少女勇者、女神の依頼はお断り

弓立歩

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物語の始まり

カティアの日常

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 私の名前はカティア。今は多分十一歳!なんで多分なのかというと、四年ほど前に乗っていた乗合馬車が森で襲われて、その時にお父さんもお母さんも死んでしまって天涯孤独だからだ。今はその時に見つけた洞窟に住んでいる。おうちはないのかって?

「カティア、朝ですよ。今日こそは街に行きませんか?」

「……」

「カティア、最近はなぜ返事もしないのですか? 礼儀は大事ですよ」

「…………」

 その理由は今話しかけてきた女神だ。この女神の名前はアーディシュラ。私を勇者とか何とか言っている自称女神だ。両親が死んで悲しんでいる私の元に突然現れて加護を授けてきた女神だ。しかも、ご丁寧に両親が死んで私が悲しむのを待っていたという屑女神である。人は神の生み出したものと言われているので、こんなのがその神さまかと思い、それ以来私は人を避けて生活している。

「朝ごはん食べようかリキラ」

《わん!》

 洞窟の中で寝そべっていたリキラに私は声をかける。私はこの洞窟の中で一人暮らしをしているわけではない。二年ほど前にリキラと出会って、それ以来二人で暮らしている。まあ、リキラは犬だから二人というのが正しいかはわからないけどね。

「ファイア!」

 私は貯蔵庫に残っていた肉に塩をふりかけ火魔法で焼いていく。これぐらいは女神の加護を受けた私には朝飯前だ。他にも水魔法と光魔法を使うことができる。特に水魔法と火魔法は大事だ。水魔法が使えるようになったのも近くの川で水を飲んでお腹を壊した時だったし。あの時は苦しかったなぁ。

《わぅわぅ》

「あっ、ごめん。リキラの分もすぐに焼くからね」

 リキラは真っ白な体毛を持つ犬だ。種族名は知らないけど、この森でも見たことはないから珍しいんじゃないかな? ちなみに名前は出会った日の光景からだ。その日は雨が降っていて、目の前に液状のぬるっとした真っ黒な物体が出てきたので、リキッドブラック。そのままでは長いので縮めて名付けた。その時は気づかなかったけど、あとで汚れを洗って真っ白な体が出てきた時は驚いたなぁ。

「もう一枚も、ファイア」

 さっきより少し控えめに火を出す。私はミディアム、リキラはレアが好みなので肉を焼く時は別々だ。正直、私はレアならそのまま食べればいいのにと思うけど、口に出すとけんかになるので言わない。二人とも肉にはうるさいからね。


「ごちそうさまでした! さあ、そろそろ食料も少なくなったからまた狩りに出かけないとね」

《わふっ》

 私は食料確保のために洞窟の入り口から森を目指す。

「食料もだけど、また商人さんいないかなぁ。もう、コショウとか調味料が少なくなっているんだよね」

 人と会わないとはいえ、さすがにただ焼いた肉なんて飽きるので、たまに物々交換で調味料だけは手に入れている。えっ、町に行かないでどうしてるのかって? この辺は魔物もそこそこ強いらしくて、たまに商人さんが襲われるんだよね。そういう時にササッと助けに入って交換するんだ。優しい人は服の代わりもくれたりするから助かるんだよね。そういうことは女神の加護があってもできないから。

「結局、女神の加護っていっても力とか魔力が上がるだけで、肝心な部分は全くだよね、ねっ! リキラ」

《わぅわぅ》

 リキラもうなずきながら森へと入っていく。

「今日は何を取ろうかなぁ~。木の実はまだ少し先だし、果物もこの前取ったばっかだしな~」

《くぅ~ん》

「えっ!? お魚がいいって? 前に獲ったのは四日前だったかな。じゃあ、最初はお魚で! そうと決まれば川に向かおう」

 私はリキラを伴って川を目指す。洞窟から一番近い川はそこそこ深くてお魚も大きめだ。


「さて、お魚さんはいるかな~。いたっ!」

 川に目をやると魚影が見えたので、私はさらに位置を特定するため、ピンッと耳を立てて意識を集中させる。

「そこだねっ! アイスランス」

 氷の槍を魚にお見舞いする。横から槍が魚を貫通すると、即座にその身は凍り川に浮かんでくる。

「よしっ! リキラ、頼んだよ」

 わぅ!

 凍った魚の回収はリキラの仕事だ。リキラはまだ子狼だけど、川の流れには負けない強さがある。私も最初は川に入っていたけど、最近はもっぱらリキラ任せだ。服を乾かす手間もいるしね。

「ゲ~ット~! もう一匹獲らないと私の分がないから頑張ろう!」

 獲物は基本的にリキラが優先だ。私も獣人の端くれとして耳はいい方だけど、リキラに至っては耳と鼻で獲物の位置を教えてくれるからね。狩りについては私が実行役だけど、見つけるのはリキラだから必ず最初の獲物は譲ることにしている。

「あと何匹獲れるかな~」

《わん》

「ん~、リキラも楽しみにしててね」

 パシャン

「見えた!」

 そのあとも四匹獲ることができ、うきうき気分で私はお魚を凍らせるのだった。

「保存はこれでいいから、マジックバッグに入れといてちょっとその辺を歩いてみようかな?」

 このマジックバッグは前に助けた商人さんからの貰い物だ。いらないって最初は言ったけど、押し付けるように貰った。でも使ってみるとすごく便利だから、あの商人さんには感謝しないとな。
 魚をマジックバッグにしまい込み、運動も兼ねて私たちはちょっと森の方へと歩き出した。やることがないから結構、こういう散歩の時間も多い。まあ、リキラが運動好きなのもあるけどね。今も尻尾を振ってうれしそうにしてるし。

「おや、今日こそ町に行く気になったのですか?」

「……」

 うるさい女神だ。本当に女神なのかな? 邪神のような気がしてきたよ。勧誘がしつこいしね。

「ん?」

 わぅ

 ピクリと私の耳とリキラの耳が立つ。どうやら、道の近くで何かあるようだ。

「これは調味料入手のチャンスかも? 行くよ、リキラ!」

 わん

 私はリキラと一緒に現場に向かったのだった。



 グオォォォ


「くっ!まさか、バーサーカーベアーが二匹も出るとは……」

「オウカさん! どうします?」

「……ここは俺が引き受ける。お前たちは先に逃げろ」

「そんな! あいつは一人じゃ勝てません。さっきだって、三メートルのバーサーカーベアーを何とか倒したんですよ? あいつは五メートルはあります。勝てっこありません!」

「だからだ。俺はクランのリーダーだぞ! これぐらい大したことはねぇ。ミルカ、皆を頼んだぞ。お前がこの中じゃ、一番冷静だ」

「オウカ……分かった。でも、必ず戻ってきてよね!」

「当たり前だ。俺はお前らのリーダーだぞ」

 俺は仲間を逃がしてひとり、バーサーカーベアーに立ち向かう。

「なんてでかさだ。これと戦って何分持たせられるか……。いや、俺は帰るんだ!」

《オォォォォ!!》

 バーサーカーベアーの威圧の咆哮で身が竦みそうになるのを必死にこらえる。

「真正面から戦う必要はねぇ。時間を稼ぐんだ!」

 そして、なんとか相手との距離を取る。

《ガァァァァ!》

「ん、この声は大きい熊さん! やったぁ。アイシクルランサー!」

 突然森の中から現れた少女が氷の槍をバーサーカーベアーに放つと、胸に刺さりそこからどんどんバーサーカーベアーが凍っていく。

「嘘だろ……」

 カキン

 とうとう、五メートルはあるバーサーカーベアーの巨体は氷漬けになり、動きを止めた。



 その少し前、私たちは現場に向かっていた。

「こっちであってる?」

《わぅ》

 私は自分の耳とリキラの耳を頼りに街道へと向かう。街道はよく商人さんが利用してるから、これはチャンスかも。

「ん~、こっちだね。この先が街道だから気を付けて出ないと……」

《オォォォ》

「ん、この声は大きい熊さん! やったぁ。アイシクルランサー!」

 私は氷の槍で熊さんを倒す。この熊さんは大きくて脂肪もあるから生活の味方だ。脂肪は油として使えるし、肉はそこそこおいしい。それに何といっても毛皮! この大きい毛皮は敷物にも毛布にもなるから便利なんだよね。まだ前のも残ってるけど、ストックはいくらあってもいい。

「よーっし。無事に凍ったね。後は持ち帰るだけ……あれ? こんにちは」

「あ、ああ」

 よく見ると、熊さんの前には人がいた。てっきり、他の魔物と戦ってるのかと思ってたけど、この熊さんに襲われていたみたいだ。これはチャンスかもしれないと思って、どんな人なのか私は確かめてみる。

「なんだ、冒険者の人か~。冒険者ならしょうがないね」

 このシチュエーションなら、商人さんがよかったけど贅沢は言えない。肉が手に入ったことを喜ばないとね。

「あれ? 確かあの人って……ばいば~い、オウカさん」

「うん? ああ」

 まだ、よくわかってないオウカさんにあいさつをして私は森に戻る。

「リキラ~、見て見て。熊さんだよ~」

《あぅ!》

 お肉が手に入ったとリキラも喜んでくれる。今日はお魚だけど、明日はお肉でパーティーしようね。お魚に続いて、お肉も手に入れた私はリキラとルンルン気分で洞窟に戻ったのだった。そして、さっきのことをリキラと話していると……。

「ああ~、せっかく町に行くチャンスが~」

「女神はいい加減諦めたら?」

 大体、何でずっと私のところにいるのだろうか。怠惰な女神だ。

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