり前になるんだよな。
だってこの先にはきっと幸せしか待ってない。
「よし、散歩がてら買い物に行こう」
まだ越してきたばかりだから、何があるか覚えないといけないしな。
俺は理人くんが書いてくれた買い物メモを忘れないようポケットに入れ、財布が入った鞄を下げて玄関へと向かう。
シューズボックスの上に紙と鍵があって、何かと思えば理人くんの字で『鍵を忘れないように』って書いてあった。
そうだ。ここは二人の家だから、俺も鍵を持って出なきゃ行けないんだ。危うく忘れるところだった。
「…へへ」
こんなところにも理人くんの優しさを感じて嬉しくなった俺は、ちゃんと鍵を掴んで玄関を出ると、しっかり施錠したのを確認してからエレベーターに向かった。
これから先、もしかしたら喧嘩する事もあるかもしれない。優しい理人くんだって腹を立てる事くらいあるだろうし、嫌な事があって不機嫌になる事もあると思う。
それでも俺たちはずっと一緒にいるって信じてるから。
だから俺は、理人くんを世界で一番の幸せ者にしてやるんだ。
俺に出来る事なんてたかが知れてるけど、理人くんを想う気持ちは誰にも負けないし、負けるつもりもない。
「あ、パン屋さん発見!」
その先駆けとして、とりあえずは美味しい物を見付けて理人くんにも教えてあげる事にした俺は、焼きたてパンの良い匂いがするパン屋さんへと飛び込むのだった。
FIN.
⟡.· ⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯ ⟡.·
『怖がりな少年は時計塔の怪物に溺愛される』、これにて完結となります!
途中で迷走してしまいましたが、どうにかハッピーエンドを迎える事が出来て良かったです♪
吸血鬼ってもっとこう…ムーディーなイメージがあったのですが、ずいぶんとかけ離れてしまいました。理人は割と色気があるタイプかなと思いつつ執筆しておりましたが…うーん、どうでしょう。
深月は素直な元気っ子なので楽しく動かせました。もっとはっちゃけても良かったかなと感じる部分はありつつも、皆様におバカな子だなと思って頂けていれば満足です(笑)
こういうファンタジー要素のあるお話は好きなので、また作ってみたいなと思っております。現代なのに魔法が使えたり、狼男みたいな動物に変身したり。オリジナル設定バンザイですね。
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わわ、こちらにまでコメントを!
ありがとうございます😭
私もあの二匹は大好きです😆
溺愛話いいですよね!受けの事が好きで堪らない攻めに萌えます✨
高校生カプは最高です☺️🌼