少女勇者、女神の依頼はお断り

弓立歩

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物語の始まり

熊さんの有効活用

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「いや~、今日は大収穫だったな~」

 わん

「リキラもそう思うよね? ただ、調味料がもらえなかったしな~。そろそろ、商人さんを見つけないと!」

 洞窟に戻った私は塩・コショウ・砂糖の在庫を確かめる。砂糖はまだ余裕があるけど、塩とコショウは普段から味付けで使うので残り少ない。あと一週間も持てばいい方だろうか?

「今日仕留めたのは珍しく大きめの熊さんだから、絶対これじゃあ足りないよね。とりあえず、今日はお魚だからほっとこう」

 氷は簡単に溶けないし、ひとまずは今日の分だ。

「それじゃあ、先にお昼ご飯にしないとね。油を出してと……」

 二日前に拾っておいた薪に火をつけて、そこに油入りのお鍋を置く。あとは昨日採っておいた山菜を油の中にぶち込んでいく。

「これだけでも塩コショウで大分、おいしくなるからね~。はぁ~、本当に困ったなぁ」

 油で揚げている間にちらりと洞窟の奥を見る。そこにはたくさんの仕留めた獲物の素材があった。

「毛皮に角に牙。結構丈夫そうなのもあるし、色々引き換えてもらえそうなんだけどなぁ」

 かといって、護衛付きの人がいる商人さんは困りものだ。私の格好が怪しいのか問答無用で攻撃されたこともあるし。

「たま~に、通るおじさん来ないかな~。あの人だったら、ましなんだけど」

 二度ほど襲われているところをたまたま助けてあげた商人さんは、通る時に色々と交換してくれることがある。あのおじさんは護衛の人を下がらせてくれるから助かるんだよね~。

「そういえば、前に何か欲しいって言ってたなぁ。トレントの木だっけ? あんなので何するんだろ?」

 トレントはこの森でもそこそこ数がいる魔物だ。見た目は普通の木だけど魔力を持っていて、実は移動もできる。ただ、倒して薪にするにも魔力を帯びているので、燃えにくいんだよね。普通の木より何倍も堅いのはいいんだけど。

「ただな~。私は魔法で魔物を倒すし、釣り竿ぐらいにしかならないんだよね~。人間はあんなの何に使うんだろう? 目的ぐらい聞いておけばよかったかな? そしたら、私も何かに使えるかもしれないし」

「じゃあ、今度町に行きましょう! そうすれば、使い方も分かりますよ!」

「そうだ! 女神、トレントって何に使うの?」

「おおっ!? 数か月ぶりにまともなアクションが! トレントの使い道ですが魔力が木に宿っていますから、魔法使い用の杖の材料に多いですね。木だけでも威力が上がりますが、大半は魔石を先端に付けてさらに強化しています。その他にも斧や槍の持ち手だったり、工具だったりと汎用性に富んでいますね。難燃性ですから、貴族の邸の建材にも使われますよ」

「へぇ~、昔は薪にしても燃えにくいから放置してたけど、ちょっと狩っとこうかな?」

「はっ!? しまった! つい話しかけられた嬉しさで答えてしまった……」

「リキラ、明日はトレント狩りに行くよ~」

 わう!

 女神の珍しく役立つ情報で、明日からの予定を立てた私たち。今からはお昼寝タイムだ。私は洞窟入り口近くのハンモック。リキラはその下の茂みで日の光を浴びながらゆっくり過ごす。

「おやすみ~」


 チュンチュン

「ん……」

 お昼寝が終わると、近くで小鳥の鳴き声がした。

「おおっ!? 珍しい小鳥さんだ。でも、今日は獲物をいっぱい獲ったからいいや。小鳥さんは小骨も多いしね~」

 内臓とかを洗ったり、骨が多かったりとあんまり食べるところがない。素焼きでもいいんだけど、時間がかかる割に食欲が満たされないんだよね。リキラも生活し始めた当初はたまに食べてたけど、最近はお魚とか普通に森に住んでる、大きな肉になる魔物にしか興味がなくなった。

「おいで~、山菜の残りをあげよう」

 そんなわけで、気づけばもう一年半ぐらいは食べていない気がする。なんだかんだ、この森って大きい獲物が多いから、わざわざ小鳥さんを狙う必要がないんだよね。

「あとは大鹿さんがいればな~」

 オスでもメスでもいいけど、全長四メートルぐらいあるから、一頭いれば結構持つんだよね。熊さんは油が取れるけど肉は見た目より少なめ、鹿さんは肉の部分が多いから、凍らせておくととっても便利だ。

「は~い、山菜だよ~」

 チチッ

 小鳥さんの方も慣れたもので、私がぽ~んと山菜を近くに投げるとついばむ。

「ゆっくり食べてね~。見てて飽きないし、娯楽もないからね」

 実際、食べて寝てあとはリキラの相手ぐらいしかすることがない。これを機に何か始めてもいいんだけど……。

「しばらくは熊さんの皮をなめすのに忙しいし、いっか。あ~、それにも塩使っちゃうのか……。早く商人さん見つけないと。それか、岩塩だね。はぁ~、岩塩がどこにあるか分かればいいのにな~」

 ちらっ

「わ、私に言っても無理ですよ。本来、私は個人の生活に干渉をする存在ではありませんから」

「ちっ、さっきの調子で教えてもらおうと思ったのに……」

「そんな苦労をしなくても、町に行けば簡単に手に入りますよ」

「はぁ、地道に探すか商人さんを頼ろう」

 女神は相変わらず役に立たないことが分かったので、私は機会を待つことにした。それから、三日後……。


「はぁ~、お魚さんも食べたし。熊さんの肉も食べ始めたからそろそろ、皮を剥ごうかな」

 でっかい二本の牙を持った魔物から加工したナイフで肉と皮の部分を切り分けていく。ちょっとめんどくさいけど、我慢だ。

「ん……もうちょっと奥まで。切れた!あとはぐるっと周りを切ってと……」

 切り株を並べて作ったテーブルに、敷物を敷いて肉と皮を切り分けていく。

「よしっ! これでまずは肉を部位ごとに切り分けて、もう一度凍らせてと。脂身も小分けにして……」

 先に加工に邪魔になる肉を分けたら、いよいよ本命の皮の処理だ。

「それじゃあ、まずはきれいにしないとね。皮用のおっきい桶を用意して、次に水を……アクア」

 桶の中に水魔法でいっぱいの水を入れる。ここに皮を入れて丁寧に洗っていく。これを取り出したら水は捨てて光魔法を使う。

「ライトキュア」

 浄化の魔法だけど、汚れや菌にも効くみたいでこれで桶から上げた皮をきれいにする。

「そのあとはもう一度洗ってと……それから草と塩を混ぜた特性液に浸けて三日待つ。ふぅ~、これでしばらくはそのままだね。その間、暇だから保存食でも作ろうかな?」

 そう思った私は凍らせておいた肉を少し取り出して、薄切りにすると塩とコショウを振る。

「こっちも乾燥をしないとね。っと、今度は縄が少なくなってきたな。はぁ~、サバイバルは大変だ」

 もう四年間やっているけど、道具を作るのが一番大変だ。逆に女神の力のおかげで食料を確保するのは楽なんだけどなぁ。

「水も魔法で簡単に出せるし、服にする麻はあるけど……」

 別に私は職人とかではないので、服に使えるような細い糸状のひもにはならない。というか、針を作るのも牙を加工して糸を通す穴を作らないといけないから、難しいんだよね。

「街かぁ……。ううん、あんなのが女神だし、大人の人って危ないからまだ駄目!」

 わぅ

「リキルもそう思うよね? うんうん、もう二、三年は行かないようにしなくちゃ!」

 私は改めて考えを固めると、縄に肉を括り付けていったのだった。



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