妹を想いながら転生したら

弓立歩

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本編

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夕食の時間になったので、私は小屋から出て広場に向かった。広場では先日と同じようにキルドたちが食事の準備に追われ、エミリーも料理係のハーピーたちとしゃべりながら料理を仕上げている様だ。

「キルド、お疲れ様。今日はどうだった?」

「ああ、ティア。今日もバッチリだよ。ちょっと奥の方に山菜を取りに行ってたんだけど、王都じゃ珍しいものもいっぱい生えててさ。まあ、普通にこの辺に来てもあの様子だと発見するのは難しいけどね」

「へえ、小屋の畑でも育てられそうなやつなの?」

「どうだろうね。群生しているみたいだから、一度作れれば大丈夫だと思うけど」

2人で話していると、後ろからキルドを呼ぶ声がする。どうも今日キルドたちと一緒に行動したハーピーらしい。

「お邪魔してしまったみたいね。頑張ってね」

「ああ、じゃあね。今日のもおいしいからたくさん食べなよ」

「そんなに食べられないの知ってるでしょ」

私はそういいながらも、今度こそ邪魔にならないようにその場を離れる。奥ではカークスとフォルトが昨日捕ったらしい魚をさばいている。こういうところは人間がやった方が、血も飛ばないし綺麗にできる。2人のナイフ捌きをハーピーたちも見守っている。

「ここも忙しそうね」

まだ、食事の準備中だしどこかで暇をつぶそうと思っていると、声をかけられる。

「おねえちゃん。また、魔法僕らにも教えてよ」

振り返ると、小さなハーピーたちが3人ばかり集まっていた。村を離れるときにも一緒に遊んだ子たちだ。

「あら、いつもカリンに教えてもらってるんじゃないの?」

「そうなんだけど、最近ずっとセイラについてるからさ、僕らもこっそり強くなりたいんだ」

どうやら、セイラと一緒に行動してばかりで置いていかれないように修行したいとのことみたいだ。

「別にいいけど長くはダメよ。ちゃんと食事が始まったらやめるからね」

「うん!」

そうって簡単な魔法講座が始まる。とはいっても、木に魔法を当てて変な使い方をしていないか、向き不向きを見るぐらいだけど。

「う~ん、もう少し力を抜いたほうがいいわね。押し切る感じじゃなくて流す感じで。そうそう、その調子よ」

子供ならではの吸収の速さで、どんどん効率的な使い方を覚えていく。正直なところ、このLVなら冒険者学校の半数は追い抜く感じだ。セイラも早いと感じたが、この子たちもそれには及ばないものの中々の成長速度だ。

「これでいいの?」

「ええ、最初よりとても安定してきたわ」

3人とも短期間でかなりコントロールが良くなった。強く魔力を込めれば威力だけは割と上がるのだが、狙ったところに当てることは結構難しい。この子たちの境遇を考えれば、決して安全ではない以上、確実に敵に当てる能力が必要なのだ。

「みんな、頑張ったわね。ご褒美という訳じゃないけれど、ご飯ができたみたいだし食事にしましょうか?」

「ええ~、もうちょっと~」

「だめよ。毎日ちょっとずつね。一気にやっても体を壊しちゃうわよ」

「は~い…」

うまく魔法を扱えたので、もう少しやってみたいというところなのだろうけれど、そこで無理をしてしまってはよくない。体調の変わりやすい子供の時期は特に。これも普段からカリンがきっちりと教えているからだろう、子供たちは渋々ながらも食事へと向かう。

「ごめんね。みんなが世話になって」

「あら、カリン。今までどこに行っていたの?」

そういえば広場にはいなかったと思いながら聞いてみる。

「ちょっとね。それよりあの子たちの相手してくれてありがとね」

「いいのよ、私も暇だったしね」

子供たちの方を改めてみてみると、さっきの不満はどこへやら今は食事にがっついている。

「また、あんな無茶な食べ方してる」

「あの頃は人間でもあんなものよ」

「そこはわたしたちとも変わらないんだね」

「そうね。そういうところなんかはほとんど一緒ね」

「いつか行けたらいいのにねぇ」

「その姿じゃ目立っちゃうから。なにか、誤魔化せればいいんだけど…」

「もしかしたらこの世界のどこかにはあるかもしれないね」

「そう、確かにそうね。そんなアイテムがあったら真っ先に教えるわ」

「なら、その時は街を案内してよ」

「もちろんよ」

そんな会話をしながら夕食を共にする。今日もエミリーとは一緒に食べることはなかった、料理の話に夢中でこちらにも気が付いていなかったようだ。全体的に食事が終わるころようやくこちらに気づいた。とはいえそのころにはみんな食べ終わっていたので、そのまま小屋へと帰ることになった。

「ふ~、今日も疲れた~」

「キルドったらおじさんみたい」

「そんなことないよ。ここだと肉体労働ばっかりになっちゃうからね」

「確かに王都にいるときは、荷物持ち以外で肉体労働なんてめったにないわね」

「でしょでしょ」

「何を言っているんだ。鍛錬ぐらいするだろう」

「僕はそんなにしないからね。変に重くなっても困るしさ」

「まあ、筋肉だらけのキルドっていうのも変よね」

「そういうこと」

「ああ、話は変わるんだけど飛竜の目の件だけど終わったわよ」

「本当か?」

「ただ、ちょっとだけ問題があってね」

私は今日の作業中に起こったことをみんなに説明する。魔光玉が生成できたもののどうも個人所有のアイテムという事。持ち主は私たちではなくセイラちゃんという事を。

「じゃあ、召喚道具にはならないけど、得るものもないってこと?」

「身もふたもないけどその通りね」

「で、その増幅というのはどのくらいだ?」

「4倍はあるわね」

「はあ?」

カークスが驚きの声を上げる。私だって目の前で見ていなければ信じられないだろう。

「そんなものが存在するのか。4倍といえばお前たちと並ぶぐらいじゃないのか?」

「残念ながらこの間にもセイラちゃんの魔力はかなり成長しているから、魔光玉を込みだとすでに彼女の方が強い魔法を使えるわ」

「…そんな魔導具だったとは。精々が1,2倍ぐらいだと聞いたことがあるが」

「さっきも言った通り、私たちだとそれぐらいよ。重量だって見た目よりはるかに重いし。ただ、認められたものには軽くて倍率ももっと高いのよ」

「まあ、誰でも使えないというところでよしとするしかないだろうな」

「フォルトの言う通りよ。変に使えない以上はこの村で守っていてもらった方がいいわ。持ち主を変えてそこら中を転々とされたらそれこそ何が起きるか…」

「そう考えると、あの子でよかったんじゃない。何度か話もしたけどいい子だったよ」

「そうそう。わたしやティアが使えないのはちょっと残念だったけど、この村を守る力になるし」

「という訳で、彼女にこれを渡してもいいかしら?」

「使えないものを持っていても仕方ない」

カークスの発した言葉は肯定の言葉だった。私はセイラちゃんに玉を渡すことができるようになって安堵する。

「じゃあ、明日改めて彼女に渡すわね。ちゃんともう一度、使い方を説明しないといけないし」

「そうしてくれ。ここが、廃墟にならないようにな」

「あと、それとね…」

すごく言いづらそうに私は切り出す。ここまでのところでみんなに話していないことが1つだけまだある。私は説明するためにみんなを寝室に招き入れる。

「これなんだけど」

そう言って私は天井を指さす。そこからは月あかりがほのかに差し込んでいた。

「何だこれは?」

「その、飛竜の目が魔光玉に変わる瞬間、強い光が起きて天井を…」

ごめんなさいという気持ちを込めながら私は丁寧に説明する。

「へぇ~。出来上がるときは注意しないとね」

「それで、長老には話をしたんだけど、穴を治すときは人を出してくれるって言ってくれたんだけどね」

「木材が必要になるな。しょうがないか。フォルト、明日朝から木を見に行こう」

「そうだな。雨が降ってくれば後々面倒だ」

「ごめんなさいみんな」

「ティアは分からなかったんだろう。仕方ないさ」

フォルトが慰めるように頭を撫でてくれる。ちょっと気恥しいけれど、こうなる事を全く予想していなかった自分が悪いと思っていたのでちょっと嬉しい。それからは木の調達から加工までの時間を大体決めて、明日いつぐらいに人を呼ぶかを設定する。もちろん、早めに起きて対応することになった。

「じゃあ、この日程で。明日は早く起きないと間に合わないから今日はもう寝よう」

「は~い」

「そうね。みんなありがとう」

「いいよ別に。仲間なんだから」

「…そうね。おやすみなさい、みんな」

「お休みティア」

キルドたちと別れて私たちも寝室に戻る。いつもは寝るときは真っ暗だが、今日ばかりは月の光と生き物の声がする。

「たまにはこういうのもいいよね」

「そうね。だけど、雨が入り込むのだけは勘弁して欲しいわね」

「たしかに!」

私とエミリーは笑いあって、寝床に着く。虫が寄ってきてしまっても困るので、明かりは付けずに今日はすぐに眠ることにした。

「じゃあ、お休みエミリー」

「おやすみ~」

明日は朝から早起きしないといけない。こういう時に目覚まし時計でもあればなあと思ってしまう。魔法を駆使して作れないだろうか。そんなことを考えながら私は眠った。
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