妹を想いながら転生したら

弓立歩

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本編

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「帰ったわよ、リライア」

「おかえりなさい皆さん。どうでした?」

「喜んで頂戴。すぐにではないけれど作ってもらえることになったわ」

「本当ですか!って作ってもらえるんですか。私てっきり、工房で微妙になったものを頂けるのかと」

「そこは職人気質だから、売らないわね。それと作ってくれるのはお弟子さんの方よ。それでも作っていいっていうくらいにはいいものができるはずよ」

「そうなんですね。武器といってもいつも商人さんが持って売るだけだったからよくわからないんです」

「ヴォルガノンっていって、王都では結構有名な鍛冶工房の作品だから期待していいわよ」

「何時頃持ってこられる予定なんですか?」

「大体、4,5日後だと思うわ」

「でもどうしましょう。店を開いてませんし、店にはもうあまりお金がないんです。有名なところの作品のものに払うだけのお金が…」

「それも心配はいらないわ。飛竜のうろこで良いって言ってくれたから、ちょっとよさげなのを渡してくれれば大丈夫よ」

「分かりました。店の売り物のバリエーションを増やしていただけますし、良さそうなのをまとめておきますね」

「それと、最初は4日後だけど月に1本から2本ぐらいで話をしているの。向こうも忙しいと作れないでしょうから、本数としては多くないから」

「いえ、作っていただけるだけでも大助かりです。冒険者向けで素材と食料では格好がつきませんでしたので」

「まあね。ただ、こっちから依頼してるから多分、どんなものが届くかは指定はできないから何が入荷するかは運次第よ」

「その方が却って興味を引くかもしれませんし問題ありません。いや~皆さんと知り合えて本当によかったです」

「こっちこそ、商人の知り合いができて助かるわ。王都は人も多いしどうしてもいろいろな店を回ると、こういう機会もないから」

「そうそう、じゃんじゃんとはいかないけど、次も帰ってきたらまた持ってくるよ」

「帰ってきたらってまたどこかへ行かれるんですか?」

「飛竜の件でな。元々生息していた地域に調査の依頼だ。2週間は明けるからその間頑張るんだな」

「う、結構空いちゃいますね。他の方とかにもちらほら声はかけさせてもらっているんですが、芳しくなくて。でも負けませんよ~」

店の準備をしているのかと思いきや、冒険者にも声掛けなどいろいろ手を尽くしているらしい。とはいえ開く方が初心者の店という事でみんな様子見なのだろう。

「リンさんのところも荒っぽいから、そこそこで買い取らないと難しいしね」

リンさんというのは、以前にも私に話しかけてくれていた女剣士だ。私たちと同じCランクのパーティーだが前衛職が多く、治療や手入れで結構持っていかれると嘆いていた。
収支に関してはマイナスになることもあり、買取に関してもそこそこ金額が必要になるだろう。

「せめて、もう少し王都にとどまってくれそうなパーティーがいればいいんですけど」

「結局、王都っていうと騎士団もしっかりいるし、そこまで難易度の高い依頼も来ないのよね。あっても近隣への出張依頼が多いし」

「そこなんですよね。帰ってくればもちろん王都にいい素材が集まるんですが、その間に仕入れが止まるのが問題なんですよ」

「ひとまずは売り物で興味を引いて、来てもらうようにすることだな。変わったものが何か常時あれば見物には来るだろう」

「それしかないですよね。私も頑張ります。実は今、売り物にならなそうなうろこをアクセサリーにしてるんです。割と冒険者の人って宿の人とかいろんな人にお土産を渡されるみたいなので、
そういうのもありかなって」

「地方によってはそれでも結構、売れるかもね。でも、売り物にならないものだと傷が多いんじゃないの?」

「そうなんですけどね。きれいなものを使うのもどうかと思いますし。それにきちんと戦って倒したっていう証でもありますから冒険者の方の土産としてはいいと思うんですよ」

「なるほどな。確かに王都で飛竜の討伐が行われた土産話としては、きれいなものより話の種としてはいいかもな」

「なので、加工も最低限でうろこの形がよくわかるようにしてるんです」

そう言いながらリライアは作りかけも含めて、10個ほどの加工品を見せてくれる。確かに簡単に穴をあけそこに丈夫な糸を通してあるだけのようだ。きちんと磨いた跡もあるけれど、傷が隠れないように最低限にとどめてある。

「器用ね。穴開けるの大変じゃない?」

「そうなんです。軽い気持ちでやり始めたんですが、硬くってなかなか進まないんです」

「まあ、わたしたちが戦ってるときもみんな苦労してたもんね~」

「うろこ自体は狙わずに隙間を狙ったしな」

「実は私たちの中で最初にうろこを貫通させたかもね」

「そんな~。でも、私の場合は動きませんから」

自分の苦労が分かって貰えてうれしそうなリライア。実際私たちからすれば、あのうろこに穴をあけるなんてみんな嫌がるだろう。

「それで一応めどはついたけど、何時から店を開けるの?」

「あまり待っていても仕方ありませんから明後日には開けたいと思っているんです。最初はちょっと紅茶もサービスで」

「そうなの。頑張ってね」

「皆さんは来てくれないんですか?」

「残念だが、その日から依頼に行かないといけないんだ」

「そうなんですね。サクラ…いえ、いい絵になると思ったんですけど」

「いい絵?」

「皆さんは街の人からは新進気鋭のパーティーとして認知されてますからね。しかも、それぞれ個性的な外見ですし店の前にいるだけでも目立つなと」

「見世物になるのだけはごめんよ」

「分かってますよ」

その後は店の予定などを聞きつつ、紅茶を頂いて店を出た。

「それじゃこれからどうしよっか?」

「俺はフォルトに合流して話を聞くよ」

「ならカークスとは別行動ね。お疲れ様」

私たちはカークスと別れて何をしようかと話し合う。

「そういえば甘いもの巡り、してなかったよね?」

「ええ、覚えてたのそれ…」

結局はエミリーの希望で王都甘いもの巡りに付き合わされることになった。もっとも、そこまで得意ではない私はところどころで苦めのものを頼み、口直しをしていたのだが。

「ん~、たべた~」

「そう、ね…」

ちょっと気分が悪い。控えめのものや苦いものを食べながらだったのに、エミリーは全く堪えてないらしい。

「や、休ませて」

「なにティア。食べすぎちゃったの?しょうがないなぁ~」

明らかに私より多く食べてたでしょとはいえず、ただただ消化されるのを待つ。

「おお!ティアじゃないか。こんなところでどうしたんだい?」

「兄さん。今は話しかけないで」

「つれないなあ。この前も工房であったのになかなか話せなかったし、どうだい?」

「今はダメよ」

「ティア、食べすぎで気分悪いんだって!」

「ああ、エミリーちゃんもいたんだね。しかし、食べ過ぎなんて珍しいね」

「そうなんだよね~。わたしと一緒に食べてただけなのに、隠れて何か食べてたの?」

「くっ」

何もわかってないエミリーと事情を理解した兄さんの顔がちょっとイラつく。いや、私が食べすぎたのがいけないんだけどそんなに食い意地は張ってない。

「そういうことならしょうがないね。お大事にね」

「…ありがとう」

兄さんはまた、警らに戻っていった。しかし、王都の騎士は多くが単独で行動していて大丈夫なのだろうか。
あんな感じでも腕はいいとは聞いているけど、妹としてはちょっと心配だったりする。

「ふう~。そろそろ宿に戻りましょうか?」

「もういいの?じゃあもどろ!」

それから少し休んだ後、大分ましになってきたので宿へと二人で戻る。宿に戻るとすでにキルドが帰ってきていた。

「キルド、ただいま。あなたにしては帰りが早いじゃない」

「残念ながら何もいい情報がなくてね。あきらめて帰ってきちゃった」

「へ~」

それから3人で談笑していると、カークスたちも戻ってきたので皆で夕食を食べに食堂へと降りる。
今日は朝から肉を食べたので、私もエミリーも野菜中心のメニューだ。5人の中で肉料理を選んだのはフォルトだけだった。

「あれだけ朝から食べて、まだ食べるのか?」

「逆に食べすぎたからだな。とりあえず今日はこれにするよ」

そう言いながらフォルトは食べ進めている。まあ、分からなくもないけどいい食べっぷりだ。
私たちもそれぞれ運ばれてきた料理を食べていく。その後は特に何も報告という程のことはなかったので、とりあえずリライアの店が明後日開店という事だけ伝える。

「間が悪いね」

「そうなんだよ~」

「とは言っても出発の日は替えられないし、急に明日開くっていうのもね」

「しょうがないか」

残念そうに話すキルド。開店直後にでも行ってみたかったのだろう。夕食も終え私たちはそれぞれ部屋に戻る。

「ティア、明日はどうするの?」

「私はとりあえず魔光玉のことを話に家に行くわ。その後は図書館かしらね」

「そうなんだ。じゃあ、わたしも図書館についてくね」

「あら、エミリーも何か調べもの?」

「最近、図書館にもこういう本が入荷するようになったんだ。どんなのがあるか見たいなって思ってたの!」

そういうと読みかけの本を私に見せるエミリー。カリンたちの村でも読んでいた本だ。

「そういうことなら部屋で待っててね。用事が終わったら呼ぶから」

「分かった。それじゃ続き読も~」

エミリーはすぐさま読書に戻ってしまった。結構いいところだったようだ。私はそんなエミリーを見てから今日もまた日記を書く。色々あったようなそうでないような、ちょっと迷いながら書き終える。そろそろ寝ようとエミリーに声を掛けようとしたが、集中している。見ればまだ3分の1ほど残っている様だ。邪魔しても悪いし、先に寝よう。

「エミリー、まだ読むんでしょ。お先に」

「あ、うん。おやすみ~」

聞いているか怪しいような返事でエミリーが返してくる。これは何を言っても読み終わるまで寝ないなと思い、私は先に眠った。
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