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召喚編
16話 蠢動する者
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「ほらほらもっと早く動かさないとまた痛い思いすることになっちゃうよー」
「くっ」
今日森野が持っているのは俺と同じ木剣だ。しかしその技術には大きな差があった。当然上に位置するのは森野のほう。俺だって上達している。昨日は教師役の兵士ネルさんから初めて一本とれた。剣だって最初の頃に比べたらずっと長く振ってられる。しかしそれでも森野の実力は俺以上だった。
「右! 左! 右とみせかけての手!」
「っつ!!」
左右の足を攻撃して注意を下に集めてからの手への攻撃。非常に単純なその手にまんまとはまった俺は痛みで剣を落としてしまう。
「頭ががら空きだぞ!!」
俺がつい剣を拾おうと屈んだ瞬間森野が上段から頭めがけて振り下ろしてくる。思わす目をつぶり両腕で防ごうとするがいつまでたっても痛みは襲ってこない。恐る恐る目を開けるとそこには武器を下してニヤニヤ笑う森野の姿が。
「マジで打つはずないじゃんビビり過ぎだよ氷室くーん。こんなの遊びだろ遊び。おっと氷室君からしたら違ったか。次からは気を付けるよぉー」
くそっと思わず悪態をつきたくなるがそれでは森野の思うツボだ。こいつは俺に自覚させたいのだ。地球にいた時とは違い俺はもうクラスのトップにはいないのだと。そして悔しがる姿を見て嗤いたいのだ。俺にはその心情が手にとるようにわかった。
「ああ。やっぱり森野は強いな。一回組み手しただけでヘロヘロだ。悪いが少し休ませてもらう」
「チッ」
俺が望んだ姿を見せなかったせいかつまらなそうに森野は舌打ちするとどこかに消えた。恐らく適当な兵士を捕まえてまた組み手をするのだろう。最近わかったのだがあいつは決して怠惰な人間ではない。俺を馬鹿にするためという理由ながら訓練はサボらない。そもそも進学校に入れる人間が怠惰な筈がない。少なくとも努力の仕方はしっているのだ。その方向性においては間違っていると思うが俺も人のことを言えた義理ではない。
「扇動家発動」
……またしてもなにも起きない。今のように休憩している時など暇を見つけては扇動家を発動させようとしているのだが少なくとも今まで目に見えた変化はなかった。いい加減このギフトを使えるようにと努力するのは無駄かもしれない。そう思い始めていた。
「ん?」
ふと視線を感じそちらを見ると2人俺を見ていた。1人は森野で俺が立ち上がって稽古に参加するのを待っているのか嗜虐的な感情を含んだ目つきで俺を笑っていた。もう1人は何故か佐藤だった。彼女たち治癒術組は実地訓練をすると聞いていたのだが。
「あ、あの大丈夫ですか氷室君」
「あ、ああ大丈夫だよ。少し疲れて休憩してるだけさ」
俺と目があったからか近づいてきて話しかけてくる佐藤。俺もまさか彼女から喋りかけてくるなんて予想外だったのでどもってしまう。佐藤加奈子。思えばまともに話すのは初めてかもしれなかった。
「くっ」
今日森野が持っているのは俺と同じ木剣だ。しかしその技術には大きな差があった。当然上に位置するのは森野のほう。俺だって上達している。昨日は教師役の兵士ネルさんから初めて一本とれた。剣だって最初の頃に比べたらずっと長く振ってられる。しかしそれでも森野の実力は俺以上だった。
「右! 左! 右とみせかけての手!」
「っつ!!」
左右の足を攻撃して注意を下に集めてからの手への攻撃。非常に単純なその手にまんまとはまった俺は痛みで剣を落としてしまう。
「頭ががら空きだぞ!!」
俺がつい剣を拾おうと屈んだ瞬間森野が上段から頭めがけて振り下ろしてくる。思わす目をつぶり両腕で防ごうとするがいつまでたっても痛みは襲ってこない。恐る恐る目を開けるとそこには武器を下してニヤニヤ笑う森野の姿が。
「マジで打つはずないじゃんビビり過ぎだよ氷室くーん。こんなの遊びだろ遊び。おっと氷室君からしたら違ったか。次からは気を付けるよぉー」
くそっと思わず悪態をつきたくなるがそれでは森野の思うツボだ。こいつは俺に自覚させたいのだ。地球にいた時とは違い俺はもうクラスのトップにはいないのだと。そして悔しがる姿を見て嗤いたいのだ。俺にはその心情が手にとるようにわかった。
「ああ。やっぱり森野は強いな。一回組み手しただけでヘロヘロだ。悪いが少し休ませてもらう」
「チッ」
俺が望んだ姿を見せなかったせいかつまらなそうに森野は舌打ちするとどこかに消えた。恐らく適当な兵士を捕まえてまた組み手をするのだろう。最近わかったのだがあいつは決して怠惰な人間ではない。俺を馬鹿にするためという理由ながら訓練はサボらない。そもそも進学校に入れる人間が怠惰な筈がない。少なくとも努力の仕方はしっているのだ。その方向性においては間違っていると思うが俺も人のことを言えた義理ではない。
「扇動家発動」
……またしてもなにも起きない。今のように休憩している時など暇を見つけては扇動家を発動させようとしているのだが少なくとも今まで目に見えた変化はなかった。いい加減このギフトを使えるようにと努力するのは無駄かもしれない。そう思い始めていた。
「ん?」
ふと視線を感じそちらを見ると2人俺を見ていた。1人は森野で俺が立ち上がって稽古に参加するのを待っているのか嗜虐的な感情を含んだ目つきで俺を笑っていた。もう1人は何故か佐藤だった。彼女たち治癒術組は実地訓練をすると聞いていたのだが。
「あ、あの大丈夫ですか氷室君」
「あ、ああ大丈夫だよ。少し疲れて休憩してるだけさ」
俺と目があったからか近づいてきて話しかけてくる佐藤。俺もまさか彼女から喋りかけてくるなんて予想外だったのでどもってしまう。佐藤加奈子。思えばまともに話すのは初めてかもしれなかった。
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