妹を想いながら転生したら

弓立歩

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本編

39

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翌日、私は特に何かすることもなく部屋でぼーっとしていた。

「ヴォルさんはまだ槍を作ってるだろうし、やることがないわね」

「なにティア暇なの?」

「暇といえば暇ね。そういえば昨日孤児院に行ったんでしょ。どうだったエミリー?」

「みんな頑張ってたよ。ちょっと体調の悪い子とかはわたしが治したし大丈夫だと思う」

「よかった」

「でも、ティアがいなくて寂しがってた子もいたから、また行ってあげるといいかも」

「そうね。しばらく王都にいるんだし、どこかで行ってくるわね」

「じゃあ、その時は一緒に行こうね」

「ええ、そういえば一緒に行ったフォルトはどうだったの?」

「あ~、子供に人気だったよ。特に男の子に」

「お父さんみたいな感じなのかしらね」

「というより、冒険者になりたい子がいて一杯質問してたみたい。最後は知識より体を鍛えることって運動してただけだったけど」

冒険者になるには健康な体が資本というのは大事なことだ。そういうことを教えたかったのかもしれないが、ちゃんと伝わっただろうか。

「暇ね。そうだわエミリー。村にいたときに戻ったら、鍛えてあげるって言ってたの覚えてるわよね」

「そんなこといったっけ?」

「いったわよ。ちゃんと的に当てるのはできるようになったんだから、もう少し魔法のバリエーション増やしましょうか」

「ま、まあちょっとは大事かな~とは思うけど今から?」

「明日とかにはまた工房に行ったりしないといけないかもしれないし、今日を逃す手はないわ」

有無を言わさず私はエミリーを引っ張ってカークスたちの部屋に行く。

「みんないる?」

「いるよ」

今日はカークスたちも休養日なのか全員部屋にそろっていた。チェスのようなものをカークスとフォルトがしており、キルドは何か本を読んでいる様だ。

「私たち今から魔法の練習をしに、門の外まで行ってくるから」

「2人だけで大丈夫?誰かついていこうか」

「別に大丈夫よ。門の外っていっても、森とかまではいかないから」

「なら、行ってらっしゃい。帰りは何時頃?」

「夕方には戻るようにするから」

「気をつけろよ」

「ありがとうカークス」

私はみんなに予定を伝えると、エミリーを連れて門まで行った。今日の門番はカインの担当みたいだ。

「お疲れ様、カイン」

「おや、ティアさんにエミリーさんじゃないか。聞いたよ、飛竜を倒したんだってね」

「あら、こういうことには疎いあなたがいつ知ったの?」

「バルガスさんがお土産に飛竜の肉をもらって、奥さんが大喜びしたってうるさかったんですよ」

「それは申し訳なかったわね」

「いえいえ、エミリーさんたちにはいつもお世話になってますから。ところで…」

カインがそっと耳打ちしてくる。何のことはなく彼もちょっとでいいから食べてみたいとのことだ。

「干し肉で良ければ、あとであげるわ。ちょっと先になると思うけど」

「本当?いやあ~すみませんね」

うれしそうに言われて悪い気もしないが、この人はこの為に門番をやっているんじゃないかと思うことがある。王都だと人の出入り自体が多い為、同じ門番と話す機会は少ないと思われがちだが、結構な割合で門ごとに固定されている。

東門と西門に南門と3つの門のうち、交易路にもなる南門は結構入れ替わりがあるとのことだが、東西は大体同じ人がやっている。こちらの門は冒険者が多く、商人も隣町や小さな商隊が多く人を入れ替えていると、業務が滞りやすくなるためだ。

「期待しないで待っててください。それじゃあ、通りますね」

「はい、どうぞ」

私とエミリーは門を通って、外へ出る。平原を少し進みちょっとした林の方へ向かう。森まで行くと魔物が出やすくちょっと面倒だ。ここなら人目に付きにくいし、どういった魔法を使っているかも分かりにくい。他人に力を見せない冒険者をやる上では必要なことだ。

「さあ、ここなら大丈夫だから魔法の練習を始めましょうか」

「でも、わたしもう水の魔法使えるようになったし」

エミリーは水を球状にして木に向かって放つ。木の中心にあたって水球が霧散する。

「ほらほら、ちゃんと当たるでしょ」

「確かにね。でも、それじゃあ決め手にはならないでしょ。身を守るのには相手を倒すことも必要よ」

「それはほら、実戦でできるって」

「そんなこと言って。じゃあ、試しに水を槍か剣状にして撃ってみて」

「しょうがないな~。いくよ!」

エミリーが今度は槍状に水を変化させて魔法を放つ。そのまま直進した槍は木に当たって、先ほどと同様に霧散した。

「どうどう?ちゃんとできてるでしょ!」

「自信満々なところ悪いけど、あれが槍だというなら何で木に穴が開いてないの?」

確かに形も槍で、きちんと木の中心を狙い通りに当てたものの、そこにはあるべき穴がなく威力が低いことを表していた。

「あれ?おかしいな。もう一回行くね」

再度使ってみるが、またしても当たるだけで霧散してしまう。

「実際のイメージがつかないのかしらね。ちょっとこの短剣投げてみて」

剣は研ぎに出してしまっているので、適当な短剣を代わりに下げている。それをエミリーに渡す。

「どうやって投げるの?」

「別に色々あるけど、とりあえず腕を上にあげて振り下ろす。肩位に来たら放す感じでやってみて」

「わかったよ」

エミリーが腕を上にあげて、ナイフを放つ。残念ながら木を外れて少し横に落ちた。

「残念。もう一度ね」

「ティアがやってくれないの?」

「私がやっても感覚はつかめないでしょ。あきらめて当たるまで頑張りなさい」

それから、2、3度投げるが、どうしても外れてしまう。

「この距離が難しいのかしらね。ちょっと近づいて投げましょうか」

2メートルほど距離を詰めて再度挑戦する。

「はっ!」

木の中心を外れたものの今度は木に当たって軽くではあるが、突き刺さっている。

「やった、当たったよ!」

「ええ、その感じよ。これで刺さるって感じがつかめると思うから、もう一度魔法で同じようにやってみて」

「うん!水よ、剣となりて敵を撃て!」

短剣で練習したからだろう、ちょっと短めの剣に似せたそれをエミリーが放つ。木に命中したそれは今度こそ突き刺さって霧散した。

「やったぁ!」

「できたじゃないエミリー!」

私たちは抱き合って喜びあう。エミリーがこれまで攻撃魔法を使えなかったのは、そういったイメージ、つまり武器の扱いを知らないことに起因していたようだ。眼で見ていても、それが実際にはどんなものなのか、どれぐらいの重量なのか、そういったものが全く思い描けていなかったのだろう。

「これで、一通りの魔法は使えそうね。後は…」

「ええっ、これで終わりじゃないの?」

「まだまだよ。むしろこの感触を忘れないうちにやっておかないと。次は光の魔法ね」

「う~」

不満げなエミリーをしり目に、私は次なる魔法の指導を行う。時間がかかると思っていたのだが、実際に先ほどの練習が効いたのか1時間ほどで簡単なものはマスターしてしまった。

「…よく頑張ったわね」

「へへっ。やればできるんだから!」

「本当にそうね。今のあなたを学校の子たちが見たらびっくりするわね。魔法を的に当てることもできなかったエミリーが、今や百発百中の魔法使いだもの」

「まあ、威力の大きい魔法はやっぱりまだ使えないけどね」

「基礎がこういうのは大事よ。どんなに威力があっても当たってからが重要だもの。外さない才能があるのは大きな強みよ」

「そう?なら、今度また教えてね。ちょっとだけ楽しかったから」

「ええ、また一緒にやりましょうね」

「そう言えば、ティアはほとんど使ってなかったけどちゃんと練習できたの?」

「大丈夫よ。魔力の消費を多くして放つ練習用の使い方をしてたから。これをすると威力のない魔法を魔力消費を上げて使えるから練習にちょうどいいのよ」

「そんな裏技があるんだね」

「裏技ってこともないけど、学校にいるときからこうやって練習してたの。あそこではずっと練習することができなかったから」

「確かに。結構知識の習得なんかも多くて、大変だったもんね」

「そうなのよね。学費とかの面で融通してもらっておいてなんだけど、いらないことも結構あるのよね」

「剣術の授業とか退屈そうだったもんね」

「あら、気づいてたの?だって、魔法科向けの剣術の授業なんて私には不要だもの。ちゃんと剣術自体お爺様に倣ってたし」

「でも、先生を倒しちゃったのはまずかったね」

「しょうがないでしょ。全力で来なさいっていわれて、初めての授業で緊張してたんだから」

「あれ以来、先生もティアを前に出して練習させなかったしね。他の子は何度も前でやってたのに」

ひと段落着いた私たちは、ふとしたことから学校時代の話になり、そのまま思い出話に花を咲かせた。

「あれ、もう日が落ちかけてるね」

「いつの間に。みんなが心配するわね。戻りましょう」

「そうだね」

私とエミリーは元の道へと戻って、カインにまた門を通してもらい宿へと帰る。宿に戻るとカークスたちが出迎えてくれた。予定よりは少し遅かったかもしれないけど心配性だ。とてもうれしいけれど。

「ただいま」

「お帰り2人とも」

「心配して待っててくれたの?」

「ちょっとだけ遅かったからね。まあ、この辺の魔物に後れを取ることもないし、実はあんまり」

「ひど~い」

「ごめんごめん」

「それで、どうだったんだ成果は?」

「バッチリだよ!なんせティアのお墨付きだからね」

「本当か?めずらしい」

「何よそれ。まるでいつもダメ出しばかりしてるみたいじゃない」

「あ~それよりお腹すいたでしょ。食堂へ行こうよ」

「そうね。まあいいわ、この件はゆっくり食べながら話しましょう」

「口は禍の元だなカークス」

わいわいと私たちは食堂へ降りていく。食事はカークスを問い詰めながら取った。その中で、明日はフォルトの武器の出来を確認するために、ヴォルさんの工房にお邪魔することになった。その後はお風呂に入り、日記をつけて今日はもう休むことにした。

「おやすみなさいエミリー」

「おやすみティア」

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