少女勇者、女神の依頼はお断り

弓立歩

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プロローグ

始まりの女神とカティア

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 ここは地球とは違う星、違う世界、異世界ディピアス。

 この世界に存在する女神アーディシュラは邪悪な波動を感知していた。

「むっ!この波動は邪心の波動…。性懲りもなく、また加護を与えているようね。こうしてはいられないわ、私も加護を授けないと!」

 すぐさま地上を見渡した私は一人の誕生する命に狙いを絞った。

「う~ん、獣人かぁ。ほとんど人間みたいなものだけど、失敗も多いのよね。でも、久しぶりに獣人の勇者っていうのが世界にとってはいいかもしれないし、この子にしましょう」

 世界のバランスも考えられる高位神の私は少し逡巡したのち、目的の子に加護を授けることにした。

「よしっ!加護を授けるタイミングは今から七年後ね。それじゃあ、まずは誕生を見届けるとしましょう」





 おぎゃーおぎゃー

「おおっ!無事に生まれてくれたか!」

「どうですかあなた。可愛いですか?」

「ああ、当然だろうセシリア。ほら、見てみろ!きれいな金の髪に同じ金の目だ」

「まぁ、本当にかわいい子…」

「泣くなセシリア。赤ん坊が不安になるだろう?」

「でも、とっても嬉しいんですもの、ミゲル」

「そうだな。でも、お前の泣き虫は変わらないなぁ」

「これからはママになるんですから、泣きませんよ」

「その言葉覚えておくからな。そうだ!子どもの名前はどうするんだ?」

「私が付けてもいいんですか?」

「もちろんだ」

「その前に、男の子でした?それとも女の子?」

「そういえば言ってなかったな。女の子だ」

「では、カティアと。実はずっと考えていたんです」

「カティアか…いい名前だ。きっと、この子はすごい子になるぞ」

「もう、あなたったら…」




 そして七年後…

「カティアまだ尻尾の穴が開いてませんよ。おでかけ前はちゃんとしなさい」

「は~い!」

 私はカティア。獣人族のお父さんミゲルと人間族のお母さんセシリアとの間に生まれたハーフだ。まあ、ハーフなんて言ってるけど、耳と尻尾以外は普通の人間と何も変わらない。というのも獣人と人間は昔から共存してたり、時には戦争してたりもして、今住んでいる人間の多い大陸だと私みたいな外見の子がほとんどだ。

「だけど、みみやしっぽは同年代の男の子にさわらせちゃいけないなんて変なの。街のおじさんとかおばさんにはいいのに…」

「ほら、できたわよ。ちゃんと早く帰ってくるのよ。明後日は出かけるんだからね」

「わかってま~す。それじゃあ、行ってきます!」

「行ってらっしゃい」


「行ったか、元気に育って欲しいと思ってはいたが、カティアは本当に元気だなぁ」

「あなた。元気なのも困りものです。また服を破いてしまって…あの子ったら」

「まあまあ、一枚ぐらいいいじゃないか!」

「今月だけでもう三枚です!そんなに言うならあなたのお小遣いから引いておきますね」

「おいおい、それは勘弁してくれよ。俺だって付き合いがあるんだから」

「それなら、来月はもっと早く帰ってきてくださいね。今月は遅い日が多かったでしょう?カティアも寂しがってましたよ」

「分かった。カティア”も”な」

「もう!知りません」

「悪い悪い。来月からはもう少し控えるよ」

 俺はセシリアを抱きしめると家の中に入っていった。



 それから二日後。いよいよ今日は町を出て、親せきの家に出かける日だ。

「忘れ物はないわね?」

「ないで~す」

「あなたは?」

「俺もない。おっと、一応旅だしこいつも持っていくか」

「けん!私もならいたい!」

「もう少し大きくなったらな」

「あなた!カティアに何を教える気ですか!」

「いいだろう別に?女だからって剣ぐらい習っても変じゃないぞ。女性の冒険者だっていっぱいいることだし」

「町暮らしのカティアにそんなものは必要ありません!あなたの家とは違うんですよ」

「そ、そうか。カティア、内緒でな」

「うん」

 お父さんと小声で約束すると私はにんまり笑い家を出る。

「お父さん、それより今日から出かけるところはどこなの?」

「ああ、親せきと言ったが父さんの生まれた家だ。ちょっと喧嘩しててな、今までは帰ってくるなと言われてたんだが、この前手紙をもらって一度帰って来いってさ」

「へ~。じゃあ、おじいちゃんなの?」

「うん?」

「カティアにとってはそうね。でも、初めて会うんだからちゃんとしないとだめよ」

「は~い!」

 初めて会うおじいちゃんかぁ。街の人には良くしてもらってるから不安もあるけど、楽しみだなぁ。



「乗車チケットです」

「三人だな。チケットも三枚と…乗っていいぞ。ん、剣を使えるのか?」

「はは、ちょっとだけだが」

「そうか。まあ、そんなことはないと思うが、協力を求められたら頼むぞ」

「ええ、じゃあ」

 乗合馬車のチケットも事前に買っておいたし、いよいよ馬車旅の始まりだ。

「うわぁ~、お外って広~い!」

「あらあら、お嬢さんは外は初めて?」

「はいっ!おばあさんはよく行くんですか?」

「ええ。息子夫婦ところにね」

「へ~、私もおじいちゃんのところに行くんです!楽しみですよね」

「そうね。私は二つ先の町だけど、お嬢さんはどこまで?」

「えっと、う~んと…」

 行き先はどこだったかな?

「二つ先の領地までです」

「あらあら、遠いのねぇ。じゃあ、あなたのお爺さんもきっと楽しみにしてらっしゃるでしょう」

「ほんと!よかった~、私も楽しみ~」

 おばあさんとその後も話をしながら馬車の旅が続いた。でも、おばあさんの降りる駅は今日の最終駅である二つ目の駅だった。

「さようなら、おばあさん」

「お嬢さんも元気でね」

 おばあさんが降りると別の人が代わりに座った。へ~、乗合馬車ってこういうのなんだ~。

「今日はこの先で一泊します。テントをお持ちの方は使っていただいて構いませんし、不安な方はそのまま馬車で構いません。ただ、朝の出発時間に間に合うようにお願いします」

 そんな注意を受けてしばらく進むと馬車が止まった。どうやら、今日の泊まるところに着いたみたいだ。



「じゃあ、俺たちはテントだな。荷物を出して…」

 お父さんは剣も持ってるし、お母さんは魔法をちょっと使えるということで私たちはテントだ。食事の方も家から持ってきていた料理をサッと温めて食べる。せっかくの機会だからとちょっと高いけど携帯容器だ。

「ん~、おいしい! お母さんの料理上手!」

「ありがとう、カティア。さあ、あなたもどうぞ」

「悪いな」

 みんなで初めて食べたお外の料理はとってもおいしかった。

「おやすみ。お父さん、お母さん」

「おやすみなさい、カティア」

 夜はみんなで一緒に寝るのかなと思ったけど、お父さんとお母さんのどっちかはテントの前に立つんだって。安全のためらしい。せっかくみんなで寝られると思ったのにな…。


「カティアは?」

「さっき寝たみたい。こういうところはやっぱりまだまだ子どもね。それより、お父様の方は大丈夫なの?」

「ああ。まあ、出て行ってもう十年になるし、カティアにも会いたいんだろ」

「そうだといいけど…あの子、本当に楽しみにしてるから」

「その方がいいんじゃないか?親父もカティアを見れば何も言わないさ」

「あなたったら…」

 それから三十分ほど話をして私はテントに戻った。

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