妹を想いながら転生したら

弓立歩

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本編

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宿に戻ると早速私はカークスたちの部屋に向かう。

「帰ったわよ」

「お帰りティア。どうだった?」

「一応話してみたけど、今のところは銅貨3枚ですって。一旦渡してきたけどそれでよかったわよね」

「その金額なら相場でも高い方だし、数を考えれば問題ないだろう」

「よかった」

「にしても、使いきれるのか?かなり渡したはずだろう」

「なんでも、魔法を込めて簡易の魔道具にするみたいね。火を起こしたり、水を出したりできるって言ってたわ」

「ちょっと値は張るが、魔法使いのいないパーティー向けってことか。なかなかよさそうな商売だな」

「私も教えてもらったけど、商売の許可はもらえなかったわ」

「まあ、自分たちの分が作れるだけでもいいさ。少しの魔力も勿体なかったり、別行動を取ることも出てくるかもしれんしな」

「そう考えると、結構ありね。それじゃあお店見に行ってくるわ」

「ああ、頼んだ」

カークスたちにうろこの件を伝えると私は自分の部屋に戻る。部屋ではエミリーがだらけていた。

「こら、エミリーだらけすぎよ。しゃんとしなさい」

「え~、いいじゃん。たまのおやすみだよ~」

「その顔で外出れるわけないでしょ。ほら」

私は持っていたハンカチで顔を拭いて髪を整える。その後、服を着替えたエミリーと私たちは一路ギルドへと向かう。

「それにしてもお店ってどんなだろうね?」

「つぶれたといっていたのが気になるわね。変な立地とかじゃなきゃいいんだけど」

「でも、大通りなんかに構えられても困りますよ。月のお家賃も払えなくなります」

「確かにね。いきなり店が入ってもそんなに人は来ないものね」

なんにせよ行ってみないことには分からないし、考えてもしょうがないか。ギルドに着いた私たちは受付の人に用件を伝える。今日はハンナさんはいないようだ。

「ああ、ティアさんですね。お待ちしてました。どうぞ2階へ」

「ええ、ありがとう」

2階に通されたが、所有者でも待たせているのだろうか?いぶかしげにドアを開けるとそこにはギルドマスターとハンナさんがいた。

「やあ、おつかれさま。それじゃあ行こうか」

「あの、ギルドマスターもいらっしゃるんですか?」

「もちろんだよ。紹介だけしておいてサヨナラってわけにもいかないしね」

「私は非番なのに…」

どうやら、ハンナさんは無理やり付き合わされている様だ。通りでギルドの制服ではなく普段着だと思った。

「無理していただかなくても」

「いえ、この期に及んでギルドマスターが直接紹介して契約書にサインしたなんてうわさが広まったら困りますから。これもギルドのためです」

そういう裏事情だったのか。お疲れ様です、とハンナさんを慰め私たちは店に向かう。

「ところでお店はどのあたりになるのでしょうか?家賃とか結構気になるのですが…」

「ああ、それなら大丈夫ですよ。王都では結構お店の出店に気を使ってますから、新規の方には1年間助成金が出るんです」

「そうなんですか?」

「なかなか、家賃とかで新規の店ができなかったんですよ。かといって既存店ばかりじゃ値段とか上がっちゃいますしね」

競争原理をある程度コントロールして常に、一定の新規出店ができるように考えられている様だ。

「ここですね。つきましたよ皆さん」

ギルドマスターに案内されたそこは王都の中央通りから1つ外れた通りの角にあった。次の通りとの境になっているところで、割と通行人自体は多い。
しかも、近くには何件か冒険者も良く泊まる宿もあり、かなりの良物件じゃないだろうか。

「ほんとにこんなところが空いてたんですか?」

「残念ながらね。この立地ならつぶれないと思ったんだけどなあ」

ギルドマスターも残念そうにつぶやく。冒険者相手の商売ならば、この立地なら消耗品とかだけでもかなり売れそうだが。

「本当ですよね~。正直、もっと儲かってギルドにも感謝の品が届く予定だったんですけどね」

聞けば最初は冒険者用の装備を並べて、来た人に次回の来店で素材を売ってもらう私たちと同じような考えをしていたらしい。しかし、買い取った素材の加工品を売る相手が付かず、売れ残ったという。その内に処分価格で売り出すと、客はその価格まで待つようになってしまったらしい。

「まあ、何本槍を作っても、槍使いが来てくれないと売れないわよね」

「そうなんです。それに、品質もばらばらで並びとかも気にされない方でしたから、初心者の冒険者にも敷居が高くなってしまって…」

ある程度の冒険者ともなれば、どんな並びだろうとその武器の品質は持てばすぐにわかる。しかし、初心者は並びや金額でしか判断できないものが多い。そういうことに気を付けず、次第に人が遠ざかっていったという事か。

「確かに私たちの宿からも遠くないのに、話題に上がったこともなかったわね」

「宣伝できるパーティーもいませんでしたからね。店主の所属パーティーは円満な解散でしたけど、皆さん結構お年でしたし」

「私も気を付けないといけませんね。今はティアさんたちのパーティーにお世話になってますけど、自分でも開拓しないと」

「そっちに夢中にならないでね」

「気を付けます」

「じゃあ、実際に中に入ってみようか」

中に入ると、棚などはそのままで色々武器などが掛けられる壁に、カウンターや簡単な話ができるテーブルとイス。カウンターの奥には小物を飾れる棚もある。

「すてきな店だね。よかったねリライアさん!」

「ええ!初めてでこんなにいい店を持てるなんて夢のようです!!」

「ちなみに本来の家賃は月々小金貨6枚ですが、今から1年間は補助期間で小金貨4枚ですよ。」

「あら、立地的に結構安くないかしら?」

「敷地的にちょっとだけ狭くて、2階も屋根低めなんですよ。あとは結構すぐ潰れましたからね。持ち主の方もすぐに店が入るならと」

「そういうことだったら、全く問題ないです。私背も低い方ですし、ちょっとした倉庫もありますから頑張ります」

「じゃあ次は2階へ案内しますね」

2階はハンナさんの言う通り、少し天井が低いようだ。ただし、立てないというものではなく、単純に身長の高い人からすれば圧迫感を覚える程度だ。

「ここがお部屋か~。通り沿いに窓もあるし、光も入ってきて気持ちよさそうだね」

「そうなんですよ。ちょっと建物に邪魔されますけど、中央通りも見えてさらには王城も見られるいい場所ですよ」

「確かに、この景色は素晴らしいですね。田舎から出てきた私なんかは起きるたびに感動しそうです」

「じゃあ、すぐに契約しちゃいます?」

「それがいいわね。他の物件と比べてもおそらく格安だわ」

「でも、初期費用はどのくらいいるんでしょうか?」

「一応こっちも所有者の方との信頼がありますから、とりあえずは2か月分の家賃前払いですね。それと、商品が決まったら一度、見せて欲しいとのことです」

「またつぶれないように、最初に確認しておきたいのね。気持ちは分かるしそこは仕方ないわね」

「ええっ、2か月分と言ったら小金貨8枚ですか、そんな大金…」

「心配しないで、この分はこっちで建て替えるから。その代わりしっかり売って返してよね」

今回の依頼報酬がかなり減ってしまうが、こればっかりは仕方ない。価格の相談もでき、不正なく取引できる商人がいるのはそれだけでありがたいことなのだ。不正というか、いちいち毎回相場を調べ、店を比べて売ったりする手間を省きたいのが一番だけど。

冒険者といっても冒険が終われば長く休めるわけではない。特に低ランク時代は毎日のように受けなければ、資金繰りに行き詰ってしまう。そこに来て交渉まで行っていては、どんどん稼げる時間が減ってしまうのだ。かといって安値で売ってしまえば本末転倒だし、難しい問題だ。

「ありがとうございます。皆さんの御恩は一生忘れません」

「今後も会うのにお別れみたいないい方しなくていいから」

「じゃあ決まりという事で、リライアさんこちらの契約書にサインをお願いします。あと、2か月後には売れ行きを調査しますので、必ず損益計算書を見せてくださいね」

「分かりました。いいものが見せられるようにします」

リライアはさらさらと契約書に目を通して、サインをしていく。その後、私が2か月分の家賃を先払いする。

「これで、契約完了だね。私も肩の荷が下りたよ」

「マスターは連れてきただけじゃないですか。私は昨日からここの事調べて疲れてるんですが」

「いやあ済まないね。戻ってきてあまり間がなくて、他の書類がいっぱい積まれててね」

「じゃあ、すぐ戻って終わらせてください。終わってないでしょう?」

「ご明察。ちゃんとやってくるよ。じゃあ皆、私はここで。何かあれば言ってくれれば力になれることだったら対応するよ」

ギルドマスターは明るく、残務処理へと戻ってしまった。

「これから皆さんはどうされますか?」

「とりあえず、間取りが確認できたことだし、生活に必要な最低限の家具と服ね」

「何から何まですみません」

「わたしたちも使う店なんだしいいよ~」

「そうね。リライアの店だけど、ちょっと私たちも作った感じになれて楽しいかもね」

「ありがとうございます。後は売り物も探さないと…」

「では、私もこれで失礼しますね」

後これをとハンナさんが小さな紙を渡してくる。

「これは?」

「王都のこの周辺にある店の一覧です。一応、服屋とかもありますけど、鍛冶屋とか武具やとかまとめてますから」

「ハンナさんもお世話になりました」

「いえいえ、うちのギルド所属の皆さんも関係することですからね。頑張ってください」

ハンナさんも店を後にしていく。その後ろ姿にずっと頭を下げるリライア。手にはさっき渡された紙が握られている。

「じゃあ、まずは家具と服屋からね。いきましょうか」

「まってました~。さあ行こうリライアさん!」

「はい」

エミリーがリライアの手を引っ張っていく。これは久しぶりに着せ替え人形にでもする気だな。

「ほら、ティア何してるの?置いてくよ~」

「待ちなさい」

あわてて、私も追いかけていく。
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