高校デビューで田舎から都会に移ったのに、家を継ぐために田舎に戻れ!?社会人生活3年目の決断。さよなら俺の都会暮らし ~鎌芽の社の妖女~

弓立歩

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親からの手紙

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「さて、親父の手紙の中身はと…」

お前がこれを呼んでいるということは、家に帰ってきたのだな。事情をどこまで知っているかは知らんが、この村には妖怪が住んでいる。人に害をなすものではないが古くは気に入ったものをさらい、神隠しに遭わせるということだ。私は最初こそ信じていなったが、父親よりその話を聞かされ、我が身の家系を知った。どうやら、自分にもその血が流れているらしい。

「へ~、親父も知ってたんだな。って、俺に力を使ったんだから当たり前か。続きはと…」

父親にその話を聞かされて、私は何か力がないか多くのテストを受けた。その中には過酷なものもあったが、ついに目覚める気配はなかった。しかし、ある時そのテストが辛くなり何とか理由を考えてやり過ごそうと思ったらそれが成功したのだ。何のことはない、実在しない人物との用事があると言ったのだ。苦し紛れだったのですぐにばれると思ったが、なぜか数日間大人はそれを信じてしまった。それ以降、私には実在・架空を問わず誤認識させることができると分かった。

「なるほどな。やっぱり親父の力があって、俺は兄弟がいるとだと思い込んでいたということか。でも、なんで沙耶から離したんだろうな…。別に妖怪だなんて分からないだろう」

気になるので続きを読み進める。

そうして少年期を過ごしていると、その内に一人の少女が気にかかった。名は沙耶というらしいが、自分が小さい時には姉のように思っていたものの、歳月が過ぎても一切成長した気配が見えないのだ。気になって近くの子に聞いてもそんな者は知らぬという。父親にも聞こうと思ったが、父には力がなく力を悪用していると思われたくなかったので、尋ねることはできなかった。そして、とうとう沙耶に力を使ってみた。

「へぇ~、俺が沙耶をちゃんと覚えていられるのもただ血がつながってるからじゃなくて、何らかの力があるからかもしれないってことか。というか親父も大胆だな。もし沙耶が妖怪なら危ないんじゃないのか?」

沙耶に力を使ってみると少女はにやりと笑いこちらを見てきた。『ほう?お前の代は力が使えるのか。もう、途切れてしまったのではないかと思っておったがの』それだけ言うと少女は愉しそうに笑いだす。周りの子たちは何だとこちらを見ているが、その出来事も所詮その瞬間のみ。翌日にはそのようなことを覚えているものはどこにもいなかった。私は沙耶に聞いてみた、お前こそが神隠しを行う妖怪なのかと。

「妖怪かもって思ってるのに、よく直接聞けたな。本当に胆が据わってるんだな親父は…」

沙耶は戸惑うことなくそうだと短く答えた。その肝の座り方や振舞い方をよく観察するとなるほど、見た目とは全く違うことに気が付く。その日から私は沙耶と距離を取るようになった。沙耶からは来ないのかと声をかけられることもあったが、私はもう沙耶が得体のしれないものに見えてしまった。その内に妻と出会い子を成すまでに至った。生まれてきた子が幼年になると早速、力を使ってみた。問題なくかかった、それが嬉しい。きっとこの子も我が父と同じように力を持たぬのだろう。

「おいおい、俺に力を使って試したのかよ。でも、俺は沙耶のことを認識できてるよな?どうしてだ」

息子に力がかかって安心していると、その内に沙耶の名を出すようになった。しかも伝承の通り、息子は沙耶に惹かれている様だ。慌てて家中の書物を探して沙耶についての記述を探した。沙耶はどうやら戦国時代から生きている妖怪らしい。害を及ぼした記載はないが、ここにも恐らく神隠しには関わっていると書いてあった。妻とも相談して、中学を卒業したら家を出すことにした。私たちも一緒に行きたかったが、どうしても決心がつかなかった。これが自分の血なのかどうかもはや確かめるすべもない。

「なるほどな。一緒に行こうとはしてくれたってことか。でも、決心がつかないだなんて親父らしくもないな」

達郎には毎週手紙を送っている。そうしないと暗示が解けてしまう。そうしてしまえばきっと帰ってきてしまうだろう。妻が病に倒れ、一目会わせてやりたいがそれもかなわぬ。戻ってきてしまえば、きっとあの子もこの地に縛られてしまうだろう。あの子の代で自由を手にして欲しい。

「親父やお袋もあんまり会いに来なかったけど、愛されてたんだな俺。なんだか涙ぐんで来たぜ…っと続きを読まないとな」

とうとう、私も病にかかり入院することになった。手続き関連に関しては全部先に終わらせておいて家に整えてある。後は隣家の人間に頼むだけだ。手紙か、あの手紙が届いた後、達郎は…息子はどうするだろうか?あの手紙にも細工をしておいた。一つは手続きが終わるまでは兄弟がいると思い、家に帰ってくるようにすること。もう一つは沙耶に対して今も記憶があるのならばすぐに思い出し、無ければこの地を去るように力を込めた。私としては後者を選んで欲しいものだ。再び一族がこの地に縛られることになりかねない。どうか、後者を選びこの手紙を読んでいることを願う。

「…親父。悪いな、俺は親父の思いとは別の道を歩んでいきそうだ。昨日今日と沙耶から衝撃的な話を聞いた今でも、やっぱり俺は沙耶のことが気になるんだ」

俺は心の中で詫びつつ、今度はお袋の手紙を開く。


達郎、これを開いている時、私はもういないでしょう。最初に謝っておくわ、ごめんなさい。まだ、子どものあなたを一人都会に追い出すように送ってしまって。手紙は送ってくれれるものの、会いに来てといってくれないので寂しい日々だったわ。でも、それだけ強く生きているから、無理は言えないわね。もう、あの人の手紙を読んだかしら?私も最初は信じられなかったけれど、村にはどうしても覚えられない子がいるので信じることにしたわ。あなたと離れることは辛いけど、あの人と離れることも出来ないの。元気でやっていることを祈っているわ。

「お袋…もうちょっと会いに来てくれって言えばよかったな。来てもあんまりはしゃいだ様子もないから、遠慮してたけど沙耶とかのことを考えてだったんだな」

あなたが気になっている子は沙耶という名前らしいわね。あなたがとても嬉しそうにその子のことを話してくるのが印象的だったわ。雪ちゃんもいるのに贅沢な子ね。あの人はあなたが外で暮らせばいいと思っているみたいだけど、きっとあなたは帰ってくると思うわ。だって、あれだけ気になる子ですものね。だから、1つだけお願いしたの。達郎がこの村で暮らしたいと、あの子のことを覚えているのなら自由にさせてやって欲しいと。

「親父の手紙にあった沙耶のことはお袋の願いだったのか…感謝するぜ」

そうしてさらに手紙を読み進めていくのだった。
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