少女勇者、女神の依頼はお断り

弓立歩

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物語の始まり

出会い

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 あれから数日。私たちは何をするでもなく食料が尽きないように日々を過ごしていた。

「ふわぁ~、商人さんまだかなぁ?」

 わふ~

「リキラも気になるよね? せっかくの出会いなんだし」

 中々商人さんと会う機会もないので物はもらえる時にもらっておかないと。

「おっと、今日も杖を作らないとね」

 トレントを一体倒せばかなりの材料が手に入る。まあ、いくつか作って分かったんだけど、杖にできるのは木の中央部分だけみたいだ。それも根に近いところだけが魔力を多く蓄えられるみたいで、他の部分で作った杖はちょっと魔力を増幅するだけのつまんない杖にしかならなかった。

「この中央部分以外のも四本あるけどどうしようかな? 絶対買ってくれないよね」

 増幅効果も知れてるし、固いといってもしょせん木だしなぁ。

「まあ、投げれば熊さんも貫通するし別にそれでいいか」

 多少は魔力も込められるし、使い捨ての投げ槍としては悪くないかな? 杖として使えない時のことも考えて持ち手の先は尖らせてある。あとで加工するのも手間なので一緒にやってしまうのだ。

 わふ~

「リキラ暇だよね。ちょっとその辺散歩してきていいよ」

 私が杖に加工している間、リキラにはその辺で遊んでいてもらう。これにも意味があって、リキラぐらいの力になるとその匂いで弱い魔物を寄せ付けなくなるのだ。獲物は欲しいけどこんな住処の近くまでは来て欲しくないからね。

「さ~て、今日はあと二個作らないとな~」

 どうせできた分は商人さんに売っちゃうし、あればあるほどため込める。そう思って私は作業に没頭した。



 わふわふ!

「ん? リキラどうしたのそんなに急いで」

 作業ももうすぐ終わりというところでリキラが帰ってきた。しかも、なにやら急いでいるみたいだ。

「外に出ればわかるって? しょうがないなぁ」

 私は仕方なく作業を止めると毛皮を被って外に出る。

「これは……」

 にゃぁ

 そこには一匹の子猫がいた。しかも、子猫はかなり弱っている。

「急いで治療しないと!」

 私は駆け寄ると回復魔法を使うため子猫に近寄る。

 にゃ!

「きゃっ!?」

 しかし、わずかに残った力で子猫は私を寄せ付けようとしない。

「ひょっとしてこの子……」

 ともかく今は一刻も早く治療をしないといけない。私は引っかかれるのも構わず手を伸ばす。

「ハイヒーリング!」

 水の回復魔法で子猫の体についている無数の傷は見る間に癒えていく。しかし、それでもこちらへの警戒を解いてくれない。

「きっと人間に襲われたんだね。かわいそうに」

 わう!

「リキラどうしたの? この子のお母さんがいる場所に案内するって? 分かった!」

 この子のことも気になるけど、この洞窟周辺には人も魔物も近寄らないだろうからまずは母猫を探しに行かないと。

「じゃあ、急がないとね。フォロー」

 私は火の補助魔法を使って体の動きをよくする。こうすることで一段早く現場に到着できるのだ。

「さあ、リキラ案内して!」

 わう!

 リキラの案内の元、私は現場へと急ぐ。

 タタタタッ

「こ、これは……ひどい!」

「あん? なんだ人間か」

 現場には無残にも切り刻まれた母猫だったものが転がっていた。

「欲しいっていってもあげないわよ。せっかく見つけた獲物なんだから」

「……いらない」

「ま、ガキにゃこいつの価値は分かんねぇよな。ほら、宝石を取っちまおうぜ」

「宝石?」

 四人ほどの男女の集まりはそういうと母猫に近づいていく。母猫を見ると額には大粒の宝石のようなものがあった。

「あれはたまに見るきれいな猫さん。宝石狙いだなんて!」

「あらあら、カーバンクルキャットのことも知らないなんてどういう子なのかしら?」

「それより、どうしてこんなに皮まで傷をつけたんだ。こっちも結構な儲けになるってのに……」

「こいつが動き回るからだろ? 俺は悪くねぇよ」

「こいつら……許さない!」

 森の生き物たちは確かに食うか食われるかの生活だ。でも、こんないたぶるように倒すだなんて!

「それよりこの子どうする? この絶好の狩場ばれちゃったけど」

「しょうがないよなぁ……」

 チャキ

 男たちが武器を私に向けて構える。

「いいよ。どっちがこの森にふさわしくないか教えたげる!」

 私は持っていた火の杖を構えると魔法を唱える。

「炎の渦よ、敵を食い破れ! フレイムサラマンダー」

「なんだこのガキ……うわぁぁぁぁ!」

 杖かららせん状に伸びていく炎の渦が鋼鉄の鎧をまとっていた男を包み込む。

「あ、あちいよ~!」

「レイス! こいつ、ウィンド……」

「遅い! はっ!!」

 私は足元に転がっていた棒を拾うと女の胸元に向かって投げる。

「あがっ……」

「こ、こいつ化け物か!」

「逃がさない、火炎の爆裂よ! フレイムバースト」

 今度は火の玉をいくつも出して一人を狙う。

「あ、当たるかよこんな遅い球に!」

「だっ、だめっ、その魔法は……」

 さっき魔法を使おうとしていた女はこの魔法がどういうものか知っていたらしい。

「でも、もう遅いよ。爆発!」

 ドンッドンッドンッ

 避けたはずの火の玉を爆発させる。元々この魔法は周囲に敵が多い時にばらまいてその爆発で敵を倒す魔法なのだ。

「うわっ…」

「動けるのは残り一人だね」

「ま、待ってくれ。こいつをやる! だから……」

「その猫を生き返らせたら考えてあげる。今すぐにね」

「そんなこ」

「ふんっ!」

「ぐあっ!」

「な、なんなの貴女……同じ人間でしょ?」

「同じ人間? 私には別に必要じゃない、あなたたちのような人」

 私は残ったひとりにとどめを刺すと、落ちていた宝石を拾う。

《にゃ~》

「あっ、猫さん。ごめんね、あなたのお母さん助けられなかったよ」

 私は猫さんに宝石を渡す。猫さんはちろりと宝石を舐めたあと、私に突き返してきた。

「いいの?」

《にゃ~》

「傷を手当てしてくれたお礼と、敵を討ってくれたお礼? 別にいいのに。でも、ここにいたら目立っちゃうしもらっておくね。よっと」

 追加で人間が来ても面倒なので簡単に穴を掘って死体を入れたら燃やして埋める。

「さあ、帰ろう。リキラ」

 わぅ

 私はリキラと一緒に洞窟に帰る。しかし、帰る途中で……。

《にゃぁ》

「あの子付いてきてる。うう~ん、あんまり同居人が増えるのはなぁ」

 食料は用意できるけどリキラも好みがあるし、大所帯になっても困るし。私もまだまだ子どもだからここに住み着くかもわからないしね。

《にゃ~》

 とはいってもこの子はもう付いてくる気のようでトコトコと後を付いてくる。

「しょうがないか。おいで」

 私が両手を広げると子猫は胸へと飛び込んできた。そのまま私たちは洞窟に帰った。

「お帰りなさい、カティア」

「女神じゃない、今は顔を見たくないから出てこないで」

「どうしたの珍しいわね、反応を返すなんて。リキラ何か知ってる?」

《わふっ》

「ふ~ん。それは困ったわね。また町に行くように言う機会がなくなったわ」

「行かないって言ってるでしょ!」

 人間のせいで機嫌の悪い私はバンッと洞窟奥の扉を閉めて、子猫の寝床を作るための材料を探し始めた。


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