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アレンを私の伴侶として紹介すると、エルマン元子爵はさらに激昂する。
「何が婿入りだ! 私たちをこんなところに閉じ込めてどうしようというのだ!!」
「もちろん、一応は元お貴族様ですから手荒なことは致しません。食事もお持ち致しますし、それぞれ各人個室ですわ。それに何日かに一度は商会の訪問もありますし……」
「な、なにを、それに私たちはただの使用人で……」
「ただの使用人? 執事は財政ごまかしにメイド長は新人いびりの常習犯で、街でも横柄な態度で暴れていたそうじゃない? 噂を聞き付けて意見したメイドを処分して首にしたわよね? 他のメイドたちにも圧力をかけていたみたいだけど」
「な、んで……」
「あんたたち侯爵家を舐めてない? 数か月前だろうと、数年前だろうと調べようと思ったら、そんなこと簡単に調べられるのよ? アレンにも協力してもらったしね」
私はアレンの腕に回していた手を下ろすと、アレンの手をつかんで協力してもらったことをアピールする。
「財政ごまかしだと! ゴードバン、貴様は執事として今まで目をかけてやっていたのに……」
「こ、これは、間違いです。計算はただの間違いか別の事業への出資金でしょう」
「へぇ~、毎年二か月ぐらい休んでるけど、王都に近いでっかい邸でやる事業って何かしらね」
「そっ、それは!」
「あんたたちさえもう少しまともなら、この土地もアレンもケイトも、もっと真っ直ぐに、幸せになれたのよ。自分の罪をこれから償うことね。連れて行きなさい!」
「はっ!」
「やめろ、放せ~!」
「あっ、そうそう。あんまりうるさいと地下室行きよ。そういう趣味がないなら静かにしておくことをお勧めするわ」
「ヒッ」
夫人の方はこれからのことを想像して恐ろしくなったみたいで、いきなり気絶してしまった。他にも喚く者がいたものの、全員を無事個室に連れて行った。
「あんな調子じゃ、先が思いやられるわね」
「……そうだね」
「やっぱり親だもの。淋しい? 悲しい?」
「ちょっとだけね。でも、今はイリスがこうして手を自然につないでくれることが嬉しいかな?」
「へっ!? あ、いやこれは」
「さっきまであれだけかっこよく決めておりましたのにお嬢様は……」
「えっと……さあ! それじゃあ私たちは領都へ帰りましょう。すぐに領都じゃなくなるけど、まだあそこが領都だし」
「ええっ!? イリスはレイバン侯爵家に帰らなくていいの?」
「当たり前でしょ! 私はもうカーナヴォン子爵よ! 子爵様の帰るところは領地だけよ」
「そっか、よかった」
「何が?」
「せっかく二週間ぶりに会えたのに、また離れちゃうのかと思ってたから」
「アレン……」
見つめ合った私たちのどちらからともなく、自然とアレンと私の唇が触れる。私たちは二人ともそのまま離れたくなくて、しばらくキスし続けていた。
「んあっ」
息が少しつらくなったので名残惜しいけど、私の方から唇を放す。
「今回は両方からだったわね」
「うん。でもちょっと恥ずかしいね」
「ん?」
きょろきょろと周りを見渡す。そこにはテレサはおろか、護衛のみんなまでいて、じっと見ているではないか。しかも、ご丁寧に私と目を合わせまいと顔を見た時だけ、全員ぐるっと首が回るし。
「な―――っ! なんで言ってくれなかったの、テレサ!」
「お嬢様からは口を挟むなと言われておりましたので……」
くそっ、あの時の言葉はこういう時のためだったのね。もう、この恥ずかしさは抑えられないわ。
「さ、さあ、もう帰るわよ」
「はっ!」
この邸には今後の対応を任せるデュランと数名の護衛が残り、私たちは領都へ帰っていった。
残されたデュランとしては気の重い話が残っていた。こっちはこっちで一応説明はしないとな。まずは子爵の部屋のドアを開ける。
「お加減はいかがですか?」
「いかがだと早く出せ!」
「それは叶いませんな。主より出すなという命が出ておりますので」
「うるさい! なんだこの部屋は! 室内にトイレも一緒にあるし、ベッドは粗末、窓はガラスもない状態ではないか!」
「今後生きられるだけでも感謝してもらいたいですね。あの時、子供たちがどれだけ死んだかを考えればね」
あの時、孤児院にいた俺はマシだった。一番最初に影響を受けたのはスラムの奴らだ。彼らの憤怒の一欠でもこいつに届けばよいのだが。
「ぐっ、調子に乗りおって、今に見ておれよ!」
「そうだ、重要なことを言い忘れていた。お嬢様からはあんたたちにきちんと食事を与えて生かすように言われているが、俺たちはお前らにそんな義理はないし、お嬢様のような優しさもない。あまり騒ぐようなら腕だろうが足だろうが、容赦なく切り落とすぞ!」
「あ、主の命は絶対だ……」
「我らの命はお嬢様のお陰でつながっている。たとえ、恨まれようとも害をなすなら遠慮はせん。事故処理されたくなかったら精々、静かにすることだな」
同じ説明を他の三人にもしていく。外出など二度とできるわけないだろう。これまで好き勝手に出ていけたのだから。奴らの食事は朝夕にパンとスープだ。ただし、味も量も毎回同じで質素だ。窓は採光窓が一つでベッドも簡素。トイレとシーツの交換は週二回。それと、変なことをしないように護衛が二人つく。
メイド長は一度暴れたから地下に連れて行ったら大人しくなった。最初は怪我をした指のことを気にしていたが、外に出られないと最近は諦めた様だ。
「あんな奴らを生かしておくのも面倒なんだがな」
「仕方ないわ。お嬢様の心は人の死に耐えられないから」
「ああ、商会の破産の件についてもうるさいぐらい報告を見られているし、聞かれているからな。明日にでも王都の商人へ会いに行って、現状を説明するつもりだろう」
「私たちは精一杯フォローするだけね」
「ああ、レイバン学校卒の領地組も孤児院組も一緒に力を合わせていかないとな」
俺たちは決意も新たに邸の管理について改めて詰めていくのだった。
こうして、子爵は十五年、子爵夫人は十七年、執事は八年、メイド長は十三年の月日をそれぞれこの邸で過ごした。無論お互いに会う事もなく、部屋から出ることも叶わぬ一生だった。四人が死んだ時には一点だけ副葬品が入れられた。それこそ、邸を出る時に各々が選んだ品だった。あるものは色あせ、あるものは汚れ切っていた。そうして、多くの民を苦しませた者たちは誰にも認知されずに、最期の時を迎えたのだった。
「それにしても、あの子たちにはあの邸の件で迷惑をかけるわね。これから先、あんな邸で暮らすなんて」
今回子爵たちの見張りや護衛やメイドとして雇ったのは領地の学校を卒業した者や、孤児院の卒業生たちだ。重大なお役目だし、領地を離れるということもあって、みんな無理をしたと思う。その代わり、二年交代で貴族の邸に仕えた実績をもって、他の領主の邸に送り出している。中々働きもよく、信頼も勝ち取っていて評判もいいらしい。
「まあ、彼女たちからすればお嬢様のお役に立てるわけですし、大丈夫ですよ」
「そうだといいんだけど……。デュランにも悪いことしちゃったし」
「何をおっしゃられるのです。彼が妻と会えたのもお嬢様の頑張りからですよ」
「それでも王都の役職を考えれば閑職よ」
「なら、それが閑職にならないくらい盛り立てましょう」
「……そうね。そうすればいいんだわ。じゃあ、早速アレンと話しをしないとね!」
やる気を出した私はアレンを呼んできて一緒に話しをする。まずはこのところ状態が悪くなっている領地の商会についてだ。後、一か月ほどつぶれるのを待つのだけど、優秀な王都の商会のお陰である程度悪い商会が絞れてきたので、先にぐるっと領地を一周してしまおうと思うのだ。
「それで僕に案内役としてついてきて欲しいって?」
「そうなの。私じゃ書類でしか知らないことも多いから、私が新しく領主に就任したという立札を建てながらね」
「自分が就任したって情報の看板を自分で建てていくなんてイリスらしいね。だけど、何だか新婚旅行みたいだね!」
思いがけないアレンの言葉を受け、瞬く間に私の顔が真っ赤に染まる。
「何言ってんの! これはあくまで視察よ。視察ったら視察なんだから!!」
「はいはい。それじゃあ、すぐに用意をするよ」
「……視察だけど適当な格好は無しよ?」
「分かったよ。あ~も~」
それだけ言ったアレンにいきなり髪をクシャッとされる。今日は出かけないからいいけど何すんだ。
「イリスはこれまで、気の強いお姫様タイプだと思ってたけど、ちょっとお転婆なだけの深窓の令嬢タイプだったんだね」
「はあ!? 私がそんなはずないでしょう!」
「じゃあ、そう言うことにしておくよ」
それからアレンを伴って領中を見て回った。中には報告書以上にひどいところもあって即座に支援もした。ただ……。
「ここはやり方そのものが問題ね。このままじゃ支援はできないわ!」
「ですが、もう食べ物も!」
「その上でまた足りなくなったらどうするの? 倉庫を作れと言っているだけよ」
「そ、そんなことを言ってまた買い占めする気だろう!」
「なんですって! いいわ、もう先に行きましょうアレン。この村に用はないわ」
「待って、イリス。この人たちはどうでもよくても、子供たちが心配だよ」
「そうね。なら、子供だけでも隣の町に移住させましょう。幸いあそこの学校には空きもあるし、まともな人間になるでしょう」
「お、お待ちください。受け入れますから……」
「嫌よ! 子供たちは一旦預かるわ。あんたたちが言葉だけじゃないってところを見せてみなさい!」
「ママ……」
「パパ……」
「あんたたちもしゃんとしなさい。頑張ったら、もっと美味しいものも食べられるし、田んぼだってもっといっぱい作物が作れるようになるわよ!」
「ほ、本当?」
「当たり前よ! ついてきなさい!」
嫌がっていた子供たちもちらほらついてくる。ここで立ち止まる子は別に来なくてもいい。チャンスをつかむのは今でなくとも、今後はいつでもできるのだから。
「さあ、ここで明日から学ぶのよ。だけど、暴れないようにきちんと上の子のことや、先生の言うことを聞きなさい」
「「はい!」」
こんな感じで今日も私たちは二人で領地を回るのだった。
「私も同行しておりますが?」
「テレサ、なんでそこで気を利かせないの」
「何が婿入りだ! 私たちをこんなところに閉じ込めてどうしようというのだ!!」
「もちろん、一応は元お貴族様ですから手荒なことは致しません。食事もお持ち致しますし、それぞれ各人個室ですわ。それに何日かに一度は商会の訪問もありますし……」
「な、なにを、それに私たちはただの使用人で……」
「ただの使用人? 執事は財政ごまかしにメイド長は新人いびりの常習犯で、街でも横柄な態度で暴れていたそうじゃない? 噂を聞き付けて意見したメイドを処分して首にしたわよね? 他のメイドたちにも圧力をかけていたみたいだけど」
「な、んで……」
「あんたたち侯爵家を舐めてない? 数か月前だろうと、数年前だろうと調べようと思ったら、そんなこと簡単に調べられるのよ? アレンにも協力してもらったしね」
私はアレンの腕に回していた手を下ろすと、アレンの手をつかんで協力してもらったことをアピールする。
「財政ごまかしだと! ゴードバン、貴様は執事として今まで目をかけてやっていたのに……」
「こ、これは、間違いです。計算はただの間違いか別の事業への出資金でしょう」
「へぇ~、毎年二か月ぐらい休んでるけど、王都に近いでっかい邸でやる事業って何かしらね」
「そっ、それは!」
「あんたたちさえもう少しまともなら、この土地もアレンもケイトも、もっと真っ直ぐに、幸せになれたのよ。自分の罪をこれから償うことね。連れて行きなさい!」
「はっ!」
「やめろ、放せ~!」
「あっ、そうそう。あんまりうるさいと地下室行きよ。そういう趣味がないなら静かにしておくことをお勧めするわ」
「ヒッ」
夫人の方はこれからのことを想像して恐ろしくなったみたいで、いきなり気絶してしまった。他にも喚く者がいたものの、全員を無事個室に連れて行った。
「あんな調子じゃ、先が思いやられるわね」
「……そうだね」
「やっぱり親だもの。淋しい? 悲しい?」
「ちょっとだけね。でも、今はイリスがこうして手を自然につないでくれることが嬉しいかな?」
「へっ!? あ、いやこれは」
「さっきまであれだけかっこよく決めておりましたのにお嬢様は……」
「えっと……さあ! それじゃあ私たちは領都へ帰りましょう。すぐに領都じゃなくなるけど、まだあそこが領都だし」
「ええっ!? イリスはレイバン侯爵家に帰らなくていいの?」
「当たり前でしょ! 私はもうカーナヴォン子爵よ! 子爵様の帰るところは領地だけよ」
「そっか、よかった」
「何が?」
「せっかく二週間ぶりに会えたのに、また離れちゃうのかと思ってたから」
「アレン……」
見つめ合った私たちのどちらからともなく、自然とアレンと私の唇が触れる。私たちは二人ともそのまま離れたくなくて、しばらくキスし続けていた。
「んあっ」
息が少しつらくなったので名残惜しいけど、私の方から唇を放す。
「今回は両方からだったわね」
「うん。でもちょっと恥ずかしいね」
「ん?」
きょろきょろと周りを見渡す。そこにはテレサはおろか、護衛のみんなまでいて、じっと見ているではないか。しかも、ご丁寧に私と目を合わせまいと顔を見た時だけ、全員ぐるっと首が回るし。
「な―――っ! なんで言ってくれなかったの、テレサ!」
「お嬢様からは口を挟むなと言われておりましたので……」
くそっ、あの時の言葉はこういう時のためだったのね。もう、この恥ずかしさは抑えられないわ。
「さ、さあ、もう帰るわよ」
「はっ!」
この邸には今後の対応を任せるデュランと数名の護衛が残り、私たちは領都へ帰っていった。
残されたデュランとしては気の重い話が残っていた。こっちはこっちで一応説明はしないとな。まずは子爵の部屋のドアを開ける。
「お加減はいかがですか?」
「いかがだと早く出せ!」
「それは叶いませんな。主より出すなという命が出ておりますので」
「うるさい! なんだこの部屋は! 室内にトイレも一緒にあるし、ベッドは粗末、窓はガラスもない状態ではないか!」
「今後生きられるだけでも感謝してもらいたいですね。あの時、子供たちがどれだけ死んだかを考えればね」
あの時、孤児院にいた俺はマシだった。一番最初に影響を受けたのはスラムの奴らだ。彼らの憤怒の一欠でもこいつに届けばよいのだが。
「ぐっ、調子に乗りおって、今に見ておれよ!」
「そうだ、重要なことを言い忘れていた。お嬢様からはあんたたちにきちんと食事を与えて生かすように言われているが、俺たちはお前らにそんな義理はないし、お嬢様のような優しさもない。あまり騒ぐようなら腕だろうが足だろうが、容赦なく切り落とすぞ!」
「あ、主の命は絶対だ……」
「我らの命はお嬢様のお陰でつながっている。たとえ、恨まれようとも害をなすなら遠慮はせん。事故処理されたくなかったら精々、静かにすることだな」
同じ説明を他の三人にもしていく。外出など二度とできるわけないだろう。これまで好き勝手に出ていけたのだから。奴らの食事は朝夕にパンとスープだ。ただし、味も量も毎回同じで質素だ。窓は採光窓が一つでベッドも簡素。トイレとシーツの交換は週二回。それと、変なことをしないように護衛が二人つく。
メイド長は一度暴れたから地下に連れて行ったら大人しくなった。最初は怪我をした指のことを気にしていたが、外に出られないと最近は諦めた様だ。
「あんな奴らを生かしておくのも面倒なんだがな」
「仕方ないわ。お嬢様の心は人の死に耐えられないから」
「ああ、商会の破産の件についてもうるさいぐらい報告を見られているし、聞かれているからな。明日にでも王都の商人へ会いに行って、現状を説明するつもりだろう」
「私たちは精一杯フォローするだけね」
「ああ、レイバン学校卒の領地組も孤児院組も一緒に力を合わせていかないとな」
俺たちは決意も新たに邸の管理について改めて詰めていくのだった。
こうして、子爵は十五年、子爵夫人は十七年、執事は八年、メイド長は十三年の月日をそれぞれこの邸で過ごした。無論お互いに会う事もなく、部屋から出ることも叶わぬ一生だった。四人が死んだ時には一点だけ副葬品が入れられた。それこそ、邸を出る時に各々が選んだ品だった。あるものは色あせ、あるものは汚れ切っていた。そうして、多くの民を苦しませた者たちは誰にも認知されずに、最期の時を迎えたのだった。
「それにしても、あの子たちにはあの邸の件で迷惑をかけるわね。これから先、あんな邸で暮らすなんて」
今回子爵たちの見張りや護衛やメイドとして雇ったのは領地の学校を卒業した者や、孤児院の卒業生たちだ。重大なお役目だし、領地を離れるということもあって、みんな無理をしたと思う。その代わり、二年交代で貴族の邸に仕えた実績をもって、他の領主の邸に送り出している。中々働きもよく、信頼も勝ち取っていて評判もいいらしい。
「まあ、彼女たちからすればお嬢様のお役に立てるわけですし、大丈夫ですよ」
「そうだといいんだけど……。デュランにも悪いことしちゃったし」
「何をおっしゃられるのです。彼が妻と会えたのもお嬢様の頑張りからですよ」
「それでも王都の役職を考えれば閑職よ」
「なら、それが閑職にならないくらい盛り立てましょう」
「……そうね。そうすればいいんだわ。じゃあ、早速アレンと話しをしないとね!」
やる気を出した私はアレンを呼んできて一緒に話しをする。まずはこのところ状態が悪くなっている領地の商会についてだ。後、一か月ほどつぶれるのを待つのだけど、優秀な王都の商会のお陰である程度悪い商会が絞れてきたので、先にぐるっと領地を一周してしまおうと思うのだ。
「それで僕に案内役としてついてきて欲しいって?」
「そうなの。私じゃ書類でしか知らないことも多いから、私が新しく領主に就任したという立札を建てながらね」
「自分が就任したって情報の看板を自分で建てていくなんてイリスらしいね。だけど、何だか新婚旅行みたいだね!」
思いがけないアレンの言葉を受け、瞬く間に私の顔が真っ赤に染まる。
「何言ってんの! これはあくまで視察よ。視察ったら視察なんだから!!」
「はいはい。それじゃあ、すぐに用意をするよ」
「……視察だけど適当な格好は無しよ?」
「分かったよ。あ~も~」
それだけ言ったアレンにいきなり髪をクシャッとされる。今日は出かけないからいいけど何すんだ。
「イリスはこれまで、気の強いお姫様タイプだと思ってたけど、ちょっとお転婆なだけの深窓の令嬢タイプだったんだね」
「はあ!? 私がそんなはずないでしょう!」
「じゃあ、そう言うことにしておくよ」
それからアレンを伴って領中を見て回った。中には報告書以上にひどいところもあって即座に支援もした。ただ……。
「ここはやり方そのものが問題ね。このままじゃ支援はできないわ!」
「ですが、もう食べ物も!」
「その上でまた足りなくなったらどうするの? 倉庫を作れと言っているだけよ」
「そ、そんなことを言ってまた買い占めする気だろう!」
「なんですって! いいわ、もう先に行きましょうアレン。この村に用はないわ」
「待って、イリス。この人たちはどうでもよくても、子供たちが心配だよ」
「そうね。なら、子供だけでも隣の町に移住させましょう。幸いあそこの学校には空きもあるし、まともな人間になるでしょう」
「お、お待ちください。受け入れますから……」
「嫌よ! 子供たちは一旦預かるわ。あんたたちが言葉だけじゃないってところを見せてみなさい!」
「ママ……」
「パパ……」
「あんたたちもしゃんとしなさい。頑張ったら、もっと美味しいものも食べられるし、田んぼだってもっといっぱい作物が作れるようになるわよ!」
「ほ、本当?」
「当たり前よ! ついてきなさい!」
嫌がっていた子供たちもちらほらついてくる。ここで立ち止まる子は別に来なくてもいい。チャンスをつかむのは今でなくとも、今後はいつでもできるのだから。
「さあ、ここで明日から学ぶのよ。だけど、暴れないようにきちんと上の子のことや、先生の言うことを聞きなさい」
「「はい!」」
こんな感じで今日も私たちは二人で領地を回るのだった。
「私も同行しておりますが?」
「テレサ、なんでそこで気を利かせないの」
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