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本編
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「ん~」
昨日は早めに寝たおかげで、今日は結構気持ちよく起きることができた。時間を確認すると7時半だ。
「そろそろ食事の準備とかもできるころかしらね」
ほぼ家族経営の宿が多い中、朝・昼・夜と食事を提供するこの宿ではあまり早くに食事を提供し始めると、休憩の時間が多くとれない。とはいっても冒険者たちは出かけるときには早くに出て行ってしまうので、悩みどころだと以前に女将さんが言っていた。
結局のところ夕飯時には冒険に行くものはおらず、ギルドや商店に依頼料や売却益を持ったものが帰ってくるのだから削るなら朝の時間という事だ。一応確認しておこうと部屋を出ようとする。エミリーはというとやはり昨日はあれからずっと読んでいたようで、まだ起きる気配はない。
「リサ、準備はどう?」
「ごめんなさい。もうちょっとだけかかります」
「ああ、別にいいわ。今日はエミリーもまあ寝てるし、30分後ぐらいかしら」
「分かりました。それぐらいに準備しておきますね」
ばたばたしていたので、これ以上は悪いと思い必要なことだけ伝えて部屋へと戻る。戻ろうとすると隣のドアが開いた。
「あれ、ティアおはよう」
「おはようキルド。朝はもう少しかかるそうよ。あと30分後で言ってきたから」
「そうなんだありがとう。じゃあ、もう少し寝よっと」
キルドは眠たそうにすぐ部屋に戻っていった。私も部屋に戻り机に向かう。身支度を済ませ今日の予定についてもう一度確認する。とりあえず、朝食後に実家に行き魔光玉について聞くこと。その後は図書館だったわね。行くときにはエミリーも連れていくから一旦戻ることを忘れないと。そのエミリーはというとまだ夢の中だ。よく見ると読んでいた本の横にもう一冊置いてある。ひょっとしてあの後、次の本を読み始めたのだろうか。
「しょうがない子ね」
私はもう一度食堂へ向かうとリサにエミリーの分は部屋で食べられるものにしてほしいと頼む。すぐには起きないだろうし出かける前に机にでも置いておこう。その後、時間になったので再び食堂へと降りる。食堂にはキルドを始め3人がそろっている。
「エミリーはどうしたんだ?」
「昨日ずっと本を読んでいたみたい。そんなに時間かからないと思ってたら、その後で新しく読み始めているのを見つけたわ」
「しょうがない奴だな」
「でも、明日からまたしばらく自由に読めなくなるんだししょうがないよ」
「まあ、そうだな」
「皆さんお待たせしました」
リサが頼んでおいた料理を持ってきてくれる。
「ちらっと聞こえましたけど、また皆さん行っちゃうんですか?ここのところ続きますね」
「前はほとんど日帰りばっかりだったから、確かにそうだよね」
「いやいや、ちょっと安心しましたよ。払いがいいのにずっと宿にいましたもん。割のいい商売でも見つけたんじゃないかって一時噂でしたよ」
「そんなのあったらわざわざ冒険者やらないでしょう」
「でも、変わった人もいますからね。別のギルドじゃ危険な依頼しか受けない人もいるみたいですよ」
「そうなったらおしまいね。楽はできるに越したことはないわよ」
「そうですよね。ところで次は何時頃お帰りですか?」
「10日から2週間ぐらいだろう。そこから長くはならないつもりだ」
「へ~、微妙な長さですね。じゃあ、女将さんにも言っときますね」
「お願いするよ」
これで、明日宿をいったん引き払っても帰ってくるころには部屋が空いているだろう。最悪埋まっていても1,2日程度なら別の宿でも構わないし。食事を終え、私たちはそれぞれの部屋に戻る。私はこれから単独行動なので、そのまま着替えて部屋を出る。
「ただいま~」
宿を出て、ちょっと歩いて実家に着く。まだ、店の開く時間ではないので勝手口から入る。
「あら、お帰り。今日はどうしたの朝早くから?」
「ん、またお婆様に聞くことができて。そうそう母さんうろこの売れ行きどう?」
リライアの店ではまだ販売していないが、こっちでは仕入れた分をせっせと売っている。大きい店でない限りはこうしてすぐに売っていかないと回らなくなるのだ。
「上々の滑り出しよ。何せ簡易とはいえ魔導アイテムだし、通常の仕入れと違って娘の討伐品だしね」
「ひょっとして私のこと触れ回ってるの?」
「当たり前でしょ。近所の人なんかはお祝い代わりに買ってくれるし、知らないかもしれないけど飛竜の成体を討伐したパーティーってちょっと王都で噂なのよ」
商機を逃さないように娘まで使うのはまあいいとしても、近所の人に会いづらい。子供のころから店にいたり、結構活発的だったから認知度高いのよね。あんなに小さかった子がとか一番言われたくないセリフだ。
「売れ行きが良かったのは安心したわ。まだ、あまりもあるから必要なら仲間と相談するわ」
「そうね。あと50~100は行けるわ。単価は前と一緒だと嬉しいのだけどね」
「一緒に伝えとく。それじゃあ、お婆様にあってくるわ」
「はいはい」
私は一旦、会話を終え2階のお婆様の部屋に向かう。
「お婆様いらっしゃいますか?」
「おお、ティアか。よく帰ってきたのう」
「はい。教えていただいた通り、魔光玉の生成には成功しました」
「おうそうか。しかし、思っていたよりも早いのう。もう少しかかるかと思ったんじゃが」
「エミリーにも手伝ってもらったのでそれででしょうか」
「なるほど。あの子も使えたんじゃったか。それで、なにかあったのか?」
「魔光玉の生成には成功したのですが、その…あのアイテムは何か秘密があるのですか?」
「秘密とは。あれはただ所持者の魔力を増大させるだけのものだと」
私は言葉を濁しながら、持った時にそれぞれ重さの感覚が異なるという事を伝える。さすがにセイラちゃんのことを話す訳にはいかないのでエミリーとの対比だ。
「確かに複数名で行う時にはより適性の高いものに集約するという事は聞いたことがあるのう。ただし、そんなに明確には差は出ないはずじゃ」
「そうですか…」
ここまで知識を持っているお婆様でも、適正に合わせてある程度の変化は起きることまでしかわからないらしい。
しかし、その話が正しいならば私やエミリーよりセイラちゃんは、はるかに適性があるという事になる。当時、一番魔力の低いあの子に合わせられるぐらいの潜在能力があるという事なのか。
「しかし、その様子ではうまく扱えなかったのか?」
「そうですね。持ち歩くにも重量と取り回しを考えるとちょっと難しいです」
私は正直に答える。これに関してはエミリーとも意見は一致しているので事実だ。
「まあ、わしが作った時は成体ではなく若いものだったし、勝手が違うのじゃろう」
お婆様は重量などの問題に関しても特に追及することもなく、単に個体の差が大きいという事で納得してくれたようだ。
「でも、どうして魔光玉の生成方法など知っておられたのですか?」
私は以前から気になっていたことを聞いてみる。確かに昔から難しい本もいっぱいあったし、現役時代はそこそこ名が売れていたとは思っているが、明らかに知識量が多い。
「…もう、冒険者としてもいっぱしになったことだし話してやるとしようかの」
そういうとお婆様は一呼吸開けて、自分の若いころのことを語りだした。
「…という事でな。こう見えて昔は王都では道行くものが知っておったのじゃ」
結構長い話になってしまったが、すごい話を聞いた気がする。お婆様の話を順番にまとめていくとこうだ。
若い頃のお婆様は美人で魔導の扱いにも長け、王宮魔法兵団のトップ入団を果たし、研究に討伐依頼にと大忙しだったらしい。当時の王都は現在のような平和な環境でもなく、隣国との戦争の気配と周辺の魔物の活動の活発化で常に緊急時の兵員が詰めている状況だった。その中でも非常に目立つお婆様は、常に成果を出し史上最年少の王宮魔法兵団の団長に抜擢されるところだったという。
その頃には街中でも知らないものはおらず、ならず者たちも姿を見れば隠れていたとのこと。
しかし、同じく若くして王宮騎士団の時期団長と目されていた、お爺様と出会い魔法兵団をやめたとのこと。
「でも、そこまで強かったなら止められなかったんですか?」
「その頃は魔法兵団の団長も引退間近だったし、邪魔するなら吹き飛ばすといってやったのじゃ。そしたら、もう何も言ってこなくなったわ」
お婆様は普段から落ち着いていて、人格者と思っていたのだが若いころは結構無茶をしていたようだ。母さんも商売になると結構譲らずに争ていることもあったが、理性的に収めているんだとこれまでは思っていたが、この話を聞く限りだと徹底的に討論をしているのかもしれない。
「でな、いざやめるとなった時に今後はそこまで魔導にはかかわらんとは思っていたのだが、一応何かの役に立つかもしれんと王宮の図書館のものを借りているんじゃ」
「王宮って王立図書館の?」
「何をいっとる。あれはただの一般向けじゃろう。この部屋にあるのは王宮に置かれている一般向けではないものの一部じゃよ」
「はあ!?」
思わず声を上げてしまった。王宮から持ってきたという事は、完全に閲覧禁止指定されているものとか許可制のものが混ざっているという事だ。そんな本を無造作に置いてあったのねこの部屋…。
「心配せずともちゃんと許可は取ってある。むろん許可を取ったものが今も王宮にいるとは思えんがな」
この調子だと、その許可をくれた人と結託して本自体は紛失か長期貸し出し中にでもして、その後に目録からも外されているかもしれない。
「じゃあ、ここの本で調べものした方が王立図書館に行くよりいいんですか?」
「ものにもよるが、間違いなくここのが充実しておるじゃろう。魔法関係に関してはな」
魔光玉のことに関してもこの中の一冊に記述があったらしい。当時は冒険者の中でも知る者はいたらしいが、魔族の召喚にも使えるという一文から次第に隠されていったとのこと。
昔の本のため記載が格式張っていたり、難しいところもあるが確かにこれなら王立図書館に行くよりよほどいいかもしれない。
「ちなみにお婆様、これ借りていくこととかってできます?」
「構わんぞ。わしからしたら今になって使うことはないからのう。ただし、あまり人には見せてはならんぞ。すでにほとんど使われない魔法なども載っておるからのう」
「分かりました。限られたもののみに公開します」
「うむうむ」
私は早速、今後の冒険に役立ちそうな魔法が乗っている本と、魔物について詳しく書かれた本を選ぶ、
正直なところカリンと約束していた街に行くという約束を守るため、人化の法がないか調べるつもりだったがそこまで高度な内容は王立図書館といえどないと思っていた。しかし、ここにある本なら手掛かりぐらいはあるかもしれない。
「ほう、魔物の本までもっていくのか?」
「え、ええ。今後も色んな魔物に出会う訳ですしちょっと…」
「研究熱心なのはいいことじゃ。じゃが知能の高いものや魔力の高いものには気を付けるんじゃぞ。人に限りなく近い姿で現れることも可能らしいからの」
最もわしの時でさえ見たことはなったがな。そう続けるお婆様の話に耳を傾けながら本を選び出す。持ち出すにしてもたくさんは持っていけないし、関係ない本もある。ひとまずは4冊程度を選びだし借りていく。
「ちょうど、明日から2週間ほど出かけるのでその間に目を通します」
「うむ、根を詰めないようにな。わしはその辺得意だったが、爺さんは苦手でな修行をやめさせるのは大変じゃった」
「いつまでも剣を振ってそうですね」
「だからな、こう魔法を放って止めたんじゃよ」
魔法を使う真似をするお婆様の目は一瞬で真剣さを帯びる。この辺は現役の癖だろう。しかし、その構えに隙が無いところからかなり威力の高い魔法だったと思うのだが。お爺様が強いことは知っていたが、お婆様もかなり規格外だったみたいだ。お父さんはのんびりしているから本当に良かったと思う。
でも、こう来るとお父さんはのんびりしているだけで実際はお爺様たちぐらい強いのかもしれない。兄さんでさえ騎士団では上位の成績だというし。
「それでは、お婆様行ってきます」
「無理はせんようにな」
「はい!」
元気に返事をして私は下へと降りる。下では開店時間を過ぎたため、お客さんが少しづつ訪れていた。
「おやティアちゃん久し振り。最近、人気ものらしいね、ちゃんとこれ買ったよ」
小さいころから知っている近所の人だ。おばさんがちらりと見せたのは間違いなく飛竜のうろこを加工した腕輪の細工品だ。
「ありがとうございます」
ぺこりとお辞儀をして返す。
「ほんとにこんなにかわいい子が冒険者なんてねぇ。うちの子と変わってほしい位だよ。冒険者にならなくても引手あまたでしょ」
「いや、そんな…」
子供時代を知っている人から可愛いと改めて褒められると照れくさい。いたたまれないくなり、髪をいじって誤魔化す。
「あら、降りてきてたのね。柄にもなく照れちゃって」
母さんにも揶揄われるけれど、言い返すだけの言葉が出てこない。その後も少し店にいる間に何人かの知り合いと出会い、その都度いちいち反応してしまう。
「はあ~、この感じでだれか婿にでも貰ってくれればねえ」
「またそんなこと言って、そういうのは兄さんに頼んで」
「それができればね。じいちゃんの見立てじゃこのままいけば団長にもなれるだろうから、ちゃんとした騎士になって帰ってこないかもって」
「この前会ったけど、相変わらずだったわよ。そうは見えないんだけど」
「あなただって、私たちから見れば相当の実力よ。小さいころから一緒にいるからよくわからないのよ」
大体この家は普通の商家に見えて、物騒なのよと母さんが続ける。まあ、元騎士団長と魔導兵団団長推薦を受けた2人がいる時点で普通ではないだろうけど。
「そういえばお父さんも強かったりするの。戦ってるところとか見たことなったけど」
「どうなのかしら?そもそも興味がないって言ってたから、鍛錬自体してないんじゃないかしらあの人」
これでお父さんまで変に強かったらと思っていたのでちょっとほっとした。
「それじゃあ。また今度ね」
「ちゃんとうろこの件、話しといてね」
「はいはい」
母さんと別れて店を後にした私は宿へと戻る。残念だけどエミリーに説明しないと。
「王立図書館行きはキャンセルして一緒にこの本を見てもらおう」
がっかりするようなエミリーの顔が浮かぶようだ。まあ、どうしても行きたいなら一人で行ってもらうしかないだろう。そう思って私は部屋のドアを開けた。
昨日は早めに寝たおかげで、今日は結構気持ちよく起きることができた。時間を確認すると7時半だ。
「そろそろ食事の準備とかもできるころかしらね」
ほぼ家族経営の宿が多い中、朝・昼・夜と食事を提供するこの宿ではあまり早くに食事を提供し始めると、休憩の時間が多くとれない。とはいっても冒険者たちは出かけるときには早くに出て行ってしまうので、悩みどころだと以前に女将さんが言っていた。
結局のところ夕飯時には冒険に行くものはおらず、ギルドや商店に依頼料や売却益を持ったものが帰ってくるのだから削るなら朝の時間という事だ。一応確認しておこうと部屋を出ようとする。エミリーはというとやはり昨日はあれからずっと読んでいたようで、まだ起きる気配はない。
「リサ、準備はどう?」
「ごめんなさい。もうちょっとだけかかります」
「ああ、別にいいわ。今日はエミリーもまあ寝てるし、30分後ぐらいかしら」
「分かりました。それぐらいに準備しておきますね」
ばたばたしていたので、これ以上は悪いと思い必要なことだけ伝えて部屋へと戻る。戻ろうとすると隣のドアが開いた。
「あれ、ティアおはよう」
「おはようキルド。朝はもう少しかかるそうよ。あと30分後で言ってきたから」
「そうなんだありがとう。じゃあ、もう少し寝よっと」
キルドは眠たそうにすぐ部屋に戻っていった。私も部屋に戻り机に向かう。身支度を済ませ今日の予定についてもう一度確認する。とりあえず、朝食後に実家に行き魔光玉について聞くこと。その後は図書館だったわね。行くときにはエミリーも連れていくから一旦戻ることを忘れないと。そのエミリーはというとまだ夢の中だ。よく見ると読んでいた本の横にもう一冊置いてある。ひょっとしてあの後、次の本を読み始めたのだろうか。
「しょうがない子ね」
私はもう一度食堂へ向かうとリサにエミリーの分は部屋で食べられるものにしてほしいと頼む。すぐには起きないだろうし出かける前に机にでも置いておこう。その後、時間になったので再び食堂へと降りる。食堂にはキルドを始め3人がそろっている。
「エミリーはどうしたんだ?」
「昨日ずっと本を読んでいたみたい。そんなに時間かからないと思ってたら、その後で新しく読み始めているのを見つけたわ」
「しょうがない奴だな」
「でも、明日からまたしばらく自由に読めなくなるんだししょうがないよ」
「まあ、そうだな」
「皆さんお待たせしました」
リサが頼んでおいた料理を持ってきてくれる。
「ちらっと聞こえましたけど、また皆さん行っちゃうんですか?ここのところ続きますね」
「前はほとんど日帰りばっかりだったから、確かにそうだよね」
「いやいや、ちょっと安心しましたよ。払いがいいのにずっと宿にいましたもん。割のいい商売でも見つけたんじゃないかって一時噂でしたよ」
「そんなのあったらわざわざ冒険者やらないでしょう」
「でも、変わった人もいますからね。別のギルドじゃ危険な依頼しか受けない人もいるみたいですよ」
「そうなったらおしまいね。楽はできるに越したことはないわよ」
「そうですよね。ところで次は何時頃お帰りですか?」
「10日から2週間ぐらいだろう。そこから長くはならないつもりだ」
「へ~、微妙な長さですね。じゃあ、女将さんにも言っときますね」
「お願いするよ」
これで、明日宿をいったん引き払っても帰ってくるころには部屋が空いているだろう。最悪埋まっていても1,2日程度なら別の宿でも構わないし。食事を終え、私たちはそれぞれの部屋に戻る。私はこれから単独行動なので、そのまま着替えて部屋を出る。
「ただいま~」
宿を出て、ちょっと歩いて実家に着く。まだ、店の開く時間ではないので勝手口から入る。
「あら、お帰り。今日はどうしたの朝早くから?」
「ん、またお婆様に聞くことができて。そうそう母さんうろこの売れ行きどう?」
リライアの店ではまだ販売していないが、こっちでは仕入れた分をせっせと売っている。大きい店でない限りはこうしてすぐに売っていかないと回らなくなるのだ。
「上々の滑り出しよ。何せ簡易とはいえ魔導アイテムだし、通常の仕入れと違って娘の討伐品だしね」
「ひょっとして私のこと触れ回ってるの?」
「当たり前でしょ。近所の人なんかはお祝い代わりに買ってくれるし、知らないかもしれないけど飛竜の成体を討伐したパーティーってちょっと王都で噂なのよ」
商機を逃さないように娘まで使うのはまあいいとしても、近所の人に会いづらい。子供のころから店にいたり、結構活発的だったから認知度高いのよね。あんなに小さかった子がとか一番言われたくないセリフだ。
「売れ行きが良かったのは安心したわ。まだ、あまりもあるから必要なら仲間と相談するわ」
「そうね。あと50~100は行けるわ。単価は前と一緒だと嬉しいのだけどね」
「一緒に伝えとく。それじゃあ、お婆様にあってくるわ」
「はいはい」
私は一旦、会話を終え2階のお婆様の部屋に向かう。
「お婆様いらっしゃいますか?」
「おお、ティアか。よく帰ってきたのう」
「はい。教えていただいた通り、魔光玉の生成には成功しました」
「おうそうか。しかし、思っていたよりも早いのう。もう少しかかるかと思ったんじゃが」
「エミリーにも手伝ってもらったのでそれででしょうか」
「なるほど。あの子も使えたんじゃったか。それで、なにかあったのか?」
「魔光玉の生成には成功したのですが、その…あのアイテムは何か秘密があるのですか?」
「秘密とは。あれはただ所持者の魔力を増大させるだけのものだと」
私は言葉を濁しながら、持った時にそれぞれ重さの感覚が異なるという事を伝える。さすがにセイラちゃんのことを話す訳にはいかないのでエミリーとの対比だ。
「確かに複数名で行う時にはより適性の高いものに集約するという事は聞いたことがあるのう。ただし、そんなに明確には差は出ないはずじゃ」
「そうですか…」
ここまで知識を持っているお婆様でも、適正に合わせてある程度の変化は起きることまでしかわからないらしい。
しかし、その話が正しいならば私やエミリーよりセイラちゃんは、はるかに適性があるという事になる。当時、一番魔力の低いあの子に合わせられるぐらいの潜在能力があるという事なのか。
「しかし、その様子ではうまく扱えなかったのか?」
「そうですね。持ち歩くにも重量と取り回しを考えるとちょっと難しいです」
私は正直に答える。これに関してはエミリーとも意見は一致しているので事実だ。
「まあ、わしが作った時は成体ではなく若いものだったし、勝手が違うのじゃろう」
お婆様は重量などの問題に関しても特に追及することもなく、単に個体の差が大きいという事で納得してくれたようだ。
「でも、どうして魔光玉の生成方法など知っておられたのですか?」
私は以前から気になっていたことを聞いてみる。確かに昔から難しい本もいっぱいあったし、現役時代はそこそこ名が売れていたとは思っているが、明らかに知識量が多い。
「…もう、冒険者としてもいっぱしになったことだし話してやるとしようかの」
そういうとお婆様は一呼吸開けて、自分の若いころのことを語りだした。
「…という事でな。こう見えて昔は王都では道行くものが知っておったのじゃ」
結構長い話になってしまったが、すごい話を聞いた気がする。お婆様の話を順番にまとめていくとこうだ。
若い頃のお婆様は美人で魔導の扱いにも長け、王宮魔法兵団のトップ入団を果たし、研究に討伐依頼にと大忙しだったらしい。当時の王都は現在のような平和な環境でもなく、隣国との戦争の気配と周辺の魔物の活動の活発化で常に緊急時の兵員が詰めている状況だった。その中でも非常に目立つお婆様は、常に成果を出し史上最年少の王宮魔法兵団の団長に抜擢されるところだったという。
その頃には街中でも知らないものはおらず、ならず者たちも姿を見れば隠れていたとのこと。
しかし、同じく若くして王宮騎士団の時期団長と目されていた、お爺様と出会い魔法兵団をやめたとのこと。
「でも、そこまで強かったなら止められなかったんですか?」
「その頃は魔法兵団の団長も引退間近だったし、邪魔するなら吹き飛ばすといってやったのじゃ。そしたら、もう何も言ってこなくなったわ」
お婆様は普段から落ち着いていて、人格者と思っていたのだが若いころは結構無茶をしていたようだ。母さんも商売になると結構譲らずに争ていることもあったが、理性的に収めているんだとこれまでは思っていたが、この話を聞く限りだと徹底的に討論をしているのかもしれない。
「でな、いざやめるとなった時に今後はそこまで魔導にはかかわらんとは思っていたのだが、一応何かの役に立つかもしれんと王宮の図書館のものを借りているんじゃ」
「王宮って王立図書館の?」
「何をいっとる。あれはただの一般向けじゃろう。この部屋にあるのは王宮に置かれている一般向けではないものの一部じゃよ」
「はあ!?」
思わず声を上げてしまった。王宮から持ってきたという事は、完全に閲覧禁止指定されているものとか許可制のものが混ざっているという事だ。そんな本を無造作に置いてあったのねこの部屋…。
「心配せずともちゃんと許可は取ってある。むろん許可を取ったものが今も王宮にいるとは思えんがな」
この調子だと、その許可をくれた人と結託して本自体は紛失か長期貸し出し中にでもして、その後に目録からも外されているかもしれない。
「じゃあ、ここの本で調べものした方が王立図書館に行くよりいいんですか?」
「ものにもよるが、間違いなくここのが充実しておるじゃろう。魔法関係に関してはな」
魔光玉のことに関してもこの中の一冊に記述があったらしい。当時は冒険者の中でも知る者はいたらしいが、魔族の召喚にも使えるという一文から次第に隠されていったとのこと。
昔の本のため記載が格式張っていたり、難しいところもあるが確かにこれなら王立図書館に行くよりよほどいいかもしれない。
「ちなみにお婆様、これ借りていくこととかってできます?」
「構わんぞ。わしからしたら今になって使うことはないからのう。ただし、あまり人には見せてはならんぞ。すでにほとんど使われない魔法なども載っておるからのう」
「分かりました。限られたもののみに公開します」
「うむうむ」
私は早速、今後の冒険に役立ちそうな魔法が乗っている本と、魔物について詳しく書かれた本を選ぶ、
正直なところカリンと約束していた街に行くという約束を守るため、人化の法がないか調べるつもりだったがそこまで高度な内容は王立図書館といえどないと思っていた。しかし、ここにある本なら手掛かりぐらいはあるかもしれない。
「ほう、魔物の本までもっていくのか?」
「え、ええ。今後も色んな魔物に出会う訳ですしちょっと…」
「研究熱心なのはいいことじゃ。じゃが知能の高いものや魔力の高いものには気を付けるんじゃぞ。人に限りなく近い姿で現れることも可能らしいからの」
最もわしの時でさえ見たことはなったがな。そう続けるお婆様の話に耳を傾けながら本を選び出す。持ち出すにしてもたくさんは持っていけないし、関係ない本もある。ひとまずは4冊程度を選びだし借りていく。
「ちょうど、明日から2週間ほど出かけるのでその間に目を通します」
「うむ、根を詰めないようにな。わしはその辺得意だったが、爺さんは苦手でな修行をやめさせるのは大変じゃった」
「いつまでも剣を振ってそうですね」
「だからな、こう魔法を放って止めたんじゃよ」
魔法を使う真似をするお婆様の目は一瞬で真剣さを帯びる。この辺は現役の癖だろう。しかし、その構えに隙が無いところからかなり威力の高い魔法だったと思うのだが。お爺様が強いことは知っていたが、お婆様もかなり規格外だったみたいだ。お父さんはのんびりしているから本当に良かったと思う。
でも、こう来るとお父さんはのんびりしているだけで実際はお爺様たちぐらい強いのかもしれない。兄さんでさえ騎士団では上位の成績だというし。
「それでは、お婆様行ってきます」
「無理はせんようにな」
「はい!」
元気に返事をして私は下へと降りる。下では開店時間を過ぎたため、お客さんが少しづつ訪れていた。
「おやティアちゃん久し振り。最近、人気ものらしいね、ちゃんとこれ買ったよ」
小さいころから知っている近所の人だ。おばさんがちらりと見せたのは間違いなく飛竜のうろこを加工した腕輪の細工品だ。
「ありがとうございます」
ぺこりとお辞儀をして返す。
「ほんとにこんなにかわいい子が冒険者なんてねぇ。うちの子と変わってほしい位だよ。冒険者にならなくても引手あまたでしょ」
「いや、そんな…」
子供時代を知っている人から可愛いと改めて褒められると照れくさい。いたたまれないくなり、髪をいじって誤魔化す。
「あら、降りてきてたのね。柄にもなく照れちゃって」
母さんにも揶揄われるけれど、言い返すだけの言葉が出てこない。その後も少し店にいる間に何人かの知り合いと出会い、その都度いちいち反応してしまう。
「はあ~、この感じでだれか婿にでも貰ってくれればねえ」
「またそんなこと言って、そういうのは兄さんに頼んで」
「それができればね。じいちゃんの見立てじゃこのままいけば団長にもなれるだろうから、ちゃんとした騎士になって帰ってこないかもって」
「この前会ったけど、相変わらずだったわよ。そうは見えないんだけど」
「あなただって、私たちから見れば相当の実力よ。小さいころから一緒にいるからよくわからないのよ」
大体この家は普通の商家に見えて、物騒なのよと母さんが続ける。まあ、元騎士団長と魔導兵団団長推薦を受けた2人がいる時点で普通ではないだろうけど。
「そういえばお父さんも強かったりするの。戦ってるところとか見たことなったけど」
「どうなのかしら?そもそも興味がないって言ってたから、鍛錬自体してないんじゃないかしらあの人」
これでお父さんまで変に強かったらと思っていたのでちょっとほっとした。
「それじゃあ。また今度ね」
「ちゃんとうろこの件、話しといてね」
「はいはい」
母さんと別れて店を後にした私は宿へと戻る。残念だけどエミリーに説明しないと。
「王立図書館行きはキャンセルして一緒にこの本を見てもらおう」
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「なろう」さまにも、以前、投稿させていただいたお話です。
ペンネームもタイトルも違うし、かなり書き直したので、別のお話のようなものですけれど。
【 完 結 】スキル無しで婚約破棄されたけれど、実は特殊スキル持ちですから!
しずもり
ファンタジー
この国オーガスタの国民は6歳になると女神様からスキルを授かる。
けれど、第一王子レオンハルト殿下の婚約者であるマリエッタ・ルーデンブルグ公爵令嬢は『スキル無し』判定を受けたと言われ、第一王子の婚約者という妬みや僻みもあり嘲笑されている。
そしてある理由で第一王子から蔑ろにされている事も令嬢たちから見下される原因にもなっていた。
そして王家主催の夜会で事は起こった。
第一王子が『スキル無し』を理由に婚約破棄を婚約者に言い渡したのだ。
そして彼は8歳の頃に出会い、学園で再会したという初恋の人ルナティアと婚約するのだと宣言した。
しかし『スキル無し』の筈のマリエッタは本当はスキル持ちであり、実は彼女のスキルは、、、、。
全12話
ご都合主義のゆるゆる設定です。
言葉遣いや言葉は現代風の部分もあります。
登場人物へのざまぁはほぼ無いです。
魔法、スキルの内容については独自設定になっています。
誤字脱字、言葉間違いなどあると思います。見つかり次第、修正していますがご容赦下さいませ。
転生後はゆっくりと
衣更月
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貧しい集落で生まれたリリは、生まれた瞬間から前世の記憶があった。
日本人特有の”配慮”に徹した赤ん坊を演じていたことで、両親から距離を置かれた挙句、村人からも「不気味な子」として敬遠されることに…。
そして、5才の誕生日に遠くの町に捨てられた。
でも、リリは悲観しない。
前世の知識チートは出来ないけど、大人メンタルで堅実に。
目指すは憧れのスローライフが出来るほど、ほどほどの守銭奴としてリリは異世界人として順応していく。
全25話(予定)
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