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本編
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しおりを挟む「おはよ~」
「こんにちは」
お昼を過ぎてお昼ご飯を食べて、少ししたところでカリンとセイラちゃんが来た。いつもと少し違う格好だ。
「あれ、2人ともどうしたの。いつもと服装が違うね?」
「へへ~、ケイトが新しい服作ってくれたの。ティアたちがくれた服を参考に作ったんだって」
そう言ってカリンが見せたのは、羽衣をイメージした服だ。簡単に着れそうな形だが色がきれいで、艶やかだ。一方のセイラちゃんが着ているのはワンピースだ。今までのは横で止めるようになっていたのが、後ろと肩で止める構造だ。こちらは私が買ってきたものだ。
「2人ともとても似合ってるわ。このまま王都に行ってもみんなが振り返るような綺麗さよ」
「ほんと?やった~」
喜ぶカリンとは対照的にセイラちゃんは恥ずかしがっている。嬉しいといわれるのもいいが、こう照れた感じも格別だ。
「それじゃあ、2人が来たことだし後はよろしくね」
「ええ、そっちも頑張ってきてね」
「今日は川の場所を教えてもらおうかと思ってるんだ」
「それもいいけど、カタログの件も忘れないでよ?」
「分かってるって、じゃあね~」
そういうと3人は小屋を後にして、ケイトさんとサーリさんの元へ向かった。川にも行くといっていたし今日は魚かな。
「じゃあ、今日もみんな揃ったところで、作業を再開しましょう」
いつも通り寝室に行き作業の準備をする。昨日と同じ配置につき、エミリーが障壁担当で私とセイラちゃんが浄化担当だ。カリンが作業を見守る中、今日も浄化作業が始まる。
「さあ、行くわよ」
「うん」
エミリーが返事をすると障壁を中和するために光の魔力が注がれる。一瞬だけバチッっと反応したものの、それ以降は安定して中和されている。
「セイラちゃん、無理は禁物よ」
「はい!」
私たちもエミリーの働きに負けないよう浄化作業を行う。さすがにこの作業ばかりで時間を使う訳にはいかない。食料を一部持ち帰れるようになったので、一旦王都に戻らなければ。1時間ほど作業が続く。進捗はいいはずなのだが、手ごたえというものがあまり感じられない。そう思っていると―。
バチッ。
再び、障壁が音を立てる。
「エミリー、どうしたの?」
「う~ん、ちょっとまた弱くなったかな?」
飛竜の目を見てみると、明らかに以前より全体が縮んでいる。目の中央部分のみがその大きさを変えずにいる。
「これなら、そのまま押し込めるかも?」
「本当?なら、ちょっと休憩を取ってその後で試してみましょう」
「はひ~」
「大丈夫セイラちゃん?」
「だいじょうぶです…」
「今日は休まず1時間やってたからね。結構魔力上がってきてるのかも?」
「そうじゃないかとは思っていたけど、ちょっといい?」
私はセイラちゃんの頭に手を置き、魔力を流してみる。魔力が少しずつ流れていき彼女の体をめぐる。最初にカリンから話を聞いていた時の印象とは大分違う。この魔力の流れ方なら最初に魔法を教えたときのカリンぐらいある。成長期を迎えているカリンはともかく、まだ十分な力がないはずの彼女がここまでになっているとは。
「確かに。魔力は最初にあった時よりかなり強くなっているようね」
「ほんとう?」
「ええ、始めてカリンが魔法を使えるようになったときぐらいはあるわね。それでも年齢からすると割と高い方だったけれど、この伸びはすごいわね」
「ふ~ん。どのくらいなの?」
「このスピードで伸び続けるとは思えないけど、そのまま伸びれば半年後にはカリンを追い越すぐらいね」
「ほんと?わたし先生出来なくなっちゃうよ~」
「まあまあ。カリンは教えるのもちゃんと抑えさせるのも十分できてるし、魔力の強さだけが資格じゃないわ」
「そうだよ。ティアに教えられてたらみんな逃げだしちゃってたよ」
「そんなことないわ。あなたが不真面目だからでしょうエミリー」
「わたしは今でも、「いつかできるようになるから毎日やりましょう」って言ったあの恐怖を忘れないよ」
「でも、そのおかげで水と光の癒しと防壁に関しては満点だったでしょう?」
「テストの前の日から擦り傷だらけだったけどね。「あなたは自分の傷を治したら合格です」って言われたんだよ」
「何にせよ、それだけ今強くなってるなら、エミリーの言う通りそのまま押し切れるでしょう」
「はい!」
自分が成長しているといわれてうれしかったのか、元気よく返事をするセイラちゃん。彼女のやる気が削がれないうちに再開しますか。
「じゃあ、そろそろ再開しましょう」
「うん!」
1日目と同じように左右から私とエミリー。正面にはセイラちゃんが座って浄化を始める。
バチバチッ。
障壁が反応するものの、3方向すべての浄化の魔法が障壁を突き破り浄化を始める。以前と違って押し返される感触もそこまでなくスムーズに進んでいく。大丈夫という事をエミリーと目配せしてそのまま作業を続けていく。40分ほど続けるとさらに抵抗が弱くなった。
「どうするエミリー。一気にいけそう?」
「う~ん。ちょっと無理かも」
ちらりとセイラちゃんの方を向く。彼女はこの辺でギブアップのようだ。とはいっても私たちが慣れているのと得意属性という事もあり、本来使い始めて1月もたたない彼女がついてくるだけでもすごいのだが。
「じゃあ、あと20分だけね。残りは明日で終わらせましょう」
「さんせ~い」
「じゃあ、セイラちゃん、カリン。あとちょっとだけ付き合ってね」
「は、はい!」
「わかった」
それから20分間浄化の作業を続けたが、以降は障壁が弱まることはなかった。
「はい、お疲れ様」
作業を終えると、私はリビングに向かい水を取ってきてみんなに配る。
「ありがと~ティア」
「ありがとうございます」
「ありがとう」
私も魔力を消耗して疲れているので、持ってきた水を飲み干す。
「ふぅ~。今日も疲れたわね。この後はみんなどうするの?」
「わたしはセイラを送っていって夕飯までは子供たちの相手をしてるよ」
「わたしはやすんでます」
「わたしはねぇ~、今日こそサーリさんに料理教えてもらうの!」
「そういえば昨日は教え貰い損ねたわね」
「そうなの。だから、今日こそは教えてもらわなくちゃ。料理ってそのところにあるものを使うから、別の出身の人に合わないと中々増えないんだよね」
確かにレシピなんかがそんなに出回らないこの世界では、出会いがないとレパートリーが増えない。料理本でも作って売ればもうかるかもしれない。でも、フランス料理・イタリア料理・和食のように系統立てて書くのも大変だろうな。
「じゃあ、魔導書じゃないけどエミリーも本にしてみたら?」
「本に?たしかにそれはいいかも!たまに忘れちゃったりするし、ここに書いといてっていえば時間がないときでもある程度はつかめそう」
早速、今日から書くぞと意気込んでいるエミリーだが、そっちに意識が集中して約束の件を忘れてしまっている様だ。
「エミリー、本を書くのもいいけれど待ち合わせの時間を忘れないようにね」
「へっ?ホントだ。あと10分ぐらいしかないね。じゃあ、わたしは準備してサーリさんのとこに行ってくるから」
パタパタとエミリーは準備を済ませ小屋をでていく。
「ごめんなさい慌ただしくて」
「ううん。エミリーおねえちゃんって結構、すばやいんだね」
「ああ見えて朝は早いし、準備とかも終わっていればそこからは早いのよ。そこまでは大変だけど…」
「そうなんだ」
それからカリンたちは10分ほどゆっくりしていたが、セイラちゃんが眠たそうにしているのでカリンが予定通り送っていくことになった。
「2人とも今日もありがとう。また明日よろしくね」
「うん!」
「は~い」
翼をはためかせカリンが返事をすると、セイラちゃんを抱えて家の方まで飛んでいった。1人取り残された私だが、飛竜の目のことをエリアの書に書かなければならない。考察めいたことも最後の方のページに書いていく。この部分は確証もない話なので、カリンの方には書き写さない。いくら同等のものといっても、見た人が疑念を抱くだけのようなものはよくない。
「さて、みんなが帰ってくるまでに仕上げましょう」
私は気合を入れ直し、机に向かう。ある程度整理していたこともあるので、スラスラとペンが進む。
「しかし、このペン本当に書きやすいわね。疲れにくいし、もらっておいてよかった」
そう言いながらグリフォン印のペンを走らせていく。このペンに負けない本に仕上げないと。
私はその後もずっと止まっては考えてまた書く。これをずっと繰り返し気付けばもう夕方になっていた。
「もうこんな時間なのね。夕飯を食べに行こう」
本を閉じて、ペンを置き夕食を食べに広場へと向かう準備をする。今日はエミリーも料理を教えてもらっただろうし、彼女の手作りの料理も久しぶりだ。心を弾ませながら私は小屋を後にした。
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